ネイチャースナップのすすめ|プロが教えるPENTAX K-3 Mark IIIのカスタマイズ 【後編】

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|プロが教えるPENTAX K-3 Mark IIIのカスタマイズ 【後編】

はじめに

PENTAX K-3 Mark IIIのカスタムについて解説する記事の後編では、操作系についてのお話をします。カメラは体の一部のように扱えてこそ、決定的瞬間を逃さないで撮影できるものです。

よく使うボタンやダイヤルは見なくても操作できるくらいになっておきたいものです。とはいえ機種が違えば少しずつ操作系の差があるのは仕方ないところで、そこをうまくカスタマイズして使いやすくしましょう。他のカメラにも共通する部分もありますので、ぜひ試してみてください。

カスタマイズしてこそ自分のカメラ

K-3 Mark IIIの背面。さまざまなボタンやダイヤルがあってそれぞれの機能を覚えるだけでも大変。でも、自分が必要な機能を割り当てるようにすれば、悩むことなく効率よくカメラを操作できるようになる。そこでカスタマイズをオススメする。

最近のカメラは多機能すぎると思う反面、歓迎している部分はボタンやダイヤルなどの機能を変更できるカスタマイズ機能です。ボタンやダイヤルに自分の使い方に合った機能を割り当てられたら便利ですよね。

K-3 Mark IIIでは購入と同時にいろいろカスタマイズを行いました。まずはじめは、画像の「再生」ボタン。ファインダーと後電子ダイヤルの間にあって、手袋をしたら必ず後電子ダイヤルを回してしまうような位置にあり、使用頻度は高いはずなのに使いにくい感じがしました。

そこで、画像再生機能はふだんまったく使わない「AE-L」ボタンに割り当てて、スムーズに操作できるようにして、「再生」ボタンには自動水平補正機能を割り当てました。これで気持ちよく使えます。

このように、自分がよく使う機能を操作しやすくすることで、より扱いやすいカメラになっていきます。ただ、全てにおいて自分の思い通りにならないこともありますので、できる範囲内で使いやすくしていくことになります。

操作系カスタマイズ方法

ボタンやダイヤルのカスタマイズは、メニューのC2タブから行う。ここでは各ボタンのカスタマイズをするために「Fxボタン」を選択する。
続いてカスタマイズしたいボタンを選択。ふだん使っていない「AEロック」ボタンに別の機能の再生機能を割り当てた。
どの機能を割り当てるかは、さらに十字キーの右を押してから、この画面を開いて使いたい機能を選択する。最後に「OK」ボタンを押して完了。

ボタンやダイヤルのカスタマイズはメニューのC2タブから行います。今回紹介したカスタマイズは、「Fxボタン」と「AF/AEロック設定」、「電子ダイヤル」を使って設定しています。それぞれの項目を開いて、さらに細かい内容ごとに好みの設定をして行くことができます。

コントロールパネルのカスタマイズでは、撮影情報表示のときに「INFO」ボタンを押すとコントロールパネルが表示されます。続いて+/-マークの「露出補正」ボタンを押すと、カスタマイズが可能になります。設定を変更するパネルの位置を指定してから登録する項目を選びます。

撮影待機画面のときに「INFO」ボタンを押すと、コントロールパネルの画面に変わる。この画面はすでにカスタマイズ済みなので、皆さんのカメラと同じではないがそれは気にしなくて大丈夫。
つづいて+/-マークの「露出補正」ボタンを押すとカスタマイズが可能になる。十字キーで変更したいパネルを選択して「OK」ボタンを押す。
すると画面右側に割り当て可能な機能が表示されるので、好きなものを選択する。どの機能が選択されているかは、画面左上にテキスト表示されている。最後に「OK」ボタンを押して完了。

並び方も自分の使い勝手に合わせて考えていくと、さらに使いやすくできます。

私のボタン・ダイヤルカスタマイズ

ここからは私のボタンやダイヤルのカスタマイズを紹介します。基本的にカメラを持ち変えることなく、右手だけで必要な機能を操作ができるように考えていて、必ずしも皆さんの使い方に合っているとはいえませんので、参考に見ていただければと思います。私は手持ち撮影で超望遠レンズを使うことが多く、左手でボタンを操作するのが大変なのです。

