ペンタックス K-3 Mark III Monochrome 20-40 Limitedレンズキットで豊かなモノクローム表現を楽しむ
はじめに
モノクローム専用の〝デジタル一眼レフ〟として話題になり、発売当初入手困難だったPENTAX K-3 Mark III Monochromeに、HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRが同梱されたPENTAX K-3 Mark III Monochrome 20-40 Limitedレンズキットが登場しました。今回、ペンタックスで初めてのモノクローム専用機に期待を寄せながら撮影をしてきましたので、その感触をお伝えします。
K-3 Mark III Monochoromeの特徴
K-3 Mark III Monochoromeの外観は基本的には通常モデルのK-3 Mark IIIと大きな差はありませんが、梨地塗装とグレーロゴの組み合わせにより、一層男前で風格のあるデザインに仕上がっています。
このカメラは光を受ける一般的なカラー用イメージセンサーではなく、モノクローム専用のイメージセンサーを搭載。モノクロームに特化した画質設計がされており、カラーの概念がないためホワイトバランス(WB)の機能もありません。
周囲の色による補間処理をすることなく、1画素1画素が取得した輝度情報をそのまま画像に反映できるため、繊細な表現と解像力に富んだ表現が可能になっています。初めてシャッターを切ったときに感じる精細な描写はまさにそのものです。
ボディ内手ぶれ補正機構を搭載していることから、最新のレンズからオールドレンズまで、Kマウントレンズの個性を楽しむことができるのがうれしい点です。
キットレンズにHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRを採用
キットレンズとなったHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRは、35mm判換算30.5-61.5mm相当の画角で、実用性の高い準広角から標準レンズの焦点域をカバーする2倍ズームレンズ。焦点距離50mmの前後をカバーすることで、「もう少し広く」あるいは「もう少し寄って」といった痒い所に手が届く感覚が得られます。広角端も30mmと扱いやすい画角でスナップに最適。官能表現といわれるLimitedレンズらしい雰囲気のある描写も魅力です。
HDコーティングや円形絞りに加えて、防滴構造や、レンズ内モーターによる静かでなめらかなAF駆動方式も採用され、さまざまな撮影環境下で使うことができます。最短撮影距離も0.28mとかなり近接することができ、テーブルフォト、スナップ、ポートレート、風景まで多彩なシーンに対応できます。日常的に非常に取り回しの良い一本で、PENTAXユーザーに定評のあるレンズです。
モノクローム専用カスタムイメージで自分好みの設定を探る
モノクロ―ム専用のカスタムイメージは、「スタンダード」、「ハード」、「ソフト」の3種のみですが、それぞれのカスタムイメージの中で詳細項目のパラメーター「調色」、「キー」、「コントラスト」、「シャープネス」などを調整し、細やかに設定することができます。これは、撮影者が個々に作り上げた独自のモノクロームが楽しめるということです。早速わたしも好みの設定を探ってみました。
黒の引き締まりと、階調(トーン)の美しさを引き出す調整を行ってみたところ、カスタムイメージは「ハード」が好みの絵作り。被写体や光の状態によって「スタンダード」に切り替える。というのがしっくりときました。モノクロネガフィルムを入れ替えて使うような感覚です。今回の撮影では、以下の2つの設定を活用しています。
【スタンダード】
【ハード】
光の条件を選ばないモノクローム撮影
撮影に出かけたくても天候に恵まれない日は多々あるものです。実は、そんな時こそK-3 Mark III Monochoromeの実力を感じられます。普段室内や曇りの日に撮影をする方は少ないようですが、モノクロ写真の表現として階調(トーン)を堪能できるのが光の柔らかい曇りの日。また、K-3 Mark III Monochoromeは色の情報を拾うことがないため、室内蛍光灯は定常光ライティングとして考えることができ、どこででも撮影が楽しめます。
様々な被写体を捉えてみると、手触りの感触が伝わる際立った質感の金属、ハイライトの白の美しさ、淡いグレーの階調まで、K-3 Mark III Monochoromeで撮影することの満足度の高さを感じられます。
高感度ISO設定でモノクロネガフィルムの風合いを実感
色の情報がないセンサーの1画素1画素が得た輝度情報を画像に反映できるK-3 Mark III Monochoromeで高感度ISO撮影を行うと、ザラっとしたノイズが粒状として加わり、フィルムライクな表現が可能になります。デジタルフィルターの「粒状感モノクローム」のように、後からノイズを加えるのとは異なる表現方法です。
実際に曇天の日に高感度ISO12800で撮影を試みると、その感触がつかめました。夕暮れの時や暗い室内で、感度をもっと高く設定して撮影すれば、一層モノクロネガフィルムの雰囲気が出せそうです。
夜の光で黒の引き締まった絵作りを楽しむ
夜の光も実に魅力的なもの。色鮮やかな夜の光をモノクロームで捉えることに躊躇してしまうかもしれませんが、強い光が街の印象と活気を引き出します。明暗のコントラストに加え、カスタムイメージ「ハード」による黒の引き締まった絵作りで、スナップ撮影が捗りました。印刷でいうところの、リッチブラック(CMYK4色で作り出す黒色)のようなコクのある美しい黒さに惹かれます。
デジタルフィルターで仕上げるモノトーン
K-3 Mark III Monochoromeの撮像素子にはカラーを認識する素子が存在しないため、RAWデータもモノクロのままですが、カメラ内RAW現像時にデジタルフィルターを選択し、「レトロ」と「トイカメラ風」で調色を加えたモノトーン(1色での表現)で、雰囲気を活かした絵作りを楽しむことができるということに気が付きました。カスタムイメージの中の「調色」とは異なり、デジタルフィルターらしくシェーディングやまろやかさが加わります。
久しぶりにまとまった雨の日の公園。正直なところ、こんな日に一眼レフを持って撮影をしているなんて怪しさしかないのですが、やはり、雨は雨の良さがあり、そのしっとりとしたしめやかな空気を写し込むのもモノクロームの良さでしょう。
K-3 Mark III Monochoromeと、HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRの組み合わせなら、傘下での撮影を楽しめるというもの。
ビニール傘をフィルター代わりにレンズの前にかざせば、コントラストが強めのハードモノクロームでも柔らかいトーンで幻想的です。青焼き写真のような表現に。
こちらは、デジタルフィルターの「ハードモノクローム」を控えめに使い、明暗差を強調しています。
もちろん、雨の日だけではなく、快晴の日にも雰囲気づくりが楽しめます。シーンに合わせてデジタルフィルターの活用も楽しんでみてください。
おわりに
まず、初めてシャッターを切ったときに感じる見事な階調表現に心を奪われます。「今日はモノクロームで撮る」と決めた日は、光だけを意識しながら歩くことができ、まさにフィルムカメラで撮影しているかのよう。室内で撮影していても、普段目にするものの意外な姿を発見でき、様々なものに目が向くようになります。
実にいろいろなものが撮りたくなるカメラ、K-3 Mark III Monochorome。それだけではなく、幅広いモノトーン表現が可能なことを実感した今回の撮影で、「このカメラで次は何を撮ろうか?」そんな楽しみさえ与えてくれました。
レビューではキットレンズとなった、HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRだけを使用しましたが、別のレンズでの撮影にも期待が膨らみます。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。