SIGMA 16/30/56mm F1.4 DC DN|ニコンAPS-C機ユーザーには必須!?シグマのZマウント用レンズ3本で星空を撮る!
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ニコン ZシリーズAPS-C機ユーザーの悩み
Nikon Z fc、Z 30、Z 50ユーザーの悩み。それは、カメラはとても好きなんだけど、使えるレンズの選択肢がとても少ない・・・ということに尽きるかもしれません。現状でニコンZマウント用レンズは、フルサイズ用をメインに数々の素晴らしいレンズが発売されていますが、一方でAPS-C用のレンズがごくわずか。ですので、現状はフルサイズ用のレンズを使用するのがメインの楽しみ方になります。好きなカメラだからこそ、いろんな場所で使いたい、いろんな撮影で使いたい!星空だって撮りたいぞ!
そんな中、シグマから大変評価の高いレンズがニコンZマウント用で発売されました。16mm F1.4 DC DN | Contemporary、30mm F1.4 DC DN | Contemporary、56mmF1.4 DC DN | Contemporaryの3本です。これらは全て、なんと10万円以下で大変お買い求めやすい価格。現状はニコンZマウントAPS-C機レンズではf1.4が楽しめるのはこの3本だけ!大変貴重なラインナップなのです。
これらは元々、他社のマウントですでに発売済みのレンズではありますが、果たしてZマウントでどのような描写をするのか・・・結論から言うと、すべて星空撮影でも素晴らしい描写を発揮するレンズでした!実際の撮影画像をもとにレビューしていきたいと思います。
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星に適したレンズとは
まず基本的な考え方として、レンズはf値が明るくなるほど、周辺像に乱れ(収差)が生じます。星は丸い点なはずなのに、f値が明るくなると四隅の星が線になったり三角になったりしやすくなるのです。この現象はf値を絞ると改善することが多いのですが、もしそれがf値を絞らなくても改善されたとすると、f2.8を基準として考えた場合、f1.4なら露出時間が1/4で済むという大きなメリットが生まれます。もしくは同じ露出時間でISO感度を下げてダイナミックレンジを確保する!なんてこともできるのです。
星景写真の撮影は、撮影地が星の撮影に適した暗さであれば常に設定が同じというジャンルだったのですが、f1.4のレンズで周辺描写がよくなるだけで「どうやって撮影するか」という意図を設定に盛り込めるようになるのです。とても自由度が増します。ですので、星空を撮影している人たちは「もしこのレンズが開放f値で使えたら(周辺像が良かったら)・・・」なんてことを期待しちゃうわけですね。
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実際に星空の撮影で非常に気になるのは周辺の赤い枠の部分です。星を撮る人はこんな端っこを気にするんですね(笑)。なんと細かいジャンルなのでしょう。
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これは赤い枠を200%で拡大した画像で、左がサジタルコマフレアのないレンズ、右があるレンズです。サジタルコマフレアはコマ収差とも呼ばれます。右の画像のように星が点ではなく、鳥が飛んでいるようにびよーんと広がっていると、実際の星とは違う描写になってしまいます。これがあまりに盛大に出ていると、プリントしたときに写真の周辺が騒がしい感じになってしまい、作品の見え方に影響がでてしまうのですね。
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary
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私のZ fcはプレミアムエクステリア張替キャンペーンで「マスタードイエロー」にしてもらいました。ブラックのままでいいかなと最初は思っていたのですが、結果的にとても気に入っています!
まずは最も気になるこのSIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryから。35mm換算で約24mmの画角となるレンズです。星景写真では最低でも24mmよりもワイドなレンズを使いましょうというのが定説で、このレンズはその基準となる焦点距離のレンズと言えるでしょう。
花形フードが付属しており、Z fcに取り付けると少々長いようにも感じます。重さは420g。フィルターサイズは67mmと汎用的なサイズになっていますが、実際に手にするとレンズ前玉が大きめです。これだけでも解像感を意識しての大口径なんだということがわかります。
そしてこちらがf1.4開放で撮影した、星景写真です。オーストラリアで撮影したため天の川の角度が日本とは違いますがご了承ください。
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■撮影環境:ISO3200、f1.4、露出10秒、AWB、Photoshop CCでWB調整、ノイズ低減AI
■撮影場所:西オーストラリア,サンドストーン
最周辺ですとサジタルコマフレアがでますので、細かな描写を気にするひとは絞って使用することをおすすめします。f2でも少しサジタルコマフレアが残っていますが、きっと、この程度だと気にならないって人の方が多いのではないでしょうか。また、f1.4からf2に1段絞るだけで周辺減光がかなり改善する傾向があり、色収差も改善され、画像処理の手間が減ります。
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryで星景写真を撮影する場合は、f2だと周辺星像・周辺減光のバランスがちょうどいいと思いました。それでもf2.8より1段明るくなりますから、露出時間はf2.8の半分で済みますし、ISO6400で撮影していたものがISO3200で済む計算になります。価格を考えると充分すぎる性能と呼べるのではないでしょうか。f2で撮影した作例はこちらです。
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■撮影環境:ISO6400、f2、露出10秒、AWB、Photoshop CCでWB調整、ノイズ低減AI
■撮影場所:西オーストラリア,サンドストーン
