超薄型・軽量パンケーキレンズ|ペンタックス HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited レビュー
はじめに
前回はスナップレンズの代表的存在、HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limitedのレビューをお届けしました。今回は“パンケーキレンズ”の愛称で親しまれているHD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedのレビューです。35mm判換算で61mm相当という絶妙な焦点距離の使いこなしと描写の特徴をお伝えします。
パンケーキレンズ HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited
HD PENTAX-DA 40mmF2.8Limitedは、前回紹介したHD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited同様、APS-Cフォーマット専用設計となるLimitedレンズ「DA」シリーズの1本です。2013年9月に発売となったロングセラーのレンズで、私自身は2018年頃より愛用しています。
質量は100gを切る約89g、フードを外した全長約15mm、最大径約63mmと、超薄型・軽量化を図った本レンズ。その見た目からも“パンケーキレンズ”として多くのファンに愛され、撮影時の負担を感じる事がない携行性の良さと、シンプルなレンズ構成による単焦点らしいクリアでヌケの良い描写性能を備えています。
HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedの外観デザイン
ユニークなレンズデザインの特徴はフジツボ型フード。多少の雨でも中に水滴が入り込む心配がなく、安心感があります。フード先端の小さなレンズキャップはねじ込み式になっていてかなり小さいため、持ち歩くときは失くさないように気を付けています。そうした面からも、レンズキャップを外したまま持ち歩けるフジツボ型フードに助けられることが多いと感じています。
アルミニウム削り出しの金属質が高品位なデザインは、ペンタックス独自の特殊コーティングによって、ホコリや水滴、油なども付きにくく、美しい仕上がり。レンズ口径は49mm。ペンタックスのレンズには49mm口径が多いので、この点も扱いやすさのひとつです。
正対して撮影しやすい中望遠寄りの標準レンズ
35mm判換算で61mm相当の画角となる中望遠寄りの標準レンズであるHD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited。使い始めた頃、広角レンズを好んで使用している私にとって61mmという画角は、少し使いこなしが必要でした。最短撮影距離も40cmと少々遠い感じもあり、座ったまま手元を撮影するのには向きませんが、テーブルの向かい席に対してはちょうどよい距離となります。
使い慣れて画角の距離感や背景との遠近感がつかめてくると、被写体に対して正対する切り取りが楽しくなっていきます。余計なものを画面に取り込まない引き算の構図が身についていくこのレンズは、自分自身の撮影ポジションで遠近感を工夫し、正対しているときには平行のバランスを保ち、背景との距離で画面に奥行を加えるのがコツです。
HDコーティングによる逆光耐性
逆光などの悪条件下では、フレアーやゴーストの発生をより低減するHDコーティングによって、解像感がありながら少し暖かみを感じる描写が特徴です。ファインダー越しに見た光をそのまま捉えたかのような、ぬくもりのある優しい雰囲気に仕上がります。
高画質・高精細な描写のレンズとは異なり、被写体の質感をストレートに、光と影はより素直で印象的な描写に仕上がるのがHD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited。逆光を怖れることなく、むしろ撮りたいと思わせてくれる上、光の変化を感じながら撮影を楽しむことができます。
開放F2.8のほど良いボケ表現
35mm判で換算61mmの開放F2.8は、大きなボケを楽しむというよりは程よいボケ加減で、画面のアクセントになりながらも、目障りに感じないところが好印象。望遠レンズは持ち合わせていないけど、花やイルミネーションなどのボケを活かした表現を楽しみたいときや、ポートレート撮影時にも開放F2.8のボケを効果的に扱うことができます。
距離感を保ったスナップ撮影に最適
部屋の中でふと目に止まったものや、街を歩きながら気になったものを気軽に、かつ具体的に切ることのできるHD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited。広角レンズでは近づきにくい距離を埋めてくれるという感覚が、61mmという「遠すぎず、近すぎない」不思議な画角なのかもしれません。図らずともサッと、歪むことなく切り取れるのでスナップ撮影も快適に感じられるはずです。
絞り込んだときのパンフォーカスや解像感も気持ちよく、ディテール重視の被写体には切れの良さも感じられ、幅広い表現のできるレンズです。
おわりに
アングルとポジション、寄りと引きを自ら動いて決める。というまさに標準レンズらしさを持つHD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited。初めての単焦点レンズとしても扱いやすいやすいでしょう。
街中や公園などのお散歩スナップ撮影でも、威圧感のない見た目と、ほど良い距離感、柔らかい光の表現や質感描写にいたるまで、このレンズの懐の広さを感じられるはずです。
Limitedレンズの表現力は、PENTAX K-3Mark IIIの画作りによって引き出され、今まで以上に魅力を増しています。
■写真家:こばやしかをる
写ルンです、スマホカメラ~一眼レフまで幅広く指導。デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学んだ経験を活かした、「プリントを通じた講評会がわかりやすく勉強になる」と好評。メーカー講師も勤める。色彩表現に富んだ独特な作風にファンが多い。
写真・カメラ雑誌、WEB等にも執筆・寄稿するなど。デザイン制作・企画、プロデュース、ディレクションまでをフィールドとするクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。