ペンタックス K-3 Mark IIIレビュー|ポートレートスナップで実感する魅力
はじめに
様々な被写体に対応し、どんなシーンでも撮影が楽しめるAPS-Cフラッグシップ機PENTAX K-3 Mark IIIで、今回はポートレートスナップの撮影を行いました。
画像処理エンジンPRIME VとアクセラレーターユニットIIによる画質の向上、上質な写真の仕上がりはもとより、ポートレート撮影で活用したいカメラ機能と、撮影に相応しい3本のレンズの特徴を活かしてレビューをお届けします。
ポートレート撮影に選びたいレンズ
まずは、ポートレートを撮影するにあたり、どんな焦点距離のレンズを使うかを考え、次の3本を選びました。
この3本のレンズは、小型ボディのK-3 Mark IIIに対して大げさにならないサイズであり、モデルさんと適切な距離でコミュニケーションが取れる上、見た目にも威圧感がないため、ポートレート撮影に適しています。
また、重量は3本合わせても800g以下。一度に持ち歩ける機動性の良さと、撮影頻度の高い画角をカバーできるという点もメリットです。
レンジの広い表現ができるK-3 Mark III
ポートレート撮影においても画像処理エンジンPRIME VとアクセラレーターユニットIIによるダイナミックレンジの広さを実感しながら撮影が楽しめます。
顔に直接光が当たる場所での撮影では、ハイライトの白トビが気になりますが、カメラ側のハイライト補正機能を「オン」にして、カスタムイメージの設定でコントラスト明部(ハイライト)をマイナスにしておくことで白トビを回避。
自然光が降り注ぐ明るい場所での撮影でも、白い服や肌、背景の窓越しの光も白トビすることなく、透明感のある柔らかい印象に仕上げることができます。
影を活かしたコントラストの強い撮影も行いました。明暗差のあるシーンでもシャドー部である髪の毛の黒つぶれがなく、肌のハイライトもキリっと写し出しています。
使いこなしたい肌色補正機能
ポートレート撮影でぜひ使いたいのが肌色補正機能です。Type1、2と2種類あり、Type2では滑らかな肌の調子やハイライトのツヤ感、ほんのり色づく頬の赤味、柔らかいシャドーなど良質な効果が得られます。モデルさんの肌トラブルも気にならない程度まで調子を整えて補正してくれるので、女性としては嬉しい仕上がりに。カメラマンとしても、ここまでの画がJPEGで仕上がればレタッチもほとんど手間いらずになり、作業軽減できるのでとてもありがたい機能です。
ポートレート撮影がメインであれば、ユーザーモード設定にこの肌色補正機能を含め、AFモード、連写、カスタムイメージ等を設定しておくことで、自分好みの仕上がりですぐに撮影に入ることができます。
カスタムイメージは「人物」に決め込まず好みで調整
筆者は、カスタムイメージ「人物」で撮影するとM(マゼンタ)が強く仕上がると感じており、そこに肌色補正を加えてしまうとさらに赤ら顔になってしまうので、「ほのか」をメインに使用しています。彩度をプラスにして、調色C(シアン)、コントラストとファインシャープネスもプラスに設定。赤味を抑えるだけでなく、ハイライトとシャドーのメリハリを付け、髪の毛やまつ毛などの細部のシャープネスを維持できるので、優しい雰囲気の中に芯のある画作りができます。
また、smc PENTAX-DA☆55mmF1.4 SDMの開放F値による切れの良いピント、肌のツヤも美しく、滑らかなボケによってレンズでも優しい雰囲気で写し出せました。
次のシーンではカスタムイメージ「クロスプロセス」でアンティークレトロなイメージに仕上げました。再現性を求めないカスタムイメージこそ雰囲気ある表現が可能です。
HD PENTAX-DA 70mmF2.4 Limitedを使い、モデルさんとの距離を3m程とって前ボケを活かしました。被写体を引き寄せる圧縮効果も効いて画面全体がスッと整う心地良さと、カリッとしすぎず角の取れたような柔らかい描写がポートレートにピッタリです。
頼れる動体連写撮影と手ぶれ補正
天候や時間帯が変化し、シャッタースピードが1/60秒を下回る速度になっても5.5段分の手ぶれ補正機構「SRII」の効果が得られ、タイミングを逃さずぶれを抑えた撮影ができるのは心強いです。
微細に動くモデルさんの表情、目線の動きなどのタイミングを狙っていたところに車がすり抜けていきました。流し撮りのような効果です。K-3 Mark IIIでは撮影シーンに応じて「オート/流し撮り/オフ」と切替え可能となっており、初期設定の「オート」のままでも流し撮りに対応してくれます。
