フィルムカメラの感覚で楽しむ RICOH GR III&IIIx|横浜フォトウォーク ~ 講評会 ~
はじめに
前回記事『フィルムカメラの感覚で楽しむ|RICOH GR III&IIIx』の更なる学びとなるようにと応募者の方々と一緒に横浜でフォトウォークを行いました。7月初旬のとても暑い日でしたが、皆さん楽しみながらも熱心に撮影頂けたかと思います。GR III&IIIxの「カメラ内RAW現像」を活用してフィルム写真のように仕上げたり、「スナップ距離優先モード」を使い瞬発力を活かした撮影を試して頂きました。
今回はその時に撮影された写真を講評して行きたいと思います。
kazさん
公園のモニュメントを活かし、画面の中心で真っ直ぐシンメトリーに写し込んでいますね。気持ちがいいほど対照的な構図、白×緑色のまとまりもあり、画面全体にバランス感覚の良さを感じる一枚です。クロスプロセスの色によって現実味を感じさせない点もこの写真の面白さに一役買っています。画面手前、あるいはどこかにインパクトのある服装(色)の人物が加わるタイミングを狙うと、より印象的な写真になります。
hiro3691さん
シルクのスカーフと、さらに奥に写り込んだショーウィンドウによって、画面奥まで上手に視線を誘導しています。照明に照らされたシルクからは、上品さと艶ぽっさを感じられ、落ち着いたトーンでまとめたられた色合いは、大人の雰囲気を生み出しています。街中でさり気ない被写体に目を向けられる点も素晴らしいです。美的感覚を活かした作品をこれからも見てみたいと感じました。
グレースさん
まず、油だらけの窓に着目している点がすごいです。ピント合焦面をガラスに合わせたことで、フィルターとしての効果と、背景ボケの効果、両方が活かされています。調理人たちの働く姿、油の飛び散るリアルな現場。過酷さも伝わってくる臨場感がこの写真の大きな魅力です。とっさにシャッターを切った判断力、思い切りの良さも伝わってきました。
leico.さん
手前、暗所のランプを取り入れながらも、画面全体の明暗のバランスがうまく取れています。単純なのぞき構図にならず、アーチ部分の高さを活かした縦長のスマートな構図と、奥行きが感じられる切り取り方です。レンガ調のビルと赤い車のコンビネーション、右側に少しのぞいている木の葉もアクセントとして効いています。ネガフィルム調による、シックな色合いによって港町ヨコハマの雰囲気が感じられる一枚になっています。
そにうめさん
ガラスに写り込んだ背景のおかげで公衆電話機が地面から浮いているかのように見える点がおもしろいです。手前の窓枠を画面に入れたことで、電話ボックスの中に視線が注がれる効果が活かされています。背景の中に人物が写り込むと様々な時代が交錯して、一層おもしろくなりそうです。
また、夕方や雨など、撮影環境が変わるともっと印象的な写真になります。いくつものシーンを想像してしまう可能性のある写真です。
にしやまよしさん
曇天の柔らかい光と、日陰で撮影したことにより、鮮やかな色がしっかりと表現できていて、花びらの質感もリアルに伝わってきます。前ボケを配置したことで、画面中央から奥へと視線が流れていく構図もいいですね。紫色とピンク色という配色も、まとまりがあって落ち着いた印象です。どっしりとした色合いですが、露出補正を明るめにした軽やかな色でも見てみたい写真です。
shu-さん
標識や看板の色がクロスプロセスの色によって強調されたことにより異国情緒があります。なんとなく沖縄のようにも見えるおもしろさがありますね。
曇天による空の白さ、その面積が多くなってしまったため、視線が明るい方へ逃げてしまいます。ここは、横構図よりも縦構図で奥行きを活かしてみましょう。中央に情報を集約してみることで、画面全体の情報整理が出ておもしろ味が増します。
鈴木さん
興味津々に寄ってくる2羽のハトの視線、揃った歩幅がなんだかユニーク。ともすると忘れてしまう純粋な気持ちで、出会いを楽しんでいる視線が感じられる優しい写真です。ネガフィルム調のトーンで緩やかな気持ちが表現されています。
シンプルな構図ですが、周囲に見えるタイルの切替え、段差、小さな花がアクセントになっていて、ハトの存在を強調しています。1つのシーンでもたくさん撮影して動きの面白いタイミングをどんどん狙ってみましょう。
総評とふり返り
当日撮影頂いた中から2枚をご提出頂き、その中の1枚を選んで講評させて頂きました。初めてGR III・IIIxをお使いになる方も多い中、しっかりと丁寧に切り取られた作品が多く、スナップ写真撮影に対しての意欲の高さを感じました。
他の撮影地でもどんな写真を撮られるのか、もっと見てみたいと思わせていただいた作品ばかりで、レベル高いです。
様々な文化や様式の発祥の地である横浜の特徴も見られ、各々が感じた横浜の印象も伝わってきます。
当日短時間で学んでいただいた、イメージコントロールの色使いもしっかりと雰囲気に合わせて選ばれていた点も素晴らしいです。
また、撮影だけではなく、参加者同士のコミュニケーションの良さもとても印象的でした。これからも楽しく学べるフォトウォークが開催できると嬉しいです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。