シグマ 105mm F2.8 DG DN MACRO Art レビュー | 待望のミラーレス専用Artライン マクロレンズ
はじめに
シグマから待望のマクロレンズが登場した。このミラーレスカメラネイティブの「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」は、あらゆる収差を徹底的に抑え込み、スリムかつ軽量で、絞りリング搭載で操作性も高く、近接撮影はもちろんのこと中望遠レンズとして、あらゆるジャンルの被写体を確実に受け止めてくれる1本に仕上がっていた。
高まるマクロレンズ需要
「日常さえも想像以上」というキャッチコピーで登場した「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」。一体これはどういうことだろうか。「ステイホーム」のかけ声とともに「感染をしない、させない」ため、テレワークや外出の自粛が求められた2020年の状況が、マクロレンズの需要を後押ししたのである。外出を控え、家の中で小物や衣類、そして料理などを撮る人が増えたのだ。何気ない日常のワンシーンをデジタルカメラで撮影する人が多く現れたというわけだ。そこへタイムリーに登場したのがこの中望遠マクロレンズだ。今までは「70mm F2.8 DG MACRO」しかラインナップになかったが、よりワーキングディスタンスが取れるこの105mmが、ライフスタイルにちょっとした変化を与え、「日常さえも想像以上」に楽しめますよ、というシグマからのメッセージなのである。
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art のスペック
レンズ構成枚数 12群17枚
画角 23.3°
絞り羽根枚数 9枚 (円形絞り)
最小絞り F22
最短撮影距離 29.5cm
最大撮影倍率 1:1
フィルターサイズ φ62mm
最大径 × 長さ φ74mm × 133.6mm(Lマウント)
最大径 × 長さ φ74mm × 135.6mm(ソニー Eマウント)
質量 715g (Lマウント)
質量 710g (ソニー Eマウント)
付属品 ケースおよび花形フード(LH653-01)
■引用:SIGMA HP
ミラーレス専用Artライン初のマクロレンズとなるこの「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」。「Art」ラインの名に恥じない光学性能至上主義の元、画面中心部はもとより、周辺部までフラットで高解像感を実現した。実写したデータを4Kディスプレイで見ると唸ってしまうほどの描写である。軸上色収差も皆無で、ボケの形状も円形で気持ちがいいのだ。シグマの心意気を感じられるマクロレンズに仕上がっている。
使用感をチェック
写りもバツグンだが使い勝手も素晴らしい。指がかりがよく、繰って心地よい絞りリングは、クリック感のオンオフができる仕様となっている。「SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art」と同様に「A」位置で固定、または「A」に入らない開放から最小絞りの範囲でロックする「絞りリングロックスイッチ」も採用。さらにカメラボディからさまざまな機能を割り当てることができる「AFLボタン」も装備されている。ピントの移動量が多いマクロレンズなのでフォーカスリミッタースイッチももちろん搭載されている。悪天候でも安心な防塵防滴構造と撥水・防汚コートも施されているので、フィールでの撮影も怖いものなしである。
描写をチェック
さて「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」の写りを見ていこう。使ったカメラは大人気のフルサイズミラーレス一眼カメラ「SIGMA fp」である。
秋に咲く花の代名詞・曼珠沙華(まんじゅしゃげ)。その様子を絞り開放で捉えた。刈り入れを終えた水田の畦に咲いていたが、105mmという焦点距離で画面内に大きく写し込むことが可能だった。背景のボケ感も品があって美しくまとまっている
相模湾にある漁港を撮り歩いていて気になった圧力計。その様子をクローズアップで。F5.6のチョイ絞りでカッチリ感を出した。メタリックの表現と錆の描写がなかなかである。マクロレンズはふと目に付いたものをしっかりと記憶に残してくれる
「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」は中望遠レンズとしても優秀だ。絞り開放から滲みもなくシャープな像を提供してくれる。観光客の背負ったバックパックの質感描写がいい感じである。F2.8という明るさは自然で優しい写りを楽しめる
巣ごもり需要でマクロレンズの人気が高くなったが、この「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」1本あればさまざまな被写体に迫って撮影できる。つまり何でも被写体に変身するのだ。波打ち際で見つけた流木もモノクロームに仕上げればご覧のとおり。ものをしっかりと発見する力を養ってくれるレンズだ
公園に展示されている蒸気機関車。その重厚感を余すところなくキャプチャーできるのが「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」だ。厚く塗られたペイントと、やや波打った金属感がいい。特に「D51 408」と書かれたプレート部分のベコベコ感が何とも言えない
下町で発見した懐かしい雰囲気の建物をF8に絞ってシャッターを切った。瓦でできたひさしの立体感、すだれの日焼け具合と解像感、そして青々とした蔦の生命力を「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」は克明にメモリーカードに定着してくれた。このリアル感は半端ない
外車のヘッドライトを切り取ったが、艶やかにその光景を再現できた。ビビッドな発色は現場で感じた色そのものだ。解像感、ヌケ感だけでなく、色再現性もピカイチである。オートフォーカスも正確である
マクロレンズは特殊なレンズだと思われることが多いが、この「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」はググッと寄れる中望遠レンズだと思って入手して欲しい。ポートレートからスナップショット、風景、静物、フード撮影などあらゆるシーンで使い勝手のよさを感じることができるはずだ。描写は折り紙付きなので、このレンズを使うことができるライカLマウントおよびソニーEマウントユーザーは幸せだ
どんな方にオススメ?
植物や昆虫などクローズアップ撮影が好きな人はもちろん、精細感とヌケ感が両立した中望遠レンズが欲しい人にオススメだ。絞り開放からほとんどの収差がない極上の写りとボケ味を堪能できる。スリムかつ軽量なので携行も楽チンで、幅広いシチュエーションで近接および中望遠の遠近感を楽しめる。ズームレンズ主体の構成にまず加える1本としてもいいチョイスになるだろう。
まとめ
大口径、ショートフランジバックというミラーレス専用設計の「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」はまさにこれからの時代を牽引するマクロレンズと言えるだろう。極限まで封じ込めた収差やゴーストとフレア、品格が感じられる美しいボケ味、ホールドする手に馴染むスリムなレンズ鏡筒、節度感ある絞りリングなど、写りと使い勝手を高次元でまとめた1本だ。ライカLマウント版には1.4倍と2倍のテレコンバーターも用意されているので、よりクローズアップ撮影を楽しみたい人の期待にも応えてくれるはず。まずはキタムラ店頭で手にして、このレンズのオーラを感じてみて欲しい。
■写真家 三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。