サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE|コレ1本で大満足!大口径オールラウンダーズームレンズ

坂井田富三
サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE|コレ1本で大満足!大口径オールラウンダーズームレンズ

はじめに

 今回紹介するレンズは、新発売になったサムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」。この「サムヤン」は、1972年に韓国で創業されたメーカーで、2010年頃から日本に正規輸入が開始され、現在は販売代理店として株式会社ケンコー・トキナーが扱っているレンズメーカーです。

 サムヤンのレンズは、リーズナブルな価格で高性能なラインナップを揃えています。特に単焦点レンズには魅力ある商品が揃っていますが、今回は新しく発売になった大口径のズームレンズ「AF 35-150mm F2-2.8 FE」の気になるスペックとその写りをご紹介します。

AF 35-150mm F2-2.8 FEの基本スペックと魅力

 サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」のセールスポイントは、焦点距離が準広角35mmから中望遠150mmまでをカバーしつつも、開放F値はF2~F2.8の明るさを持つ大口径というところ。150mm側でF2.8の大きなボケを表現できるのはもちろん、35mm側でのボケを活かした撮影ができる非常に魅力的なレンズです。

 この画角のズームレンズと言えば、タムロンの「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」がありますね。ポートレート撮影で人気のあるレンズですが、サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」もタムロンのレンズとほぼ同等のスペックで今回登場しています。

 サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」とタムロン「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」を比較してみると、レンズ構成に違いがありレンズの大きさや重量も少し異なっているものの、非常によく似たレンズになっています。ここまで似ていると写りの違いとか確認してみたくなるのですが、残念ながらタムロン「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD」を所有していないので今回はお預けです。機会があれば同条件で撮り比べをしてみたいと思います。

サムヤン
AF 35-150mm F2-2.8 FE
タムロン
35-150mm F/2-2.8 Di III VXD
焦点距離 35-150mm 35-150mm
レンズ構成 18群21枚 15群21枚
開放絞り F2(35mm) / F2.8(150mm) F2(35mm) / F2.8(150mm)
最小絞り F16(35mm) / F22(150mm) F16(35mm) / F22(150mm)
フィルター径 82mm 82mm
絞り羽根枚数 9枚 9枚
最短撮影距離 0.33m(35mm) / 0.85m(150mm) 0.33m(35mm) / 0.85m(150mm)
最大撮影倍率 0.175倍(35mm) / 0.18倍(150mm) 1:5.7 (35mm) / 1:5.9 (150mm)
手ブレ補正
最大径×全長 92.8×157.4mm 89.2×158mm
質量 1,231g 1,165g
発売日 2023年5月 2021年10月

 

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm

 「AF 35-150mm F2-2.8 FE」を実際にいろいろなシーンで使ってみて、焦点距離35mm~150mmと日常的に使用するにあたって、使い勝手が良い焦点距離をカバーしている事と、大口径レンズならでは大きなボケが楽しめるメリットを感じました。

 半面、大口径レンズならではレンズの重量がこのレンズのデメリットです。最近のレンズは小型軽量化が進んでいる状況で、レンズ重量が1,231gとずっしりとくる重さ。カメラボディ(バッテリー含む)と組み合わせると約2kgの重量になるので、一日持っていると結構な負担になります。35mm~150mmの焦点距離を考えると、標準ズームとして使え複数の交換レンズを持たなくても対応できるメリットがあるものの、一日中肩からカメラ+レンズをぶら下げていると少々疲れました。大口径レンズの恩恵を受けるためには重量増は仕方がないのですが、少しレンズが重いかなと感じます。

 また、このレンズの大きさ・重量でレンズに三脚座が無いので、三脚を使用する際にはカメラ側で三脚に固定せざるを得ないので、三脚を使用した際にはバランスが悪く注意が必要と感じます。

焦点距離35mmの状態
焦点距離150mmの状態(筺体が約40mm程度伸びます)
レンズ左側には持ち運び時のズームロック機構あり

 レンズ上部から左側にかけて各種スイッチがデザインされており、フォーカスリングで絞り設定ができるカスタムスイッチ、フォーカスホールドボタンなど、便利な機能も装備しています。

 カスタムスイッチの切り替えで、オートフォーカス時にはピントリングを絞りリングとして使用する事が可能になります。動画撮影時には、非常に使い勝手の良い仕様です。静止画撮影においては、クリック感が無いのと、素早く動かした時にやや遅れて絞り設定が変更される感じがするので、意図したい絞り値にピッタリ合わすには少し慣れが必要になります。

 フォーカスホールドボタンはカメラ側でのカスタム設定が割り当てできるので、瞳AFの設定割り当てなどご自身の必要な機能を割り当てて使うことができます。

 肝心な写りの方ですが、絞り開放での周辺の解像の甘さはありますが、少し絞れば35mm側でも150mm側でも周辺まで非常にシャープな描写をするレンズです。

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF11 ISO800 焦点距離35mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF11 ISO800 焦点距離150mm

 ボケに関して言えば、望遠側で絞りを開けて撮影した際に前ボケで少し流れるようなボケが発生する場合があります。被写体や構図によっては注意が必要になってくる感じです。

 下の写真は、海岸で見つけた貝殻やテントを絞り開放で撮影してみた写真ですが、周辺の流れるような前ボケが顕著に発生した写真になります。

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF2.8 ISO200 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO200 焦点距離150mm

