モノクロのススメ vol.2「モノクロになれる」|佐々木啓太
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はじめに
モノクロのススメvol.2は、デジタルらしいエフェクト機能を使ってモノクロに慣れるための解説をしていきます。
何事も理屈はどうあれ、慣れることは大事です。そして、デジタルカメラにはそんなモノクロに慣れるのに最適なエフェクト機能があります。その機能はカメラメーカー各社で名称が違うので、今回の記事ではエフェクトで統一します。
使用するカメラとレンズ
カメラ:リコー GR III / GR IIIx
オススメはコントラストが強くなるエフェクト
今更、デジタルカメラのエフェクト機能が邪道という話もないと思います。そんなエフェクト機能をデジタルカメラで最初に積極的に展開していたのは実はペンタックスです。撮影後に使えるものから撮影時に使えるものと、その種類も豊富です。それが一眼レフだったということもあって、デジタルカメラのエフェクト機能が広く認知されるようになったのはオリンパスの初代ミラーレス一眼E-P1からだと思います。
その中でもラフモノクロームという、コントラストが強くてザラツキのあるモノクロ系のエフェクトが人気がありました。当時、私も使っていましたが、こんなに簡単にモノクロ写真が撮れて良いの?そんな思いをするぐらい使いやすかったのを覚えています。
ハイコントラスト白黒とハードモノトーン
今回はリコー GR IIIシリーズを使って、ハイコントラスト白黒とハードモノトーンで紹介します。たまにこの2つのエフェクトの違いについて聞かれますが、私自身も混乱することがあります。共通しているのは黒に締まりがあって、メリハリのあるモノクロ写真になりやすいことです。モノクロ写真で大切な黒の締まりをエフェクトが作ってくれるのでかなり楽ができます。
vol.1の「モノクロは引き算」で紹介した”画面の中の要素を引き算”することもエフェクトが勝手にやってくれます。
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■撮影環境:ハイコントラスト白黒 シャッタースピード1/800秒 絞り F5.6 露出補正-1.0EV ISO感度 AUTO WB AWB
階段下から見上げた風景。コントラストの強さで光の反射が強調されているのでスッキリしています。
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■撮影環境:ハードモノトーン シャッタースピード 1/800秒 絞り F5.6 露出補正-0.3EV ISO感度 AUTO WB AWB
晴れた青空が真っ黒に落ちて白い建物はさらに白さが際立っています。そんな擬似赤外的な写真を楽しめます。
使い分け
今回紹介するハイコントラスト白黒とハードモノトーンの簡単な使い分けを紹介します。基本的に晴れている日はどちらを使っても良いと思います。ただし、コントラストが強すぎる条件ではハイコントラスト白黒は逆に難しくなることがあります。反対に曇天ではハードモノトーンが物足りなく感じることがあります。そんな感じで天気や撮影条件で使い分けるのも良いと思います。
ほぼ同じタイミングでエフェクト機能だけを切り替えてプログラムオートで撮影した写真ですが、シャッタースピードだけが微妙に変わっています。この日の天気は曇り空でした。Aのハイコントラスト白黒は黒の締まりが良くコントラストもしっかりしています。Bのハードモノトーンはそれと比較するとちょっと締まりやコントラストが弱く感じます。実際は曇天で撮影している写真としては十分ではあります。それでもパッと見た目の印象が強いのは左です。そんな印象が強くなるエフェクトを使ってモノクロに慣れてください。
ハイコントラスト白黒の写真
もう少しハイコントラスト白黒の写真を見ていきましょう。他のカメラでもこんな感じでコントラストが強くなるモノクロ系のエフェクトは多くあります。今回はGR IIIシリーズの機能を使って解説していますが、同シリーズでなければいけないことはありません。元々は別のカメラで感じていたイメージの解説にちょうど良かったというのが今回使っている主な理由で、ご自身のカメラでもコントラストの強くなるエフェクトを使って試してください。基本的な考え方は同じです。
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■撮影環境:ハイコントラスト白黒 シャッタースピード1/100秒 絞り F2.8 露出補正-0.3EV ISO感度 AUTO WB AWB
コントラストの強い設定を使うときは、暗部がつぶれる(黒い部分が真っ黒になること)や構図の水平垂直など細かいことを気にしすぎないで大胆になった方が良いです。
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■撮影環境:ハイコントラスト白黒 シャッタースピード1/125秒 絞り F2.8 露出補正-0.7EV ISO感度 AUTO WB AWB
コントラストが強くなるので水草の微妙な色みの違いがコントラストの変化で強調されます。
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■撮影環境:ハイコントラスト白黒 シャッタースピード1/200秒 絞り F4.0 露出補正-0.7EV ISO感度 AUTO WB AWB
なにげないシーンで空間が空きすぎていても黒い部分がしっかり黒く、白い部分がより白くなるのでインパクトが上がります。
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■撮影環境:ハイコントラスト白黒 シャッタースピード1/320秒 絞り F4.5 露出補正0EV ISO感度 AUTO WB AWB
曇天でコントラストがつかずモノクロらしさにかけるときに助けてくれるのがこのエフェクトの良さで、雲の質感も程よい再現になります。
コントラストがかなり強くなるエフェクトを使うと、それだけで絵作りをしてくれるのでモノクロ写真が上手くなった気分になれます。そんなふうに形から入っていくのも慣れるのに良い方法です。
ハードモノトーンの写真
はじめにハイコントラスト白黒との違いがわからなくなる、そんなことを書きましたが、晴天の日に使うならハードモノトーンがオススメです。ちょっと違うトーンを楽しめるからです。それを擬似赤外と表現しました。赤外写真とは赤外線領域に感度を持った特殊なフィルムを使った撮影のことです。デジタルカメラは基本的にはIRカットフィルターという赤外光をカットするフィルターが撮像センサーの前についているので、厳密には改造しないと赤外写真は撮れませんが、晴天時にハードモノトーンを使うと赤外っぽい写真になります。
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■撮影環境:ハードモノトーン シャッタースピード1/1000秒 絞り F5.6 露出補正0EV ISO感度 AUTO WB AWB
青空は真っ黒に潰れたように再現されて、建物などを強調する力がさらに強くなります。
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■撮影環境:ハードモノトーン シャッタースピード1/320秒 絞り F4.5 露出補正+0.3EV ISO感度 AUTO WB AWB
動物園での一コマですが、擬似赤外の効果が入ると緑色の葉っぱが白くなるのでちょっと不思議な雰囲気になります。
実はハードモノトーンのトーンはとても独特で、コントラストが強いようで最後は粘っている感じになります。これはなかなか後処理でも再現しづらいですし、他のカメラでもあまりない処理なので、チャンスがあれば使ってみてください。
まとめ
最後はやっぱりGR IIIシリーズが必要かも?そんな終わり方になっていますが、まずは手持ちのカメラにコントラストが強くなるデジタルエフェクト機能がないか確認してください。それが見つからないときはモノクロやモノトーンの設定でコントラストができるだけ強くなるように詳細設定を変更してください。そんな感じでまずはモノクロで撮ることから始めると、いつの間にかモノクロの方が楽しくなる。そんな日がきます。
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」という
フィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。