シグマ 28-70mm F2.8 DG DN Contemporary レビュー|自分の視点を知るための基準になるレンズ
はじめに
はじめまして。カメラマンの尾鷲陽介と申します。フリーランスで活動して16年目になります。普段の仕事では著名人のポートレートや家具などのプロダクト、住宅・店舗のインテリアなど様々なジャンルの撮影をしています。仕事以外では、散歩をしたり車や電車で移動したりしながらスナップ的に「日常のちょっと気になる良い風景」を作品として撮り続けています。いつどこで撮りたい風景に出会うかわかりません。なのでいつもカメラを身近に置いて生活しています。
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■撮影環境:焦点距離57mm|F2.8 1/25秒|ISO800
4年ほど前に一眼レフからミラーレスへの移行を決心し、カメラをSONYのαに、レンズのほとんどをシグマに換えました。それ以前は重たい一眼レフを仕事以外であまり持ち歩く気にはなれず、主にRICOHのGRなどコンパクトカメラで日常やスナップ的な風景を撮っていたのですが、ミラーレスにしたことで以前にも増して写真を撮るようになりました。
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■撮影環境:焦点距離57mm|F2.8 1/400秒|ISO1250|露出補正-0.5EV
シグマレンズを選ぶ理由
当時はフルサイズセンサーのミラーレス機に選択肢があまりなかったので、カメラはさほど悩むことなくSONYを選びましたが、レンズは思うところあってシグマにしました。
シグマ製レンズの写りの良さは以前から耳にしていたのですが、なんと言っても導入の決め手はそのデザインでした。デザインと言ってもプロダクトの外観だけの話ではありません。シグマ製品はカメラやレンズは元より、レンズキャップなどの細かなアクセサリーも含め、外箱、カタログ、WEBサイトなどありとあらゆるところが丁寧にデザインされていて、それが独自の世界観を作っています。シグマ製品には強く美意識を感じていました。
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写真を撮る上で美意識を持つことが必要だと思っています。何を撮るかよりも何を撮らないかを決めることで作風に個性が生まれてくるだろうと感じていて、その判断には自分の美意識を頼りにすることにしています。
また、写真を撮ることで仕事をもらっている立場としては、撮影の現場での周囲の目も気にしています。撮影に立ち会うアートディレクターやデザイナー、編集者はカメラマンの美意識を見ているはずです。モニターに映し出される写真からわかる構図や色彩のセンスはもちろん、どんな機材を選んでいるかにもその人の美意識は滲み出るでしょう。美意識のある機材を選べば、自分は美意識を持っていますよと周囲へ静かに表明することができます。何より機材の選択は今後一緒に仕事をしていく相棒を選ぶということです。ならば当然美しい機材を選びたいですよね。それがシグマを選んだ理由になります。
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■撮影環境:焦点距離40mm|F2.8 1/1000秒|ISO250|露出補正+0.7EV
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■撮影環境:焦点距離29mm|F2.8 1/6400秒|ISO400|露出補正+0.3EV
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■撮影環境:焦点距離50mm|F4.5 1/1000秒|ISO320|露出補正+0.5EV
軽量コンパクト、すぐ取り出せる
さて、前置きが長くなりましたが、今回僕がレビューするのはシグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryです。2021年の3月に発売されたミラーレスカメラ用の標準ズームレンズです。
シグマの標準ズームレンズといえば、元々ミラーレス用に24-70mm F2.8 DG DN | Artがあり、僕はこちらを日頃から仕事用のメインのレンズとして愛用しています。28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryは24-70mm F2.8 DG DN | Artをベースに、広角側のズーム域を28mmに狭めることにより軽量でコンパクトなサイズを実現したとのことです。WEBサイトを見れば様々な技術と工夫が盛り込まれていることがわかります。28-70mmを今回の作例だけでなく仕事でも何度か使用しましたが、写りに関しては何も心配することはありません。
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とにかく、このレンズを箱から出して持った瞬間、小ささと軽さにとても驚きました。SONY αシリーズの筐体に対して実にちょうどよい大きさだと思いました。こういうレンズをずっと待っていました。
2つのレンズの重さを比べると約380gも違いました。およそ350mlの缶ビール1本分ということですね。以前から仕事用の24-70mm F2.8 DG DN | Artを付けたカメラを首からぶらさげて散歩することがありましたが少し首が痛くなることもありました。28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryでは首への負担が少なくなり、長い距離を持ち歩くのがすごく楽になりました。
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■撮影環境:焦点距離28mm|F2.8 1/250秒|ISO640
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■撮影環境:焦点距離59mm|F2.8 1/1000秒|ISO320|露出補正-1.2EV
