【レビュー】この超広角レンズは、明るい低価格レンズでコスパ最強!|SAMYANG AF14mm F2.8
サムヤンお得意の14mmの超広角AFモデル
■絞り優先AE(F8.0、1/400秒)/ISO 100/WB:オート
■ピクチャースタイル:オート
カメラやレンズをみると解像力や高ISO感度特性、ダイナミックレンジ、ぼけディスク、周辺光量落ち、最短撮影距離などの実写チャートを撮影したくなるというマニアックな気質を持つ齋藤千歳です。
今回はSAMYANG AF14mm F2.8について、電子書籍『SAMYANG AF14mm F2.8 EF 機種別レンズラボ』に掲載した解像力やぼけディスク、最短撮影距離、周辺光量落ちの実写チャートのデータを元に、実写の撮影写真をメインに解説していきます。
サムヤンは現在、日本国内ではケンコー・トキナーが販売代理店になっており、2019年8月現在32のレンズがラインアップされています。そして32本のラインアップ中なんと4本が14mmの単焦点となっており、レンズラインアップの約12%が14mmの単焦点というわけです。少なくても私はこんなに14mmの単焦点が好きなレンズメーカーをほかに知りません。
サムヤンレンズを代表する14mmの単焦点レンズ
■絞り優先AE(F8.0、10秒)/ISO 16000
■WB:色温度(3,800K)/ピクチャースタイル:風景
サムヤンレンズが日本で有名になった理由のひとつに星や星景写真を撮影する人々から高い評価を得たことがあるという話は前回もしました。この星を撮影する人々は、写真撮影を趣味とする人々のなかでも光学性能に厳しいことで知られています。それは、特に広角レンズで「星のような点を画面全体で点として描写することは大変難しい」からです。
「どういうこと?」となりますよね。
星景写真を撮影する方々は、広い範囲の星と風景が入るようにより広角で、ノイズを避けるためできるだけ短い露光時間で、低いISO感度での撮影ができるように明るいレンズを求めています。さらに画面周辺の星までもが変形しないように各種収差の少ない、しかもできることなら価格の安いレンズを探しているわけです。掲載写真のように画面の端まで星が写った写真を見ながら、レンズ周辺部での収差による星の変形などを細かくチェックする方も多く、星の撮影自体がレンズ性能テストに近い撮影といえるのです。そのため、星を撮影する人はレンズやカメラ性能にこだわる方が多くいます。
毎回レンズテストのような星を撮影する人々が、そのコストパフォーマンスのよさを高く評価しているレンズがSAMYANG 14mm F2.8 ED AS IF UMCです。このレンズの評判を聞いてサムヤンレンズを初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。さらに明るく、高画質をねらったSAMYANG XP 14mm F2.4は、より高いレベルを目指すハイアマチュアのなかでも高い評価を受けています。さらにソニー Eマウント向けのAFモデルであるSAMYANG AF14mm F2.8 FEが用意されており、キヤノンEFとニコン Fマウント向けのAFモデルとしてSAMYANG AF14mm F2.8が用意された形です。
豊富なラインアップと高い評価が相まって14mmの単焦点はサムヤンを代表するレンズと言えます。
好循環が生み出した高性能な超広角AFレンズ
■絞り優先AE(F2.8、1/30秒)/ISO 125/露出補正:−0.7EV
■WB:日陰/ピクチャースタイル:風景
サムヤンの14mm単焦点レンズは、好循環が生み出したレンズともいえるでしょう。ユーザーからの評価が高いので売れる、売れるから新しいモデルを投入できる、新しいモデルを投入するからレンズ設計などのノウハウが溜まりより高性能化するからユーザーの評価が上がるという好循環が生み出したと推測されます。
SAMYANG AF14mm F2.8はサムヤン初のキヤノンEFマウント向けのAFレンズで、キヤノン EF用が先行して発売されたあとニコン F用も発売されました。実勢価格で20万円を超えてくるような純正の14mmF2.8に比べると半額以下で手に入れられる価格帯でコストパフォーマンスが高く、お求めやすい価格設定になっています。
F8.0前後でレンズ解像力は最高になる
■絞り優先AE(F2.8、1/30秒)/ISO 125
■露出補正:−0.7EV/WB:日陰/ピクチャースタイル:風景
具体的なレンズの特性をEF用モデルの実写チャートの結果から紹介していくと、SAMYANG AF14mm F2.8の中央部分の解像力は非常に高く、絞り開放のF2.8と、このレンズの解像力のピークになるF8.0前後の描写を比べても、実際の撮影画像では違いを見分けることが困難なレベルになっています。また、気になる周辺部分の解像力については、実際の撮影で問題なることはほぼないレベルですが、当然開放付近の方があまくなる傾向があり、F4.0に絞ると開放のF2.8よりもワンランクシャープネスが上がる印象です。F5.6で周辺部の解像力はさらに上がり、F8.0前後が中央部、周辺部を含めて、画面全体の解像力がピークとなります。ただし、F16以降では、はっきりとした回折や小絞りぼけによる解像力の低下がみられるので、F16やF22といった絞りを使うときは明確な撮影意図をもって選択することをおすすめします。
SAMYANG AF14mm F2.8の最短撮影距離は20cmとかなり寄れる仕様で、最大撮影倍率も0.15倍まで近づけます。14mmの超広角ですので、はっきりとしたパースペクティブが発生しますので、これをどう活用するかも本レンズの使いこなしのポイントになるでしょう。
周辺光量落ちには後処理で対応するのがおすすめ
■絞り優先AE(F8.0、1/500秒)/ISO 100
■WB:太陽光/ピクチャースタイル:風景
基本的に14mmの超広角レンズなので、ぼけの美しさに期待する方は多くはないと思いますが、中央部分と周辺部分のぼけの形の差は大きいものの、比較的素直なぼけが得られる傾向になっています。近接撮影の際などには、絞り開放で背景をぼかすという撮影も楽しいでしょう。
SAMYANG AF14mm F2.8でもっとも気になるポイントは、周辺光量落ちです。しかし、周辺光量落ちを減らすために絞っては、せっかくのF2.8の明るさが台無しです。気になるシーンではRAW+JPEGなどで撮影しておき、RAW現像時の補正で対応するのがおすすめです。カメラ本体では補正してくれない周辺光量落ちもRAW現像ソフトなどで同じようにデジタル補正できるので、これを上手に活用してみてください。
最後にAFについてですが「超広角で被写界深度が深いからMFでも十分」という意見も理解できます。しかし、被写界深度が深いが故に画面内のどこにピントを合わせたか、光学ファインダーで確認できなくなることもあり、AFを併用することで自分がどこにピントを合わせているかを把握しやすく便利です。また、スナップ的に超広角を使う際にもAFはとても重宝します。
SAMYANG AF14mm F2.8は8万円台で14mmF2.8でのAFを実現してくれ、周辺光量落ちや歪曲といったRAW現像時の後処理などでデジタル的に補正しやすい部分にしか光学的な問題を感じません。より価格の安い14mmF2.8ならSAMYANG 14mm F2.8 ED AS IF UMCがありますし、より光学性能の高いマニュアルレンズならSAMYANG XP 14mm F2.4もありますが、価格やレンズのサイズ、利便性などを考えると非常にバランスのよい14mmF2.8に仕上がっています。35mm判フルサイズのキヤノン、ニコンの一眼レフで超広角レンズに悩んだら、ぜひ候補のひとつに入れておきたいレンズです。