 実際に「AF 35-150mm F2-2.8 FE」使ってみて感じたことは、焦点距離が自分に絶妙に合っていて日常のスナップやイベントなどを撮影する際に凄くマッチしていました。F値が明るいおかげで屋内の撮影にも使いやすいですし、イベント撮影などではレンズ交換の手間が省けスムーズな撮影をこなすことができる魅力的なレンズです。

 「AF 35-150mm F2-2.8 FE」は、全体的に使い勝手はまずまずのレンズなのですが、ただ気になる点を一つ挙げると「α1」を使用して水族館で撮影したドルフィンショーの撮影データを何パターンか確認すると、連写設定H+で設定しているにも関わらず最高15コマ程度までしか連写ができていませんでした。サードパーティー製のレンズの制限なので仕方ないかもしれませんが、機種によってはカメラの性能がフルに発揮できない点が残念なポイントです。

■使用機材:SONY α1 + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.5 ISO6400 焦点距離68mm

サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」で動植物園撮影

 サムヤン 「AF 35-150mm F2-2.8 FE」を持って、動植物園で撮影をしてみました。望遠側の焦点距離150mmというのが、動物園で動物を撮影するのには少々物足りない感じがしましたが、比較的距離の近い動物撮影や、特にフェンス越しの動物などは大口径レンズならでは恩恵を受けられました。

 下の写真は金網のフェンス越しで撮影したものですが、望遠150mmの焦点距離と絞り開放F2.8のおかげで、金網フェンスの影響を最小限にできています。金網越しに撮影すると全体的にフェンスの影響が出てモヤっとした感じになりますが、その中でもピントを合わせた瞳とその周辺部が非常にシャープに写ったのがとても印象的でした。

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/2500 絞りF3.5 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF2.8 ISO200 焦点距離35mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/4000 絞りF2.8 ISO800 焦点距離112mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りF8 ISO200 焦点距離150mm

 サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」は、F8以上に絞れば周辺部の解像感も上昇し全域でシャープな画像になります。様々シーンに対応できる焦点距離を持っていながら、必要にして十分な解像感をキープできている使い勝手の良いレンズですね。

サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」で郷土博物館撮影

 千葉県浦安市にある「浦安市郷土博物館」に行って少し撮影をしてみました。この「浦安市郷土博物館」の屋外展示場では、浦安が漁師町として最も活気に満ちあふれていた昭和27年ごろの浦安を再現されていて、レトロな街並みや建物などを見ることができます。

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF14 ISO400 焦点距離35mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF2.8 ISO100 焦点距離35mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/4000 絞りF2.8 ISO400 焦点距離51mm

 サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」は、焦点距離35mm側でも絞りをあけて撮影すれば、大きなボケを活用できるのでメインの被写体の立体感を協調できる撮影ができます。

■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/30 絞りF2.8 ISO100 焦点距離35mm
■使用機材:SONY α7R V + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/60 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm

 屋内の資料展示では、ミニチュアで当時の浦安が再現されている風景などがあり、魅力的なスポットです。サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」の最短撮影距離は150mm側で0.85mなので、もう少し寄れると嬉しいのですが、必要にして十分といったところ。実際に小さなミニチュアの魅力・精巧さを十分に引き出せるレベルでした。

サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」でモトクロスレース撮影

 丁度モトクロスレースを撮影する機会があったので、サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」で撮影をしてみました。モトクロスレースを撮影する時、普段は100-400mmクラスのレンズを使用する事が多いのですが、モトクロスレースは比較的コースの近いところから撮影できる場所もあるので、サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」でも迫力のある撮影ポジションをピックアップして撮影をしてみました。

 撮影当日は曇り時々雨といったお天気で、巻きあがる砂埃と小雨の組み合わせは厳しいコンディションでカメラ・レンズにとって過酷な状況でしたが、サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」は、マウント部やボディ全体で合計11カ所にウェザーシーリングを施されているので安心して使用することができました。

■使用機材:SONY α7R IV + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/5000 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R IV + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/4000 絞りF2.8 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R IV + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/8000 絞りF2.8 ISO800 焦点距離92mm
■使用機材:SONY α7R IV + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りF18 ISO800 焦点距離150mm
■使用機材:SONY α7R IV + サムヤン AF 35-150mm F2-2.8 FE
■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF22 ISO800 焦点距離128mm

 サムヤン独自のリニアSTM(ステッピングモーター)を搭載しており、動体撮影においても高速で精度の高いオートフォーカス機能で被写体を捉えてくれました。 もちろんカメラのオートフォーカスの精度との組み合わせによって体感できる感覚は変わってくると思いますが、今回のモトクロスレース撮影では、α7R IVとの組み合わせでも、満足度の高い精度で撮影をする事ができています。

まとめ

 サムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」を様々なシーンで撮影をしてみましたが、非常に満足度の高いレンズでした。あえて難点を言うのであれば、レンズの重量と大きさでしょうか。カメラとの組み合わせで約2kgにもなる重量は一日肩かけていると結構な負担です。35-150mmの焦点距離をレンズ1本でカバーするので、いろいろなレンズを同時に持つ負担は減りますが、1本の重さが重いのはそれなりに負担になる場合もあります。

 普段から大口径の大きな重いレンズに慣れているユーザーはあまり気にならないかもしれませんが、初めてこのレンズを使うと少し重さが気になるかもしれません。しかしその重さ以上にレンズ交換の手間を省き、レンズ1本で様々な画角に対応でき大きなボケを活かした撮影ができるオールラウンダーレンズのサムヤン「AF 35-150mm F2-2.8 FE」は魅力あるレンズです。

 

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

 

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