新型ペンタックス HD FA Limited レンズを試す|三井公一
はじめに
先日発売されたAPS-Cデジタル一眼レフカメラ「K-3 Mark III」が人気を博しているペンタックスですが、高品位な描写としっかりとしたビルドクオリティを誇る「Limited」シリーズのレンズ3本もリニューアルされました。その味わい深い描写を撮影して確かめてみました。
新しくなった3本の「FA Limited」レンズ
今回リニューアルされた3本はフルサイズフォーマットに対応したレンズです。フィルム時代に設計された息の長いレンズですが、独特の31mm、43mm、77mmという焦点距離と、F1.8、F1.9という絞り開放値となっています。ペンタキシアンにはおなじみでしょう。
特に外装の美しさは素晴らしく、アルミニウム削り出しの鏡筒はまるで工芸品のようです。手触りも独特でいい感じです。特徴の「フィンガーポイント」ですが、ようやく「HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」にもつけられました。七宝焼のそれはとても品があって「Limitedレンズなんだな」と実感させてくれます。
この3本はもともと画質には定評がありましたが、デジタルカメラの高い画質に呼応するように、最新のレンズコーティングが施されて耐逆光性能がより引き上げられています。また円形絞りを新規に採用し、優しく心地よいボケ味を演出してくれるようになりました。とてもうれしいアップデートですね。
それでは各々3本のスペックを確認してみましょう。
HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited
焦点距離 31mm
35ミリ判換算値 47.5mm相当(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
開放絞り F1.8
最小絞り F22
レンズ構成 7群9枚
画角 (対角) 70°(ペンタックス 35ミリフルサイズ一眼レフカメラ装着時)49°(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
最短撮影距離 0.3m
最大撮影倍率 0.16倍
フィルター径 58mm
光量調節方式 完全自動絞り
絞り羽根枚数 9枚
円形絞り (31mm:F1.8-F3.5)
絞りリング あり
レンズフード 固定
最大径 x 長さ 約65mm x 約69mm
質量(重さ) 約341g
HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited
焦点距離 43mm
35ミリ判換算値 66mm相当(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
開放絞り F1.9
最小絞り F22
レンズ構成 6群7枚
画角 (対角)53°(ペンタックス 35ミリフルサイズ一眼レフカメラ装着時)36.5°(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
最短撮影距離 0.45m
最大撮影倍率 0.12倍
フィルター径 49mm
光量調節方式 完全自動絞り
絞り羽根枚数 8枚
円形絞り (43mm:F1.9-F3.5)
絞りリング あり
レンズフード MH-RG49 (付属)
最大径 x 長さ 約64mm x 約27mm
質量(重さ) 約155g(フード付:約163g)
HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limited
焦点距離 77mm
35ミリ判換算値 118mm相当(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
開放絞り F1.8
最小絞り F22
レンズ構成 6群7枚
画角 (対角)31.5°(ペンタックス 35ミリフルサイズ一眼レフカメラ装着時)21°(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
最短撮影距離 0.7m
最大撮影倍率 0.14倍
フィルター径 49mm
光量調節方式 完全自動絞り
絞り羽根枚数 9枚
円形絞り(77mm:F1.8-F4)
絞りリング あり
レンズフード 引き出し式内蔵フード
最大径 x 長さ 約64mm x 約48mm
質量(重さ) 約270g
3本とも佇まいはそのままに、最新のレンズコーティングと円形絞りの採用によって、今まで以上に気持ちがよく、美しい撮影ができるレンズに仕上がっていると言えるでしょう。
今回は3本の中でも人気の高い「HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」をメインにインプレッションしてみました。カメラはAPS-Cフォーマットとなりますが、最新の「K-3 Mark III」を起用しました。
