ネイチャースナップのすすめ|プロが教えるPENTAX K-3 Mark IIIのカスタマイズ 【前編】

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|プロが教えるPENTAX K-3 Mark IIIのカスタマイズ 【前編】

はじめに

PENTAXブランドの集大成ともいえる一眼レフカメラ、K-3 Mark III。機能も大幅に増えていて、使いこなすのが大変と思っている人もいるでしょう。でも、全ての機能を使う必要はなく、自分にとって必要な機能を選んで使えば良いのです。こういうふうに使えれば良いのに、こうなったらいいなという操作もカスタマイズすることで実現できるものもあります。2回に分けてK-3 Mark IIIを快適に使えるようになるカスタマイズについて解説していきます。

ファームウェアを最新にしよう

まずはボディのファームウェアを最新にアップデートしましょう。現在(2023年8月)の最新バージョンは2.01ですが、バージョン2.00でさまざまな機能が追加されていて、そのなかに「USERモード設定BOXの書出し/読込み」があります。これにより、これから解説するユーザーモードに登録した内容をSDカードに書き出して保存したり、保存した内容を読み込んで復元したりすることができるようになります。

ファームウェアのバージョンを確認するにはセットアップメニュー6タブの「バージョン情報」から確認する。新しいファームウェアでは軽微なバグなども修正されているので、ときどきWEBサイトを確認して、最新のものを使うようにしよう。

最新のファームウェアは、次のURLからダウンロードできます。
https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/support/download/digital/k-3-3.html

ダウンロードしたファームウェアをSDカードにコピーしてカメラ本体に挿入し、メニューボタンを押しながら電源を入れるとアップデートが始まります。

最新版のファームにアップデートされていれば、このように表示される。(2023年8月時点)

USERモードを活用しよう

まず、USERモードをザッと説明すると、撮影モードやAFモード、ドライブモード、カスタムイメージ、その他いろいろな設定をひとまとめにして登録できる機能です。お気に入りのカメラ設定の組み合わせをそのまま登録できると考えてもらった方が分かりやすいでしょうか。

K-3 Mark IIIのモードダイヤルにはUSERモードのポジションが5つあり、10のBOXに登録した内容を自由に割り当てることができる。モードダイヤルは不用意に回らないようロックすることも可能だ。

K-3 Mark IIIではUSERモードを10種類登録でき、モードダイヤルの「U1」から「U5」の5つに割り当てることができます。USERモードを活用すると、ダイヤルを回すだけで、複数の機能の設定を一瞬で行えるようになるのです。

私は風景撮影用といきものなど動体撮影用の設定を主に登録して、あとはお気に入りの設定を登録しています。

私はBOXの1から6までいろいろな設定を登録している。使用頻度の高いものや切り替えやすいように割り当てておくと、撮影現場で素早く設定を切り替えられる。

普段の撮影は風景用の設定で十分ですが、突然出てきたいきものなどを撮影する場合、いろいろ設定を変更したくなります。

たとえば、AFモードはAF.SからAF.Cに、AFエリアもセレクトXSからセレクトエリア拡大XSに。ドライブモードも連続Lから連続Hへ。ISO感度の最低感度ではISO200からISO400へ、低速限界シャッター速度は1/60秒から1/500秒へ。これらをこまごまとやっていたら、シャッターチャンスを逃してしまいます。

でも、USERモードに登録しておけば、ダイヤルを回す一瞬でこれらすべてを切り替えられるのです。

登録した内容は上書きすることもできるので、もっと使いやすい設定が見つかったときにはアップデートすることもでき、自分にとってより使いやすいカメラに仕上げていけます。

USERモードの登録方法

USERモードへの登録は難しくありません。お気に入りのカメラの設定が決まったら、カスタムメニュー1の「USERモード設定登録」を開いて、好きなBOX番号に割り当てます。その後、モードダイヤルへの割り当てを聞かれますので、好きなところに登録したら終わりです。

