クリスタルに輝く氷「ジュエリーアイス」を撮る
はじめに
ジュエリーアイスという言葉を聞いたことがありますか?
ジュエリーアイスは、1月中旬~2月下旬頃まで北海道中川郡豊頃町大津にある、大津海岸の砂浜で見られる透き通った氷の塊です。どうして透き通った氷の塊が砂浜にあるのかというと、海でできた流氷とは違い十勝川が凍って海に流れ出た氷が、海の波にもまれて氷の角が取れて透明なクリスタルのような氷になります。世界的にも珍しい現象であり、人気の撮影スポットになっています。
今回はそんなジュエリーアイスの撮影方法を、何度も訪れ撮影しているからこそわかるポイントを踏まえてご紹介します。
ジュエリーアイスを撮るための準備
ジュエリーアイスを撮るためには、事前の準備がとても大切です。
■交通機関・移動方法
まずは、撮影スポットまでいく交通機関の確保です。ジュエリーアイスを見ることができる大津海岸に行く手段として注意が必要なのは、公共の交通機関がないことです。車、レンタカー、タクシーなどを使って行く必要があります。当然見ごろの1月中旬~2月下旬は、道路に積雪や凍結などがあり、慣れないレンタカーなどで移動する際には注意が必要です。
自分で移動するのが難しい場合は、帯広駅出発の期間限定の「ジュエリーアイス バス&タクシーパック」などの日帰り路線バスパックを利用するのがおすすめです。
レンタカーなどで移動する場合は、海岸近くにある無料駐車場があるのでそちらを利用して、駐車場から海岸までは徒歩で移動します。無料駐車場は数か所ありますが、海岸に近い駐車場は早朝から撮影にくる方で早く満車になってしまう場合もあるかもしれません。
と言うのも、早朝の日の出のタイミングで撮影する人が多いので、皆さん結構早くから来ています。早朝から撮影する方は事前に日の出の時刻を確認し、駐車場からの移動および撮影場所決定まで含めて日の出時刻の30分~1時間前程度に現地に着くのがいいと思います。
ちなみに、大津海岸付近にはコンビニ等はありません。一番近いところでも20kmほど離れたところになります。早朝から撮影に行く人は事前に出発地点で飲み物や食べるものなどは用意してから移動してください。
■服装
ジュエリーアイスがある大津海岸の風景。雪の積もった海岸を少し歩いてジュエリーアイスを探します。
ジュエリーアイスが撮影できる1月中旬~2月下旬の朝6~7時の大津海岸は、ちょうど最低気温になるような時間帯なので、マイナス15℃~マイナス20℃の寒さになります。場合によってはもっと寒さを感じることもあります。
とにかく暖かい服を重ねて着てください。耳まで覆うニットの帽子やフード付きの防寒着、手袋、スノーブーツ、カイロは必需品です。上着のポケットにもカイロを入れておくと、撮影しているときに指先などを暖める事ができます。特に足のつま先に貼るようなカイロはおススメです。
また凍結した場所を歩く場合もあるので、シューズに付ける簡易的な滑り止めスパイクなども用意しておくと安心です。
■機材
カメラ・レンズの防寒対策が必要です。極寒の撮影現場でのレンズ交換などは難しいので、あらかじめ撮影に合わせたレンズを装着し、大まかなカメラの設定も事前にしておいて撮影ポイントに向かうのがいいでしょう。
レンズは、広角のズームレンズか標準のズームレンズで問題なく撮影できます。
ただ低温下の状態で撮影を長く続けていると、寒さでズームリングの動きなどが鈍くなることがあります。極寒の中で安定したレンズ性能・動作を確保したい時などには、レンズヒーターなどを装着することを検討してもよいでしょう。簡易的な対策として筆者はリストバンドなどをレンズに着けたりすることもあります。
また撮影しないときには、カメラ・レンズはタオルなどの布で包んで、カメラバックに収納して移動するなどの対策を実施しましょう。筆者は寒いところで撮影する際には、よくニット帽を利用しています。保温性もあってよく伸びてレンズを装着したカメラをそのまま素早く包むことができとても便利です。
カメラのバッテリーはフル充電したものを用意して撮影に挑みましょう。極寒の低温下ではバッテリー容量の低下が激しく、通常時のような撮影枚数をこなす事ができません。念のために予備バッテリーも用意し、ポケットなどに入れて温めておくのがベストです。
早朝の暗い段階から撮影する場合などは三脚が必要です。寒いなか手袋をしたまま撮影すると、カメラブレを起こす場合があります。三脚を使用してブレない工夫も必要です。ジュエリーアイスを撮影する時、低いアングルで撮影する場合が多いので三脚はローアングルが可能な三脚がベストです。
また、スローシャッターで波を白く表現したい場合などは、NDフィルターなどを用意しておくと一味違った写真を撮影する事もできます。
ジュエリーアイスを撮ってみよう
実際に海岸まで歩いて行ってジュエリーアイスを探していると、その時のタイミングにもよりますが、既に撮影されたジュエリーアイスが不自然に積み上げられたものを目にすることもあります。皆さんいろいろ工夫されて自分なりのジュエリーアイスを撮影しています。
特に撮影に慣れている方でしょうか、水の入ったペットボトルを持参してジュエリーアイスに着いた砂を洗い流して撮影している方もいらっしゃって、自分の気に入ったジュエリーアイスを見つけて撮影を楽しんでいる方が多いようです。
日の出前後の撮影がオススメなのは、ちょうどジュエリーアイスが撮影できる大津海岸から奇麗な日の出を見る事ができ、日の出前後の空の色あいが奇麗にジュエリーアイスを輝かせてくれるからです。撮影は大変ですが、キレイに撮れた時はとても感動的です。
自然が生み出すジュエリーアイスは、様々な形のものがあってお気に入りのジュエリーアイスを探すだけでも楽しめます。気に入ったジュエリーアイスを見つけたら、少しホワイトバランスの設定を自分なりに変更して撮影を楽しんでみてください。
ちょっと色温度を下げて青みを強くしてみたり、逆に色温度上げて黄色味を強くしてみたりすることで、ジュエリーアイスに写り込んだ光を様々な表現に写すことができます。
撮影後には気を付けないといけない事があります。極寒の中で撮影した後、車などに戻った時の急激に温度変化による結露には注意が必要です。寒い中撮影していたので、車の暖房を強くしたいところですが、急激な温度変化による結露発生の恐れが生じます。シリカゲル(乾燥材)を入れたビニール袋などにカメラを入れて密封し、ゆっくりと暖めて結露が発生しないようにしましょう。
まとめ
ジュエリーアイスは自然現象が生み出す素敵な被写体です。その時にしか撮れない素敵な形や光・色があります。いつでも撮れるわけではなく、撮影スケジュールを組むことが難しい被写体です。筆者も何回か撮影に行っていますが、まったくジュエリーアイスを見られなかった時もありました。
厳しい撮影環境ゆえに余裕を持った撮影スケジュールを組んで、事前のリサーチをして撮影にチャレンジしてみてください。下記の豊頃町のジュエリーアイスHPや豊頃観光協会のHPには、直近のジュエリーアイスの状況が掲載されてします。その他情報も掲載されているので、撮影に行く前にチェックしておきましょう。
■豊頃町の新絶景/ジュエリーアイスHP
http://www.toyokoro.jp/jewelryice/
■豊頃観光協会ジュエリーアイスHP
https://www.toyokoro-kankoh.com/
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師