フィルム一眼レフ PENTAX MZ-5N|シンプル・軽快なスナップ派の一眼レフ
はじめに
今回より数回にわたり私の所有するフィルムカメラをご紹介いたします。第一弾として小型一眼レフカメラの代表格であったPENTAX MZ-5Nをピックアップ。
実はフィルムカメラではコンパクトカメラ以外でAF機能を使ったことがなく、所有していた一眼レフカメラはすべてMFでした。2021年に縁あって写真店さんから新品同様の品を譲っていただいたのがきっかけで、AFフィルム一眼レフとして初めてPENTAX MZ-5Nを手にしました。そうした経緯もあり、ファーストインプレッションとしてお届けします。
小型・軽量35ミリAF一眼レフカメラ PENTAX MZ-5N
このカメラとの出会いはおよそ20年前に遡ります。PENTAX MZ-5N は、ペンタックス株式会社が旭光学株式会社時代であった1995年に発売された、35ミリAF一眼レフカメラMZ-5の後継として、2001年に誕生した一眼レフカメラです。当時、カメラの販売員をしていたことがあり、このPENTAX MZシリーズが飛ぶように売れていたことを記憶しています。ちょっと安っぽさが感じられてしまうボディの作りですが、低コストと軽量化につながっていて人気を博していました。425gと非常に軽量であり、シンプルな操作系とあって、スナップ撮影にフォーカスした設計になっています。
外観は上位機種であったMZ-3と同デザインで、MZ-3の最高速シャッタースピード1/4000秒を1/2000秒にした普及型といえます。ダイヤル操作を基本としたオーソドックスな操作系は、フィルムカメラらしく、上部ダイヤルをパッと見ただけでわかりやすいのが特徴。露光補正ダイヤルは0.5段、ペンタプリズムにはポップアップするTTLストロボ内蔵なので、フラッシュを使った〝エモい写真〟も撮影可能。
背面には、パノラマ途中切替えレバーもあり。パノラマ写真とは、スマホカメラのように横にスライドさせながら撮影するのではなく、フィルム1コマのサイズの中に横長に撮影されます。
ファインダー内表示はTv(シャッター速度)値、Av(絞り)値、マニュアル露出時&露出補正時バーグラフ、露出補正マーク、フォーカス表示、ストロボ情報マーク、メモリーロックマーク、AFフレームとなっており、こちらもシンプルでわかりやすい表示です。
フィルム一眼レフ初心者向けカメラ PENTAX MZ-5N
フィルムをセットし、裏蓋を閉めると内蔵モーターによって自動的に巻き上がります。1コマ目までフィルムが送られ、DX接点付フィルムであればISO感度もオートセットされます。失敗の少ないフィルム装填は、フィルムカメラ初心者でも安心です。
露出補正ダイヤルを回すことによってフィルム1本分を増減感して撮影することもできます。「露出補正の決め方が分からない」というときは、ドライブレバーを1EVステップもしくは1/2 EVステップで3枚連写ブラケット撮影が可能なのでカメラに任せてみるのもよいでしょう。
フィルムでもデジタルでも楽しめるPENTAX Kマウントレンズ
PENTAXのカメラを日頃から愛用しているということもあり、同梱されていたキットレンズの他に、デジタルカメラ用のKマウントのレンズをMZ-5Nに装着して撮影してみることにしました。MFのKマウントレンズでも、現代のデジタル一眼レフ用ペンタックスD-FAレンズも使用可能です。中にはAPS-Cフォーマット用のDAレンズでも使えるものもあります。M42マウントレンズはアダプターを使用することで撮影できます。
こうした面は過去と未来が融合するペンタックスらしい楽しみ方です。当時のAF一眼レフカメラは、既にボディ側での操作が多数派になっていましたが、あえてレンズ側の絞りリングを用いているのも特徴です。
今回撮影に使用したレンズは以下の3本
・smc PENTAX-FA 28-80mm F3.5-5.6 AL
MZ-5Nのキットレンズ。
・HD PENTAX-FA 35mm F2
フィルム一眼レフ用レンズとして長年愛されてきたsmc PENTAX-FA 35mm F2の改良版です。新コーティング採用で描写性能のさらなる向上を実現した現行レンズ。MZ-5Nとの相性抜群です。
・smc PENTAX-DA 70mm F2.4 AL Limited