登録時に設定の名前を入力することができるので、自分で内容が分かるように名前をつけておくとあとから切り替えやすくなります。モードダイヤルへの割り当てをしないときは、BOXへの登録後、メニューボタンで終了できます。

カメラのさまざまな設定が決まったら、USERモードに登録しよう。まずカスタムメニュー1の「USERモード設定登録」を開く。
続いて、設定したBOXの名前を入力するか聞かれるので、初めての登録のときは分かりやすい名前を入力しておくといい。上書きするときは「入力しない」を選択すればいい。
名前はアルファベットでつけるようになっている。自分で内容が分かれば良いので、きちんと入力しておこう。タッチパネルで入力できるので、以前に比べると楽になっている。
最後に今登録した内容をモードダイヤルのU1からU5のどこに割り当てるか指定する。ここではU1を指定しているが任意に選択でき、あとから変更したい場合は、「USERモード設定呼び出し」から変更できる。

USERモードの書き出し

ファームウェアのバージョン2.00から、USERモードの設定内容をBOXごとに書き出したり読み込んだりすることができるようになりました。いままでカメラをリセットすると、全ての内容を登録し直さなければならずかなり苦労しましたが、全部のBOXをSDカードに書き出しておけば、何かトラブルがあったときにも安心です。

カスタムメニュー1の「BOXの書出し/読込み」から行う。このメニューが表示されない人は、ファームウェアのバージョンが古いので、まずファームウェアを更新しよう。

ネイチャースナップ向けモード設定

ここからは私の設定を項目ごとに解説していきます。
以下は基本的な共通項目です。

WB:太陽光
カスタムイメージ:鮮やか
測光モード:分割
ダイナミックレンジ補正 ハイライト補正ON

風景向け

夏空の広がるヒマワリ畑を撮影。こんな一般的な風景撮影では特別な設定は必要ないのだが、使用頻度も高く、他の撮影シーンに切り替えることを想定してあえてUSERモードに登録している。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F14 1/50秒 ISO200 +0.7EV
風景用の設定でも、動いていないいきものの撮影で利用することは多い。望遠レンズでの撮影が前提だが、ISO感度と最低シャッター速度をオートにしておくことである程度対応できる。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/400秒 ISO2000

一般的な動きがない被写体を手持ち撮影するときに使います。AVモードでそのまま撮影しても良いのですが、他の撮影のことを考えて、基本となる設定としてU1に割り当てをしています。

撮影モード:AV(F8 ISOオート)
ISO感度設定 最低:ISO200 最高:ISO6400
最低シャッター速度:オート
AFモード:AF.S セレクトXS
ドライブ:連続L
SR:AUTO

動体向け-1

草原を走るエゾリスの姿を見つけ、とっさにU2に切り替えて撮影した。こういったときに一瞬でカメラの設定を変えられることのありがたさを感じる。まごまごしていたら撮り逃してしまう。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/500秒 +1.3EV ISO4000

絞り優先オートで動体撮影をするときの設定です。風景向けと違ってくるのは、AFがAF.Cとなって測距範囲を広くしていることと、ブレを防ぐためにシャッター速度が速くなるようにISO感度や最低シャッター速度を変更しています。これをU2に割り当てているので、とっさにいきものが出てきたときにも素早く対応できます。

撮影モード:AV(F8 ISOオート)
ISO感度設定 最低:ISO400 最高:ISO6400
最低シャッター速度:1/500秒
AFモード:AF.C セレクト拡大XS
ドライブ:連続H
SR:流し撮り

動体向け-2

タンチョウの給餌場では、背景が白と黒に大きく分かれていて、タンチョウのいる場所によって背景が大きく変化する。露出がオートだと背景の影響を受けて露出がばらつきやすいので、それを防ぐために露出をマニュアルで固定できる設定が必要だった。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO400
タンチョウの飛翔シーンを撮影。ここでは背景がカラマツ林で黒いので、オートではタンチョウが露出オーバーになりやすい。動きを追いながら露出補正をすることはムリで、マニュアルで露出を設定すれば安心して撮影できる。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO400

