ソニー α1 レビュー|野生動物撮影のプロが選ぶメインカメラ
はじめに
今回は野生動物撮影において絶対的な信頼を寄せる私のメインカメラ「ソニー α1」を紹介する。早速本題に入っていこう!!
超絶性能のフラッグシップ
2021年1月27日に発表されたソニーαのフラッグシップモデル「α1」。製品発表会で上映されたProduct Announcement Movie。そこに表示された「50MP x 30fps」に驚愕した人も多かったのではないだろうか。
それまでは50MPといえば高画素機、風景やスタジオ撮影でじっくり撮るためのカメラ。連写は10fps程度でも速いという感覚だった。そして当時の高速連写機は一眼レフではミラー駆動撮影14~16コマ/秒、最速・最強と謳われていたα9・α9 IIでさえ20コマ/秒。α1は実にα9シリーズに対して画素数200%以上!!連写速度150%!!と信じ難いスペックを纏っての登場だった。
その衝撃は凄まじく、筆者の周囲のαユーザーは一斉にその愛機をα1に持ち替え、更にはフィールドで出会うカメラマンたちのαユーザー率が一気に高まった印象すら受けたのであった。実際、筆者自身も即座にメインカメラとして使用を開始、以降現在もその地位を不動のものとして愛用している。
瞬間を捉える力-1(超高速連写)
野生動物撮影においてソニーα1の最大の魅力は、やはり「瞬間を捉える能力の高さ」といえるだろう。縦横無尽に走り回り飛び回る被写体の動きにしっかりと追従し、人間の眼では捉えきれない一瞬を切り取る力。特に「切り取る」という点で、フルサイズ・秒間30コマの撮影を達成した高速連写能力は撮影者の意識では認識しきれない光景を細かく刻み撮って、後から最良の1枚を選ぶ余裕を生み出してくれる。
激しく上がる水飛沫の様子、高速で羽ばたく翼の形状等、撮影中には認識できていなかった部分までを後からじっくりと選別し、撮影者の期待を上回る最高の一枚を手に入れることが出来る。今まで「ここぞ!!」というタイミングでシャッターを切ったつもりでも、ほんの僅かなズレで涙を呑んだ経験がある方も多いと思う。
α1の秒間30コマの連写はそうした悔しい思いを限りなくゼロに近づけ、本当に自分が上手くなったかのように感じさせてくれる力を持っている。これは一度経験したら、「もう秒間10コマ・15コマの世界には戻れない」と思わせる魔力がある。
瞬間を捉える力-2(優れたAF性能)
α1の「瞬間を捉える力」を支えるもう一つの柱、それは優れた動体補足力、AF性能の高さである。登場から既に2年の月日が経っているが、未だにその被写体認識・補足能力はトップクラス。レンズ駆動の速さ・精度も含めた総合的なAF能力は文句無しに現在でもナンバーワンの力を持っている。
また、ブラックアウトフリーで途切れる事なく被写体を追えるファインダー像が、更にAFの正確性を高める相乗効果をもたらしている。AFのフォーカスエリアや追従敏感度等、いくつかの設定項目もあるが、まずは標準設定のままで良いから是非使ってみて欲しい。連続撮影時のヒット率の高さはまさに異次元のレベル。瞳AFをON、被写体に応じて対象を「動物」「鳥」にセットしあとはカメラに任せて、自分は被写体と真摯に向き合うだけでいい。動体撮影はもう特別な技術を必要としない時代になっている。
速さだけじゃない!表現力も超一級!!
輝度差の激しいシーンでもハイライトからシャドウまで素晴らしい階調再現力で描き切る。またソニー純正のGマスターレンズの優れた描写力と相まって、画面に小さく配置したエゾシカの枝角の1本1本、氷原の氷の質感までもしっかりと再現している。
霧の立ち込める氷原に佇むウミワシたち。白の中の白を描き分ける豊かな階調再現力と5000万画素超の解像力が生み出す厳寒の静寂世界
動画撮影機能も充実
α1の優れた撮影能力は静止画撮影にとどまらない。動画撮影においても極めて高い撮影能力を発揮するのが、αシリーズのフラッグシップモデル「α1」なのである。
まず、α1はαシリーズの中で最初に「8K」での動画撮影を可能にしたモデルである。まだまだ高価ではあるが、8K表示可能なモニターも登場してきている。その臨場感は素晴らしいものに感じられるだろう。今後の普及が楽しみだが、そうした未来を見据えて挑戦的な機能を盛り込んでくるのがソニーらしい気概を感じるところである。
また、α1は8K以外にも様々な撮影モードが搭載されているが、中でも筆者が「この機能が絶対必要!!」と惚れ込んで多用しているのが「4K120P」モードだ。筆者にとって肉眼では捉えきれない野生動物たちの素早く、そして美しい動きを観せるには欠かせない機能である。
4K120Pで撮影することによって、実際のスピードでの再生とスローモーション再生を自由に組み合わせて観せることが可能となり、動画での表現力は飛躍的に高まっていく。
最後に
α1の凄い機能はまだまだたくさんあり過ぎて、とても今回紹介し切れるものでは無かったが、そのほんの一端だけでもお伝え出来ていれば幸いである。高額な製品ではあるが、間違いなく価格以上の価値あるカメラだと断言できるし、本当に大袈裟ではなく、今までの自分の撮影世界が一変する力を持ったカメラである。
経験豊富な方が自分の世界観を追求するために。これから本格的な野生動物撮影を志す方に。野生動物撮影の夢を叶える為のおそらく、最短の道を示してくれるのがこのα1だと筆者は考察している。是非その手にとって新しい撮影の世界を体感してほしい。
■写真家:野口純一
1968年、埼玉県生まれ。北海道在住。2輪、4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に惹かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに、2002年より写真家として活動を開始。カメラメーカーの製品作例等を手掛ける他、雑誌やカレンダー等に作品を提供し、国内・海外問わず、野生の命と自然風景を求め活動を続けている。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。