シグマ 50mm F1.2 DG DN Art レビュー|立体感ある写りに感動する大口径単焦点
はじめに
はじめまして。今回ShaShaでは初めて寄稿させていただきます、カメラマンの篠田工(シノダタクミ)と申します。普段はファッションや広告の分野で撮影をしていますが、プライベートではポートレートを主に撮っています。今回はSIGMAから2024年4月に発売されました、Lマウント・ソニーEマウント用交換レンズ「50mm F1.2 DG DN | Art」をご紹介したいと思います。
クラス最軽量のコンパクトさ
最大にして最高の特徴は重さが740g(ソニーEマウント用)、クラス最軽量に仕上がっているところです。2024年3月現在、AF対応35mmフルサイズミラーレスカメラ用の50mm F1.2交換レンズとして最軽量のレンズとなっています。
僕はこの軽さ・コンパクトさに本当に驚いており、2023年に発売された50mm F1.4 DG DNと比べても大きさはほとんど同じ、重さは80gほど重いだけというコンパクトさなんです。このコンパクトさの中に50mm F1.2の性能が詰まっていることが本当にすごいなと感じました。このサイズ感ならF1.2のレンズを気軽に持ち出すことができますね。
そのほかに外観を見ていきますと、各種スイッチ類や、絞りリング、フォーカスリングなどSIGMAならではの高いビルドクオリティとなっております。
絞り開放から高い光学性能
F1.2という明るさを達成しながら絞り開放から極めて高い光学性能を実現しています。ピント面は薄いのですが、そのピント面は非常にシャープな写りをしています。
美しいボケ
球面収差、サジタルコマフレア、軸上色収差などの諸収差を補正することで非常に綺麗なボケを実現しています。また、シグマでは初採用となる13枚の円形絞りにより、絞っても玉ボケが円形を保つことができます。
フローティングフォーカス
レンズ群をピントに応じて移動させるフローティングフォーカス機構を採用することにより、近距離から遠距離まで安定した光学性能を出すことができます。50mm F1.2 DG DNでは前方後方の2つのレンズ群を超高速のリニアモーターHLAによって移動させているため、オートフォーカスも極めて高速・高精度に動きます。
さらには動画撮影時に画角が変化するフォーカスブリージングも抑えられています。これは動画を撮るユーザーにはかなり嬉しい性能かと思われます。
実際に使ってみた使用感
まず使用感として真っ先に伝えたいのが、本当に「軽い」ということです。これは重心が手元寄りになっているためだと思われます。実重量も軽いのですが、バランスよく作られているので軽く感じると言った感じです。
肝心な写りですが、めちゃくちゃシャープかつボケが素晴らしく綺麗でした。ピントの合っているまつげや瞳はシャープでコントラスト高く写っていて美しく、さらにボケみも素直でまるで中判カメラで撮ったような立体感がありました。AFもデュアルHLA搭載ということで、高速でピントが合って非常に快適に撮影することができました。
F1.2の大口径を活かせるシーン
なんと言っても、その明るさを活かして室内などの暗いシーンでも活躍するレンズです。今まで撮れなかった光量の場面でも十分にシャッタースピードを稼ぐことができるので、新しい表現に繋がるのではないでしょうか。
ただ、明るすぎるデメリットも存在します。日中に日差しが強い場合など、光量が多い場面ではF1.2ではシャッタースピードを最速に設定しても露出がオーバーになってしまうことがあります。そういう時は適宜NDフィルターを使うなどして対応しなければなりません。ただ、僕の場合はそういう時はそこまでして絞り開放にこだわらず、露出オーバーにならない程度に絞って撮ってしまうことも多いです。
浅い被写界深度の使いこなし方
開放F1.2は被写界深度が浅く大きなボケが得られますが、特にこの50mm F1.2 DG DN | Artはボケがシルキーで美しく、かつピントの合っている面は非常にシャープです。あたかも中判カメラで撮ったかのようなボケ味と立体感が得られます。
その反面、ピント合わせがシビアですので、フォーカスには細心の注意が必要です。できることならAF性能が高い比較的新しいカメラを使用し、瞳AFなどを上手く使いながらフォーカスを合わせてゆくのが好ましいです。
50mmレンズの効果的な使い方
皆さんは焦点距離50mmのレンズを使いますか?もしかしたらスナップなどで50mmレンズは難しいなと感じている方もいるのではないでしょうか。そう感じている方、ぜひ人物撮影で50mmレンズを使ってみてください。僕は50mmレンズの画角は人物撮影で非常に使いやすい画角だと感じています。全身を撮っても、バストアップを撮ってもちょうど良い画角です。モデル撮影の際は必須の画角と言えると思います。
絞りリング、AFLボタンの筆者の使用方法
シグマのレンズに特徴的な絞りリングですが、直感的にF値をコントロールできるので、常に使用しております。特に絞り開放で撮影するときなどは目視しないでも設定が可能なのでとても便利です。
またAFLボタンですが、写真撮影の時は全く使用しないのでカスタムでOFFにしていますが、動画撮影の際はREC開始ボタンとして使用しています。動画撮影の時にはレンズを支えている左手の親指がちょうどAFLボタンの位置に来るので押しやすいためです。もし手持ちで動画撮影をされる方がいらっしゃったら参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。Artライン最高レベルの描写力を持つSIGMA 50mm F1.2 DG DN | Artですが、描写力もさることながら、F1.2という大口径ながらそのコンパクトさに驚かれた方も多いのではないしょうか。今回はコンパクトさも活かして小旅行へ持って行ったのですが、大きさも気になることなく使用できました。みなさまもArtライン最高レベルの描写力を体験してみてください。
■モデル:ミキティ。(@mikity_me)
■フォトグラファー:篠田工
1982年生まれ。代官山スタジオ勤務後go relax E moreに所属。ファッション、広告、ポートレートなど幅広く活動。人物撮影を得意としている。アマチュアカメラマン向けのワークショップなども行っている。