動体撮影用の設定で、被写体の動きに追従していくと背景の明るさが大きく変わることが想定されるシーン向けの設定です。冬にタンチョウを給餌場で撮影ときに必要になってずっと使っています。

露出がオートだと背景の明るさ(白や黒など)の変化で露出が大きく変わってしまうのを防ぐために露出モードとISO感度をマニュアルで設定していて、撮影シーンに合わせて調節します。ここでの露出値は、晴天時にタンチョウを撮影するときの目安です。U3に割り当てています。

撮影モード:M(F8 1/1250秒 ISO400)
AFモード:AF.C セレクト拡大XS
ドライブ:連続H
SR:流し撮り

三脚用

滝の流れをブラして滑らかに見せるために、三脚を使って撮影。普段は手持ち撮影が基本なので、いろいろカメラの設定を切り替えなければならず、USERモードに登録してある。ちょっとした設定変更が面倒で中途半端な写真を撮るのなら、きちんと設定を登録しておいた方が思い通りに撮影ができるようになる。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F11 1/10秒 -0.3EV ISO200 C-PLフィルター

三脚を使って風景撮影をするときの設定で、ISO感度を低めに設定してあり、主にスローシャッターでの撮影を想定しています。絞り値やISO感度は必要に応じて変更します。2秒のセルフタイマーでは自動的にミラーアップ撮影となり、カメラブレの心配はなくなります。まだ同時にSRはオフになります。U4に割り当てています。

撮影モード:AV(F11 ISO200)
AFモード:AF.S セレクトXS
ドライブ:2秒セルフ
SR:オフ

マクロ向け

コスモスの上にいたツユムシをクローズアップ。マクロ撮影はブレが起きやすいので、ぶれないような設定をすることがコツ。自分で安心して撮影できる最低シャッター速度を設定しておこう。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4.5 1/250秒 ISO500

マクロレンズで撮影するとき用の設定です。風景向けの設定のままでも良いのですが、最低シャッター速度の設定がオートだと、マクロ撮影には少しシャッター速度が遅くぶれやすい感じがするので、最低シャッター速度を1/250秒に設定しています。昆虫などの動きがある場合は、1/500秒以上の方が安心です。U5に割り当てています。

撮影モード:AV(F4.5 ISOオート)
ISO感度設定 最低:ISO200 最高:ISO6400
最低シャッター速度:1/250秒
AFモード:AF.S セレクトXS
ドライブ:連続L
SR:AUTO

星景向け

まだ空に明るさが残るなか、星空を撮ってみた。日中の撮影と違い、星空の撮影だといろいろ設定を変える必要が出てくる。それに暗い場所であれこれ変更するのは面倒なので、USERモードに登録しておけば安心だ。
■使用機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F2.8 8秒 ISO12800 MF

星を点像で撮影するときの設定です。露出はマニュアルで設定します。広角レンズであれば、だいたい10秒くらいまでは星が点に写る目安となります。絞りは開放が前提なので、あとはISO感度で明るさの調節をします。

現場の暗いところで設定をいろいろ切り替えるのは大変なので、予め設定を登録しておくと失敗することがなくなります。ポイントはアウトドアモニターを暗くすることです。標準の明るさのままだと画像が明るく見えすぎて、現場でちょうど良い明るさだとあとから見ると真っ暗になってしまいます。もちろん三脚使用前提です。

撮影モード:M(F2.8 10秒 ISO6400)
AFモード:MF
ドライブ:2秒セルフ
SR:オフ
WB:オート
アウトドアモニター:-2

まとめ

ここでは私のお気に入りの設定を紹介しましたが、フォトスクールに参加したときなどに教えてもらった設定があれば、とりあえず登録しておいて、あとからきちんと見直すのにも役立ちます。多機能なカメラであっても切り換えが面倒で十分に性能を活かせていないことも多いので、このUSERモードをうまく利用して、カメラの機能を十分に使いこなしてください。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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