パナソニック LUMIX S5レビュー|コムロミホ
はじめに
デジタルカメラにはない味わいのある写真が撮れるということもあって、いまだにフィルムカメラの根強い人気があり、手軽なカメラから、こだわりの一台までさまざまな選択肢があるため、最近フィルムを始める方も多い印象を受ける。しかし、フィルムの種類が減り、ランニングコストも上がっているため、デジタルカメラでフィルムのような味わいのある写真が撮りたいと願う方も多いのではないだろうか。
そこで、今回はLUMIX S5でフィルムライクな写真を楽しむ方法をご紹介したい。LUMIX S5のフォトスタイルにL.クラシックネオとL.モノクロームSという効果が追加された※。フォトスタイルは好みに合わせて色味やコントラスト、彩度などを変更できる機能で、鮮やかに表現するヴィヴィットやモノクロ写真を撮る効果などが搭載されている。
※最新のファームウェアへの更新が必要な場合があります。
L.クラシックネオ
今回追加されたL.クラシックネオは「カラーフィルム風の、ノスタルジックで優しい色合い」に仕上げてくれる効果だ。一枚撮影してみると、どことなく、懐かしく、やわらかく、独特な空気感で、味わい深い世界観となる。
まるでコダックのフィルム『ポートラ』のような発色を彷彿とさせる画づくりになっており、スタンダードと比較してみると、コントラストが低く、低彩度で落ち着きがある。それでいて、青の出方が独特だ。そのため、空や海など青い被写体を無性に撮りたくなる。フィルムカメラにポートラを入れていると、空にカメラを向けたくなる感覚に似ている気がする。
左がスタンダード、右がL.クラシックネオで撮影。淡く、やわらかなトーンで落ち着きのある印象に仕上がり、独特な色合いで被写体を表現してくれる。
色ノイズと粒状の効果
通常、フォトスタイルはコントラストや彩度などを細かく設定できるが、L.クラシックネオには今回新たに「色ノイズ」という効果が追加された。ノイズの乗り方が一定ではなく、フィルム同様にランダムにのるように工夫されている。よりカラーフィルムで撮影した風合いを楽しめるようにと、粒状の出し方にもこだわって開発されたそうだ。
加えて、「粒状」の強弱は3段階で選ぶことができ、上の写真は「強」で撮影を行った。被写体や撮りたいイメージに合わせて粒状の設定を変更しているが、普段は「中」を使用することが多い。いろんなシーンで試してみたが、ノイズの乗り方、サイズ感のバランスが最も好みだ。上の写真のようにノイズを乗せて、高感度フィルムで撮影したような風合いを出したいときは「強」を選ぶようにしている。被写体やシーンによって粒状の強弱を変えながら、ぜひ自分の好きな設定を見つけてもらいたい。
周辺減光補正OFF
さらにフィルムカメラで撮ったような風合いを楽しむために、周辺減光補正のOFFをおすすめしたい。レンズによる周辺減光(写真の中央に比べて、四隅にいくほど暗くなる現象)を抑えるために、デフォルトの設定はONになっているが、フィルムで撮影したようなビネッティングを作るのであれば、あえて周辺減光補正をOFFにするのも面白い。
左側が周辺減光補正をOFF、右側がONの状態。露出が変わらないようにシャッター速度1/8000、F値F1.8、ISO100に設定し、撮影を行った。中央の建物の明るさはほぼ変わらないが、周辺の明るさが違うのがわかる。
このままでは全体的に写真が暗く見えるので、バランスをみながら露出をプラスに補正すると、周辺減光とL.クラシックネオの風合いを楽しめる。今回は海と手前の植物を淡く表現したいため、+2/3EV明るくしたが、被写体と周辺減光のバランスを見ながら露出補正を変更していただきたい。
犬の散歩コースとして、よく訪れる場所だが、L.クラシックネオの世界を通すと、見慣れた場所も独特の空気感で写真をまとめることができるため、思わずいろんなものにシャッターを切りたくなる。
L.モノクロームD
そして雨の日の新宿、モノクロでスナップをすることにした。今回、フォトスタイルは「L.モノクロームD」という効果を選んだ。今回新たに搭載された「L.モノクロームS」は「ポートレート撮影に適した軟調で柔らかな印象のモノクローム」。これでフォトスタイルには4つのモノクロの効果が追加されたことになる。その4種類の中で一番好きなのが「L.モノクロームD」だ。
ハイコントラストながらも階調豊かに表現し、ダイナミックなモノクロ表現を楽しめる「L.モノクロームD」。この効果もフィルムの絵作りを研究しながら開発されたという。S5にはフォトスタイルに4種類、クリエイティブコントロールモードに4種類のモノクロの効果が搭載されているため、モノクロ作品をこだわって仕上げたい方にぜひおすすめしたいカメラだ。
L.モノクロームDも粒状を追加が可能。こちらも3段階で強弱を変更できるが、私は「強」に設定することが多い。ぐっとノイズを乗せることで、よりフィルムライクな表現を楽しむことができる。ノイズを入れると、すっきりとしたデジタルっぽさがなくなり、ざらざらとした粒状が古い建物のディテールやアスファルトの質感を引き出してくれる。
さいごに
S5は上位機種のS1同様に2420万画素のセンサーを搭載し、高い色再現性と階調表現、そして高感度性能など、小型軽量ながらも、ハイスペックな1台だ。風景やポートレートなど、被写体の魅力を最大限に活かしてくれるS5だが、今回はご紹介したようにフィルムライクな表現を楽しむ1台としてもおすすめしたい。使い方次第ではさまざまな表現を楽しめるカメラなので、試行錯誤しながら自分だけの表現をS5の中に見つけてもらいたい。
■写真家:コムロミホ
福島県出身。文化服装学院で学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。ニコン、パナソニック、オリンパスのカタログ撮影も担当する。ルミックスフォトスクール講師、オリンパスデジタルカレッジ講師、エプソンセミナー講師、ライカやリコーペンタックス、をはじめ多くのメーカーで講師を務める。
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■更新
・2021年3月25日:イベント申込みを締め切らせて頂いたことを追記しました。