ペンタックス K-3 Mark IIIレビュー|待望のAPS-C一眼レフ フラッグシップ機が遂に登場!
はじめに
PENTAX(ペンタックス)ブランドのAPS-C一眼レフ フラッグシップ機K-3 Mark IIIがいよいよ登場します。2019年に開催されたPENTAX 100周年記念イベントでの開発発表より早1年半が経ち、今か、今かと待ちわびたファンも少なくないはず。CP+2021もオンライン開催であったため実際に機材に触れることができなかったこともあり、「待ちに待った!」と私も声をあげて喜びたいほど期待度の高いK-3 Mark III。多機能、高性能な本機で撮影した感触をいち早く皆さんにお届けしたいと思います。
外観「操作ボタン・ダイヤルと秀逸なグリップ」
メーカーの開発発表やリリースなどで既にご存じの方も多いと思いますが、実際に手にしてみると、その見た目と佇まいにやる気と男らしさを感じます。サイズ感も程よく、ボディサイズは前代のK-3 IIとほぼ同等のサイズになり、機能を凝縮した上でこの小型サイズは、取り回しの良さと機動力を両立しています。
レンズ接続部側面にSRボタン、RAWボタン、フォーカス切替レバーに加えAFモードボタンが装備されました。AFモードボタンを押しながら後電子ダイヤルを回すことでAFエリア選択が可能に。また、背面にあるボタンも含めボディ外側にある10個のFxボタンには、29の機能から撮影者の使いやすい仕様に割り当てることもできます。
上から見るとアイカップが背面に飛び出していますが、このことによりファインダー内を深くのぞき込む感覚が得られ、まるで部屋の中から外を見ているような明るさです。ファインダー視野率はフルサイズ機に匹敵する約1.05倍。自分だけが見つめる視野を的確に切り取ることを可能にしています。一眼レフのパイオニアとして「ファインダーを覗いて撮る」という当たり前である行為にこだわりを感じます。
本体のみで約735g(バッテリー、SDカードを含むと約820g)の質量となりますが、グリップのホールド感の良さが重量を感じさせません。このグリップの形とホールド感については様々な人の手形をサンプリングし、1/100mmという単位で調整しながら評価を行い、握りやすさを追求しているとのこと。撮影に集中できる握り心地と共に、ボタンやダイヤルの操作感の良さは撮影にストレスを感じさせません。前傾しているシャッターボタン位置も、人差し指が自然にポジショニングされる角度でフィットし、軽く押し込むだけで写せるシャッターフィーリングが心地よく、撮影することの楽しみを感じられます。
SDカードスロットは2つ。バッテリーは、従来機種と互換性のある充電式リチウムイオンバッテリーD-LI90Pを採用。充電式バッテリーへの充電のほか、USB Type-Cケーブルからカメラ本体への電源供給(専用ACアダプター使用)も可能となっています。
大幅に変更されたユーザーインターフェイス
カメラの機能を操作する入口となっているユーザーインターフェイスが大幅に変更されました。
MENUボタンから入るとGRIIIに似たデザインと仕様になっています。設定操作は十字キーあるいはタッチパネルで直感的な操作が可能。“従来通り”ではなく、機能・操作も含め“新しいカメラ”であることをまずは実感するはずです。
スマートファンクションボタン・ダイヤルのカスタマイズ
K-1/KPで搭載しているスマートファンクションが一新され、スマートファンクションボタン(S.Fnボタン)とスマートファンクションダイヤル(S.Fnダイヤル)で構成されています。シャッターボタンと連動するような指の動きで操作できるのが特徴的です。
S.Fnへの機能の割り当ては、MENUのC(カスタマイズ)画面から。撮影者の好みで最大5つの機能を設定できます。選択している機能はファインダー内にも点滅表示されます。
筆者の場合、S.Fnボタンには外部ボタンに設定されていないAF設定を、またKPでの操作の慣れもあり露出補正もS.Fnダイヤルで操作できるように割り当て、測光モードも加えています。こうしてMENUに入り込まなくてもすぐ使いたい機能が操作できるS.FnボタンとS.Fnダイヤルは、撮影スタイルや被写体に合わせカスタマイズし、自分のカメラにしていくプロセスを楽しむところにPENTAXらしさを感じられます。
最高ISO感度1600000とパフォーマンスの高い連写性能
裏面照射型センサーに加え、新たに開発された画像処理エンジンPRIME VとアクセラレーターユニットIIにより実現可能となった最高ISO感度1600000という驚異的な数値。高感度性能が高まったことによりISO3200は常用感度となり、明暗差のあるシーンでもシャドーノイズや潰れはほとんど見られず、しっかりと写し込めます。
連続撮影(H / 最高約12 コマ/秒)では軽快なシャッターに快感を覚えます。高感度ISO25600で連写撮影を行いましたが、被写体の描写は自然でノイズだけが浮き立つようなことはなく、また画面周囲の暗部までしっかりと写し込めています。カラーノイズの発生を抑える優れた画像処理はこうしたコントラストの高いシーンで感じられることでしょう。
連写撮影重視なら転送速度の早いSDXC・UHS-I規格のSDカードを使用するのがベスト。書き込みするときにもスムーズで、PCへの転送速度も早く快適に作業ができます。
5軸5.5段の手ぶれ補正も抜群
