シグマ 30mm F1.4 DC DN Contemporary|待望のRFマウントで日々を紡ぐ

はじめに
2024年12月、「SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary」と共に発売されたシグマのキヤノンRFマウント用標準レンズ「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」。35mm判換算で約48mm相当という私たち人間の視野に近い画角を持つこのレンズで何気ない日々を見つめました。
仕様・デザイン

最大径×全長はφ69.0mm × 71.3mm、重量は285g。フルサイズ換算で約48mm相当の焦点距離のAPS-C用レンズです。RFマウントのフルサイズ機でもシームレスに使用でき、1.6倍にクロップされた状態でファインダー上に表示されるためストレスなくフレーミングに集中できるでしょう。ただし、クロップされた画像サイズでデータが保存されるため、使用するフルサイズ機の本来の画素数より低い画素数になることは覚えておいてください。
最短撮影距離は30cm。このぐらいまで寄れると日常シーンのスナップの自由度も高まります。これまでのシグマのキヤノンRFマウント用レンズ同様、AF性能や通信速度などの最適化が成されており、高速AFやサーボAF、ボディ内収差補正にも対応しています。(補正機能はカメラが対応している内容に限る)
クロップされてもフルサイズで撮りたくなるレンズ

■撮影環境:1/1250sec F1.4 +2/3補正 ISO100 WBオート
前回「SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary」の記事を書くにあたり、APS-C機のEOS R10とフルサイズ機のEOS R6 Mark II、EOS R5 Mark IIを使いました。まず最初に、R10で撮った写真も十分満足のいく結果だったということをお伝えしたいと思います。
その上で、ほぼ同じ画角で撮った写真を見比べたところ、ボケを含んだ写真全体の空気感がフルサイズの方が私にはより好ましく思えました。これは私が普段フルサイズを使っているということも判断基準のひとつになっているかもしれませんが、「自分が好きだと感じられる写真」を残す方法のひとつとしてフルサイズ機とシグマの単焦点レンズの組み合わせが私にはベストな選択だったことから、今回はフルサイズのR5 Mark IIで撮り下ろしました。
自分にとっての優先順位を決める

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/80sec F1.4 +1/3補正 ISO640 WBオート
前述した通り、APS-C用レンズである「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」をフルサイズに着けると1.6倍にクロップされる分、データサイズはクロップ前と比較するとちいさくなります。これは画素数が低くなるためですが、一概に「画素数が低くなったから画質も低下する」わけではありません。画素数とはカメラのセンサーに配置された画素の数を指し、視覚的なイメージを決定する画質は画素数や使用するレンズの性能、カメラの画像処理技術などの要素が複合的に合わさって出来上がるもののため、画素数と画質は単純にイコールではないのです。
それを踏まえて、写真を撮る人が自分の求める写真表現を形にするための選択肢のひとつと考えてもらえたらと思います。例えば、大きくプリントする時に必要な画素数を確保するためにクロップは使わないという選択をすること、カメラとレンズの組み合わせによって得られる画が好きだから多少画素数を犠牲にするのを選ぶこと、どちらが正解というものではありませんが、自分にとっての「写真の残し方」の優先順位を考えるきっかけにしてもらえたらと思います。

■撮影環境:1/80sec F1.4 +1/3補正 ISO1000 WBオート
「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」で日々を紡ぐ

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/100sec F1.4 -1/3補正 ISO320 WBオート

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/100sec F1.4 ISO100 WBオート

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/80sec F1.4 +1/3補正 ISO100 WBオート

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/100sec F1.4 ISO100 WB日陰

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/125sec F1.4 ISO100 WB日陰

■撮影環境:1/800sec F1.4 +1補正 ISO100 WB日陰
「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」は私たち人間の視野に近い画角のレンズのため、撮ろうと思ったシーンをどう見ていたのか、どこに注目していたのかがダイレクトに写るように思います。それは被写体との距離を自分自身で実際に動きながら探る単焦点だからこそ、自分の意志がより強くフレーミングに反映されるからかもしれません。改めて見返すと食べ物に寄る傾向があるのが如実に分かる写真ばかりで、恥ずかしながらこれも私らしいと言えばらしいなと思いました。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/1600sec F1.4 ISO100 WBオート

■撮影環境:1/800sec F1.4 +1補正 ISO100 WBオート

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/80sec F1.8 ISO125 WBオート
最短撮影距離が30cmというのはカフェなどでスイーツを撮る時にありがたいです。俯瞰で撮りたいシチュエーションもバリアングルを駆使すれば席に座ったまま思い通りにフレーミングができます。(カフェで立ち上がって撮影するのはマナー違反ですのでお気を付けて)

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/1250sec F1.4 +1補正 ISO100 WB日陰
動きモノ(子供)と遊びながら撮る時はレンズの軽さに救われます。APS-Cとの組み合わせなら言うまでもなく、フルサイズの重量のあるボディでも285gと軽量な「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」のおかげで両手を空けるために首から下げてもそこまでずっしりとした重さは感じませんでした。

■撮影環境:1/8000sec F1.4 ISO100 WB日陰

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/60sec F1.4 −1 2/3補正 ISO200 WBオート

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
■撮影環境:1/80sec F1.4 −1 2/3補正 ISO125 WBオート
「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」に手ぶれ補正機構は搭載されていませんが、開放F1.4の明るい大口径レンズのため開放付近の絞りで撮影する際はほとんど手ぶれの心配をすることなく撮影に集中できました。また、私はフィルムカメラ時代の名残りで暗いシーンでもあまり高感度で撮らない方なのですが、そこはカメラ側に内蔵された手ぶれ補正機構に助けられたと思います。
さいごに

■撮影環境:1/400sec F1.4 +1補正 ISO100 WB日陰
「SIGMA30mm F1.4 DC DN | Contemporary」は開放F1.4という大口径ならではの大きなボケと単焦点ならではのシャープな描写が良いバランスで同居した標準レンズです。最新技術とレンズ設計の粋が凝縮され、軽量コンパクトでありながらArtラインにも負けない写りを実現しており、さまざまなシーンで活躍する可能性を予感させます。自分の視界に近い画角のため、「撮りたいな」と思った瞬間にシャッターを押すような日常のスナップとの相性が良いと思いました。
今回R5 Mark IIを使用したのは、2024年に発売されたR5 Mark IIに搭載された最新の映像エンジンと「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」で撮った写真の空気感がとても心地良いものであったことと、キヤノンのフルサイズミラーレス一眼の中で随一の高画素機(有効画素数4500万画素)だったことも理由に挙げられます。『自分にとっての優先順位を決める』の項で「画素数を多少犠牲にしても」と書きましたが、人間は欲張りなもので、やはり画素数を少しでも多い状態で写真を記録したいという思いもあったことを白状します。
とはいえ、有効画素数2420万画素のR6 Mark IIをクロップした写真が私の中でシグマの単焦点レンズとキヤノンのフルサイズの組み合わせを決定付けたのも紛れもない事実なので、R5シリーズに限らずキヤノンのフルサイズ機をお使いの方には、機会があればぜひ一度シグマのDC DN | Contemporaryとの組み合わせを試してみてほしいです。

■撮影環境:1/2500sec F1.4 +1 1/3補正 ISO100 WBオート
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。雑誌やwebマガジンなどでの撮影・執筆のほか、フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。祖師谷大蔵の自身のアトリエでプリントや額装のワークショップなども行っている。2025年3月からカメラのキタムラ写真教室にて『日常スナップ写真部』講師を担当。個展・企画展多数。