HD PENTAX-FA43mmF1.9 Limited
シリーズで最も長い歴史の43mm。35mm版フィルムの対角長となるこの焦点距離は「本物の標準レンズ」というべき存在でしょう。「フィンガーポイント」を新たに得て、デジタルとフィルムとで長く楽しめるレンズと言えるでしょう。
初夏の漁港を撮りました。自然で心地よい発色とヌケ感が好ましいですね。「K-3 Mark III」だと66mm相当となりますが、「ちょっと遠い視線」的感覚で撮りやすい長さだと感じました。
とある漁港で撮ったカットですが、浮き出してくるような立体感に驚かされました。また鮮やかな色合いとともにディテールの細かさも素晴らしく、レンズの持つポテンシャルの高さを実感しました。
潮風で錆びた建物の外壁を捉えました。鉄板の合わせ目、錆のザラザラ感が実にリアルです。「K-3 Mark III」とのマッチングも良好ですね。
午後の日射しを浴びる漁村の建物。その反射光が目映いですね。臨場感あふれたこの写りはなかなかなものだと感じます。クリアでヌケ感の高い描写は好印象です。
「K-3 Mark III」では66mm相当となりますが、自然で気持ちがいい距離感でスナップ撮影を楽しめました。オートフォーカスも十分に高速で、気になったものを確実かつ正確にキャッチしていけました。
チョイ絞りで撮影しましたが、スムーズで整ったボケ感がいいですね。ピント面のシャープさから、背景に写る緑の描写が心地いいと思います。最短撮影距離は45cmとなっています。
HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited
独特のルックスを誇る31mm。ガラスモールド非球面レンズや、高屈折低分散ガラスなどを採用し、実に緻密な写りを見せてくれます。APS-Cフォーマットでは標準レンズ的に振る舞い、フルサイズフォーマットでは「優しい広角レンズ」的に使えるのも魅力です。
「K-3 Mark III」に装着すると47.5mm相当になるので、いわゆる標準レンズ的に使えるのが魅力の1本です。開放F値もF1.8と明るいので、ボケを活かしたり、低照度下での撮影で威力を発揮するレンズです。夕陽を浴びるお城を撮りましたが、瓦屋根を力強く写しとれました。
静岡おでんの提灯にフォーカスし、F1.8で「K-3 Mark III」のシャッターを切りました。自然で上品なボケ味が好ましいですね。発色も見た目に近く、ピント面のコントラストも良好です。
花形レンズフード一体式のデザインは独特で格好いいと思います。またかぶせ式レンズキャップも品位があり、脱着時もワクワクしてしまうほどです。市庁舎の塔を狙いましたが、そのテクスチャーをとてもしっかりと解像しています。「K-3 Mark III」の標準レンズとしてオススメできます。
陽の光をあぶる藤の花。このような条件下でもヌケ感が高くイヤなゴースト、フレアの発生がありません。新採用のコーティングの効果を実感できるカットになりました。
HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limited
引き出し式レンズフードを備える77mmは実にコンパクト。中望遠レンズとは思えないサイズ感は、携行時も撮影時にもフォトグラファーをラクにしてくれます。絞り開放付近での柔らかな描写は一度使うと病みつきになりそうです。
海岸に停められた自転車。乗って来た人は浜にいるのでしょうか?そんなストーリーを感じさせるカットをこの「HD PENTAX-FA77mmF1.8 Limited」は撮らせてくれました。空の自然な青さと自転車のメタリック感がいいですね。
清流をF1.8の絞り開放で狙いました。前ボケの美しさとソフトさが絶品ですね。また色再現も鮮やかで申し分ありません。柔らかで自然な写りはこのレンズの真骨頂と言えるでしょう。
神社をチョイ絞りで撮りました。キリリとシャープさとコントラストが高まり、濃厚な「K-3 Mark III」の発色と相まって、力強い絵になりました。絞りによる表現のコントロールが楽しいレンズですね。
街中のせせらぎで遊ぶ家族連れをスナップしました。「K-3 Mark III」に装着すると118mm相当となりますが、このような注視したようなカットを撮るのにちょうどいい画角となります。前ボケが優しくうるさくないので、ポートレート撮影でも大いに役立つレンズでしょう。色再現も夕方の雰囲気をしっかりと伝えてくれました。
まとめ
最新のレンズコーティングと円形絞り、そして高品位なレンズ鏡筒を併せ持つ新生「HD Limited」シリーズ。撮って楽しく、カメラに装着して楽しくと、手元にあるだけで写真生活が豊かになるレンズ群になっています。絞りリングも備えているので、デジタルカメラだけでなくフィルムカメラでも楽しめるのも魅力ですね。サイズも軽量コンパクトなので、3本セットでブラブラと撮影散策時に赴くのもオススメです。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。