シグマ 35mm F1.4 DG DN Art|三井公一
はじめに
シグマから新しい「35mm」レンズが登場します。「あれ?先日の I シリーズじゃなくて?」と思った方も多いでしょう。そう、新たにリリースされる35mmは「F1.4」という明るさで、シグマ躍進のきっかけとなった銘レンズ「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art」をフルモデルチェンジした「Art」レンズなのです。シグマの記念碑的レンズが刷新されるのは何か深い意味があるはずです。その写りを6100万画素のフルサイズミラーレス機「SIGMA fp L」で体感してみました。
「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」のスペック
新しい「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」の性能を見ていきましょう。
・レンズ構成 11群15枚
・画角 63.4°
・絞り羽根枚数 11枚(円形絞り)
・最小絞り F16
・最短撮影距離 30cm
・最大撮影倍率 1:5.4
・フィルターサイズ 67mm
・最大径 75.5mm
・長さ 109.5mm(Lマウント) 111.5mm(ソニーEマウント)
・質量 645g(Lマウント) 640g(ソニーEマウント)
・付属品 ロック付き花形フード(LH728-01)、ケース
※参照:シグマ製品ページ
レンズ構成は11群15枚となっていますが、最新の光学設計のもと、SLD 2枚、ELD 1枚、FLD 1枚、非球面レンズ2枚とぜいたくに高性能な硝材を採用して、カメラボディの機能で補正が難しい軸上色収差を徹底的に抑制しています。そして特にF1.4という明るさを誇りながら、点光源撮影で気になるサジタルコマフレアを限界まで抑えているので、絞り開放での星景撮影、夜景撮影でも高い描写力を見せてくれます。これは頼もしいですね。基はデジタル一眼レフ用に設計された「SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art」。レンズマウント部を変更してミラーレス一眼カメラに対応していましたが、それをミラーレス一眼カメラネイティブ設計として、性能をグンとアップさせたのが今回の新製品「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」と言えるでしょう。
オートフォーカス性能も見逃せません。ステッピングモーターを採用し、さらにフォーカスレンズを1枚と軽量にしたことによって、高速かつ動体追従性に優れたフォーカシング特性を得ています。実際に「SIGMA fp L」で使用してみると、ハイブリッドオートフォーカス(コントラスト検出方式 + 像面位相差オートフォーカス)と相まって、実に高い精度と速度でピント合わせが可能でした。F1.4絞り開放の薄いピントでもバッチリとフォーカスしてくれストレスを感じさせません。
デザインと使い勝手も優秀です。ショートフランジバックのミラーレス専用設計になったことにより、スリムかつ軽量化されたレンズは世界最小最軽量のフルサイズミラーレス一眼カメラ「SIGMA fp」シリーズにも馴染みます。ソリッドでクールなルックスは「シグマらしさ」を醸しだしていますね。
レンズ鏡筒には「フォーカスモード切換えスイッチ」、カメラボディからの設定によってさまざまな機能を割り当てられる「AFLボタン」、さらに「絞りリングロックスイッチ」「絞りリングクリックスイッチ」を装備。ムービー撮影時などでも快適に絞り操作ができるようになっています。もちろんボタンやスイッチ部はしっかりとシーリングされ防塵防滴機構を有し、最前面のレンズには撥水防汚コートを施して、過酷な環境下でも臆することなく被写体に迫れる仕様なのがシグマクオリティですね。
「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」と「SIGMA fp L」による実写撮影作例
横浜みなとみらい地区をググッと絞って撮影しました。新しく開通したロープウェイもクッキリと写しだしています。ビルのエッジも真っ直ぐと、パースのあまりつかない35mmらしい描写が好ましいですね。立体感や色合いもよく、オールマイティーに使える画角はとても魅力です。
みなとみらいの名所・赤レンガパークでカップルをスナップ。ふたりの服装から、赤レンガ倉庫のディテールまでしっかりと捉えることができました。日陰の微妙な発色も自然にすっきりと写しとめることが出来ました。
「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」は解像感だけでなくボケ感が素晴らしいレンズだと感じました。シルキーでスムーズ、そして上品な連続感のあるボケはとても美しいですね。絞り開放で「SIGMA fp L」のシャッターを切りましたが、ピント面があった部分の描写は実にキリリとしています。
キラリと光る商業施設のプレートをアンダー目に撮りました。ハイライト部のヌケ感とレンガの立体感がいいですね。見た目に近い自然な描写は35mmという画角ならではです。「寄って標準、離れて広角」といろいろと楽しめるレンズになっています。
シグマには開放F1.2を誇る「SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art」が存在しますが、少し大きくて重たいレンズになっています。それでも開放からシャープな像を楽しめますが、今回の新製品「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」も負けてはいません。夜間でも6100万画素の「SIGMA fp L」でブラブラスナップが楽しめました。F1.4なら感度をあまり上げずに夜のとばりを撮れますね
「EVF-11」を装着した「SIGMA fp L」にこの「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」はジャストフィット。しっかりとEVFをのぞき込むことによって手ブレも低減できます。薄暮の街をスナップするのが楽しい季節ですね。絞り開放ですが点光源の再現性もよく、街の情景をうまく捉えてくれました。
初夏の空にかなとこ雲。「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」はその存在感をリアルに表現してくれました。手前のタワーマンションのディテールももの凄いですね。発色も見た目に近くとても好ましい写りになっています。
公園で展示されている蒸気機関車。そのネームプレートにフォーカスしてシャッターを切りました。F1.4の絞り開放なのですが、ピント面のシャープな像に感心します。オートフォーカスの速度も速く、精度も満足のいくものとなっています。
同じ公園で象のモニュメントをチョイ絞りで撮りました。グンとコントラストが向上し、アンダー目の露出と相まって濃厚な描写となりました。撮り手の要求をしっかりと像にしてくれる「Art」なレンズが、この「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」だと感じました。
まとめ
この「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」が登場したことにより、シグマのミラーレスネイティブの35mmは3本になりました。シグマで一番の明るさを誇る「SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art」、高い質感と所有する悦びを満たしてくれる「SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary」、そして「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」です。明るさをとるか、携行しやすさをとるか、ボケ味をとるか、うれしい悩みですね。ボケ描写やバランスを考えるとやはり最新の「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」が最も趣味に仕事にと一番使える1本になっていると感じます。ぜひキタムラ店頭でお試しください!
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。