シグマ 56mm F1.4 DC DN | Contemporary RFマウント|フルサイズ機との組み合わせで真価を発揮するAPS-C用レンズ
はじめに
2024年に入ってから RFマウント用のシグマレンズが続々と発売されました。今回はその中から12月5日に発売されたキヤノンRFマウント用中望遠レンズ「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」をご紹介します。
仕様・デザイン
最大径×全長はφ69×57.5mm、重量は290g。フルサイズ換算で約90mm程度の焦点距離のAPS-C用レンズで、クロップして利用※する事によりフルサイズのカメラでも使えます。最短撮影距離は50cm。近い焦点距離のキヤノン純正のLレンズ「RF85mm F1.2 L USM」の最短撮影距離が85cmなので、中望遠レンズとしては寄れる方だと言えるでしょう。これまでのシグマのキヤノンRFマウント用レンズ同様、AF性能などの最適化が成されており、高速AFやサーボAF、ボディ内収差補正にも対応しています。(補正機能はカメラが対応している内容に限る)
手ブレ補正機構は非搭載のため、ボディ内手ブレ補正のあるボディと組み合わせると露出がシビアなシーンも安心でしょう。とはいえ、開放F1.4を選択すれば夜景の手持ち撮影もさほど不安はありません。
※クロップするとフルサイズ本来のセンサー範囲よりも狭い範囲の写りとなります。
圧倒的に美しいぼけとシャープさが同居する心地よさ
今回、「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」を使ってまず虜になったのは、やはり開放F1.4のやわらかいボケ味でした。特に前ボケを入れたシチュエーションだと、ボケのやわらかさが際立ちつつ、ピントを合わせた被写体のキリッとした描写が一枚の写真の中で心地よく同居するこのレンズの世界観がとても気に入りました。
APS-Cカメラの映像エンジンでこれだけの描写を描き出してくれるのだからフルサイズで撮ったらどうなるだろうと、ワクワクしながらさっそくフルサイズ機でも撮ってみることに。ちょうどR10で撮っていた鉢の水面の綺麗な玉ボケをR6 Mark IIでも撮ってみました。特別に意識はしませんでしたが、好きな画角は決まっていたので結果としてほぼ同じ画角で撮り比べをするような形に。もちろん、1.6倍クロップされることで画素数の低下は避けられませんが、画素数以外のセンサーの性能の違いや同一画角といった条件で比較した場合のボケ感の違いなどを総合的に判断した結果、個人的には玉ボケのボケ感は圧倒的にR6 Mark IIで撮った方が好みでした。
画面周辺では玉ボケが若干糸巻き型になりましたが、これはF2まで絞れば解消されますし、中央部は本当に美しい玉ボケを実現しています。
開放F値でのボケの美しさを堪能したところで、「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」の別の一面も見てみるべく、精細なフォルムの被写体を探してみることに。あれこれ撮った中で、一番このレンズの描写性の高さを体現してくれたのがこちら。
この写真を撮った時に「56mm F1.4 DC DN | Contemporary+フルサイズ」の組み合わせが、このレンズのポテンシャルを最大限引き出せるということを改めて実感しました。
いつもの日々を「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」と
いつもの私の日常を「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」で見つめてみました。
海に行きたいと思いつつ、電車に乗って出かけるのがなんとなく億劫で、海に行かないなら海っぽく撮ってしまえばいいじゃないかと、近所の運動公園の噴水で海に行ったつもり写真を撮って遊びました。
地元の針供養をしているお寺へ。一年間頑張った針たちをお豆腐に刺してお焚き上げするそうで、到着していざお参りをと思ったらここを教えてくれた知り合いにバッタリ。特に約束をしていたわけではなかったので引き寄せ力に嬉しくなりました。お寺の方のご厚意で御堂の中でも撮影させて頂き、貴重な体験となりました。
帰り道に、いつも入店待ちの人がたくさんいる人気のカフェの横を通りかかるとオープン直後でまだ誰もおらず。5駅分頑張って自転車を漕いだ自分へのご褒美に美味しいフォンダンショコラを戴きました。
さいごに
キヤノンのRF用「SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary」は APS-C用を謳ってはいますが、個人的にはこのレンズの描写力をフルで生かすにはぜひフルサイズ機との組み合わせをオススメしたい一本です。Contemporaryだからこその軽量コンパクトなサイズ感はフルサイズのハイエンドモデルとの相性も抜群です。それでいて、写りに関してはArtラインにも引けを取らないほどの解像感と空気感を持つ「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」に、どの製品に対しても真摯で妥協のない姿勢を貫くシグマらしさを感じました。写真を撮るのがより楽しくなるこのレンズの魅力をぜひ体感してみてください。
※2025年1月14日:クロップに関する説明を追記しました。
※2025年1月15日:タイトルと本文を一部調整しました。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。雑誌やwebマガジンなどでの撮影・執筆のほか、フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。祖師谷大蔵のアトリエにてプリントや額装のワークショップなども行っている。個展・企画展多数。