ソニー α1 IIレビュー|野鳥へのAF精度が向上、成熟したフラッグシップ機

山田芳文
ソニー α1 IIレビュー|野鳥へのAF精度が向上、成熟したフラッグシップ機

初代α1を振り返って

2021年3月に発売された初代α1は、高画素とスピードを両立したという意味で、はじめてのカメラでした。α1が世に出る前は、サクサクと連写ができるスピード系のカメラは画素数が控えめで、一方で高解像モデルのカメラは連写性能が控えめというのが普通でした。

両立が困難と思われていたこのふたつを共存させ、1台で何でもできるフラッグシップ機として、α1が登場した時は衝撃を受けた人も多かったのではないでしょうか。

そして、4年弱の時を経て、2024年12月にα1 IIが発売されました。ソニーはこのカメラを「Unrivaled 孤高の第二幕」と謳っていますが、α1 IIを使ってみるとまさにそんなイメージがぴったりで、上手に表現しているなと思いました。

撮る道具としても進化したα1 II

近年はあまり取り上げられることが少なくなりましたが、カメラが撮る道具として、快適で使いやすいかどうかはとても大切だと僕は考えています。α1 IIは使いやすさという点でもいろいろと進化しました。

なかでも僕が個人的に気に入っているところは
1. マルチアングル液晶モニター
2. FDA-EP21(深型のアイピースカップ)
3. バッテリーチャージャーBC-ZD1

の3つで、以下それぞれをご紹介します。

▼マルチアングル液晶モニター

α7R Vと同様の4軸マルチアングル液晶モニターが採用されました。これはチルト式とバリアングル式の「いいとこどり」のモニターで、ローポジションから縦位置で撮影する時などとても使いやすいので、個人的に非常に気に入っています。

▼アイピースカップ「FDA-EP21」

α1 IIには従来型のアイピースカップFDA-EP19(写真左)に加えて、深型のFDA-EP21(写真右)も付属されています。FDA-EP21をつけると、外からの光をより効果的に遮断できるので視認性が高くなります。単品でも販売されていてα1、α9 III、α7R V、α7 IV、α7S IIIにも対応しているので、これらの機種をお使いの人で、屋外で撮影をされる全ての人におすすめしたいアイテムです。

▼バッテリーチャージャー「BC-ZD1」

バッテリーNP-FZ100を2個同時に約155分で急速充電できるバッテリーチャージャー「BC-ZD1」も付属します。本当に早く充電でき、単品でも販売されているので、NP-FZ100で動く他機種をお使いの人にもおすすめ。

有効約5010万画素の解像性能を検証

初代α1でも十分過ぎるほどの高解像で写真を撮ることができましたが、α1 IIになってより最適なチューニングが施され、センサーのポテンシャルをさらに引き出せるようになり、初代α1よりも高解像で撮影できるようになったと聞きました。

果たしてどれほどの解像性能なのか、撮影結果をご覧ください。

■使用機材:SONY α1 II + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:F4 1/250秒 ISO250

きれいに色づいたところが背景になるようにポジショニングしてモズを撮影。どれぐらい解像しているのかチェックしやすいように拡大をしたものと一緒に見ていきましょう。

1枚目がトリミング無しのフル画面で、2枚目の白枠で囲んだところを拡大したのが3枚目。フォーカスポイントの目は言うまでもなく、カメラ位置から目までの距離と同じ距離にあるところも凄まじく解像していて、どこまで大きく出力できるのか試してみたくなるほどです。

中・高感度の画質を検証

中・高感度に設定した時、初代よりも低ノイズで高画質になっているとのことなので、検証するためにISO1600と3200で撮影してみました。

▼ISO1600

■使用機材:SONY α1 II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F8 1/800秒 ISO1600

野鳥を撮る時にISO1600前後の感度を使う人は多いのではないでしょうか。そういう意味で、ISO1600でも被写体の質感を損なうことなく低ノイズで撮れるかどうかは重要となります。

ご覧の通りISO1600でもノイズ感はほぼなく、美しい描写を見せてくれました。5000万画素以上ある積層型センサーのカメラでこの結果は、個人的にかなり良好だと感じました。

▼ISO3200

■使用機材:SONY α1 II + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:F4 1/3200秒 ISO3200

ISO3200でも想像していた以上に低ノイズで良好な結果でした。最近はAIによるノイズ除去という便利なものがあり、使うと確かにノイズはきれいに低減されます。しかしながら、同時に被写体の質感も損なわれると僕は感じています。一方で、撮って出しでここまで低ノイズなα1 IIならAIによるノイズ除去は不要で、安心して高感度を使うことができそうです。

僕は高感度の検証以外でISOを上げて撮影するのは抵抗があるのですが、この結果を見て、非常用だったISO3200も今後は積極的に使ってみようと思いました。

AIプロセッシングユニットによるリアルタイム認識AF

先代のα1のAF追従性能は、文句のつけようがない非常に優秀なものでしたが、AFの認識精度という点では独立したAIプロセッシングユニットを搭載しているα9 IIIやα7R Vには及ばない印象でした。

今回、α1 IIにもAIプロセッシングユニットが搭載され、驚異的な追従性能にプラスして、認識の精度も格段に向上し、まさに「Unrivaled」となりました。

■使用機材:SONY α1 II + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:F5.6 1/500秒 ISO500

まずは、横向きから正面向きに変わる瞬間に瞳をロストしないかどうかをテスト。ユリカモメが正面を向いてくれることを期待して、シャッターを半押ししながら待ちました。それほど待たずに、正面を向いてくれましたが、向きが変わる時も瞳をロストすることなく確実に捉えてくれました。

■使用機材:SONY α1 II + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:F4.5 1/3200秒 ISO400

ホシハジロの雄が着水するシーンをAF時の被写体認識を「入」にして、認識対象を「鳥」に、認識部位を「瞳」に設定してAF-Cで連写しました。このように翼を広げている状態でも、一時的に瞳をロストすることもなく認識、合焦してくれます。

■使用機材:SONY α1 II + FE 300mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:F4.5 1/3200秒 ISO400

上の写真の4コマ後のカットがこちら。ホシハジロよりも手前に水飛沫が飛び散っていますが、水飛沫を瞳と誤認識してピントが引っ張られることもありません。AIプロセッシングユニットのおかげで、動きのある野鳥も高精度に瞳を捉えることが可能になりました。

まとめ

AIプロセッシングユニットによって認識AFの精度がさらに高くなり、より最適なチューニングによって解像性能も中・高感度性能もさらに向上したα1 II。撮る道具としての使いやすさも向上し、成熟のフラッグシップ機となりました。α1を長く愛用してきた私ですが、これからこのカメラを使って鳥たちのいろいろなシーンを撮影していきたいと思います。

 

 

■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)、『写真は構図でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など。最新刊は『SONY α7C II 完全撮影マニュアル』(技術評論社)。

 

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