大口径・超広角単焦点レンズ LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.|スナップとポートレートでレビュー

水咲奈々
大口径・超広角単焦点レンズ LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.|スナップとポートレートでレビュー

はじめに

 パナソニックから発売された「LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.」は、ライカの光学基準をクリアした大口径、超広角単焦点レンズです。今回は、このレンズを使ったスナップとショートムービー、ポートレートのレビューをお送りします。

粘りのある丁寧な描写

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F1.7 1/125秒 ISO200 WB:5000K フォトスタイル:ヴィヴィッド

 開放F値1.7の「SUMMILUX(ズミルックス)」の明るさをもつ本レンズは、35mm判換算で18mmの超広角画角でありながら、球面収差や歪曲収差を抑える非球面レンズなどの特殊レンズを採用した9群12枚のレンズ構成で、中心部から周辺部まで繊細に描き切る描写性能に仕上がっています。絞り羽根枚数は7枚、円形虹彩絞りを採用しています。

 本レンズの第一印象は、暗い室内でのアンダー部に粘りのある丁寧な描写と、光源のクリアでシャープな再現性が素晴らしいと感じました。

ショート・ムービー

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:WB:5000K フォトスタイル:L.モノクローム
■ジンバル:MOZA mini-P

 今回のショートムービーは、フォトスタイル「L.モノクローム」を使って、疾走感のあるムービーにしました。LUMIXの「L.モノクローム」は、黒と白の中間色のグレーの描写が美しく、特に黒寄りの濃いグレーの粘りと再現性が高い、筆者好みのモノクロ設定です。静止画スナップでは多用しているのですが、本レンズのスペックを見たときに、このレンズでモノクロムービーを撮ってみたいと強く感じました。結果、思い描いていた通り、アンダー部の描写が美しいムービーに仕上がりました。

 フォーカスはAFを使用して、小型のジンバル「MOZA mini-P」に乗せて、歩いて撮影しています。柱の向こう側にピントを合わせた状態で、ピントの手前に壁や柱が横切るようなシーンでもAFは迷わず、輝度差の激しいシーンでも、露出変化は自然でした。

 AF使用時、ピント位置の移動を行うときにムービー撮影で起こってほしくないのが、画角が変化してしまうブリージング現象ですが、こちらも抑制の強さを感じました。

 また、超広角画角ながら径55mmのフィルターを装着できる形状なので、屋外のムービー撮影時に必須のNDフィルターも問題なく使用できます。

小型・軽量で街なかスナップに最適

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F8 1/200秒 ISO200 AWB フォトスタイル:ヴィヴィッド

 このカットの絞りはF8ですが中心部の葉も、画面四隅の葉も、くっきりと力強く描写されました。本レンズの最大径は60.8mm、長さは約52.0mm、重さは約130gです。とても小さくて軽く、手のひらサイズの「LUMIX G100」に装着したところバランスも良く、街なかを撮り歩くのにぴったりでした。

アンダー部のグラデーションの綺麗さは必見!

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F1.7 1/125秒 ISO200 WB:5000K フォトスタイル:ヴィヴィッド

 室内の薄暗いシーンの撮影が楽しかったのは、単に開放F値が小さくて明るく撮りやすいことだけが理由なのではなく、アンダー部の繊細な描写を、撮っているときから感じられたことにあります。

 ストンと落ちるような黒色ではなく、濃いグレーから黒色に、粘り気を持ちながらゆっくりとトーンダウンしていくかのようなグラデーションは、筆者好みの描写です。この描写が活きるのが、このような薄暗く、異国情緒を感じるようなシーンです。

純度の高い赤色表現

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F8 1/200秒 ISO200 AWB フォトスタイル:ヴィヴィッド

 描写がクリアだからでしょうか、今回は赤い色の被写体を多く撮影していました。LUMIXのカメラは、人肌のベージュやオレンジ色を、透明感を持ちながらも暖かく描き出してくれるところが気に入っているのですが、本レンズはそれにプラスして赤い被写体を、くっきりと純度の高い赤色に描き出してくれる性能を強く感じました。

ポートレートも楽しめるハーフマクロ

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F1.7 1/125秒 ISO500 AWB フォトスタイル:人物
■モデル:早瀬さな

 本レンズは、大口径の超広角レンズながら、最短撮影距離0.095m、最大撮影倍率0.25倍(35mm判換算で0.5倍)のハーフマクロ撮影が可能です。絞りを開けて被写体に近付けば、大きなボケを作り出すこともできます。

 ポートレートでは背景をふんわりと大きくボカして、主役の人物を引き立てるような撮影方法をよく行いますが、四隅まで描写がクリアで美しい本レンズなら、あまりボカし過ぎず、背景も自然に見せながらパースペクティブを楽しむ撮り方もできます。

超広角ならではのポートレート

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F1.7 1/125秒 ISO320 AWB フォトスタイル:人物
■モデル:早瀬さな

 超広角レンズなら、アップばかりではなく空間すべてを演出して、それをすべて写し込むような撮影がしたくなります。四隅の不自然な歪曲は抑えられており、自然な遠近感の描写なので、人物を主役としたポートレートも馴染みのいい画に仕上げてくれます。

 ポートレート撮影時は、空間内の小物の配置などの演出はもちろん、モデルさんの衣装のドレープや裾のめくれを直したり、どんなポーズをとってほしいかを自分の体を使って説明したりと、撮影以外の体の動きが意外と激しいものです。コンパクトで軽量な本レンズは、アクティブに動きたい筆者には有り難いレンズでした。

一度触ったら手放せない超広角レンズ

■使用機材:パナソニック LUMIX G100 + LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
■撮影環境:F1.7 1/125秒 ISO320 AWB フォトスタイル:人物
■モデル:早瀬さな

 今回はスナップとポートレートという、同じレンズで撮影するのはめずらしい2種類のジャンルでレビューいたしました。どちらに使いやすい、使いにくいということは特に無く、強いて言えば、背景も画になるようなフォトジェニックな街なかで、モデルに出演してもらって、ちょっとレトロなイメージのムービーが撮りたくなりました。全部の融合ですね(笑)。広角レンズが好きな方は、一度触ったら手放せないレンズだとも思いました。スペックも豪華なレンズなので、ぜひ一度、実際に手に取って、シャッターを切ってみていただきたいです。その後、このレンズが常用レンズになる方はとっても多いと思います!

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

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