ネイチャースナップのすすめ|PENTAX KPで探す紅葉の景色

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|PENTAX KPで探す紅葉の景色

はじめに

暑かった夏もやっと終わり、いよいよ本格的な紅葉シーズンとなった北海道。やはり赤や黄色に彩られた景色を見ているのは楽しいものです。ただ今年は暑い日が続き、10月に入っても25℃を超えることがあって、紅葉のコンディションは正直いうとあまり良くありませんでした。日本一早いと言われる大雪山の紅葉も遅れ気味であったうえに早い時期に雪が降ったために、山頂付近の見頃は短くなってしまいました。

今回はPENTAX KPを片手に、色とりどりの紅葉や秋の景色を探してネイチャースナップしてきました。

紅葉に期待して出かけてみたものの、あまり色が鮮やかではなく枯れ葉も目立っていた。それを隠すために夕陽に照らされて赤みを帯びたところで撮影して、秋らしさを強調した。定番の絶景というのもだんだん撮りにくくなってしまうのは残念だが、それとは違う新しい景色を見つけたいものだ。
■撮影機材:PENTAX KP + HD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WR
■撮影環境:F11 1/250秒 -1EV ISO1600 WB:CTE

光を選ぼう

タイミングよくきれいな紅葉の景色に出会えたときに重要なのが、光の選び方です。曇天の場合はあまり光の変化がありませんが、晴天時に撮影できるときには、光を読んで撮影することが魅力的な写真に仕上げるポイントとなります。とくに日が低い朝や夕方は劇的に景色が変わります。しばらくその場で光の具合が良くなるのを待ってみましょう。

紅葉は日陰よりも光があたっている場所のほうが色を鮮やかに見せることができます。基本的に光が当たっている部分を中心に画面構成していくことです。広い景色に限らず、光を読んでイメージ通りになるのを待ち、良い光を逃さず撮影することが大切です。太陽の位置によっても景色は変わりますから、行き慣れた場所ではどの時間帯に撮影するかなども考えましょう。

被写体表面の反射を取り除いて色を鮮やかに見せるために、C-PLフィルターを使うことも有効です。今回の撮影では、ほとんどのシーンでC-PLフィルターを付けています。広角レンズで撮影するときには空がムラになることもありますので、必要であれば後処理をしてください。

曇天や雨の日などは影が出にくいので、葉の密度が高く影ができやすい場所の紅葉を撮影するときに適しています。空は白く写りますから、アップ気味の撮影に向いているとも言えます。

山の裏側から日が昇るために、光が射し込んできたのは7時頃だった。刻々と光が射し込んでくるのを待って撮影するのは、ワクワクする瞬間だ。逆光になるので、ハレ切りをしてフレアが出るのを防ぐことも大切だ。
■撮影機材:PENTAX KP + HD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WR
■撮影環境:F9 1/250秒 -1.3EV ISO400 WB太陽光
日没直前にもっとも光が赤みを増したところで撮影している。なんでもない景色も印象的に見える。PENTAX独自のWBであるCTE(Color Temperature Enhancement)は、色を強調してくれるものでドラマチックな印象をより強いものにしてくれる。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F7.1 1/250秒 -1EV ISO1600 WB:CTE
色鮮やかな紅葉には青空が似合う。晴天時には背景にきれいな青空が入るようなカメラポジションやアングルを選ぼう。雲が流れているときは雲の位置にも注意して撮影のタイミングを選ぶことも大切だ。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/250秒 ISO1600 WB太陽光
紅葉の葉の反射を抑えて色を鮮やかに再現するために、C-PLフィルターは欠かせないアクセサリーだ。ただ、広角レンズでは空にムラが起きることがある(左)。気になる場合は、後処理で空の濃度をおさえるように調節するといいだろう(右)。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/250秒 +0.7EV ISO1600 WB太陽光
曇天の光は影が出にくいので、このような葉が重なって影が気になるようなシーンを撮影するのに適している。撮りたいイメージによってどんな光が適切なのか選ぶことはとても大切だ。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F2.8 1/160秒 ISO400 WB太陽光

定番のあとに

紅葉の風景を撮影できる場所、とくに広い自然風景として見せられる場所というのは、全国的に有名な定番撮影スポットに限られてしまうでしょう。確実な被写体が期待できるので、撮影地の選定にそのような場所を選ぶのはいいと思います。

