はじめに
暑かった夏もやっと終わり、いよいよ本格的な紅葉シーズンとなった北海道。やはり赤や黄色に彩られた景色を見ているのは楽しいものです。ただ今年は暑い日が続き、10月に入っても25℃を超えることがあって、紅葉のコンディションは正直いうとあまり良くありませんでした。日本一早いと言われる大雪山の紅葉も遅れ気味であったうえに早い時期に雪が降ったために、山頂付近の見頃は短くなってしまいました。
今回はPENTAX KPを片手に、色とりどりの紅葉や秋の景色を探してネイチャースナップしてきました。
光を選ぼう
タイミングよくきれいな紅葉の景色に出会えたときに重要なのが、光の選び方です。曇天の場合はあまり光の変化がありませんが、晴天時に撮影できるときには、光を読んで撮影することが魅力的な写真に仕上げるポイントとなります。とくに日が低い朝や夕方は劇的に景色が変わります。しばらくその場で光の具合が良くなるのを待ってみましょう。
紅葉は日陰よりも光があたっている場所のほうが色を鮮やかに見せることができます。基本的に光が当たっている部分を中心に画面構成していくことです。広い景色に限らず、光を読んでイメージ通りになるのを待ち、良い光を逃さず撮影することが大切です。太陽の位置によっても景色は変わりますから、行き慣れた場所ではどの時間帯に撮影するかなども考えましょう。
被写体表面の反射を取り除いて色を鮮やかに見せるために、C-PLフィルターを使うことも有効です。今回の撮影では、ほとんどのシーンでC-PLフィルターを付けています。広角レンズで撮影するときには空がムラになることもありますので、必要であれば後処理をしてください。
曇天や雨の日などは影が出にくいので、葉の密度が高く影ができやすい場所の紅葉を撮影するときに適しています。空は白く写りますから、アップ気味の撮影に向いているとも言えます。
定番のあとに
紅葉の風景を撮影できる場所、とくに広い自然風景として見せられる場所というのは、全国的に有名な定番撮影スポットに限られてしまうでしょう。確実な被写体が期待できるので、撮影地の選定にそのような場所を選ぶのはいいと思います。
でも、定番の景色を撮影したらその周辺を見渡したり歩いたりしてみましょう。ここからがほんとうのネイチャースナップの始まりです。
メインとなる定番の景色のすぐ後ろにいい景色が広がっていることはよくあります。また、10分とか30分でもいいので、定番を撮影した近所を歩いてみるだけでも違った景色を見つけられることも多いです。遊歩道がなくても道路沿いに歩いてみるだけでもいいと思います。車で通り過ぎていた場所に魅力的な被写体があるのはよくあることです。
時間に余裕がない撮影プランを組んでいると名所巡りで終わってしまいますので、午前一ヶ所、午後に一ヶ所のような余裕を持つことも大切です。私はよほど状況が悪くなければ、一ヶ所で最低1時間は見て回るようにしています。
紅葉以外のものも見逃さずに
紅葉のような目立つ被写体があると、視点はついそちらばかりに向いてしまって、他のものを見逃しがちになります。紅葉がピークのタイミングであればそれもいいかもしれませんが、この時期だからこそ見られる被写体もありますし、紅葉以外のものがあれば組写真をまとめるときの内容に広がりが出てきますので、気になったものがあれば撮っておきましょう。
紅葉の時期は、木や草の実とか落ち葉なども彩りがあって秋らしい被写体になります。冷え込んだ朝には霜が降りていることもあるかもしれません。こういった多様な自然の姿に気づくことで、さらにいろいろな被写体を見つけることができるようになってきます。
レンズを変えて撮っておこう
一通り撮影したと思っても、レンズを変えると視点が変わって見えるものも違ってきます。せっかく一眼レフを使っているのであれば、横着をしないでレンズを変えてもう一度撮影した場所を見直してみましょう。
撮り慣れてくればその場その場で「このシーンはこのレンズ!」と判断できると思いますが、多くの人がカメラバッグをおろしてレンズを変えるのが面倒ということで、そのまま通り過ぎてしまうこともあるのではないでしょうか。
レンズを変えることで視覚を超えた写真ならではの見せ方も可能になりますから、表現することを考えるとレンズ交換は面倒がらずに行いたいものです。
PENTAX KPの印象
コンパクトなKPはネイチャースナップに適したカメラだと思います。いまのフルサイズミラーレス一眼よりも小さく軽く、手軽に持ち歩けます。今回のメインレンズは「smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR」に「HD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WR」と高倍率ズームの組み合わせで、効率よく撮影できました。
ただ、ボディはコンパクトすぎて私の手には小さいので、交換式のグリップをLに交換してあります。これでだいぶホールディングしやすくなりました。
ユーザーモードが5つあるのも便利で、K-3 Mark IIIと似たような設定を登録してあります。動体撮影はあまりしませんが、各機種共通の部分が多いほうが扱いやすいので、動体撮影の設定もしてあります。また、操作部分のカスタマイズも、可能な限り他機種に近いものにしています。
KPのバッテリーはK-1やK-3系とは違い、ちいさな「D-LI109」なので、減りが早いのは仕方がないところです。撮影中はこまめに電源をオン・オフしていました。また、冬のマイナス10℃以下のときの消耗も早く、動体撮影を連写するような撮影にはちょっと厳しいです。バッテリーグリップ「D-BG7」をつけると大容量の「D-LI90P」を使えるので冬の極寒時の撮影におすすめです。
まとめ
定番の撮影ポイントは、毎年撮影していても同じ構図で光や自然条件が違うだけということになりがちです。そのときは満足できてもあとから写真を見直すと変化がなく、また同じ写真という結果になりやすいです。
同じ場所に行っていつもと違う景色を見つけるために、ちょっと周辺を歩いてみることはとても大切です。ぜひ定番ポイントから少し歩くことを実践してみてください。今までと違う景色に出会えるはずです。
そしてPENTAX KPは、軽量コンパクトで質感の高い一眼レフが欲しいという人におすすめしたいカメラです。レンズも軽くて高倍率のものが揃っているところもおすすめのポイントになります。シルバーボディもありますので、リミテッドレンズと組み合わせて使うのも楽しいです。
最後にひとつお知らせです。2025年1月にタンチョウ撮影の勉強会を開催します。北海道で長年タンチョウを見続けている地元写真家ならではの視点で、タンチョウの撮り方をレクチャーします。詳しくはhttps://love-nature.me/2025otomariをご覧ください。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。