ソニー α1 レビュー|風景撮影で使ってみました!(坂井田富三)
はじめに
前回のスペック以上の凄さを感じるソニーα1【スポーツ撮影現場で使ってみました】編では、主にスポーツ撮影・動体撮影のレビューでしたが、今回は風景撮影などに重点をおいたレビュー、α7R IVとの比較や前回書ききれなかったα1の魅力をお伝えします。
特筆ポイントとメニュー構造や変更点
前回のレビューで書ききれなかった、α9系・α7系から大きく変わったポイントを紹介します。
メニューの表示・構造
α1のメニュー表示/構造は、従来のα(α7s III除く)やRXシリーズとは異なっています。このメニュー表示構造は、α7S IIIにも採用されているメニュー表示です。ですので、α7S IIIユーザー以外は、最初は戸惑うかも知れません。従来のメニューが横にページが進んでいく感じから、縦にメニューが進むように変更されています。
カテゴリーや表示される言葉も変更されているものが多く、慣れるまでは少し手こずるかも知れませんが、従来のものよりも、変更する目的の設定までたどり着くのは早くできるようになっています。
■α1:マイメニュー・撮影・露出/色・フォーカス・再生・ネットワーク・セットアップ
■α7S III除く従来のα:撮影1・撮影2・ネットワーク・再生・セットアップ・マイメニュー
特にα1は自分なりによく使う項目などをまとめて設定表示できる、マイメニューの項目がメニューの一番初めに変更されているので、このマイメニューを積極的に活用するのが一番効率のいいα1の操作方法になると思います。
さらに、マイメニューからの表示がデフォルトでは「切」になっているので、これを「入」に変更しておけば、メニューボタンを押した際に常にマイメニューが最初に表示され、素早くマイメニューに登録してある設定項目を変更する事が可能になります。
クリエイティブスタイルからクリエイティブルックへ
メニュー項目のなかで、機能の言葉と設定できる項目が変更になっているモノがあります。
色を変更する要素で従来では「クリエイティブスタイル」と呼ばれていたものが、「クリエイティブルック」に変更になり、さらに設定できる項目が増えています。
スタンダードと表示されていたものがSTと表示されるようになり、表示パターンや順序、項目数も変わっています。
特に特筆する部分は、従来のクリエイティブスタイルでは、「コントラスト」・「彩度」・「シャープネス」の項目でプラスマイナス3段階で調整できる項目が、「コントラスト」・「ハイライト」・「シャドウ」・「フェード」・「彩度」・「シャープネス」・「シャープネスレンジ」・「明瞭度」と調整項目が非常に豊かに変更され、調整できるステップも変更されています。
特に「ハイライト」・「シャドウ」などの細かな調整ができる事は、風景撮影などの現場で自分のイメージに合わせて撮影設定を追い込んでいく時に効果を発揮します。
下の写真は菜の花や空を鮮やかにするために、クリエイティブルックをVV(ビビット)にし、全体的に柔らかい表現をする為に、コントラストの設定を-1、シャドウ+4に調整しています。従来の機種でもコントラストの調整は可能でした。
しかし、シャドウ部・ハイライト部までの調整項目がなかった為、RAWデータの現像等で調整していましたが、JPEGの撮って出しでも細かな調整が反映できるのは凄くメリットを感じます。
オートフォーカスの設定は、フォーカスはトラッキングの拡張スポットを使用し、列車の正面部分をトラッキングしてAF追尾。列車自体は低速走行なので、連写モードはα1にしては控えめのHモード(20コマ/秒)で撮影しています。
電源OFF時にシャッターを閉じる機能を追加
筆者にとって期待していた機能が追加されていました。それは「電源OFF時にシャッターを閉じる機能を追加」です。
ミラーレスカメラは、レンズ交換の際にセンサーがむき出し上になるので、センサーにホコリが付着する事が非常に多くあります。レンズ交換の際にはブロアーを使ってホコリ除去をし、交換後はファインダーを覗いてホコリチェックをするのが習慣にはなっていますが、この機能が搭載されたことにより、レンズ交換によるセンサーへのホコリ付着のリスクが軽減され、撮影現場での撮影の安心感が増しました。
この機能も、デフォルトではONにはなっていないので最初に設定する必要があります。
