オールドデジカメ礼賛 第4弾 リコー GXR MOUNT A12

新納翔
オールドデジカメ礼賛 第4弾 リコー GXR MOUNT A12

はじめに

オールドデジカメ礼賛第3弾として、2009年に登場した類を見ないユニット交換式カメラの中からRICOH GXRのGRユニット(GR LENS A12 28mm F2.5)を前回の記事で紹介した。

しかし欠かせないのはやはりこのユニットであろう。2年後の2011年に登場したGXR MOUNT A12(以下MOUNT A12)である。

実にライカらしい、フィルムライカを彷彿とさせる

ただでさえクセのあるカメラなのに、ライカMマウント専用ユニットを作ってしまうとは良い意味で本当にどうかしている。アダプターなしでライカMマウントが装着できるデジタルカメラは、本家を除けばエプソン R-D1、Pixiiシリーズくらいだろう。そういった意味でも貴重なカメラであるが、プアマンズライカとしてではなく、本機にしかない魅力が非常に多い。フラッシュ内蔵というのはMOUNT A12のみである。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

筆者はここ最近Leica M-P(Typ240)を使って作品を撮ってきたが、その経験を踏まえてもMOUNT A12は実にライカっぽいのだ。フィルムライカはM3、4、6を所有してきたが、このMOUNT A12を装着したGXRを街中で撮影していると、どこか手の中にフィルムライカがあるような感覚を覚える。

ファインダーはEVFだし、もちろん二重像合致式でもなければ巻き上げレバーもない。それなのに、もしかしたらM-P(Typ240)よりもライカらしいと感じることがあるのだ。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

これはMOUNT A12というユニットに宿るイデオロギーに依る所なのだろうか、非常に不思議なものだ。そのせいか、ライカが持つ爽快なスナップカメラという側面もうまく継承している。撮っていて非常に心地よい。

現役で使えるデータ

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4
■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

今回掲載している写真は今夏に訪れた宮古島で撮影したものである。レンズは筆者お気に入り、フォクトレンダーのNOKTON classic 40mm F1.4。絞りによって色々な顔を見せてくれるうえに描写も非常に良い。ライカレンズと比べれば非常に安価、コスパ最強レンズだ。

レンズを色々使ってしまうとMOUNT A12単体の差が分かりにくくなるので他のレンズは掲載していないが、往年のズミクロンやLマウントのキヤノン Serenar 50mm F1.8など色々と遊んでいる。

ユニットのセンサーサイズはAPS-C(23.6×15.7mm)とフルサイズではないが、そこが逆に良い。ライカは一眼と違って一瞬の気づきに反応して撮るシーンが多い。まさに身体性が活きるカメラ・・・そういう意味では被写界深度の深さがメリットとなる。フルサイズのほうが良い場面もあるので、ここは使い手の考え方かと思う。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

有効画素数は約1230万画素と今の標準的な値からしたら少なく感じるが、カメラが生成するデータだけでなく現像ソフトといったソフトウェアを総じて最終的に判断するべきだと考える筆者からすれば問題ないレベル。実際A2まで伸ばしてみたが、思った以上に階調性など優れており破綻はない。

目まぐるしく進化するAI技術や、Photoshopのスーパー解像度などを使えばより良好な結果が得られるかもしれないが、普通の使い方ならそのままのデータで十分だろう。あらためて現像ソフトの進化を感じる次第だ。

気持ちの良いノイズ感

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4
■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

写真において重要なのがノイズである。程よいノイズは写真を見る際、無意識に心地よさを与えてくれる。フィルムライクな写真を思い出して頂ければ、結構ノイジーなことに気づくはずだ。

プリントする際はレタッチの最終工程でノイズを追加する作業が最終的な画質の決め手になることも多いが、MOUNT A12はそこがデフォルトで非常にバランスが良い。

フィルム時代の対称型広角レンズ等の使用を考慮して、オンチップマイクロレンズを最適化し、画像周辺部での光量不足、カラーバランス変化を抑えました。

リコー公式サイトより(https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gxr/unit5.html

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

優れた画質の要因として、非デジタル設計のレンズ使用を想定したセンサー作りもあるはずだ。本当に写真が好きな人が作ったカメラ、という想いが伝わってくる。

クセのあるフォーカスアシストだが慣れると・・・

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

マニュアルレンズでのピントサポートとして、ピント合焦部を色で視覚的に示すピーキング機能は昨今のデジカメにはスタンダードなものだ。MOUNT A12はフォーカスアシスト機能としてピーキングに相当するmode1と、画像をモノトーンにしピントがあった部分の輪郭を強調するmode2がある。

このmode2がなかなかどうして秀逸なのだ。最初は色情報が見えず独特すぎて敬遠していたが、開発者の方から力説されて使っているうちに、その優秀さに気がついたのである。今のカメラにも入れてほしいくらいだ。

論より証拠、普段筆者のパソコンデスクに置いてある観葉植物にモデルになってもらい、ピント合わせの様子をGIFアニメにしてみたので見てほしい。

液晶下部に傷が入っているのは使い込んでいる証としてご了承を

途中で液晶中央が拡大されているが、筆者はショートカットを十字キーに割り当てているので薄いピントを追い込みたい時などに使っている。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

シャッターボタンを軽く押せばカラー表示に戻るので不便さは全く無い。大口径レンズの最短距離で開放でもビシッとピントが合う。このユニットがライカらしいと前述したが、このピント合わせの感覚もどこかそう思わせるポイントになっている気がする。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4
■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

換算60mmのレンズで動いているワンコもこの通り、意外と合うのである。

MOUNT A12を使うにあたっては、ぜひ専用EVFファインダーを揃えたいところだ。GXR本体については前回の記事に書いてあるが、こうしてライカ風につかっている中、これはじっくり撮りたいと思いGR LENS A12 50mm F2.5 MACROに付け替えることによって全く違うカメラになる。まさに唯一無二という言葉以外見つからない。

まとめ

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

沖縄は去年訪れた瀬底島といい離島ばかり訪れているが、普段撮っている東京の都市風景とは違い自然の力強さを感じる。

ジャングルのような茂みを10分ほど進んで偶然出た海辺でこのような景色を見つけカメラを構える。なんだか素直な写真行為をしている気がする。大した機能はないが、それゆえに撮る楽しみがダイレクトに感じられるように思う。

MOUNT A12ユニットはレンズとの電子接点がないため、Exifデータに絞り値が記録できないので後々データを見返す時に困ることもあるが、逆に言えば難点は本当それくらいである。

■撮影機材:RICOH GXR MOUNT A12 + Voigtlander NOKTON classic 40mm F1.4

最後に沖縄というせいか海辺を歩いていたら、ふと東松照明先生の「太陽の鉛筆」に出てくるような雲が浮かんでいた。実に写真的カメラだと感じたのだ。

 

 

写真系ポッドキャスト『トーキョー フォットキャスト – TOKYO FOTTO CAST』のご紹介

都市風景を撮ること23年、写真家・新納翔(ニイロショウ)が気になることを深く鋭く突っ込まずに探っていく番組です。週二回定期配信。番組の感想はSNS等気軽にいただけると嬉しいです。
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■写真家:新納翔
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングにて写真集を上梓する。2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として活動をしている。日本写真協会(PSJ)会員。

 

 

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