ソニー α7 IV レビュー|葛原よしひろ
はじめに
今回レビューさせて頂くカメラはソニーのα7 IV。評価が高くロングセラーとなったα7 IIIの後継機として、ソニーが満を持して市場に投入してきた機種になります。美しい冬の滋賀県高島市にて、越冬の為に飛来するコハクチョウの撮影を中心にα7 IVをレビューしていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
α7 IVについて
先ずはα7 IVについて簡単に説明させて頂きます。α7 IVはソニーのフルサイズミラーレス一眼のスタンダードモデルになります。今回、スタンダードモデルのαとしては、初めて有効画素数を約3300万画素にアップしている点が一番大きな進化だと思います。
画素数のアップに伴い映像エンジンもアップグレードされています。α7 IIIに搭載されていたBIONZ Xから、上位機のα1やα7S IIIにも搭載されている最新のBIONZ XRを搭載し、画像処理の速度もクオリティも格段に進歩しています。
その他にもお伝えしたい機能が沢山有りますので、ここからは実際に撮影に使用した印象を踏まえて、作例も見ていただきながらお話させて頂きます。
ファインダー・AF性能について
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■撮影環境:ISO800 SS1/1600 F4
実際に撮影を始めてまず思った事は、ファインダーが凄く見易いことでした。α7 IIIは凄く良いカメラなのですがコストを下げる為にファインダーを犠牲にしており、その点は物足りなさを感じていました。一方で、α7 IVは同じスタンダードモデルとして画素数も大幅にアップしているにも関わらず、ファインダーが見やすくピントの山もハッキリ掴めるので嬉しい改善点です。
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■撮影環境:ISO1250 SS1/1600 F4
コハクチョウ達は外敵から身を守るために、夜から朝にかけては湖で就寝しています。そして朝になると起き始め、良い風が吹くのを待って、順番に餌場の畑に飛んで移動するのです。
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■撮影環境:ISO1600 SS1/1600 F5.6
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■撮影環境:ISO1600 SS1/1600 F6.3
コハクチョウが湖から飛び立つ時は、まず羽根を使って浮き上がり、そこから忍者のように水面を大きな水かきの有る足で蹴りながら走って、助走をつけてから飛び上がります。この一連の動作が美しく、コハクチョウ撮影の醍醐味の一つだと感じます。
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■撮影環境:ISO2500 SS1/1600 F6.3
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■撮影環境:ISO1600 SS1/1600 F6.3
α7 IVのAF性能は素晴らしく優秀でした。フラッグシップ機のα1と同等の位相差759点、コントラスト425点のAF測距点を有しており、動きの速いコハクチョウが飛び立つシーンの撮影でもコンティニアンスAF-Cを使用するとフォーカスを外すことは少なく、鳥瞳AFモードもかなりの確率でコハクチョウの瞳を捉えてくれました。
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■撮影環境:ISO2000 SS1/1600 F6.3
メカシャッター、電子シャッター共にAF/AE連動の最大10コマ/秒の撮影が可能なので、例えば野鳥撮影初心者の方は、連写時はピントや露出に関してはカメラに任せる事で、落ち着いて構図に集中する事が出来ます。
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■撮影環境:ISO800 SS1/1600 F4
私がコハクチョウの群れを撮影する時のポイントの一つですが、まず気の強い子を見つけ、その子を主役にしてマークします。すると大抵の場合、何かリアクションしてくれますので、よりアクティブなシーンの撮影が可能になるのです。そしてアクティブなシーンを逃さないチャンスに強いα7 IVは、こういった撮影では信頼感の有る相棒になってくれます。
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■撮影環境:ISO200 SS1/800 F6.3
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■撮影環境:ISO250 SS1/800 F6.3
湖を飛び立つと餌場の畑に移動するので、飛び立つ瞬間を撮影したら、私も急いで餌場に向かい飛行シーンの撮影に移ります。
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■撮影環境:ISO200 SS1/800 F6.3
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■撮影環境:ISO200 SS1/800 F6.3
野鳥撮影においてカメラ機材に求めるものとして、先程も触れましたAF性能は元より、総合的なレスポンスが何より重要だと思います。その点についても、α7 IVはファインダーの視認性、AFの合焦、シャッターを切っている時の操作性、全てにおいて一連の動作として不満がありません。流れるように撮影出来ますので十二分な性能を持っており、野鳥撮影で求めるレスポンスをクリアしています。
動画性能について
動画撮影に使ってみて、α7 IVは動画に強いαの性能を更に進化と強化されたモデルだと実感しました。ボディ自体のハードウェア、メニュー構成のソフトウェア、その両面から静止画と動画を独立した感覚で構成・設定する事が出来るので、まさにハイブリッドなカメラとして、どちらにも使用したい人には凄く便利に使いやすくなっているのが嬉しいです。
1つ目の動画はFHD60p撮影しています。水面から浮かび上がり飛び立つまでを、α7 IVにFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSを装着して手持ち撮影したので少し揺れていますが、超望遠手持ち撮影として許容できる範疇に収まっており、強力な手ブレ補正機能の恩恵を感じずにはいれません。途中でピントが外れるのですが直ぐに合焦し直してくれたので、動画でもAF機能の優秀さを体感しました。
2つ目の動画も機材は先程と同じα7 IVにFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSのセットですが、調子に乗って4K30pでの手持ち撮影に加えて、途中でズーミングに挑戦してみました。これも許容できる範疇で撮影出来たと思います。本当に手ブレ補正機能の凄さに驚くと同時に、機材自体の軽さのお陰でも有りますので、小型軽量化の部分でも進化を感じます。肝心の動画の内容ですが、この子、悪い子ですよね。でも撮影では悪い子が居てくれる方が盛り上がるのです。
