SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art レビュー|世界初フルサイズ対応 F1.4 魚眼レンズ
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」とは
世界初(2024年2月現在)となる35mmフルサイズ対応F1.4対角魚眼レンズがシグマから登場しました。前回ご紹介した「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS | Sports」とともにCP+ 2024の前日に発表され、パシフィコ横浜のシグマブースでご覧になったShaSha読者も多いことでしょう。大変な人だかりで人気でしたね。このレンズは星景や建築写真を撮影するフォトグラファーはとても気になる製品になっています。そのスゴさの一端をのぞいてみましょう。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」の特徴
迫力のある超広角レンズの歪曲効果を楽しめる「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」。しかも開放F1.4という明るさは驚きのスペックです。それを実現するためにシグマは惜しみない技術を投入しました。特殊低分散ガラスのFLD4枚、SLD3枚、非球面レンズ2枚を含む15群21枚というリッチな硝材とレンズ構成で、開放から画面全体で高い点像再現性と解像力を発揮します。F1.4という明るさと高次元の描写力は星景撮影はもちろん、風景からアーティスティックな撮影表現に素晴らしい写りを約束してくれることでしょう。
写りは圧巻です。180°の画角で迫力満点の遠近感や被写体の強調を楽しめます。低照度環境でもそれが可能です。また広い画角を誇るがゆえに太陽や点光源がフレーム内に入るシチュエーションが多い魚眼レンズですが、シグマの精鋭チーム「ゴーストバスターズ」が最先端のシミュレーションを行い、あらゆる条件の入射光に対し対策を行っているとのこと。これによって高い逆光耐性を達成しています。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はシグマの「Art」ラインに属するレンズです。ですので他ラインナップ同様に素晴らしいビルドクオリティとなっています。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」に似たルックスとなっていますが、画質と操作性を優先した結果、ほとんどのパーツは新規に作り起こしたものになっているようです。スゴいですね。
便利機能も搭載されています。「LOCK」位置にするとフォーカスリング操作が無効となるMFL(マニュアルフォーカスロック)スイッチは暗闇の星景撮影時に役立つことでしょう。また結露防止のためレンズ鏡筒にレンズヒーターを巻くシーンではフロント周りに設けられた段差のレンズヒーターリテーナーが不用意なケラレを防ぎます。
前玉が巨大かつ湾曲しているのでフロントフィルターの装着ではなく、後玉部分にシート状のフィルターを付けられるようリアフィルターホルダーを標準装備しています。さらにはそのシート状のフィルターを2枚収納できるロック付きのカバーレンズキャップが付属します。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」のものと似ていますが「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」専用品なので取り間違える心配も無用ですね。脱着式の三脚座にも注目です。軽量かつ丈夫なマグネシウム合金製で、うれしいことにアルカスイス互換となっているので三脚への着脱も簡単でスピーディーに行えます(三脚座(TS-141)はSIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art用と共通)。
LマウントとEマウントユーザーはこのユニークなレンズを楽しめるのがうれしいですね。
ブラブラ実写スナップ!
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」をLマウントの「SIGMA fp」に装着してブラブラ撮影を楽しみました。星景撮影はかないませんでしたが、一般的な撮影でもその描写力の高さと圧倒的な画角を存分に味わうことができましたよ。
シグマ黒川新社屋の中庭です。「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」の記事でもほぼ同じ位置から撮っていますので、その写りと比較してみてください。あちらは建物の線が真っ直ぐ写っていますが、「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」は魚眼レンズなので大きく湾曲した描写になっているのが分かるでしょう。
このカットはシグマ内にあるレンズセラーで撮ったものです。こちらも先ほどの「SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art」記事で同等のカットがあるので比較してみてください。どのような写真表現をしたいかで、これらの明るく広い画角を持つレンズを選択する必要がありますね。
竹林の中で真上を見上げてみました。画面中心に向かって伸びる竹の写りがとてもシャープですね。葉の描写も精細で、その発色も見た目に近い印象です。三脚を持ち込んで風のあるときに長秒撮影すると面白い写真が撮れるかもしれませんね。
シグマ本社近くの里山をフォトウォークしました。この界隈はまだわずかに緑が残されていますが、近年開発が進んでのどかな景色を見られるのは時間の問題かもしれません。丘陵の斜面にある耕作地を撮りましたが、構図によって魚眼レンズらしいデフォルメが楽しめました。スポット的に残された畑を魚眼レンズ特有の効果で演出できました。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はその明るい「開放F1.4」という絞りを使ってボケの表現も可能です。こちらも里山に生える大木に迫ったカットですが、絞り開放にしてピントを手前にすることによって豊かなボケをだすことができました。アイデア次第でユニークな写真を撮ることができそうです。
180°という広大な画角は巨大な構造物を撮影する時にも活躍します。外環(東京外かく環状道路)の東名高速接続部付近を撮りましたが、数百メートルもある工事現場囲いもご覧のとおりフレーム内に収めることができました。屋外はもちろん室内での建築物撮影でも大いに役立つレンズと言えます。F1.4と明るいので星景とともに建物を写し込むこともこのレンズなら簡単でしょう。
古民家のひな壇に迫りました。低照度の日本家屋でもこのレンズなら心配ありません。ひな人形と広い和室を雰囲気満点でキャプチャーできました。「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」はイメージどおりのカットを提供してくれるレンズでした。
「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」のスペック
主な仕様
レンズ構成枚数:15群21枚(FLD4枚、SLD3枚、非球面レンズ2枚)
画角:180°
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
最小絞り:F16
最短撮影距離:38.5cm
最大撮影倍率:1:16
最大径 × 長さ:L マウント:φ104.0mm × 157.9mm
ソニー E マウント:φ104.0mm × 159.9mm
※長さはレンズ先端からマウント面までの距離です。
質量:L マウント:1,360g
ソニー E マウント:1,360g
エディションナンバー:A024
付属品:
・ケース
・カバーレンズキャップ(LC1040-01)
・リアキャップ(LCR II)
・三脚座(TS-141)
・プロテクティブカバー(PT-51)
・ガイドプレート(GP-21)
・ショルダーストラップ
まとめ
世界初35mmフルサイズ対応F1.4対角魚眼レンズは、星景撮影だけでなく風景や建築撮影でも大いに活躍するポテンシャルを持ったレンズということが確認できました。その明るさと広大な画角は、フォトグラファーの表現力次第でグンと威力を発揮してくれることでしょう。使っていて随所に「シグマイズム」を感じさせてくれる一本でした。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。