PENTAX KFで堪能する カスタムイメージ「Gold」|こばやしかをる
はじめに
小型軽量で、初めての一眼レフに相応しいPENTAX KF。扱いやすいサイズと共に、前モデルのアウトドアスペックを受け継いだエントリー機とは思えない一眼レフカメラです。ファインダーをのぞいて撮影体験できるカメラとして、ミラーレスカメラ全盛期の中で改めて注目されています。今回は、PENTAX KFを連れて街歩き&森林散策しながら新カスタムイメージ「Gold」で撮影を楽しんできました。
PENTAX KFの魅力
ペンタックスの一眼レフの中でも、10万円を切るエントリー機に位置付けられるPENTAX KF。コンパクトなボディの中にガラス製のペンタプリズムが収まっていて、ISO 100~102400、 シャッタースピード1/6000~30秒、連写速度は最高約6コマ/秒。防塵・防滴構造やマイナス10℃まで対応するタフネス性能も持ち合わせており、突然の悪天候にも対応できるので、旅先でも安心して撮影ができます。
大きく握りやすいグリップに、背面の立体的な十字キーボタンは、手袋をはめた状態での操作のしやすさも考えられています。控え目にいってもエントリー機とは思えないスペックです。こうしたところが風景写真家にも愛されるペンタックスらしさともいうべきでしょう。
今回の撮影では、キットレンズのsmc PENTAX-DA L 18-55mm F3.5-5.6AL WRと、単焦点レンズHD PENTAX-FA 35mmF2の2本のレンズ、そして、2023年9月7日に公開された機能拡張ファームウェアにより追加となったカスタムイメージ「Gold」の色で撮影してきました。
スナップ撮影ならsmc PENTAX-DA L 18-55mm F3.5-5.6AL WRで
キットレンズに採用されているsmc PENTAX-DA L 18-55mm F3.5-5.6AL WRは、コンパクトなサイズがうれしい標準ズームレンズ。痒い所に手が届く、27.5-84.5mm相当(35mm換算)の焦点距離となるAPS-C用レンズで、日常のスナップから旅行まで使いやすい画角をカバーしています。
プラスチックマウントを採用していることから、質量235gとかなり軽量であることも手伝って、サクサクと撮り歩くスナップ撮影ならこれで十分と思うほど。広角・標準・望遠と3つの焦点距離を感じながら、被写体との距離感や自分好みの画角をつかむのに最適なレンズです。
初めての単焦点レンズならHD PENTAX-FA 35mmF2で
キットレンズからステップアップしたいと感じたなら、単焦点レンズHD PENTAX-FA 35mmF2から始めてみるのがおすすめです。標準画角となる52mm相当(35mm換算)の焦点距離は、誰しもが経験する単焦点レンズの入口。
自分の足で寄ったり、引いたりしながら、広角的にも望遠的にも使いこなすのがこの焦点距離のレンズの使い方のコツです。花、風景、ポートレート、スナップなど、どんな被写体にも対応できて、自分で工夫しながら撮影をすることが身に付くレンズ。コンパクトさ、求めやすい価格も大きな魅力です。
柔らかくふんわりとした描写や、クリアでシャープな中にも繊細な優しい写りを感じます。カスタムイメージ「Gold」の風合いを堪能するのにも相応しいレンズです。
PENTAX現行一眼レフの中で唯一の機能「バリアングルモニター」
これまでは「光軸が外れるのがちょっと使いづらいかも」と、感じていたボディ背面のバリアングル式の可動モニターは、PENTAXの現行一眼レフの中で唯一の機能です。普段愛用しているK-3 Mark IIIの背面モニターが可動しないこともあり、改めて使うとその良さを感じます。身長が小柄な私にとって、手を伸ばしてライブヴュー撮影を行うハイアングルの構図や、ローアングルでもその利便性を実感しました。
ファインダーをのぞいた視野を楽しむのが正当な撮影姿勢だとすれば、KFのバリアングルモニターは、普段見ることのできない世界を切り取れる特別感と言えるでしょう。