テレコンバーターの挙動確認
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■撮影環境:ISO5000 SS1/1600 F13
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■撮影環境:ISO400 SS1/1600 F6.3
今回は野鳥メインのレビューなのでテレコンバーターの使用検証もしてみました。テレコンバーターの動作の良否はレンズ性能に由来する部分が多いイメージですが、特にミラーレス時代ではボディ側の性能や制約を受ける事も多くなりました。
1枚目はα7 IVにFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSと1.4Xのテレコンバーター(SEL14TC)を装着し、焦点距離840mmで撮影。600mmと比べてコハクチョウが一回り大きく見えますので更に迫力が増します。テレコンを装着すると開放値が暗くなりますので、ボディによってはAFが動作しなくなる等の制約が有ったりもするのですが、α7 IVの場合F22まで制約なくAFは可動しますので、殆どの場合影響を受けないと言って良いと思います。実際に撮影時の動作も滑らかで違和感も全くなく、テレコンバーターを装着している事を忘れそうになりました。画質の低下についても気にならないレベルだと思いました。
2枚目はα7 IVにFE 400mm F2.8 GM OSSと2Xのテレコンバーター(SEL20TC)を装着し、焦点距離800mmで撮影。2Xのテレコンバーターでも気になる程の性能低下は感じませんでしたので、積極的にテレコンバーターを使用して良いと思いました。
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■撮影環境:ISO800 SS1/1250 F9
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■撮影環境:ISO640 SS1/1250 F9
餌場の畑に舞い降りると、くちばしで雪を掻き分けて必死に食べ始めるので、普段は美しく真っ白なその体は見る見る泥だらけになってしまいます。しかし、その姿が何ともたくましく生命観に満ち溢れているので私は夢中でシャッターを切ってしまうのです。
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■撮影環境:ISO100 SS1/800 F2.8
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■撮影環境:ISO320 SS1/1600 F6.3
集中して撮影しているとコハクチョウたちが面白い動作をしてくれる瞬間に出会う事が有ります。その一瞬を逃さずにシャッターを切る事が出来なければ野鳥撮影に向いているカメラとは言えません。その点において、先程からお伝えしている通りレスポンスの良いα7 IVは野鳥撮影の強い味方となるカメラだと思います。
クリエイティブルックや液晶・防塵防滴について
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■撮影環境:ISO160 SS1/1600 F2.8
α7 IVではα7S IIIやα1と同じく、従来のクリエイティブスタイルからクリエイティブルックと名称を変更して、更に機能性を上げた機能が有ります。クリエイティブルックを使いこなすことで、雰囲気や色味だけでなく、シャドーやハイライトのコントロールまで調整して、仕上がりを電子ビューファインダーで確認しながらシャッターを切る事が出来ます。
そのため、撮影者の思い描くイメージを撮影現場で反映させて撮影することが可能となり、表現の幅も広がります。この機能が静止画でも動画でも設定出来るのも凄く良いと思います。この写真は、空の色が綺麗だったので更に際立たせるためにVV2をベースに彩度+2、ハイライト-2、シャドー+1、コントラスト+1で撮影。
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■撮影環境:ISO1000 SS1/1600 F13
α7 IVでは背面液晶にバリアングルモニターが搭載されましたので、縦位置構図のローアングル撮影での構図が追い込みやすくなり、この写真のような撮影で雪の上に寝転ばずに撮影することが出来るようになったのは、とても嬉しく感じました。
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■撮影環境:ISO100 SS1/80 F10
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■撮影環境:ISO500 SS1/1600 F6.3
野鳥撮影の合間に風景も撮影してみました。風景撮影でも約3300万画素に画素数がアップされたことで、より鮮明に表現することが出来るようになっており、好印象でした。
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■撮影環境:ISO320 SS1/1000 F11
今回は雪のシーンが多く、この写真のように吹き付けるような雪の時間帯も有り、かなり濡れたりもしました。ですが、更に進化した防塵防滴に配慮した設計のお陰で不安も無く、加えて寒い場所での使用にも問題無く耐えてくれましたので、終始安心して撮影することが出来ました。
まとめ
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■撮影環境:ISO125 SS1/1600 F2.8
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■撮影環境:ISO400 SS1/1600 F6.3
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■撮影環境:ISO200 SS1/800 F6.3
総合的な感想としては完成度が高く、機能面の進化・レスポンス向上・画素数アップ・画質の向上、どれをとっても大満足なカメラでした。
正直、α7 IVが有れば殆どの撮影で困ることが無いと思いますので、オールマイティに使用する事が可能だと思います。このカメラをスタンダードモデルに位置付けるソニー αシリーズの進化が一番印象に残りました。是非お手に取って実感して下さい。
■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザーJPS(日本写真家協会)正会員
α7 IV レビューはこちらの記事でもご覧頂けます
■ソニー α7 IV レビュー|風景写真家 高橋良典
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485344549/
■ソニー α7 IV レビュー|静止画も動画も撮りたい人に!これからのスタンダードミラーレスカメラ!
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■ソニー α7 IVが登場!|上位モデル撮影性能を継承した新時代Basicモデル
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