仕事で使うレンズは重く大きくても僕はあまり気にしません。むしろ機材が大きい方がプロっぽく見えますし現場のクライアントにはハッタリが効くかもな。と思っているくらいです。でも日常使いのレンズは軽く小さく持ち歩くのが苦にならないことが一番重要です。
近所のスーパーや郵便局に行くときでさえ、何か面白いものを見つけてもいいように念のためカメラとレンズを何本か小さいカバンに入れて出掛けることがあります。撮りたいときにすぐカメラを取り出せないと意味がありません。いつもPeakdesignのエブリデイスリング10Lにカメラとレンズ一式を入れていますが、レンズがコンパクトな分、パッと取り出しパッと撮れます。
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40mm位置を基準に画角を考える
人ぞれぞれ好きな焦点距離、自分に合った焦点距離があると思います。僕は普段35mm~45mmくらいで撮ることが多いです。それが自分の視点であり、見ているものとの程よい距離感だと思っています。なのでカメラを首から下げているときは基本的に焦点距離を40mmくらいのところに合わせておきます。何か撮りたいものを見つけたとき、40mmよりちょっと広角側に回すか、ちょっと望遠側に回すかを瞬時に判断し撮影できるようにしています。
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画角を決めるとき常に構図を意識します。構図を意識することは画面内を整理整頓することだと思っています。それは必要なものを入れ、余計なものを入れないということです。単焦点レンズであれば撮影者が寄ったり引いたりしてそれを行いますが、状況によってはそれができないこともあるでしょう。広めに撮っておいて後でトリミングするのも手ですが、ズームで構図を整えるのも一つの考え方だと思います。
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■撮影環境:焦点距離32mm|F2.8 1/8000秒|ISO320|露出補正-0.3EV
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■撮影環境:焦点距離63mm|F5 1/1000秒|ISO320|露出補正-0.5EV
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■撮影環境:焦点距離47mm|F3.2 1/640秒|ISO100|露出補正+1.7EV
写真の初心者がズームレンズを使っていると画角の感覚を掴むのが難しいと、よく写真の本に書いてあったりします。確かにただ何となくズームを使って撮っていればそうかもしれません。しかし単焦点レンズを何本も同時に付けていると考えればこんなに便利なものはありません。僕は自分が今何ミリで撮っているかを常に意識し、その上でもう少し対象に寄るべきか離れるべきかを考えるようにしています。
僕自身、写真の学校に行ってきちんと理論を学んだわけではないので、自分なりに感覚としての話なのですが、何を撮るにしても適切な画角があると思います。そしてそれを判断するにはたくさん撮って体で覚える必要があると思います。
どの焦点距離にすると自分にとって気持ちがよい写真になるかというのは量を撮ることによって感覚を掴んできました。いい写真を撮れるようになるには質よりも量が重要で、その量が質に転化していくということを実感として持っています。いちいちレンズを換えていたら撮る機会を逃してしまいます。いい写真かどうかはあとで決めてまずたくさん撮ることが大事だと思っています。
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■撮影環境:焦点距離70mm|F2.8 1/320秒|ISO200|露出補正+0.5EV
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■撮影環境:焦点距離28mm|F8 1/250秒|ISO100|露出補正-1.2EV
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■撮影環境:焦点距離43mm|F9 1/200秒|ISO250|露出補正-0.5EV
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■撮影環境:焦点距離41mm|F2.8 1/50秒|ISO5000|露出補正+0.5EV
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■撮影環境:焦点距離41mm|F2.8 1/60秒|ISO4000|露出補正+0.5EV
最後に
ズームレンズに慣れてくれば他の焦点距離のレンズが欲しくなることもあるでしょう。シグマからは単焦点からズームまでありとあらゆるレンズのラインナップが揃っています。そして年々拡充されています。
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryは自分の視点を知るための基準になるレンズです。より広角側にも、より望遠側にも、よりボケを活かした表現にも、自分に合ったレンズを探す第一歩として相応しいレンズです。少しずつ自分にあったレンズを探していきましょう。そしてシグマの美意識を多くの方に実感してもらえると嬉しいです。
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■撮影環境:焦点距離59mm|F2.8 1/1600秒|ISO250|露出補正-0.5EV
■写真家:尾鷲陽介
1977年北海道生まれ。金沢美術工芸大学でプロダクトデザインを学ぶもデザインより写真の方が人に褒められるという理由でカメラマンになることを決意。2001年にスタジオエビスへ入社しスタジオマンとして実践の場で撮影の基礎を学ぶ。2006年よりフリーランス。