新カスタムイメージ「Gold」の特徴をつかむ
ファームウェアのアップデートにより追加となった新カスタムイメージ「Gold」も、PENTAX K-1、K-1 Mark II、K-3 Mark IIIと、KFだけが撮影時に楽しむことができる特別な色です。カスタムイメージSpecial Editionのように使用レンズに制約はなく、お気に入りのレンズを装着して「Gold」の色を堪能できるのが嬉しい点です。
カスタムイメージ「Gold」の特徴は、色みやトーンのバランスが優れている点で、黄色と青色の対比色に特徴が現れます。詳細設定のパラメーター「シャープネス」は初期設定値で「-3」となっているので、基本的には柔らかいトーンで仕上がります。
ハイライト部に向かって黄色味を帯びていき、シャドー部は青味を帯び、わずかに明るく立ち上がります。画面全体が明るく、より黄色味がかった写真に仕上がるのが特徴です。
赤やマゼンタといった色への影響は弱く、かえってトーンが優しくなる印象です。元の色味を残しながらも自然な味付けになっています。
コントラストやシャープネスはかなり弱いので、詳細設定を調整し、引き締めて使うのが良いと感じました。
その他にも、ホワイトバランスとの掛け合わせで、黄色味の強弱を変えながら楽しむことができます。シーンに合わせたカスタムイメージのチューニングもPENTAXらしさであり、撮影体験の醍醐味です。
パラメーターの詳細設定について(リコー公式ページ)
フィルムを交換する感覚で画作りを変えられる機能として人気の高い、PENTAXのカスタムイメージの中で、上位機に搭載されたカスタムイメージ「里び(SATOBI)」や、「カスタムイメージ Special Edition」を楽しめることもPENTAX KFの魅力の一つでしょう。
常に光を意識して撮影したくなる色 カスタムイメージ「Gold」
あくまでも個人的な感触ですが、私の中でのカスタムイメージ「Gold」の印象は、アメリカ西部地域のような乾いた空気感のあるアメリカナイズされた色。
天候や日差しの角度によって仕上がりの雰囲気が左右されますが、軽やかな雰囲気も、重厚感のあるイメージにも使いやすい色です。空気を包み込んでくれる雰囲気が、これからの秋冬の乾いた空気にもピッタリです。
逆光はもちろん、順光でのまったりとした色合いも独特で、光を探して歩いていると、モノクロ写真を撮影しているかのような感覚を抱きます。まさに、写真撮影の醍醐味を感じられるカスタムイメージが「Gold」です。
夜の光・ナイトスナップ×カスタムイメージ「Gold」の色
日差しの美しさをキャッチしてくれるのは分かったところで、気になったのが夜の街、人工光での「Gold」がどのような印象を与えてくれるのか。ということでした。実際に撮影してみると、温もりを感じる柔らかい雰囲気から、煌びやかな光まで、まさに黄金色が楽しめます。これからの季節は、ネオンサインやシャンパンゴールドのイルミネーション撮影にも期待できそうな色です。
光源の色や光の強さにもよりますが、コントラストが低く、柔らかいカスタムイメージなので、詳細設定の調整項目でコントラストとシャープネスを「+1」にし、金属質などの被写体には明瞭度も「+1」加えると、画面全体が引き締まります。
おわりに
秋冬の低く差し込む日差しの美しさ、夕暮れ時や街の光が好きな私にとって、とても嬉しいカスタムイメージ「Gold」。写真撮影の基本として身に付けておきたい「光を求めて歩く感覚」とともに、柔軟にアングルを変えながら自在に撮影を楽しめるPENTAX KF。
街中、森林の中、夜の街を歩いてみて、撮影フィールドの幅広さに魅力を感じました。
もっといろいろなレンズを着けて様々な場所へ気軽に出かけたい。そんな気持ちにさせてくれるカメラです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。