カスタマイズの考え方としては、今までの慣れた操作性に近づけることと、ふだん使わないボタンによく使う機能を割り当てられないかを考えてみると良いと思います。K-3 Mark IIIではFnボタンをカスタマイズした内容は、背面液晶表示のなかに表示されていますので、どんなカスタマイズしているのかも一目で分かります。

Fxボタンや十字キーに割り当てた内容は、撮影情報表示画面の赤枠で囲んだ部分に表示されているので、カスタマイズしていてもそれぞれのボタンがどんな機能を持っているのか一目で分かる。カスタマイズするとわけが分からなくなると心配している人もいるかもしれないが、このことを覚えておくと安心だ。

AE-Lボタン>再生モード機能

AE-Lはふだん私は利用することがない機能。フィルム時代のカメラにも「AE-L」ボタンはあったのですが、いつももったいないと思っていました。先ほど紹介した押しにくい位置にある再生機能をふだん使わない「AE-L」ボタンに割り当てて、カメラの操作性をアップしました。

再生ボタン>自動水平補正機能

カメラを手にしたときに、この「再生」ボタンは使いにくいと感じたことでカスタマイズが始まりました。再生機能を「AE-L」ボタンに割り当てて、このボタンが空いたので、たまに使う自動水平補正機能を割り当てています。

ちょっと扱いにくく感じる「再生」ボタンには、たまに使う自動水平補正機能を割り当てている。水平線が曲がるのが気になる風景撮影では有効だが、傾きを補正するときにファインダーで見ている像と微妙にフレーミングがずれることもあるので、厳密なフレーミングをするときは要注意。また、SRが流し撮りモードのときは設定できない。
北海道では9月に入ってから見頃になるヒマワリ畑も多くある。拡がりを感じられるようにヒマワリ畑の奥まで画面に入れているが、傾くと違和感が出るので、自動水平補正機能をオンにして撮影した。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-DA★60-250mmF4ED[IF] SDM
■撮影環境:F11 1/250秒 +0.7EV ISO1000

キーロックボタン>ダイレクトライブビュー

K-3 Mark IIIではライブビューはペンタプリズム右横のダイヤルで変更できますが、K-1 Mark IIでは「測光モード」ボタンの左に配置されていました。それと同じ位置にすることで違和感をなくすために、ライブビューへの切り換えを「キーロック」ボタンに割り当てました。

ライブビューは三脚使用時に利用することが多い。そのときはカメラの両側を支えて操作することも多くなり、ボディ左端にある「キーロック」ボタンにダイレクトライブビューを割り当てることで、操作性も良くなっている。
北側の空に見える天の川を撮影。星の撮影ではライブビューで拡大して厳密にピント合わせすることが必要になる。バッテリーを消費するので頻繁にオンオフすることもあり、ダイヤルではなくボタンで操作できるのは便利に感じている。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F2.8 30秒 ISO6400 アストロトレーサー3

測光モードボタン>WB

測光モードもつねに分割で撮影しているので、変更することはありません。そこでたまに変更するWBを設定しています。「十字」キーはカメラを肩から提げて歩いていると勝手にキーが押されてWBやカスタムイメージが変わってしまったことが何度かあり、設定なしにしてあります。

はじめから「十字」キーにWBは割り当てられているのだが、わけあって「十字」キーは使わないようにしている。そのため、ときどき使うWBはこの「測光モード」ボタンに割り当てることにした。
夕焼けの色を強調するためにWBをCTEに変更して撮影している。空の色づいている面積が少なくなってきたので、望遠レンズで空の色づいているところだけを背景とし、草のシルエットで秋の雰囲気を表現した。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-DA★60-250mmF4ED[IF] SDM
■撮影環境:F6.3 1/200秒 ISO6400 +0.7EV

RAWボタン>RAW+時にJPEGへ変更

ふだんはRAW+で撮影しています。ただ、撮影地の看板とかちょっとした記録用の撮影にはJPEG画像だけあればいいので、メモとして撮影するときにワンタッチで切り換えができ重宝しています。