メニューの階層の深いところにあり、なかなか見つけにくいかもしれません。
「セットアップ」→「セットアップオプション」→「アンチダスト機能」→「電源OFF時のシャッター」
設定を変更する際に、注意事項が表示されます。
シャッターが閉まった状態で、センサーへのホコリの付着を防止する機能なので、レンズ交換の際の作業には、シャッターに触れない、強い光源に向けないなどの注意が必要になります。
またこの設定ONにした状態では、カメラ電源をOFFにする際に下記様な注意事項が表示されます。使用しないときには、シャッター保護の為にもレンズにはレンズキャップを付ける習慣を付ける必要があります。
注意事項はありますが、センサーへのホコリ付着防止対策には絶大な効果を発揮します。今回も屋外の撮影で何回もレンズ交換を実施しましたが、センサーへのホコリ付着の形跡はみられませんでした。とても助かる機能です。
画像フォーマット(JPEGの画像サイズに[ライト]追加とHEIFの追加)
JPEGの設定で、従来からある設定の(エクストラファイン / ファイン / スタンダード に ライトが追加されています。撮影する被写体などの状態より違いはありますが、実際に撮影してJPEGデータをみてみると、圧縮率をあげているのでスタンダードで保存されるJPEGよりも平均35%前後ほどファイル容量が小さくなっていました。業務ですぐに転送するような場合などには重宝するかもしれませんが、一般的には使用頻度は少ないかもしれません。
また、α7S IIIにも搭載されたHEIF(ヒーフ)ファイル形式も搭載されています。聞きなれないHEIF形式ですが、iPhoneなどでも採用されているフォーマットで、複数の静止画像を一つにまとめて保存することができたり、動画、音声などにも対応したフォーマットになります。JPEGと比較して高い画質・高い圧縮率が実現できるフォーマットではありますが、HEIF形式の画像をそのまま表示できるPCや画像編集ソフトがまだ多くないので、まだまだ使いにくいかも知れません。
特にWindowsユーザーでは、パソコン上でJPEGの様にサムネイル表示ができないので、そのままでは画像の内容を確認することができません。
上の写真はWindowsパソコン上での表示になります。サムネイルが表示されているのがJPEGデータ。オレンジ色のサムネイルがRAWデータでソニーの現像ソフト「Imaging Edge」に紐づいています。白いサムネイルがHEIFデータです。現時点では、PHOTOSHOP等の画像加工ソフトもこのファイルには対応していません。
ソニーαの場合は、ソニーからHEIFファイルをJPEG/TIFFファイルに変換するアプリケーションが提供されていますので、このアプリケーションを使って汎用性のあるファイル変換する作業が発生します。
ソニー HEIF Converter のダウンロードはこちらから
https://support.d-imaging.sony.co.jp/app/heif/ja/
高画質を維持したまま、画像ファイル容量を小さくできるメリットがあります。JPEG (エクストラファイン)の容量に比べて、半分以下の容量で保存されていました。しかし現時点では汎用性の画像ファイルに変換する必要があるフォーマットなので少し手間がかかります。
α1の魅力的なスペックを確認・改善ポイントとメニュー表示や変更点
画素数
αシリーズで一番大きな画素数を持つα7R IV(約6000万画素)に対して、α1も約5000万画素と引けを取らない画素数があり、写真展などプリントするようなA1・A2サイズへの引き伸ばしプリントにも耐えることができるスペックです。α9のAF性能・連写性能とα7R IVの高画質を、まとめて一つの小さなボディに詰め込んだα1はどんな撮影シーンでも対応できるカメラと言えるでしょう。
軍艦部のダイヤルとフォーカスモードの切り替え
α7R IVとα1での操作系の大きな違いは、軍艦部左にあるダイヤル操作の部分になります。このダイヤルはAFモード・連写の切り替えなどの操作部分になり、この部分はα9系と同じ操作になります。フォーカスのモードがダイヤルになっている事により、α7系でできていたメニュー項目操作からのフォーカスモードの切り替えはありません。