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■撮影環境:ISO6400、f2、露出10秒、AWB,Photoshop CCでWB調整、ノイズ低減AI
■撮影場所:西オーストラリア,サンドストーン
もちろん好みにもよると思いますが、私の印象はf1.4でもいける!です。実はこのレンズ、4月に遠征した西オーストラリアでもガンガン使っていました。Z fcとこの16mmで撮影したタイムラプス動画をアップしています。f1.4~f2で撮影しているので露出時間が短くなる分、撮影枚数が多くなり、ゆっくりふわりとした星空の動きを演出できるのが、このレンズで星空タイムラプスを撮影する最大のメリットです。
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■撮影環境:ISO6400 f2 露出10秒 AWB
Z fcのカメラ内で生成した撮って出し動画
また、非常に細かい点ですが、レンズフードの取り付け部が段差になっているため、レンズヒーターがつけやすいと感じました。レンズヒーターの付け心地は、星空撮影では実は地味に大切な部分なのです。
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かなりシャープなレンズなので、ピント合わせもなかなかシビアです。撮影時はしっかりとピント合わせを行い撮影画像をチェックして、ピントの確認を怠らないようにしましょう。
SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
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次はSIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporaryです。35mm換算約45mmの焦点距離で、丸型フード付属。フィルター径52mmで重さは285gと大変軽量です。普段使いにちょうど良い焦点距離のレンズです。今回は星空に焦点を当てたレビューなので日中の撮影のお話は省きますが、昼間の撮影で最も使用したのがこのレンズでした。フードをつけると少し長く感じましたので、持ち運び&逆光でのレンズフレアが入りやすくするためにフードを外して使用することが多かったです。
さて、このレンズで撮影した星空の画像を見てみましょう。諸事情によりZ 8で使用し、APS-Cモードで撮影しています。この焦点距離だと風景部分を大きく入れるのは難しくなり、天体写真に近い構図になります。月明かりが少しある中で撮影していますので少し青みがかっていますが、撮って出しの作例になります。赤道儀は使用していません。
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■撮影環境:ISO12800、f4、露出4秒、AWB
■撮影場所:新潟県十日町付近
結論から申し上げると、f4まで絞ると星空の撮影でも使用できる感じです。この話の流れだと「f4って暗い!」となってしまいそうですが、星景写真ではなく、星空のみを撮影する天体写真での使用がメインの焦点距離なので、実はf4でも明るいほうです。天体写真の場合は赤道儀を使って追尾撮影をすることが通例なので、f4で使えれば万々歳という感じなのです。
f4以下で撮影するとサジタルコマフレアが目立ちますが、f4だとさほど目立たず、周辺減光・色収差も綺麗に補正されます。絞っても周辺像が改善しないレンズもありますから、非常に使い勝手の良いレンズだと感じました。画像処理をして天の川を強調した作例がこちらです。
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■撮影環境:ISO12800、f4、露出4秒、AWB、Sequatorで33枚を加算平均合成、Photoshop CCで画像処理
■撮影場所:新潟県十日町付近
SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary
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最後はSIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporaryです。35mm換算約85mmの焦点距離で、丸型フードが付属。フィルター径55mmで重さは295gとこちらも軽量。ポートレート撮影や普段使いで活躍する焦点距離です。
さて、こちらのレンズで撮影した星空の画像はこちら。天の川中心部にある「バンビの横顔」という領域を撮影しています。この日は少し透明度の悪い空でしたが、それでも性能評価はできると思います。
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■撮影環境:ISO3200、f2.8、露出10秒、AWB
■撮影場所:新潟県十日町付近
こちらも結論から申し上げると、f2.8まで絞ると星空の撮影でも充分使用できる感じでした。f1.4ではサジタルコマフレアと色収差が感じられ、f2になると少し収まり、f2.8でも完全にはなくなりませんが「このくらいだといいんじゃね?」くらいの許容範囲になります。
天体写真を撮影する方ならわかると思いますが、そもそもこの焦点距離でf2.8でここまでの描写が得られることが素晴らしくて、f2.8でこの焦点距離だとかなりISO感度を低く設定できます。細かな星雲や天の川の描写にダイナミックレンジが確保されてリッチな画質が得られるのがとても楽しいです。画像処理をして天の川を強調した作例がこちらです。
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■撮影環境:ISO3200、f2.8、露出10秒、AWB、Stella Imageで11枚を加算平均合成、Photoshop CCで画像処理
■撮影場所:新潟県十日町付近
まとめ
10万円以下のレンズでf1.4の描写が楽しめてこれだけの性能とは、いい時代になったものです。Nikon Z fcとの組み合わせはコンパクトの一言で、どこにでも持って行って活用したくなる、そんなレンズたちでした。今、ニコンZマウントのAPS-C機を持っている方は間違いなく買いです!ぜひ星空撮影でもお試しください。
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryは、私のYoutubeチャンネルでもレビューを公開しています。ぜひこちらもご覧ください。
■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員