「RAW」ボタンでは機能の変更はせず、詳細な設定を行っている。この画面の状態で「INFO」ボタンを押すと、詳細設定が表示される。
詳細設定画面では、元となるカメラの画像記録フォーマットごとにボタンを押したときの動作を設定できる。私は基本RAW+で撮影しているので、RAW+のときにJPEGへ変更するようにした。
「RAW」ボタンはカメラの全面左側にある。使用頻度は高くないので、このままでも良いと感じている。「SR」ボタンと「AFモード」ボタンの機能はコントロールパネルに割り当てている。
どこで撮影したのか忘れないようにメモ的な撮影をするために容量を食うRAW画像は必要ないので、JPEGのみで記録するようにしている。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F8 1/100秒 ISO200

十字キー>未設定

カメラを肩にかけて歩いているときに「十字」キーが体に当たり、WBやカスタムイメージが勝手に変わってしまったことが何度かあり、それを防ぐために全て未設定に変更しています。ふだんはあまり変更しませんが、ときどき使うため、WBとカスタムイメージ、アウトドアモニターはコントロールパネルに割り当てるようにしました。

キーロックの誤操作防止モードで「十字」キーが操作しないようにできるのですが、測距点レバーも動かなくなり使いにくいので、このような設定に落ち着きました。

すべての「十字」キーをオフにしている。これで誤作動を防ぐことができるようになった。ちょっともったいない気もするが、けっこう誤操作で失敗しているので仕方ない。
背面の液晶が引っ込んでいる状態なので、どうしても背面のボタンに体が触れて誤操作が起きることがある。液晶が出っ張っているK-1 Mark IIではこのようなことはなかった。個人的にはK-3 Mark IIIにもK-1のような可動式の液晶が欲しかったところだ。
初秋の山で色づき始めたナナカマドを見つけた。カメラを肩から提げて歩いていると、「十字」キーが誤作動してWBが変わったりカスタムイメージが変わったりしてしまったことが何度もあったが、「十字」キーの機能をオフにしてからは安心して歩けるようになった。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F13 1/250秒 ISO1250

AFボタン>AFロック

私は基本的に「AF」ボタンでのAF操作は行いません。シャッターボタン半押しでAFが作動する使い方です。AF.Sのときには合焦と同時にAFロックがかかるので必要ありません。しかし、動体撮影用のAF.Cでは、シャッターボタンが半押しの状態でピントが合わせ続けられてしまうので、必要なときにAFロックがかけられるようにしています。

ひとつ例外として、三脚用の設定のときはシャッターボタンでのAFをオフにして、「AF」ボタンでAFを作動するようにしています。この方がスムーズに撮影できます。

「AF」ボタンの機能の設定は、「AF/AEロック設定」から行う。同じような位置にあるボタンだが、別の扱いとなっていることに注意しよう。
この画面で、シャッターボタンと「AF」ボタンそれぞれの動作を変更できる。私は「AF」ボタンをAFロックにしている。ちなみにシャッターボタンではAFが動作せず、「AF」ボタンのみで行う場合は、中央の位置に合わせる。
ハクチョウなどいきものの撮影では、動きを狙うことが多いので、AF.Cにしている。だがときにはこのようなジッとしているシーンもあるので、そのときはAFロックをして対応する方がスムーズに撮影できる。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/1600秒 ISO800

電子ダイヤル

電子ダイヤルは頻繁に操作する部分なので、もっとも重要な部分です。私はCANONやNikonのカメラも併用しているので、どのボディを使っても違和感がないようにカスタマイズしています。

ふだんの撮影ではAV(絞り優先AE)モードが基本となっています。PENTAXの標準の設定では、後電子ダイヤルで絞り操作となっていますが、カスタマイズして前電子ダイヤルで絞り、後電子ダイヤルでダイレクトに露出補正を行うようにしています。

電子ダイヤルのカスタマイズは、前後の電子ダイヤルの他、グリーンボタン、Eダイヤルの設定もできる。静止画と動画でも別々に行えるので、ここでは「静止画」のダイヤルを設定していく。私はAVモードが主体なので、ここだけを変更している。

