モノクロのススメ vol.6 「やっぱりフルサイズ、一度はモノクロ専用機」|佐々木啓太
はじめに
モノクロのススメ vol.6 はフルサイズとモノクロ専用機で変わるトーンの話です。トーンの話が続きますが、それがモノクロ写真の楽しみでもあります。「vol.2 モノクロになれる」で紹介した強さを感じるモノクロも良いですが、モノクロにはフィルム時代からトーンの使い方で様々な表現があります。この連載を通じてそんなトーンの違いがあることを知っていただければと思っています。
モノクロ写真に慣れるために「vol.3 光を使いこなす」「vol.4 露出補正を決める」も参考にしてみてください。
使用するカメラとレンズ
カメラ:PENTAX K-1 Mark II / PENTAX K-3 Mark III Monochrome
レンズ:smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited / smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited / HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited / HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited / HD PENTAX-DA 70mmF2.4 Limited / HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited
フルサイズの余裕が作るトーン
デジタルモノクロは様々なメーカーさんのシステムで経験しましたが、ひとつの結論だと感じたのは、トーンを表現するためにはデータの余裕が必要ということでした。その最初の答えがフルサイズです。フルサイズはひとつひとつのセンサーが大きく光を受ける力に余裕があります。その余裕がトーンに影響します。
データに余裕があると再現できるトーンの幅が広がります。その広がりを使うためにフルサイズを選びました。
ヌルッとした黒
デジタルモノクロでペンタックスをメインにした大きな理由が、このヌルッとした黒(トーンの中に粘りを感じる黒)のトーンです。それまではカッチリ、スッキリした黒というのがデジタルモノクロの特徴だと思っていたので、このヌルッとした黒を知ったときは、モノクロフィルム時代のトーンを思い出して嬉しくなりました。これを初めて知ったのはAPS-Cサイズの K-S2(本格的にPENTAXを使い始めた最初のカメラ)を使ったときでした。その後 K-1 を使ってその衝撃はさらに大きくなり離れられなくなりました。今回使っている K-1 Mark II でもヌルッとした黒が表現できます。
デジタルで難しいのはゆるくすることです。ゆるさを出すときはカメラのセンサーだけでなく、画像処理やレンズ描写の味わいも大事です。それらのトータルバランスがいいとヌルッとした黒が狙えるようになります。
モノクロ専用機は別次元
モノクロ専用機といえばライカモノクロームが有名ですが、私が使っているのはペンタックスです。それでも同じボディー(センサーは別物)を使っている、カラーが撮れるカメラより少しお高いです。正直なところ、このカメラの発表当初はフルサイズカメラのトーンに満足していたのでそれほど興味はなかったのですが、使い始めるとフルサイズとは違うしっとりしたトーンに惹かれて虜になりました。
ここでは4本のレンズを紹介しています。このカメラにはこの1本と決められないレンズの個性が、トーンの違いに影響するからです。モノクロ専用機ならではの余裕がその個性をさらに引き出してくれます。
PENTAX K-3 Mark III Monochrome の解説
PENTAX K-3 Mark III Monochrome について少し解説すると、このカメラはモノクロ専用センサーを使っているので、WBやコントラスト調整用の色フィルターの設定はありません。さらにスタンダードという中間の設定でもかなりゆるいトーンになります。はじめて使ったときはあまりのゆるさにメリハリが弱すぎると感じたぐらいでした(笑)。
以前の記事「モノクロ力がアップするシステム」も参考にしてください。
コントラスト調整用フィルター
普通のデジタルカメラ(カラーが撮れる)のモノトーンやモノクロの設定には、コントラスト調整用の色フィルターの詳細設定があります。(メーカーによって名称の違いやその設定がない場合もあります)代表的なのはイエロー、オレンジ、レッドで、イエロー、オレンジ、レッドの順で少しずつコントラストが強くなります。このモノクロ撮影で使うコントラスト調整用フィルターはフィルム時代からあって、私はフィルム時代にコントラストが少し強くなるイエローを愛用していました。
まとめ
強い表現の方がわかりやすい。それは確かに正論です。そして、それはフィルム時代から変わらない真理でもあります。それでも私はフィルム時代からちょっとゆるさを感じるトーンが好きで、そのゆるさの中でも締まりを感じる黒の中の黒という世界を追い求めてきました。この黒の中の黒に通じるのが、今回出てきたヌルッとした黒です。デジタルはフィルム時代以上に強さを出しやすくなって、こんなマニアックなトーンの話を聞くことは少ないとは思います。しかし、そんなマニアックな世界があることが、モノクロがこれだけ長く続いている証拠だと思っています。
モノクロ撮影でのフォトウォーク開催のお知らせ
カメラのキタムラ写真教室で「モノクロ街角写真グループ」がはじまります。まずはフォトウォークを通じて佐々木啓太と一緒に実践でモノクロ写真に必要な光を得るためのアングルを体験してください。
11月16日(土)モノクロ街角写真グループ 雑司が谷
https://www.npopcc.jp/classroom/detail/?id=7143&category_id=15
12月7日(土)モノクロ街角写真グループ 代官山
https://www.npopcc.jp/classroom/detail/?id=7298&category_id=15
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」という
フィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。