またドライブモード(連写)もFnメニューにデフォルトで入っていますが、ここでは使用する事ができないので、Fnメニューの入れ替えなどのカスタムをした方が良いでしょう。α9系からα1を使用される方は特に問題ないと思いますが、α7系からα1を使用される方は操作を少し戸惑うかもしれません。
また、α7系ではフォーカスモードAF-S・AF-C・DMF・MFとAF-Aというモードがありますが、α1にはAF-Aモードはありません。このAF-Aというモードは、シャッターボタンを半押しすると、被写体が止まっているか動いているかが自動で判別され、AF-SとAF-Cが自動で切り替わるモードです。α1はダイヤルでのフォーカスモードが切り替えになっている為、AF-Aモードが存在しません。
HDMI端子の変更とタテ位置グリップ
α9 IIやα7R IVに搭載されていたHDMIマイクロ端子(Type-D)から、耐久性や汎用性の高いHDMI Type-A端子に変更されています。一般のユーザーでは使用頻度も少ないかもしれませんが、動画撮影などで外部モニターを接続する際には端子が大型のタイプに変更されたので、接続不良を起こしにくくなるなどの面について信頼感が増しました。
縦位置グリップ「VG-C4EM」に関しては、α7R IVとの共通のものになるので、どちらの機種でも使用可能です。
ボディサイドの端子の仕様が変更になっているほか端子の配置なども変更になっているため、α7R IV仕様のサードパーティー製L型クイックリリースプレートの装着には注意が必要です。
製品によっては、端子部分のカバーが開かなくなったりします。α1対応の製品が出るのを待った方が良いでしょう。
筆者の持っているα7R IV用のプレートをα1に装着してみましたが、やはり端子部分のカバーを開ける事ができませんでしたので、今回の撮影では左サイドのプレートを外し下だけ装着して撮影をしてきました。アルカスイス互換のプレートがあると三脚に装着するのも楽なので、対応製品がでてくるのを期待したいところです。
α1の魅力的なスペックを確認・房総の春を撮る
3月下旬にα1を持って、千葉県の房総半島にある小湊鉄道の養老渓谷駅に行ってきました。養老渓谷駅から徒歩15分ほどの場所にある、石神の菜の花畑は人気の撮影スポットです。この日も多くの写真愛好家の方々が撮影にきていました。トロッコ列車がくる時間帯がピークで、平日にも関わらず100名ほどの方が撮影していました。きっと土日はもっと凄い人になるのでしょうね。ちょっとビックリしました。
キレイな菜の花畑と動く列車の撮影は、α1にピッタリの被写体です。
さいごに
今回はα1を持って房総半島の春の風景を撮影してきましたが、今まで各αシリーズを使用してきた筆者には、特に意識することなくα1を使いこなす事ができました。
ただ、メニュー操作には少々の慣れが必要と感じます。使用する前に、よく使う設定項目は事前にマイメニューに登録しておくか、Fnキーによる設定項目の表示を無用なものと必要なものを入れ替えておく事をおすすめします。
α9系のAF性能・連写性能を持ち、α7R IV並の画素数を併せ持つフラッグシップ機α1は、どんな撮影シーンでも、どんな被写体にも対応できる万能性を手に入れた最高スペックのカメラであることは間違いない。これからの撮影がとても楽しみになってきました。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師
「α1」はこちらの記事でも紹介されています
■ソニー α1 レビュー|スポーツ撮影現場で使ってみました!(坂井田富三)
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/a1-3-20210330/
■ソニー α1 レビュー(前編:野鳥・ポートレート)|葛原よしひろ
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/a1-5-20210323/
■ソニー α1 レビュー(後編:風景・ステージ撮影)|葛原よしひろ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/480649337/
■特集ページ「他製品とのスペック比較や同製品に合う人気アクセサリーなども紹介」
https://shop.kitamura.jp/special/sale-fair/camera/feature/sony/a1/