パナソニックLUMIX S5II 実写レビュー|静止画・動画ともに表現力高まる!
はじめに
2023年年明け早々、フルサイズミラーレス機パナソニックLUMIX S5IIが発表され話題となっています。前モデルの発売から2年以上が経ち、像面位相差AFを搭載、連写スピードのアップ、手振れ補正の強化など、静止画・動画ともに表現力を高めるための機能が追加され、ますます期待の高まったLUMIX S5II。2月の発売を前にお借りし、実際に撮影してみたレビューをお伝えします。
LUMIX S5IIボディデザインの特徴
ボディデザインはLUMIX S5と比較しても大きな差はないものの、天面から見ると違いが分かります。マウント部が前面に突出しているのが特徴で、ここにはクーリングファンが内蔵され、長時間動画撮影時の熱対策ができるようになりました。グリップ形状も改善され、片手でもしっかりと握りやすく安定した撮影に臨めます。
ボタン類の配置はS5と同様で、大きな変更点はありませんが、背面のジョイスティックが縦横上下の4方向移動に加え、斜め移動ができるようになり8方向に対応。直観的な操作性が高まりフォーカスエリアの移動がスムーズになっています。また、細かい配慮として、撮影時に不要にカチャカチャと音をさせないようストラップ取付け構造を変更し、三角カンを廃止しています。
この他、SDカードスロットは2基ともUHS-IIに対応、HDMI端子はTypeDからTypeAへ変更、EVFファインダーは約236万ドットから約368万ドットに変更になるなど、撮影環境への配慮と、ユーザーの声を反映したアップグレードがなされています。
キーデバイスの刷新 新ヴィーナスエンジン&新開発イメージセンサー
新ヴィーナスエンジン&新開発2,420万画素のイメージセンサーが採用され、従来のS5と比較し、演算処理能力は約2倍、バッファメモリは約4倍に。これらはLUMIX S5IIの様々な機能の向上に貢献し、リアルタイム認識AFをはじめとする快適な撮影と、色再現や階調再現、高感度時のノイズ低減など、基本画質の向上に寄与しており、あらゆるシーンで恩恵を受けていることを実感できます。
LUMIX初の像面位相差AFを搭載
これまで画質を最優先させてきたLUMIXは、コントラストAFのみを採用してきましたが、今回初の像面位相差AFが搭載されました。撮像領域のほぼ全域にわたる779点の測距点と、像面位相差AF×自動認識AFにより「被写体が向かってくるシーン」、「複数の被写体が混在するシーン」、「逆光や低照度」、「イルミネーションなどの点光源」、「商品レビューの動画撮影時」など、コントラストAFでは苦手としていたシーンで、ピントの合焦スピードと動体の追従性能が大幅に向上しています。
スナップ撮影でも、強い逆光や暗所など、わざわざ狙ってみたくなるシーンが多く、撮影していてほとんどピントの迷いがなくストレスフリー。輝度差の大きいシーンでもピントの合焦を意識せず撮影が可能です。
手ぶれ補正を強化 〝歩き撮り〟を可能にしたアクティブ I.S.機能
強化された手ブレ補正は、カメラが撮影状態を認識して、レンズ内補正、センサー補正を最大化することで、S5比で約2倍ほどの補正効果を得られるようにバランスが取られています。主にVlog等の歩き撮り時に効果が大きいですが、動画に限らず、夜間に三脚なしで撮りたくなるというのも特徴です。静止画撮影時も、より被写体やアングル、構図に集中することができます。
強力な手ぶれ補正によって、今まで機材制約で諦めてきた撮影や、苦手としていたシーンの撮影も可能にしてくれました。像面位相差AFによる電子シャッター高速30コマ/秒のRAW連写も可能になり、私自身が普段撮影しない〝動体を撮影してみたい〟という意欲が湧き、流し撮りや動画の撮影にも挑戦。動画はジンバルや三脚を使用せず撮影をしました。
ボディ内にフォーカスリミッターを搭載