こちらは絞りリングのないAPS-Cフォーマット用のDAレンズ。現行品はHDコーティングとなっています。画角のケラレがないので使用してみました。
撮影モードの使い方
それぞれのレンズは以下の撮影モードの使い方ができます。
絞りリングのあるレンズ:Aポジション
(1)シャッターダイヤルA位置:プログラムAE(P表示)
(2)シャッターダイヤルでシャッター速度を設定:シャッター速度優先AE:(Tv表示)
絞りリングのあるレンズ: F値任意
(3)シャッターダイヤルA位置:絞り優先AE:(Av表示)
(4)レンズ絞りとシャッター速度を任意に設定:マニュアル露出:(M表示、ファインダー内にバーグラフ表示)
(5)絞りリングのないレンズではプログラムAEとなります。(P表示、ファインダー内に絞り値表示)
レンズ交換しながらの撮影では持ち合わせるレンズによって、その都度頭を切り替えながら使う感じになるので、まずは絞りリングのあるレンズを選び、マニュアル露出で撮影になれるといいですね。
レンズ交換しながらご近所フォトで実写
筆者にとっては、初めてのAFフィルム一眼レフカメラということもあり、ご近所フォトで慣らし運転。どんな写りをしてくれるのか、AFの性能はどうだろうかとドキドキしながら初心者気分で撮影してきました。
キットレンズ smc PENTAX-FA 28-80mm F3.5-5.6 AL
発売当時一般的となってきた標準ズームレンズは、広角から中望遠まで汎用性の高い画角をカバー。最短撮影は50cm。ピントの合焦もなかなかです
望遠端の最短撮影距離ではボケも良好で、左奥には玉ボケもキレイに表現されています。
広角端は絞り込むと非常にカリッとします。
HD PENTAX-FA 35mm F2
隠れスターレンズとも言われているHD PENTAX-FA 35mm F2とはベストコンビで、スナップ撮影に最適。ボディサイズにも相応しく、威圧的にならないのも撮りやすさにつながります。背景までほどよく取り込むことができ最短撮影距離30cmまで近寄れるので室内でも使いやすい一本です。
ご近所さんのお宅にカワイイ赤ちゃんが誕生したので、令和生まれの彼女にとって記念になるといいなと思いフィルムで写真を撮らせていただきました。シャッター音に驚かないか少し心配していましたが、かえって興味津々の様子です。
途中、老婦人に声をかけられて立ち止まったタイミングで、見守るように見つめた視線の先は、奥深い雰囲気が感じられる1枚に。コミュニケーションの温かさがフィルムの風合いによって伝わってきます。
お別れの際にベビーカーをのぞき込んだら私の指をギュッと握ってくれました。麗しい純粋な瞳にジャスピン!カワイイなぁ。
いつか彼女がこの写真を見るとき、今日のことを覚えてなくても、しっかりとフィルムに焼き付けたことをご両親は思い出してくれるでしょう。
smc PENTAX-DA 70mm F2.4 AL Limited
このレンズはAPS-Cフォーマットデジタルカメラ用のレンズですが、とても使いやすい距離感と画角の中望遠レンズとなります。何でもないものを画にしてくれるという感覚で、切り取りの撮影がとても楽しいレンズです。これは意外に感じました。というのも、普段APS-Cフォーマットのカメラで105mmの焦点距離で使用しているからです。こうした感覚の違いは使ってみて実感できるものですね。
最短撮影距離ではフォーカスの迷いが生じることがあるため素早くMF切り替えて撮影するのがコツ。
絞りリングがないレンズのためプログラムAEでの撮影となりますが、最短撮影距離ではほとんど開放F値で前ボケも良好です。単焦点レンズの威力ですね。
おわりに
操作に迷わない使いやすさとPENTAXのKマウントレンズバリエーションで「なんか、いろいろと楽しみがいのあるカメラだ」というのがAF一眼レフカメラPENTAX MZ5 Nのファーストインプレッション。デジタルカメラから逆にフィルムカメラに戻ってみましたが、益々楽しみが広がり、今回撮影しなかったオールドレンズも装着して撮影してみたくなりました。
仕上がりが早く見たい!と思えることも、フィルムカメラの良さを改めて感じられました。まさにフィルム一眼レフカメラ初心者に使ってもらいたいと感じた1台です。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。