でも、定番の景色を撮影したらその周辺を見渡したり歩いたりしてみましょう。ここからがほんとうのネイチャースナップの始まりです。

メインとなる定番の景色のすぐ後ろにいい景色が広がっていることはよくあります。また、10分とか30分でもいいので、定番を撮影した近所を歩いてみるだけでも違った景色を見つけられることも多いです。遊歩道がなくても道路沿いに歩いてみるだけでもいいと思います。車で通り過ぎていた場所に魅力的な被写体があるのはよくあることです。

時間に余裕がない撮影プランを組んでいると名所巡りで終わってしまいますので、午前一ヶ所、午後に一ヶ所のような余裕を持つことも大切です。私はよほど状況が悪くなければ、一ヶ所で最低1時間は見て回るようにしています。

定番となる展望台から見る紅葉の景色。まだ緑が残っているところもあるが、見頃となっていた。毎年同じような景色を撮影していても、良い年・悪い年があるので変化はあるが、冷静に見れば同じ景色だ。これだけで撮影を終わるのはもったいないので、プラスアルファとなる景色を探していこう。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/250秒 -0.7EV ISO1600 WB太陽光
定番の景色を撮影したすぐ右側がこの景色だ。山襞の影や手前の黄葉などとても印象的なのだが、多くの人は正面の定番だけを撮影して帰っていく。ちょっと意識を違うところに向けるだけで見つかる景色はたくさんあるのだ。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/125秒 -1EV ISO1600 WB太陽光
展望台から登山道を少し歩いたところで色鮮やかなナナカマドをみつけた。先程の展望台では近くに赤い紅葉はなかったので、歩いてみて良かったと思う。このちょっとの移動が撮影の成果に大きな違いを生むことも多い。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/200秒 ISO1600 WB太陽光

紅葉以外のものも見逃さずに

紅葉のような目立つ被写体があると、視点はついそちらばかりに向いてしまって、他のものを見逃しがちになります。紅葉がピークのタイミングであればそれもいいかもしれませんが、この時期だからこそ見られる被写体もありますし、紅葉以外のものがあれば組写真をまとめるときの内容に広がりが出てきますので、気になったものがあれば撮っておきましょう。

紅葉の時期は、木や草の実とか落ち葉なども彩りがあって秋らしい被写体になります。冷え込んだ朝には霜が降りていることもあるかもしれません。こういった多様な自然の姿に気づくことで、さらにいろいろな被写体を見つけることができるようになってきます。

展望台からさらに奥へ歩いていくと、日陰になったところで霜が降りていた。光が射し込んで溶け始めていたが、気温も高かったので意外な被写体を見つけられたことが嬉しかった。紅葉の色だけでないところに目を向けることも大切だ。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F11 1/125秒 -0.3EV ISO1600 WB太陽光
少し標高の低いところでは、まだトンボの姿もたくさんあった。多くは地面の上にとまっていたが、運良く色づいたイタドリの葉の上にとまったものがいたので、望遠ズームで離れたところから撮影した。目についた被写体があったら、より良いシチュエーションにならないか、しばらく見ているとチャンスがやってくることも多い。
■撮影機材:PENTAX KP + HD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WR
■撮影環境:F7.1 1/250秒 +0.3EV ISO800 WB太陽光
歩道脇に咲いていたノコンギク。その根本には黄色くなったシラカバの葉が落ちていて、いかにも秋らしい色の組み合わせだったので切り取った一枚。こういったちいさな秋の景色は、車で移動していたら見逃してしまうものがたくさんあるだろう。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
■撮影環境:F7.1 1/250秒 -0.3EV ISO200 WB太陽光

レンズを変えて撮っておこう

一通り撮影したと思っても、レンズを変えると視点が変わって見えるものも違ってきます。せっかく一眼レフを使っているのであれば、横着をしないでレンズを変えてもう一度撮影した場所を見直してみましょう。

撮り慣れてくればその場その場で「このシーンはこのレンズ!」と判断できると思いますが、多くの人がカメラバッグをおろしてレンズを変えるのが面倒ということで、そのまま通り過ぎてしまうこともあるのではないでしょうか。