センサーシフト方式ボディ内手ぶれ補正は5軸 5.5段分の補正効果で、撮影シーンに応じて「オート/流し撮り/オフ」と切替えが可能。重量のある本機には必要不可欠であり、普段三脚を持ち歩かない撮影スタイルの筆者にとっても心強い機能です。
柵にカメラを固定し、メリーゴーランドの光跡を捉えてみました。長秒撮影時も手ぶれ補正機能により三脚を使用できない場所での撮影にも効果を発揮します。
また、街中のスナップ撮影でも手ぶれ補正は優位な機能。一般的に手ぶれ補正は望遠レンズで効果が発揮されるものと思われていますが、実は広角・標準域でもブレと認識が難しい程度の微ブレは起こしやすいもの。
ここでは、画面奥にピントを置き、手前を通行する人をブラすように表現しています。こんなシーンにも手ぶれ補正は有効。ナイトスナップや室内撮影などでもしっかりブレを押さえ込んで写すことができる手ぶれ補正と高感度によって、撮影領域とともに表現域がグッと広がります。
階調表現豊かになったカスタムイメージ
色の美しさに定評があり、フィルムを交換する感覚で画づくりを変えられるカスタムイメージは13種。画像処理エンジンPRIME VとアクセラレーターユニットIIは、複雑な画像処理を高速に行うだけでなく、解像性能や画作りに大きく影響しています。
筆者が撮影時、一番に感じ得たことは質感描写へのこだわりと階調表現の良さです。好んで使用しているカスタムイメージ「ポップチューン」は比較的トーンジャンプや色飽和を起こしやすい彩度の高い色ですが、色の繋がりがよく階調が美しく滑らかになっています。
人工的な色、コントラストの強い光源も合焦点の切れ味のある描写と共に、ボケの馴染み方も滑らか。画質設計で大切にしていることの1つに、ISO感度が変化した時に画作りが大きく変化しないようにしているという開発者の意図を実感。APS-C一眼レフでありながらフルサイズのような描写力を発揮します。
その階調表現についてはモノトーンでも明らかで、質感を損なうことのないハイライトの際立ちとシャドーの引き締まり、またグレーの階調の繋がりには深みと奥行き感があります。
さらに、カスタムイメージのパラメーターを調整することで画像処理ソフトに頼ることなく、今までよりも一層イメージに近い仕上がりを創り出すことができます。
カメラ内RAW現像機能がパワーアップし益々充実
既存のPENTAXユーザーはご存知のことと思いますが、カスタムイメージには自分好みの色を創り出せる楽しみがあります。そのために不可欠な機能であるカメラ内RAW現像。今回のカメラ内RAW現像はカスタムイメージのパラメーター調整はもちろんのこと、さらにデジタルフィルターをかけてアーティスティックな表現が可能に。
従来機種では設定で決めておいたデジタルフィルターをかけることができましたが、今回は、デジタルフィルターも同時に選びながら調整し付加することができ、また、その効果をプレビュー表示させながら最終決定することができるのでより一層クリエイティブな表現を楽しむことができます。
上記の方法で水族館をアートな世界にしてみました。ペンギンの泳ぐ水槽は人工的な印象が強く、見たままのイメージだと面白味を感じませんが、カスタムイメージの変更に加え、デジタルフィルターによってイメージの大きく異なる写真となりました。
次にカスタムイメージをモノトーンの冷黒調(クールトーン)にし、光源が明るいものに効果的なソフトフィルターを使用してみました。水族館でありながら、プラネタリウムのようなイメージに仕上がっています。
肌色補正、明瞭度補正、シャドー補正、などの従来通りの調整機能はもちろん、写真にメリハリを付けながらデジタルフィルターも加えることで表現域を広げられ、アーティスティックな写真を創り出せるカメラ内RAW現像は、PEANTAX一眼レフの醍醐味とも言える機能です。
おわりに
機能満載でまだまだ紹介しきれないのですが、PENTAXが掲げる5つのステートメントに相応しいカメラとして登場する本機は、自らの撮影スタイルに合わせカスタマイズ設定を施しながら「自分のカメラ」に仕立て、使い込むほどに自分のモノになっていくプロセスまでも楽しめます。高感度領域とカスタムイメージによる描写力・解像力の高さも存分に味わえるAPS-C一眼レフ最高峰と言えるでしょう。ファインダーを覗きピントを合わせてシャッターを切る。といった当たり前のことですが、原点に立ち返り「撮る快感」を得られるAPS-C一眼レフ K-3 Mark III。まさに“フラッグシップ”に相応しい一台となっています。
参考:PENTAX 5つのステートメント
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/brand/pentax/vision/
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
「K-3 Mark III」はこちらの記事でも紹介されています
■ペンタックス K-3 Mark III レビュー|オールドレンズとカスタムイメージでフィルムライクな写真を味わう
https://www.kitamura.jp/shasha/ricoh/k-3-mark-iii-4-20210424/
■ペンタックス K-3 Mark Ⅲ レビュー|スナップ撮影を楽しむ
https://www.kitamura.jp/shasha/ricoh/k-3-mark-iii-3-20210505/