LUMIXS 5IIには、フォーカスリミッターがボディ内に搭載されています。レンズの焦点距離で設定されている合焦範囲は2通りあり、撮影シーンに合わせて切替えて撮影が可能。動画だけでなく、静止画でも有効に使うことができ、ピントの合う範囲を制限すれば、前ボケなどの撮影時でも「手前でピントが迷い、狙ったところになかなかピントが合わない」ということがなく、スッと合焦します。ポートレート撮影などの深度の浅い合焦を必要とする際にも活躍します。
LUMIXこだわりの「色」
わたしが一番重視しているのはLUMIXの色の美しさ。好みの色や画質の調整ができる「フォトスタイル」はS5同様に全13種 を搭載。S5IIでは、新開発のイメージセンサーと新ヴィーナスエンジンの採用によって基本画質で重要視される解像感、階調性が進化しています。
LUMIXの色は、「どのフォトスタイルを選んでもあらゆるシーンに対応でき、常用できる」という点に重きを置いて設計されていることもあり、素直な魅力を引きだし、バランスの取れた誇張しすぎない自然な色、再現性とクリアな発色で、高感度ISO撮影時にも安定した画質と描写を可能にしています。特に、カラーも、モノクロもグラデーションの階調の美しさは群を抜いて秀でています。
さらに、写真表現に欠かせないモノクロームも、L.モノクローム、L.モノクロームD、L.モノクロームSに、モノクロフィルターフィルター効果(黄色・オレンジ・赤・緑)を加え、画面の中の特定の色を強調し、印象深い写真に仕上げることができます。モノクロフィルムをベースに考えられていることもあり、細部にわたる階調豊かで深い表現を楽しむことができるのが特徴です。
リアルタイムLUTの活用で表現力が高まる
今回、LUMIXS 5IIで注目しておきたいのが「リアルタイムLUT」の機能。上記で述べたフォトスタイルに、自分好みの色や質感を加えることができるLUTデータ(.vlt形式や.cube形式)をあらかじめカメラに登録することで、撮影時に自分自身の世界観を表現できるというもの。主に動画編集時に行われていた作業がカメラの中だけで完結できます。
これを静止画でも扱うことができ、フォトスタイルに「リアルタイムLUT」を加え、プリセットやフィルター効果のように効かせることで、撮影後にわざわざPCで現像処理を行わなくても独自の表現が可能に。ボディ内RAW現像では、パラメーターで色調正もできるので無限に好みの調整ができます。
「リアルタイムLUT」の持つ独自の表現を活かすためには、フォトスタイル「Vlog」で撮影しておくことでシネライクな雰囲気に仕上げることができます。ただし、フォトスタイル「Vlog」では、ボディ内現像でのパラメーターの調整が効かないため、あくまでもLUTデータの色を重視して撮影するのがいいでしょう。
なお、LUMIX Color Labでは、LUTデータやプリセットが無償提供され、ダウンロードができるなど、ユーザーにとってうれしいサービスも充実しています。
定評のあるLUMIXの色がますます表現豊かになり、撮影の段階から仕上がりのイメージを想像しながら撮影する楽しみが増えました。これは他にはない楽しみ方です。
おわり
カメラの機能にある程度任せ、自分自身は撮影に集中できるという頼りがいがあり、普段撮影しない被写体を撮りたいと思わせてくれる機能の数々は、新たな撮影領域へチャレンジしたいという気持ちを後押ししてくれます。フルサイズミラーレスのエントリーとして相応しい位置づけのLUMIX S5II。静止画・動画ともにクリエイティビティの広がる表現力には大きな期待があり、LUMIX S5IIがあれば、今までとは違う撮影体験と創作意欲が高まること間違いなし。と、感じた魅力的な1台です。
■写真家:こばやしかをる
写ルンです、スマホカメラ〜一眼レフまで幅広く指導。デジタル写真の黎明期よりプリントデータの制作に関わり、主にプリントの現場から写真を学ぶ。
メーカー講師も勤め、写真・カメラ雑誌、WEB等に執筆・寄稿する他、デザイン制作・企画、プロデュース、ディレクションまでをフィールドとするクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。