前ダイヤルで絞り操作をするのは、CANONやNikonの操作性に合わせるという意味があります。また後ダイヤルでダイレクトに露出補正をするのは、シャッターボタンから指を離さずに露出補正ができるというメリットがあり、かなり重要だと思っています。

私の撮影の流れでは、大まかな構図決定後、AFでピントを合わせて構図を整えてから、最後に露出補正値を決定します。このときに前電子ダイヤルで露出補正操作をすると、シャッターボタンから指を離さなければならず、実に不便なのです。

マクロ撮影時にはピントを合わせたあと、シャッターボタンから指を離すようなことはしたくない。後電子ダイヤルで露出補正をダイレクトでできるようにしているので、操作も早くピントや構図のズレもなく撮影できる。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F3.2 1/250秒 ISO500 +1EV

第三の電子ダイヤルであるスマートファンクションについては、クロップを割り当てていて、他の機能は使っていません。

コントロールパネルのカスタマイズ

カメラの背面液晶から素早く機能の設定を切り替えられるコントロールパネルも便利な機能です。コントロールパネルには20種類の機能を登録でき、よく使うものを登録しておくとメニューを開かずダイレクトに設定変更が行えます。

十字キーをオフにしているので、カスタムイメージをコントロールパネルに割り当てている。基本的には「鮮やか」を使っているので使用頻度は低いものの、シーンによって切り替えることがある。
大木に絡んだツタウルシの葉の緑が鮮やかで、画面が緑で統一されているので、緑が鮮やかに再現できるカスタムイメージ「風景」に切り替えて撮影した。カスタムイメージは、自分の意図をはっきりさせて使いたい。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F10 40秒 ISO1600 +1EV

私がよく使うのは、「カスタムイメージ」の他に「AFエリア」の切り換えです。カメラのマウント左側にある「AFモード」ボタンを押すことでも変更できるのですが、望遠レンズをつけているとカメラを持ち替えなければならず不便です。この機能をコントロールパネルに登録しておくと、カメラを構えたままAFエリアの切り換えができるようになります。

動体撮影時にこのような画面中央以外に被写体が散らばるようなときには、AFエリアを広く使いたいことがある。コントロールパネルに「AFエリア」を登録しておくと、カメラを持ち替えずに切り換えできて便利だ。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO800 +0.7EV

あとは「ISO感度オート上限値」です。撮影シーンによってISO感度の上限を変えたり最低シャッター速度を変更したりすることがあるので、コントロールパネルに登録してあれば、メニューを開かずに設定変更が可能です。コントロールパネル上ではISO感度の上限値をダイヤルで操作するだけですが、OKボタンを押せばISO感度設定メニューにアクセスできるので便利です。
(この記事執筆後に「低速限界の指定方法」がコントロールパネルに登録できることが分かったので、追加しています。)

ISO感度オート上限値設定を選択して「OK」ボタンを押すと、メニューの「ISO感度設定」を開くことでき、さらに細かな設定ができるようになる。メニューへのショートカットとしてコントロールパネルを使うと設定の切り換えが早くなることも覚えておくといい。
山歩きのなかで撮影した一枚。木漏れ日が落ち葉に当たっていて印象的だった。歩きながらのネイチャースナップなので、シャッター速度の最低速度を1/250秒として、ブレが起きないように設定しておいた。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F11 1/250秒 ISO4000 -1.3EV

コントロールパネルのカスタマイズは、USERモードの登録には反映されず、すべての撮影モードで共通となります。

まとめ

私のカスタマイズを紹介してきました。必ずしもこれが正しいというわけではありませんので、自分の使いやすいようにいろいろカスタマイズをしてみてください。実はこの記事を書きながらこっちの方が使いやすいという部分もでてきて変更し、より使いやすくなった部分もあります。かなりカスタマイズしているので、私のK-3 Mark IIIを他の人が手にしたら、かなり戸惑うことでしょう(笑)。でも、私にとってとても使いやすいカメラに仕上がっています。

また、記事を書いている途中でK-3 Mark IIIの新ファームバージョン2.10が公開され、Fxボタンに新しく10種類の機能を割り当てられるようになりました。こちらについては下記ページよりご確認ください。

https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/support/download/digital/k-3-3.html

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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