【オールドデジカメ】再熱!ソニー Aマウント α33とDT 18-70mm F3.5-5.6の魅力
はじめに
2010年9月に発売されたソニー α33。ソニーAマウント機の中で最もコンパクトなボディを実現し、現在のミラーレスカメラの先駆けともいえる撮像素子によるライブビューの搭載、7コマ/秒連写、フルHD記録など、多彩な機能を盛り込んだエントリークラスとして人気を博したカメラです。発売からすでに15年近くとなる今、家族と共用していたことを思い出し、改めて手にとって撮影してみました。
ミノルタαシリーズからソニーαシリーズ Aマウントレンズへ
かなり簡略化してお伝えしますが、Aマウントの誕生は1985年。当時のミノルタが発売した、世界に先駆け本格的なオートフォーカスを備えた一眼レフカメラα-7000と共に誕生したマウントです。今では当たり前となった機能の一つ、オートフォーカス(AF)ですが、当時は夢のような技術で、〝AF一眼レフカメラ〟α-7000はカメラの歴史を塗り替える一台が登場したとも言われています。
時を経て2005年にソニーとコニカミノルタがαシリーズを共同開発することを発表し、翌2006年にはコニカミノルタがカメラ事業から撤退。αシリーズの事業は丸ごとソニーに移管されるという流れを受け、ソニーがAマウントを引き継ぐ形で「デジタル一眼レフ」(α(アルファ)シリーズ)用マウントとして展開されてきました。それがソニーAマウントです。
最新技術を搭載 小型化とスピード化を重視したソニー α33
ミラーレスカメラが主流となる一歩手前の2010年初頭。新しくEマウントを備えたカメラNEX-5の頃です。まだまだデジタル一眼レフカメラが求められていた中で、徹底して小型化された使いやすいカメラとして、高速で動く被写体をとらえるスピードを追及した〝新次元のスピード一眼〟として登場したのがα55と一部の機能を限定したα33です。
α33の有効画素数は約1,420万画素、センサーサイズはAPS-Cサイズで、“Exmor” APS HD CMOSセンサーと呼ばれています。
固定式透過ミラー技術「Translucent Mirror Technology」(トランスルーセントミラー・テクノロジー)を用いたことで、カメラからミラー駆動のプロセスがなくなり、動画撮影中も位相差AFが使えることや、約7コマ/秒の高速連写を達成することに成功しました。
また、“α”シリーズで初となる電子ビューファインダー「Tru-Finder」と呼ばれる視野率100%のEVFを搭載するなど、小さなボディに高機能を搭載したα33は、一眼カメラを持つのは初めて!という多くのエントリーユーザー層を魅了し、引き込んでいく人気ぶりでした。
今では当たり前のことで、その恩恵を受けていることを忘れてしまいますが、EVFの中には様々な情報が表示され、ファインダーをのぞいたままでの操作が可能になったのもこの時。実際に撮影される色合いがそのままリアルタイムで見られ、ホワイトバランスもファインダー内で確認可能になった画期的なカメラだったのです。
α33の主な仕様
使用レンズ | ソニーAマウントレンズ, ミノルタ/コニカミノルタαレンズ |
撮像素子 | APS-Cサイズ(23.4×15.6 mm)、”Exmor”APS HD CMOSセンサー |
有効画素数 | 約1420万画素 |
ボディサイズ | 124.4 x 92 x 84.7 mm |
質量 | 約433g(本体のみ) |
記録メディア | SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード(メモリースティック PRO デュオ、メモリースティック PRO-HG デュオ) |
フォーカス | TTL位相差検出方式、測距点数15点(3点クロスタイプ) |
連続撮影速度 | 最高約6コマ/秒 |
画像ファイル形式 | JPEG 、RAW 、RAW+JPEG |
撮影感度 | ISO100~12800 |
動画記録方式 | AVCHD(1920 x 1080)/MP4(1440 x 1080、640 x 480) |
シャッター速度 | 1/4000-30秒(1/3段ステップ) |
手ブレ補正 | イメージセンサーシフト方式(補正効果約2.5~4段) |
ファインダー | 0.46型電子ビューファインダー、144万ドット、約1.10倍 |
α33の電源を入れた時の起動の速さはかなり優れていて、とっさにタイミングを逃さず撮影したいスナップ写真はもちろんのこと、気軽に旅に持ち出せるカメラとして活躍していたことを思い出します。ファインダーをのぞけばアイスタートするAFはこんなにスムーズだったっけ?と思うほど。完璧な追従とはいかないものの、動画撮影でも比較的まとを外すことがありません。
