ペンタックス「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」の味わいを愉しむ

三井公一
ペンタックス「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」の味わいを愉しむ

「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」は楽しい!

近ごろはだいぶ日差しが長くなってきましたね。寒さはありますが、明るい時間が長くなってぞんぶんに撮影を楽しめるのがうれしいです。その日差しも冬らしくクリアでとても美しく感じます。こういうときは明るくて見やすい光学ファインダーを持った、デジタル一眼レフで写真を撮りたくなってしまいます。

そこで今回はペンタックスのAPS-C一眼レフ「K-3 Mark III」に銘玉「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」を装着して楽しんでみました。

「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」の特徴

ペンタックスの「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」は歴史のあるレンズです。
「本当の標準レンズ」、「人の目で見たままを写す」を実現するために、35ミリ判フィルムの対角長にあたる「43mm」を採用したという話はとても有名ですよね。また計器測定によるデータだけでなく、人間が本当に心地よいと感じる「描写」を実現するために、官能的な写りを目指したレンズ設計であることも知られています。

その息の長かった前モデルの「smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」に、HDコーティングや円形絞りの採用、前玉に撥水・撥油性、耐擦傷性を備えたSPコーティングを施し、七宝焼のフィンガーポイントを新たに設けたモデルが、今回の「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」となります。

「K-3 Mark III」に装着したたたずまいは実にスタイリッシュ。まるでパンケーキレンズかと思ってしまうその薄さはとてもカッコいいですね。ビルドクオリティも「Limited」レンズらしく良好で、かっちりと作られています。新設された七宝焼のフィンガーポイントもキラリと光り、節度感の高い絞りリングやかぶせ式レンズキャップも写欲を高めてくれます。

「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」でブラブラ実写スナップ!

新春の日差しが美しい都内を「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」でブラブラ撮影を楽しんでみましょう。使用したカメラは「K-3 Mark III」ですので、35ミリ判換算値は66mm相当となります。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/250秒 f/4 -1.3EV ISO200

とある庭園を訪れました。午後の暖かな日差しが降り注ぐ様子をチョイ絞りで撮影しましたが、ピント面のシャープさと周辺の優しいボケ感の同居がいいですね。石畳の立体感も良好です。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/125秒 f/1.9 -0.7EV ISO100

このレンズの絞り開放はまさに官能的な写りを見せてくれます。書庫の書籍を撮りましたが、まるで溶けていくような後ボケが実にお見事!スナップだけでなくポートレート撮影でもその力を見せてくれることでしょう。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/500秒 f/1.9 -2EV ISO200

お庭にあった水琴窟の音色を楽しんでみました。地中にある空間に落ちた水滴の音が反響して、それは見事な響きでした。水をかけた部分の浮き出るような描写と、周囲の石が濡れている感じが気に入りました。このようなしっとり感がある被写体をこのレンズは雰囲気満点に写しとってくれますね。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/80秒 f/1.9 -0.3EV ISO320

「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」は前ボケもとてもいい感じです。歴史ある調度品の鍵穴にフォーカスしたカットですが、大きくて優しくガウスをかけたような豊かなボケが魅力的です。周辺光量落ちも写真の中心に目を誘導するのに効果的に働いていますね。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/1250秒 f/1.9 -1EV ISO200

池を泳ぐコイたち。その水面の波紋を「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」はムーディーに写しとってくれました。その紋様とボケ感のハーモニーが静謐な光景をより印象的なものに昇華してくれました。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/5000秒 f/2.8 -1.7EV ISO200

もちろん絞っての写りも現代的で好ましいものです。工事現場に置かれていた椅子とタンクを撮ったものですが、それぞれの素材感が伝わってくるようなリアルな描写がいいですね。「カスタムイメージ」で遊ぶのもいいでしょう。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/640秒 f/1.9 -2EV ISO200

竹林でのカットです。このような竹がいくつも重なるような場所では「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」の威力が実感できます。手前、そして奥の竹が美しくボケているのがおわかりいただけるでしょう。また奥の丸ボケにも注目です。真円に近いほのかな光芒が美しいですね。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/500秒 f/1.9 +0.3EV ISO100

鏡割りをしたお餅に迫りました。このカットも「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」の特徴がよく出ていますね。ピントの合ったかけらは凜としていますが、その周囲のかけらは大きくスムーズに、肉眼で見たような感じにボケています。さすが「Limited」レンズですね。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/100秒 f/5.6 ISO100

F5.6まで絞るとカリッとした描写が楽しめます。木目と切断面がまるでマクロレンズで撮影したかのようなシャープさで捉えられています。色再現も忠実で自然な印象を受けます。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/125秒 f/4 ISO200

停車中の消防車を撮りましたが「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」のヌケ感はスゴいですね。「HDコーティング」の良さを実感できました。車体の金属感がとてもよく伝わってきます。また発色も良好で目が覚めるような赤がキレイですね。細部の描写もよく、ルームミラーについているドライブレコーダーのメーカー名まで読み取れます。

■撮影機材:ペンタックス K-3 Mark III + HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
■撮影環境:1/80秒 f/1.9 ISO500

夕暮れをF1.9の絞り開放で撮りました。このレンズは遠景の描写も素晴らしいものですね。富士山のシルエットはもちろん、送電線の細かい部分までしっかりと描ききっているのがわかります。空の美しいグラデーションも見事で、クリアな冬空を狙ったとおりに撮影できました。

「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」のスペック

焦点距離:43mm 35ミリ判換算値 66mm相当(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
開放絞り:F1.9
最小絞り:F22
レンズ構成:6群7枚
画角:(対角)53°(ペンタックス 35ミリフルサイズ一眼レフカメラ装着時)36.5°(ペンタックス APS-Cサイズ一眼レフカメラ装着時)
最短撮影距離:0.45m
最大撮影倍率:0.12倍
フィルター径:49mm
光量調節方式:完全自動絞り
絞り羽根枚数:8枚円形絞り (43mm:F1.9-F3.5)
絞りリング:あり
レンズフード:MH-RG49 (付属)
最大径 x 長さ:約64mm x 約27mm
質量(重さ):約155g(フード付:約163g)

まとめ

小さいレンズながら、明るくてとても雰囲気のある写真を撮影できる「HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」は、ペンタックスユーザーなら手元に置いておきたい一本だと言えるでしょう。まるでパンケーキレンズのようなたたずまいは、常用レンズとしてカメラに装着しっぱなしでも携帯性抜群です。絞りを開けてスムーズなボケとソフトな描写を楽しむもよし、チョイと絞って現代的なシャープさとヌケ感を堪能するのもいいでしょう。スナップからポートレート、ちょっとした風景撮影まで「Limited」レンズの奥深さを実感できる銘玉です。

 

 

■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。

 

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