ペンタックス HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited|標準レンズとしても活躍する等倍マクロレンズ
はじめに
今回、214gと軽量かつコンパクトなAPS-Cフォーマット用マクロレンズ「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」を「PENTAX K-3 Mark III」に装着して写りを試してみました。35ミリ判換算53.5mmと、日ごろ慣れ親しんでいる標準レンズ並みの画角になるのでとても使いやすい印象を持ちました。
そして何よりも「Limited」レンズなのでレンズ外装の仕上げも上質です。使っているときももちろんですが、カメラに装着しての佇まいも実に美しいものです。ルックスも写りも最上級の標準マクロレンズと言えるでしょう。
HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedの特徴
このレンズの特徴はAPS-Cフォーマット用ということで、とても小さくて軽く仕上がっていることでしょう。重量はわずか214gで、最大径と長さはそれぞれ63×46.5mmと非常にコンパクトな製品と言えます。同じくAPS-Cフォーマットの「K-3 Mark III」に装着しても、マクロレンズとは思えないほどのフィット感で、撮影時のホールド性もとても高くなっています。
描写性能も素晴らしいものになっています。マルチコーティング「HD コーティング」を施していて、可視光域での反射率を従来製品の50%以下に抑えています。これにより強い点光源をフレームに入れ込んだり、逆光時の撮影でもクリアかつコントラストの高い描写を得ることが可能なのです。
また、FREE(後群分離型フォーカシング)システムを採用したことによって、近距離から無限遠まで各収差を良好に補正しています。あらゆる撮影距離で気持ちがいい写りを保証してくれることでしょう。
マクロレンズなので最短撮影距離は0.139mととてもショート。これは撮像面(センサー)からの距離なのですが、レンズ前玉からだとなんと約3cmまで被写体に肉薄できます。さすが等倍までの撮影を誇るマクロレンズと言えるでしょう。気をつけないと被写体によっては前玉が接触してしまうほどです。その前玉には汚れに強いSP(Super Protect)コーティングを塗布しています。アウトドアの撮影が多いマクロレンズだけにこれは心強い仕様ですね。
オートフォーカスも等倍マクロレンズとしてはクイックで、合焦したあとにマニュアルでも切り替えなしでピント合わせができる「Quick-Shift Focus System(クイックシフト・フォーカス・システム)」を採用しています。これはマクロ撮影時にうれしい機能ですね。レンズフードは伸縮する内蔵タイプとなっています。
HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedでブラブラ実写スナップ!
今回は「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」をK-3 Mark IIIにセットして、ブラブラとさまざまな被写体を撮り歩いてみましたよ。
ショッピングモールで見つけたアメリカ製の電話ボックスを撮りました。50mm標準レンズに近い画角なので、写る範囲も距離感も慣れ親しんでいるためとても使いやすいですね。発色も鮮やかでとてもいい印象です。
その電話機のコイン投入口に迫りました。この「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」は前玉から3cmまで寄れてしまうので、最短撮影距離だとメタリック塗装の部分にレンズが映り込んでしまいました。ですので少し距離を取ってシャッターを切りました。使い込まれた感じがしっかりと捉えられています。前後のボケも美しいですね!
無限遠から最短撮影距離までレンズの繰り出し量が多いマクロレンズですが、この「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」のオートフォーカスはキビキビしていて気持ちがいいレスポンスです。走行中のモノレールを狙いましたが、きちんと合焦してくれました。スナップ撮影にも向いているレンズになっています。
遠景も実にシャープです。マクロレンズはほとんどの場合切れ味鋭いものですが、この「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」もいい写りです。雲の立体感、木々の解像感、遠くに写る建物の描写など、さすが「Limited」レンズという性能ですね。
バーのワインボトルを撮りました。透き通ったボトルの凹凸感、トランスルーセントでカラフルなエチケット(ラベル)の色合いも繊細にこのレンズは写しとってくれました。50mm標準レンズに近い距離感も自然でいい印象です。
「マクロレンズ」というと「特殊なもの」という感じがしますが、この「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」なら「被写体にググッと寄れる標準レンズ」というイメージで使うといいでしょう。街中で気になったオブジェをこんなふうに接近して撮影できるのですから。カメラに装着して気になったモノを貪欲に迫ってシャッターを切ると世界が広がってくるかもしれませんよ。
カリッとしたシャープな描写は建造物撮影でも威力を発揮します。各収差も良好に補正されているので、被写体をキリリと浮かび上がらせてくれます。細いワイヤーの描き方、コンクリート製足場の再現性がとてもいいですね。
小さい花もファインダー一杯になるまで寄れるのがこの「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」の魅力です。合焦点は素晴らしくシャープで、ボケは自然でスムーズ、発色は目が覚めるような鮮やかさと文句のつけようがありません。こんな小さなレンズなのにここまで写るの?という驚きを与えてくれます。
小さなレンズはボディに馴染むので、フィールドでのホールディングが向上します。このようにローアングルの縦位置撮影でもフォトグラファーを疲れさせません。K-3 Mark IIIの大きく明るい光学ファインダーとの相性もバツグンで撮影が楽しくなってきます。
愛用の「smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited」を撮ってみました。今となっては珍しい被写界深度と距離目盛がこんなにも大きく撮影できました。梨地のレンズ鏡筒がクールですね。
こちらのカットも同様です。「Limited」の文字と、金属のローレットが美しく浮かび上がりました、前ボケと後ボケも非常にスムーズですね!
最後にホワイトバランスを変更してレンズとキャップを撮りました。マクロレンズというと花や昆虫撮影という先入観がありますが、このように製品撮影やプラモデル、ネイルアート、フードなどさまざまなシーンで活躍します。1本持っていると撮影の幅が広がりますよ。
HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limitedの主要諸元
レンズタイプ:マクロ
焦点距離(35ミリ判換算):35mm(53.5mm)
開放絞り値:F2.8
最小絞り:F22
画角:44°
レンズ構成:8群9枚
絞り羽根枚数:9枚
最短撮影距離:0.139m
最大撮影倍率:1.00倍
フィルター径:49mm
最大径 x 長さ:63× 46.5 mm
質量(重さ):214g
まとめ
「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」は、被写体に超接近できる標準レンズとして使うととても面白いですね。普段スナップや風景を撮っているときに「お、コレは何だろう?」と気になった小さな被写体でも等倍までクローズアップして撮れるのです。
とても小さくて軽く、仕上げも上質なレンズなのでカメラバッグにいつも入れておくといいでしょう。いざという時に活躍してとてもシャープな写真を撮ることができるはずです。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。