自然な動作の中でベストショットを狙うなら、やはり連写機能が欠かせません。連続撮影(H/最高約12 コマ/秒)にセットしておき、自由に動いてもらうことで自然な表情を捉えることができる上、躍動感ある表現ができます。ここでは振り向いた瞬間をキャッチしたことでスカートがぶれて画面に動きが出せました。
モデルとの距離が縮まるHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR
他の2本の単焦点レンズと異なり、ズームレンズであるHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRは、友だちやパートナーと出かけて「スナップもポートレートも楽しみたい!」という要望に応えてくれるレンズです。広角から中望遠までをカバーできるので、ポートレート撮影を目的に出かけなくても活躍してくれます。背景まで写し込むしっかりとした描写と、どの焦点距離でも肉眼に近い自然な見え方をしてくれるのが特徴です。
K-3 Mark IIIと合せてもコンパクトな組み合わせで、ズームしてもレンズの全長はほとんど変わらないのでモデルさんに威圧感を与えることがないのもこのレンズの魅力となっています。
レンズの望遠端である40mm(35mm換算61.5mm)はポートレート撮影で使いやすい中望遠となるので、単焦点レンズの感覚で使うのがおすすめ。
程よい距離感をとり、あえてファインダーをのぞかずにライブビューで顔認識機能を使えば会話を楽しみながら撮影することも可能なので、自然な表情を狙うことができます。
最短撮影距離28cmであり、寄り引きができるので親しい関係なら思い切って距離をグッと縮めれば繊細なまつ毛先端のリアルな質感まで捉えることができます。
高感度ISOでの夜間・室内撮影
夜間・室内でのポートレートでは高感度ISOを避けるためストロボを使うことが多いですが、K-3 Mark IIIならそんなシーンでもストロボなしで難なくクリア。少しでもシャッタースピードを稼ぐために感度を上げても画質への影響がほとんどなく、単焦点レンズとの組み合わせならストロボなしでも十分な画質が得られます。
ここでは室内の人工光の中であえて高感度で明るめに撮影をしています。ISO 6400でも人肌の質感が保てるのであれば、手ぶれやノイズを気にせずに迷わず感度を上げて撮影をしたいものです。
最後にストロボの代わりに小さなビデオライトを取り付けてシンクロ撮影をしてみました。ほんの一瞬ライトを当てるだけで簡単に撮影ができます。HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRのワイド端20mmを使うことで、薄暮の空と街の雰囲気と共に背景を広く取り入れました。ビデオライトによる効果で肌のツヤっぽさもあり、都会的な印象が強まりました。
おわりに
ロケーションや時間帯・天候など環境変化にも対応できる様々な機能と、暗所での高感度撮影による描写力の高さ、上質な仕上がりはK-3 Mark IIIならでは。ボディ側の機能とレンズの組み合わせによって今まで以上にポートレート撮影がしやすく、表現域が広がると感じました。
K-3 Mark IIIには多様なシーンに応じた撮影しやすい設定を探る楽しさがあるので、自分らしく、また使い勝手の良い設定を見つけて身近な環境でもポートレートスナップをどんどん楽しみたいものです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
「K-3 Mark III」はこちらの記事でも紹介されています
■ペンタックス K-3 Mark III レビュー|オールドレンズとカスタムイメージでフィルムライクな写真を味わう
https://www.kitamura.jp/shasha/ricoh/k-3-mark-iii-4-20210424/
■ペンタックス K-3 Mark IIIレビュー|待望のAPS-C一眼レフ フラッグシップ機が遂に登場!
https://www.kitamura.jp/shasha/ricoh/k-3-mark-iii-5-20210401/
■ペンタックス K-3 Mark III レビュー|スナップ撮影を楽しむ
https://www.kitamura.jp/shasha/ricoh/k-3-mark-iii-3-20210505/