シグマ 28-45mm F1.8 DG DN Art レビュー|ナイトポートレートにもおすすめの大口径ズーム
はじめに
2024年6月、SIGMAから前代未聞のスペックのレンズが発表されました。SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art。短いズーム領域ながら全域でf1.8の明るさを実現した、超大口径ズームレンズです。スペックだけ見てもどんな物なのか、ワクワクしてくるようなレンズです。
このレンズをお借りすることができたので、しばらくじっくり使わせてもらいました。今回はそのレビューを皆さんにお届けしようかと思います。
主な特徴3点
世界初フルサイズ用 開放F1.8通しズームレンズ
2024年6月現在、フルサイズ用として世界初、開放F1.8通しのズームレンズです。さらにインナーズーム機構、ズーム全域で最短撮影距離30cm、フィルターサイズφ82mmというスペックを装備し、なんと1kgを切る重さに収められています。あらゆる撮影シーンに適応させ、手持ち撮影時の利便性もいいバランスに仕上がっています。
単焦点レンズにも匹敵する高い光学性能
各収差をズーム全域において徹底的に補正し、単焦点レンズにも匹敵するほどの高い光学性能を持っています。ナノポーラスコーティング採用など、フレア、ゴーストに配慮した設計で、逆光環境でもクリアな描写が可能。さらにフォーカスブリージングも抑制されているので、動画撮影時にもf1.8ズームの表現力を活かすことができます。
快適な撮影をサポートする高速AFと各種機能
AF機構には最新のリニアモーターHLA(High-response Linear Actuator)が採用され、優れた駆動精度を持つ高速なAFを実現しています。静粛性が高いモーターのため、動画もノイズの心配なく撮影できます。
また、最適なトルク設定かつ高分解能のバイワイヤ駆動フォーカスリングが、繊細なフォーカス操作を容易にし、さらに絞りリングと2ヶ所のAFLボタンを搭載することにより、撮影用途に合わせた操作がしやすくなっています。
もちろん、防塵防滴仕様のボディに加え、レンズ最前面には撥水防汚コートが施されているため、屋外の厳しい環境下でも安心して撮影が可能です。
サイズ感と重さ
さて、ここまで大口径&ハイスペックなレンズですが、気になるのはサイズ感と重さだと思います。大三元レンズとして人気の24-70mm F2.8 DG DN II | Artと並べてサイズ比較してみます。
こう見るとやはり大口径というだけあってそのボリューム感、存在感はかなりありますね。重さは24-70mm F2.8 DG DN II | Artが735g(ソニーEマウント)、28-45mm F1.8 DG DN | Artが950g(ソニーEマウント)です。このサイズ感と215gの差をどうみるか。様々な意見があると思いますが、僕としては手持ち撮影でも十分取り回しやすいと感じました。実際の撮影も全て手持ちで行っています。
f1.8の明るさのズームレンズがこのサイズ感に収まっていることが、SIGMAの技術力の高さなのかなと思います。
都内でナイトポートレート
大口径の広角寄りのズームレンズ、どのようなシチュエーションが活かせるかなと考えたとき、光量の少ない夜のポートレートを撮ってみようかと思いました。
エリアは六本木。夕暮れの光から、街灯などの人工の光を使ったポートレートまで、たくさん作例を撮ってきましたのでぜひご覧ください。
歩道橋に差す光が美しかった。難しいシチュエーションですが、シャドーも潰れず美しいカットが撮れました。焦点距離は望遠端の45mm。
歩道橋の隙間から注ぐ逆光。変なゴーストやフレアは発生していません。
45mmの自然で程よいパースが心地よい。
こちらは35mmでのカット。広角が好きなポートレートカメラマンには、28-45mmという焦点距離は使用頻度が高いレンジをカバーしていて使いやすいレンズだと思います。
僕はAFモードは常にAF-Cにして撮影していますが、歩きながらのショットでもHLAの高速AFのおかげで常にピントが合っていました。AF-Cモードならシャッターボタン半押しで常にピントが合っている状態ですので、タイミングの良いときにシャッターを切るだけでこのような写真が撮れます。もちろん連写モードにして歩きながら撮りまくる方法もおすすめです。
こらも逆光のカット。特に美しく撮れました。45mmという焦点距離はポートレートには少し短いと感じるかもしれませんが、目で見た画角と近く、撮れた写真は自然な印象になるという特徴があります。
この写真、少しゴーストが発生していますが、強い逆光の状況でこの程度に抑えられているのが凄いです。
陽が落ちてきたので場所を移動してモノクロで撮影。
造形が面白く、コントラストが強い背景ではモノクロで撮影すると面白いです。大きく空いたドレスの背中の肌が強調されています。
場所を移動して今度は工事の白壁とガードレールのエリアに来ました。ごちゃついた街の中ではこういうシンプルな背景を探すとすっきりとした写真が撮れるのでバリエーションが増えます。露出は少しアンダーめにすると夜の雰囲気が出ます。
雰囲気重視でシャッタースピードは1/60。風でブレた髪の毛がいい感じになっています。
少しテンションを変えてクリップオンストロボを使ってみました。街灯の光がモデルに当たっている場所を少しブラすために、シャッタースピードは1/8秒に設定しています。街灯の光とストロボの光をミックスさせるスローシンクロの応用です。
さいごに
いかがでしたでしょうか。初見ではズーム幅の狭さを懸念する人も多いと思いますが、広角側に特化したポートレートレンズと割り切ってしまえば、十分使いやすいレンズと言えます。むしろ高品質な28mm f1.8、35mm f1.8、45mm f1.8の3本のレンズが1本にまとまっていると考えればお得なのではないでしょうか。f2.8のレンズよりも1段以上明るいf1.8のレンズ。光量の少ない状況でのポートレートでは外せない1本になりました。非常におすすめできるレンズですので、ご興味のある方はぜひ実際に手に取ってもらいたいです。
■モデル:ミキティ。(@mikity_me)
■フォトグラファー:篠田工
1982年生まれ。代官山スタジオ勤務後go relax E moreに所属。ファッション、広告、ポートレートなど幅広く活動。人物撮影を得意としている。アマチュアカメラマン向けのワークショップなども行っている。