レンズを変えることで視覚を超えた写真ならではの見せ方も可能になりますから、表現することを考えるとレンズ交換は面倒がらずに行いたいものです。

登山道の足元にマイヅルソウの赤い実がたくさんできていた。小さな実なので、マクロレンズでクローズアップして、その存在が伝わるように撮影した。ハート型の葉の形も分かる角度から撮れる実を選んでいる。
■撮影機材:PENTAX KP + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4.5 1/250秒 +0.7EV ISO400 WB太陽光
木の根元近くに色づいたツタウルシが巻き付いていた。それほど大きな葉ではなかったので、フィッシュアイズームでローアングルから見上げて葉を大きく見せると同時に、周りの環境も写し込んだ。KPは液晶が上を向くので、こういう撮影も楽にできるのがいい。
■撮影機材:PENTAX KP + HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED
■撮影環境:F11 1/250秒 ISO800 WB太陽光

PENTAX KPの印象

コンパクトなKPはネイチャースナップに適したカメラだと思います。いまのフルサイズミラーレス一眼よりも小さく軽く、手軽に持ち歩けます。今回のメインレンズは「smc PENTAX-DA 18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR」に「HD PENTAX-DA 55-300mmF4-5.8ED WR」と高倍率ズームの組み合わせで、効率よく撮影できました。

ただ、ボディはコンパクトすぎて私の手には小さいので、交換式のグリップをLに交換してあります。これでだいぶホールディングしやすくなりました。

ユーザーモードが5つあるのも便利で、K-3 Mark IIIと似たような設定を登録してあります。動体撮影はあまりしませんが、各機種共通の部分が多いほうが扱いやすいので、動体撮影の設定もしてあります。また、操作部分のカスタマイズも、可能な限り他機種に近いものにしています。

KPのバッテリーはK-1やK-3系とは違い、ちいさな「D-LI109」なので、減りが早いのは仕方がないところです。撮影中はこまめに電源をオン・オフしていました。また、冬のマイナス10℃以下のときの消耗も早く、動体撮影を連写するような撮影にはちょっと厳しいです。バッテリーグリップ「D-BG7」をつけると大容量の「D-LI90P」を使えるので冬の極寒時の撮影におすすめです。

PENTAX全般にいえることだが、風景撮影で色の濃い部分や暗い部分が多いシーンを撮影するときには、しっかりマイナス補正をすることが必要だ。左側が露出補正なしでかなり明るく写ってしまっている。右側がマイナス1.7EVの補正をして、見た目の印象に近い露出だ。カメラ任せで後処理をするのではなく、撮影時にイメージに近い露出で撮影できるようにカメラを使いこなしていこう。
KPの使いやすいところはユーザーモードが豊富なこと。5つのユーザーモードがあるので、普段使う設定はたいてい登録できワンタッチで切り替えができる。私はK-1やK-3系とほぼ同じ内容で登録しているが、KPは液晶を動かせて星の撮影で便利なので、U4には星の撮影用の設定を登録してある。
交換可能なグリップは、一番サイズの大きな「L」に交換してある。カメラボディ自体が小さいため標準のものでは指に引っかかりが少なく、カメラを手にして歩いていると手が疲れてしまうことがあったからだ。このように手のサイズに合わせてグリップ感を調節できるのはありがたい。
ボタンのカスタマイズでは、「Fx1ボタン」には絞り込みのプレビュー機能を、「Fx3ボタン」にはISO感度を割り当てている。自分にとって使いやすいカメラにするために、積極的にカスタム機能を活用していきたい。
スマートファンクションは魅力的な操作系ではあるものの、KPに搭載されているものは私の用途には合わなかったので、とくに利用していない。もっとカスタムに自由度が高ければ利用していたと思う。K-1やK-3 Mark IIIでは、クロップを割り当てている。

まとめ

定番の撮影ポイントは、毎年撮影していても同じ構図で光や自然条件が違うだけということになりがちです。そのときは満足できてもあとから写真を見直すと変化がなく、また同じ写真という結果になりやすいです。

同じ場所に行っていつもと違う景色を見つけるために、ちょっと周辺を歩いてみることはとても大切です。ぜひ定番ポイントから少し歩くことを実践してみてください。今までと違う景色に出会えるはずです。
 
そしてPENTAX KPは、軽量コンパクトで質感の高い一眼レフが欲しいという人におすすめしたいカメラです。レンズも軽くて高倍率のものが揃っているところもおすすめのポイントになります。シルバーボディもありますので、リミテッドレンズと組み合わせて使うのも楽しいです。

最後にひとつお知らせです。2025年1月にタンチョウ撮影の勉強会を開催します。北海道で長年タンチョウを見続けている地元写真家ならではの視点で、タンチョウの撮り方をレクチャーします。詳しくはhttps://love-nature.me/2025otomariをご覧ください。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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