ペンタックス HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRレビュー|三井公一
PENTAX Limited シリーズ初のズームレンズ
ペンタックスの「Limited」シリーズは個性的なレンズが揃っています。どれも格調高い外装仕上げで、写りも味わいの深い独特の製品ばかりです。
以前の記事では「HD」化された「FA Limited」レンズ3本をご紹介しました。フルサイズ用、APS-C用と明るい単焦点レンズがラインナップされている本シリーズですが、今回は唯一のズームレンズ「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」を、大人気のデジタル一眼レフカメラ「K-3 Mark III」に装着して試してみました。
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」のスペック
まずはこのレンズのスペックを確認してみましょう。
■焦点距離(35ミリ判換算) 20-40mm(30.5-61.5mm)
■開放絞り値 F2.8-4
■最小絞り F22-32
■画角 70°-39°
■レンズ構成 8群9枚
■絞り羽根枚数 9枚
■最短撮影距離 0.28m
■最大撮影倍率 0.20倍
■フィルター径 55mm
■最大径 x 長さ 71 x 68.5 mm
■質量(重さ) 283g
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」は「DA」レンズですのでAPS-C用となります。ですので「K-3 Mark Ⅲ」などに装着すると約30-60mm相当の画角になります。
また、ズーミングによってF値がワイド端でF2.8、テレ端でF4と変化します。ズーム比は2倍となりますが、高倍率でない分、画質が全域に渡って素晴らしい描写になるように設計されているのです。特殊低分散(ED)ガラスと異常低分散ガラスを採用して、画面中央部はもちろん周辺部においても色のにじみが抑えられ、ヌケ感の高い写りを達成しています。
レンズコーティングは従来製品50%以下の低反射を実現した「HD コーティング」です。これにより点光源の逆光がフレーム内に入ってしまうシチュエーションでもフレアやゴーストを抑え、コントラストの高い写真を撮ることが可能になっています。
また絞り羽根は9枚の円形絞りとなっていて、自然で美しい玉ボケを味わうことができます。
オートフォーカスも静かで高速です。「Limited」レンズシリーズで初となる、鏡筒内のDCモーターによるフォーカシング機構を採用。スムーズかつクイックなピント合わせが実現しました。さらに防滴構造なので、荒天などの過酷な環境下でも被写体に迫ることが可能です。これは作品作りにこだわりたいフォトグラファーにとってうれしい性能ですね。安心してフィールドに持ち出すことができるのですから。
美しい外装仕上げ
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」はそのルックスも美しくなっています。往年のレンズ「タクマー」を彷彿とさせるローレット部分や、アルミニウム削り出しのレンズフードとレンズフロントキャップは何とも言えない質感を誇っています。
その手触りも金属ながらどこか柔らかくて手に馴染み、使えば使うほど愛着が湧いてくるのです。撮影に使うだけでなく、カメラに装着して眺めているだけでも楽しくなるレンズだと言えます。まるで工芸品のような佇まいなのです。
スナップ撮影にピッタリ!
2倍というズーム比の「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」ですが、実際に撮影してみて、常用レンズとしてまたスナップショット用として最適だと感じました。
特にキビキビとレスポンスよく撮れる「K-3 Mark III」とのマッチングは良好で、狙った瞬間を撮り逃さずキャプチャーできる感じがしました。美しいローレットも指がかりがよく、デザインだけでなく実用性も備えていました。
なおかつサイレントなオートフォーカスは、一瞬で被写体をファインダースクリーンにピントの合った像を浮かび上がらせてくれました。35mm版換算約30mm〜60mm相当という画角も街中のスナップショットにマッチしており、レンズを扱う悦びとシャッターを切る醍醐味を体感することができました。本当に楽しいレンズに仕上がっています。
実写
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」ワイド端でのカットです。20mmですので35mm版換算で30.5mmとなります。28mmよりちょっと長め、という感じですね。実にシャープで目の覚めるような描写ですね。
こちらは同じ場所からのテレ端でのカットです。40mmですので35mm版換算61.5mmとなります。こちらも実に精細感あふれる描写です。ガラスとメタルのフレームがまるで肉眼で見ているかのように捉えられました。
首都高速をモノクロームで撮影しました。ハイライト部からシャドウ部までの連続感や、路面と壁面の微妙なディテールをこの「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」はしっかりと拾って記録してくれました。メリハリと調和を高い次元で達成しているレンズですね。
このレンズのチョイ絞りでの解像感の高さは素晴らしいですね。高層ビルとその写り込みを狙いましたが、実にシャープでカリッとしています。「Limited」レンズシリーズはどちらかというと柔らかい印象が強いのですが、「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」は現代的な味付けになっています。
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」はレンズ内に手ブレ補正機能を備えません。しかし「K-3 Mark III」の5軸5.5段ボディ内手ぶれ補正機構「SR II」があれば鬼に金棒です。低照度下の撮影でもシャープな写真を撮ることができます。東京駅のドーム内を撮りましたが、精細感がある描写のカットを得られました。鳥よけのネットさえも克明に写しだしました。
20mmから40mmという2倍のズーム比は、文字にしてみるとやや物足りない印象を持つかもしれません。ただ実際に撮影をしてみるとそんなことは感じなくなり、実に使いやすい画角だと思うほどになりました。画角の両端が自然でクセのないものですし、ヒトの日常的な目線に近いからかもしれません。目の前で起こっている事象をすっとカメラを構えて取り込んでいく、という感じなのです。
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」は絞り開放域だと柔らかく、絞り込んでいくと現代的なシャープさを増していくレンズです。ペンタックスの「Limited」レンズは味わい深い描写を持つものが多いですが、このレンズは柔らかさと硬さの両方を、より楽しめるものだと感じます。このカットは横浜でのワンシーンですが、シャープなタイル張りの建物に落ちる、観覧車の柔らかい影がとても雰囲気よく捉えられています。
高い色再現性も「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」の魅力のひとつです。カメラの持つ豊富なカラーモード「カスタムイメージ」との相乗効果で、フォトグラファーの考えているシーンを実現してくれます。このカットは「鮮やか」でのものですが、文字どおりの写りとなりました。
カスタムイメージの「ポップチューン」で夕暮れを撮りました。ヌケ感のあるスカッとした空と、ポップな色合いが目に留まるカットになりました。「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」はこんなシーンでもシャドウ部のディテールを確実に残してくれるので心強いですね。
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」はレトロチックな外観ですが動作は俊敏です。ビルのガラスに写った東京スカイツリーを撮影中、フレーム内に現れたパトロール中の警察官にススッと合焦しました。スナップから風景、人物やペットなどあらゆる被写体を確実に写し止めることができるレンズだと思います。
「HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR」
このレンズは常用できる「Limited」レンズです。2倍のズーム比ながら日常的な画角をカバーし、自然なパースペクティブで目の前のシーンをキャプチャーできる製品だといえるでしょう。上質な写りと高級な佇まいはペンタックスファンなら手元に置いておきたい一本なのではないでしょうか。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。