シグマ 50mm F1.4 DG DN Artレビュー|シャープさとボケの描写バランスが良い大口径標準レンズ
はじめに
待っていました!と、声を上げた方も多いのではないでしょうか。2023年2月23日にシグマから、フルサイズのミラーレス機専用設計の大口径標準単焦点レンズ「50mm F1.4 DG DN | Art」が発売されました。現在のラインナップは、LマウントとソニーEマウントです。今回はSIGMA fp Lに本レンズを装着して、ポートレートとスナップでその魅力に迫りたいと思います。
シャープさとボケ味のバランスGOOD
絞り開放時のボケ味は、50mmの標準画角らしい、ナチュラルで好感の持てる描写です。また、強い逆光の撮影でも、ピント面のシャープさと、画全体のクリアさを保っていました。
レンズ設計は非球面レンズ3枚、SLDガラス1枚を配した11群14枚の構成で、非点収差や像面湾曲などの収差を抑制し、F1.4の開放時から、画面の隅々まで繊細で色にじみのない高い画質を再現とのこと。今回の撮影ではその繊細な描写ゆえか、シャープさとボケ味とのバランスの良さを、特に強く感じました。
AFが速い!
本レンズは、フルサイズミラーレス機専用設計のArtラインで初めて、リニアモーター「HLA(High-response Linear Actuator)」を採用して、高速AFを実現しています。こうやって文字で表すと、何のことかわかりにくいと思うのですが、シグマ機を使っている方がわかりやすい言葉で表すと「シグマのレンズなのにAFが速い」です。褒めています。
ウエストアップ以上のシチュエーションではもちろんですが、モデル全身のフルショットでも、スパッとピントが合うのにはビックリしました。
同時に、逆光に輝く髪の毛一本一本から、白いニットの柔らかさまでしっかりと表現されていて、この価格帯のレンズとは考えられないほどの、丁寧な描写性能にも驚かされました。
ナチュラルながら大胆なボケの描写
本レンズで特に気に入ったのが、ピント面からボケへのグラデーションの描写です。この写真のように、構図右の前ボケとなっている手すりから、ピントを合わせたモデルの左目にかけてのボケ具合のグラデーションが、ナチュラルさを保ちつつも、50mmの画角にしては大胆なボケ方をしているので、背景から被写体を浮き立たせたいポートレート撮影で使用するのは、とても楽しかったです。
ウォームゴールドと合わせるとさらに楽しくなるスナップ撮影
2月8日アップデートのファームウェア(SIGMA fp Ver.5.00 / SIGMA fp L Ver.3.00)で追加された、新しいカラーモード「ウォームゴールド」は、画全体にほんのりと暖色系の色味が乗って、退色したフィルムのような、ちょっとノスタルジックなムードにしてくれるカラーモードです。
筆者はスナップ撮影に一番使用する画角が50mmなので、本レンズとこの「ウォームゴールド」を組み合わせて撮り歩いたところ、ずっとこのカラーモードでいいかなと思ってしまうほどしっくりと来ました。
ボディとのバランスはセーフライン
今回使用したSIGMA fp Lは、フルサイズ機とは思えないほど小型のボディなので、レンズによってはボディとのバランスが難しいのですが、本レンズとのバランスの感想としては、ぎりぎりセーフという感じです。
というのは、Lマウントの最大径は78.2mm、長さは109.5mm、質量は670gでレンズ本体だけではそれほど大きさを感じないのですが、付属の花形のフードがかなり大きいのです。それだけの働きをしてくれているとは思うのですが、街中に溶け込みたいスナップ撮影時には、ちょっと存在感がありすぎかなとも思いました。
細やかな気遣いが感じられるデザイン
レンズ全体のデザインはシグマらしさ全開で、スタイリッシュでシンプル。機能的にも、フォーカスモード切替えスイッチ、クリック・デクリックの切替えスイッチ、意図せず絞り値が変わってしまうミスを防ぐ絞りリングロックスイッチ、任意の機能割り当てができるAFLボタンと、静止画、動画撮影時に必要な機能が一揃いしています。
前述でレンズフードの大きさに触れましたが、このレンズフードのとても良い点も挙げたいと思います。それは、ボタン式のロック機構が付いていること。
筆者はレンズフードが付属しているレンズは、必ず装着して撮影をするのですが、バッグなどに収納するときは基本的に外しています。でも困るのが、レンズフードの脱着がスムーズにできないとき。外すときはまだいいのですが、いざ撮影しようと、装着するときに何回もやり直す羽目になると、ストレスを感じるのと同時に、シャッターチャンスを逃す可能性もあります。また、肩からカメラを掛けているときに、体に当たって回転して、外れて落ちてしまうなんてこともあります。
このレンズフードはロック機構のお陰もあって、レンズ先端のどこにフードを差し込めばいいのかが、とてもわかりやすいです。ロック部がカチッといえば装着完了なので、差し込みが甘くて撮影中に落下する危険性も低いです。こういった細やかな気遣いが感じられるのが、シグマのレンズのいいところですね。
■モデル:大川成美(@naru_coco)
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。