ファインダーをのぞきながら親指で操作できるボタン類の位置も違和感なく扱いやすい印象です。いまではなんとなく不思議な感覚になる縦方向180°・横方向270°に回転するバリアングルチルト式のモニターは、ローアングル・ハイアングル撮影に適しているだけでなく、動画撮影にも向いているなど、ホントに15年も前のエントリー機?と、疑ってしまうほど、さまざまな機能に古さを感じさせないカメラになっています。
スナップ撮影が心地よい 標準ズームレンズDT 18-70mm F3.5-5.6
所有しているAマウントレンズは、標準ズームレンズDT 18-70mm F3.5-5.6です。APS-Cサイズ用のレンズで、フルサイズ換算27-105mmに相当します。通常の標準ズームレンズよりも焦点距離が長く、中望遠域までカバーされているので、これ一本でなんでも撮れる使い勝手の良いレンズです。
筺体がプラスチック製ということもあり、質量約235gと圧倒的に軽く小さいので携帯性に優れています。ボディと合わせても約670g!という軽さに改めて驚きました。
当時の評価はあまり良くなかったようですが、写りは決して悪くなくニュートラル。不自然な色のりもなく、トーンも滑らかで極めて自然な写りが特徴です。広角端18mmではタル型の歪曲が目立つため直線の描写が少々苦手ですが、望遠側に少しズームすると問題は解消します。ただ、普段のスナップ撮影やテーブルフォトではあまり意識せずに使えるのでそれほど気にならないでしょう。
わが家のα33は、絞り優先モードが故障していたため全てプログラムモードでの撮影です。スナップ撮影は、むしろプログラムモードだけで十二分に楽しめました。
DT 18-70mm F3.5-5.6のボケ表現
開放F値が暗めでボケにくいと思われる方もいるかもしれませんが、標準ズームレンズの場合、絞り優先モードよりもプログラムモードを積極的に使うことで、F値に合わせた適正なボケ表現が可能です。
1.レンズと被写体の距離 2.被写体と背景の距離 3.いずれの焦点距離でも〝寄る〟こと。
この3点を意識し、最短撮影距離38cmの基本的なディスタンスを活かすことで焦点距離に合わせたボケが十分に得られます。
広角側での撮影時は深度の深さが活かされ、画面奥に趣が感じられるシネマチックな画になって印象的。望遠端は70mm(105mm相当)と中望遠域までズームできるので、柔らかいボケの効果も強まります。どんな焦点距離でも楽しめるボケの効果に、標準ズームレンズならではの良さを感じながら、撮影の基本を今一度見直すきっかけになりました。
DレンジオプティマイザーとHDR機能も搭載
α33を使っていて、Dレンジオプティマイザー(DRO)とHDR機能、この2つの機能が当時から搭載されていたことに気づきました。
強い逆光などの撮影シーンでの明暗を最適に補正する画像処理技術Dレンジオプティマイザー機能は、カメラがシーンを分析し、明暗差の大きなシーンではコントラストを圧縮するため、露出補正と比べ背景が極端に明るくなりすぎるのを防ぐ上、背景とのバランスや全体のコントラストを考慮しつつ、被写体をより見た目に近い明るさで描写します。
HDR(ハイダイナミックレンジ)撮影では、一度のシャッターで露出の異なる3枚の画像を合成し、暗い部分は鮮明に、明るい部分は階調をしっかり残して表現できます。
デジタルカメラが苦手とする明暗の輝度差を見たままの印象に近い撮影を可能にしてくれる二つの機能。撮影シーンによっては活用したい機能です。ただし、いずれの撮影方法でも記録データはJPGのみとなります。
多彩な撮影が楽しめるSCNモード&ピクチャーエフェクト
なぜか敬遠されがちで意外と知られていないカメラ内の撮影モードですが、完全なオートモードに任せるよりも適切に撮影が楽しめるという特性を持つのがSCN(シーン)モード撮影です。ポートレート、マクロ、夕景、夜景撮影をいろいろ撮ってみたいと思っても、とっさにどんな設定で撮ればいいのかわからない!そんな時に役立ちます。
また、ピクチャーエフェクトはいわゆるデジタルフィルターの機能。あまり使われる方が多くないようですが、後からPCでRAW現像しなくても、カメラの中で撮影シーンに合わせた適切な雰囲気を選びながら撮影できます。被写体や光の状況に応じて使い分けながら楽しむことができる機能なので、活用しない手はありません。
おわりに
改めてα33を使ってみると、普段使いにもってこいで、表現力かなり高め。露出のバランスもよく、自然な写りで嫌味のない描写もポイント高し。〝なぜ今まで使わなかったのだろう、もったいない〟そんな気分になりました。
ただ、一つだけデメリットなのが、電池の消耗がかなり早いこと。その点を除けばまだまだ現役!といえそうなカメラです。
もっと使ってあげなくちゃ。
これからも可能な限り使い続けてしまいそうな予感がしてしまいました。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。