シグマ 50mm F2 DG DN Contemporary レビュー|小さくて軽い常用標準レンズ
はじめに
先日ご紹介した「SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art」を発売したシグマが、2本目となるミラーレス一眼専用設計の標準レンズ「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」をリリースしました。高品位なフィニッシュで名高い「Iシリーズ」に属するこのレンズは、携行しやすいサイズ感と抜群の描写力を持っていましたよ。
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporaryの特徴
全部で9本のラインナップとなったシグマ「Iシリーズ」。そのニューカマーとなる「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」は、他のレンズと同様に素晴らしい外装仕上げになっています。メタル製の外装と切削アルミニウムによるパーツで構成されたこのレンズは、手にすると「モノ」としての存在感と高級感が伝わってきます。
「カチカチカチ・・・」と指先に軽やかかつしっかりとクリック感が伝わってくる絞りリング、そして確実な節度感があるフォーカス切替えスイッチ、美しいヘアライン加工されたカバーリングなど、手にするだけで「写真を撮る!」という高揚感を盛り上げてくれます。惚れ惚れとする加工のレンズフード、それにユニークな紹介動画で話題を呼んだマグネット式メタルキャップも付属しています。
もちろん肝心な光学系も高い性能を有しています。レンズ構成は9群11枚で、絞り羽根枚数は9枚(円形絞り)。SLDガラス1枚、非球面レンズ3枚を採用してあらゆる収差を良好に抑え込んでいます。優れた描写力を持ちながら小型軽量化を実現した光学設計は、シグマのテクノロジーが結集した結果と言えるでしょう。実際に撮影して感じたのはボケの美しさです。前ボケと後ボケの両方がスムーズで品のある”Bokeh”だと思いました。
オートフォーカスも高速で正確です。ステッピングモーターを採用して動作音もとても静かになっています。もちろんシグマの名物部隊「ゴーストバスターズ」によるゴーストとフレア対策も万全で、厳しい逆光時でもクリアでクリーンな像を約束してくれています。
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporaryでブラブラ実写スナップ!
今回はこのレンズをLマウント機の「SIGMA fp」と「SIGMA fp L」に装着して、いつものようにブラブラとスナップ撮影を楽しんできました。
ある晴れた日、美しい新緑に「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」を向けました。絞り開放F2での大きくキレイなボケが堪りませんね。それでいてピント面はシグマのレンズらしく、とてもキレ味がシャープに写っています。葉脈までしっかりと写しとるこのレンズのパワーはスゴいですね。
古民家の囲炉裏端です。火にかけられた鉄鍋が差し込んだ外光によってシルエットになっています。この「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」はそんなシャドウ部に「ススッ!」と高速かつ正確にフォーカスしてくれました。ピント面のクッキリ感が実にいいですね。とても頼りになるオートフォーカスだという印象を持ちました。
このレンズの魅力は小さくて軽く、携行性が高いところです。Artラインに属する「SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art」は本当に素晴らしいレンズですが、散歩や旅行へ気軽に持ち出すにはちょっと大きい、と感じる人にまさにピッタリです。旅先で出会ったタンポポもF2絞り開放と最短撮影距離45cmとでキレイに撮ることができました。散った桜の花びらも美しくボケています。
350gという軽さは毎日カメラに装着して持ち歩ける重量だと言えるでしょう。フィルム時代から慣れ親しんだ「標準レンズ」をコンパクトな「SIGMA fp」シリーズに付けてブラブラと散歩するのは本当に楽しいですよ。フルサイズフォーマットのボケ感と立体感は「撮影する悦び」を再確認させてくれるはずです。池に架かった木道もしっとりとした写りでとても気に入りました。
この「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」はボケが本当にキレイです。夕日を浴びる手すりを絞り開放で撮っただけですが、ピント面のキリッとした表情から、前後のスーッとした優しさと立体感をもったボケ味が美しく感じます。今回はスナップ撮影でしたが、ポートレート撮影でも素晴らしい描写を見せてくれるに違いありません。
黒澤明の名作「七人の侍」ロケ現場をブラブラとしていると、湧水で大根を洗っている農家の方がいました。声をかけてその立派な作物を撮影させてもらいましたが、採れたてのみずみずしさと立体感が抜群のカットになりました。大根の美味しさが想像できる写りですよね。撮ったあとに2本大根をいただいたのですが、家に帰って味噌汁に入れたら本当に美味しかったですよ(笑)
「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」は軽量コンパクトなレンズですが、6100万画素を誇る世界最小最軽量フルサイズミラーレス一眼「SIGMA fp L」のセンサーにも十分の応えてくれる光学性能を持っています。とある民家を撮ったカットですが、破れた障子や壁とタイルの解像感が実にリアルですね。安心して長く使えるレンズになっていると言えるでしょう。
近ごろは高性能で撮影が楽なズームレンズが主流となっていますが、ライカ版の原点とも言える標準レンズ「50mm」をあえてチョイスして使うのも楽しいと思います。ヒトの目線に近く、自然なパースペクティブと明るさ、そして距離感をフットワークで補いながらシャッターを切るのも実に痛快です。気軽に持ち出して、何気ない日常の光景から自分だけの一瞬を見つけるのも写真の面白さだと、この「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」は再び気付かせてくれました。
SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporaryの主要諸元
レンズ構成枚数:9群11枚
画角:46.8°
絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
最小絞り:F22
最短撮影距離:45cm
最大撮影倍率:1:6.9
フィルターサイズ:φ58mm
最大径 × 長さ:Lマウント φ70.0mm × 68.0mm
ソニー Eマウント φ70.0mm × 70.0mm
質量:Lマウント 350g
ソニー Eマウント 345g
エディションナンバー:C023
付属品:
・マグネット式メタルキャップ(LCF-58-01M)
・フード(LH633-01)
・フロントキャップ(LCF-58Ⅲ)
・リアキャップ(LCR Ⅱ)
まとめ
小粒で取り回ししやすく、程よい明るさと、美しいボケ味を楽しめる「SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary」。日常的に持ち歩き、何気ないシーンをキャプチャーするのをワクワクさせてくれるレンズになっています。この標準レンズ1本で撮り歩くのもいいですし、ズームレンズ主体のシステムに「お守り」として組み合わせるのも悪くありません。このレンズがカメラバッグの中にあるだけで、その日の撮影は楽しいものになると約束されたのも同然でしょう。本当にオススメの1本です!
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。