ソニー α7C レビュー|一度慣れるとその秀逸さに離れられなくなるカメラ
はじめに
春。
空が青い。
近所にも桜が咲いていると聞いた。
今日は、SONY α7Cを持って撮影に行こう。
α7Cは、光学式ボディ内手ブレ補正機構搭載のフルサイズミラーレス一眼カメラでは世界最小・最軽量の約509g。バッテリーとSDカードを除けば424g。例えるならば、500mlのペットボトル飲料より軽い。そして、小さい。外形寸法は約124.0 × 71.1 × 59.7mm。
とろけるような春を撮る
α7Cは、この小ささ軽さにしてフルサイズミラーレス一眼カメラである。デジタルカメラの心臓部であるイメージセンサーは、大きければ大きいほど多くの光と画像情報を取り込むことが出来、より豊かで滑らかな階調表現やとろけるようなボケの表現が可能になる。α7Cは、一般的なスマートフォンで採用されている1/2.3型センサーの約30倍の大きさとなる35mmフルサイズセンサーを搭載している。多彩な機能でキレイな4K動画ももちろん撮影可能だ。
とろけるような春を撮った。
いろいろなレンズで撮った。
jpeg撮って出し。レタッチなし。
この滑らかな表現を、この小さくて軽いカメラが生み出していると思うと、すごい時代になったなあと思わずにいられない。
バリアングル液晶で自由自在に撮る
α7Cは、バリアングル液晶モニターを採用しているため、自由な角度で撮影できる。ちなみに、バリアングルとは「角度が可変な」という意味。液晶モニターの角度を自在に変えることが出来るため、特にチルト式液晶モニターでは撮りづらかった縦構図も簡単に撮ることが出来る。最近流行りの自撮りにも便利だ。
小さな山の中腹に、山吹のお花が咲いていた。
このお花を見ると春が来たなと思う。春は桜ばかりを目で追ってしまいがちだけれど、この鮮やかなイエローは、写真に春色を添える大きなアクセントになる。
液晶画面にタッチして、ピントを後ろの木々に合わせてもう一枚。
フルサイズならではの大きなボケが効いている。
同じカメラ、レンズ、露出で撮っても、ピントを合わせる位置によって全く異なる雰囲気の写真になる。
下を向いて咲くクリスマスローズのお花。カメラを地面すれすれに下ろし、バリアングル液晶をクルリと回転させて上に向ければ、ローアングルでも簡単に撮ることが出来る。
風に揺れる桜。リアルタイムトラッキング機能で簡単に撮る
α7Cは、最先端AF性能を搭載し、AIを活用したリアルタイム瞳AFやリアルタイムトラッキングにも対応している。リアルタイム瞳AFとは、人間や動物の瞳に反応し被写体の瞳をリアルタイムで追い続けるオートフォーカス機能。リアルタイムトラッキングとは、動いている被写体をリアルタイムに追い続ける機能。ちなみに、トラッキングとは“追従”と言う意味。これにより、一度捉えた被写体を追い続け、カメラまかせでピントを合わせ続けることが可能だ。これらの機能は静止画撮影、動画撮影を問わず活用することができる。
リアルタイムトラッキング機能は、この時期、とても便利な機能だ。
と言うのも、リアルタイムトラッキングは、動き回る被写体に利用できるだけではない。風に揺れる被写体にも使える。そう、風に揺れるお花にも、効く。私は、桜を撮る時にリアルタイムトラッキング機能を使う。驚くほどピントが合い続けた桜の写真が撮れる。
この日も風がびゅうびゅうと吹いていたが、リアルタイムトラッキング機能を使い、ピントが合い続けた桜の写真がたくさん生まれた。
この写真、レンズはFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを使用し、焦点距離は最大望遠側400mmで撮影している。さらには、設定でAPS-Cサイズに切り替えて撮影しているので焦点距離はその1.5倍、35mm換算で600mmで撮影していることになる。さらには、超解像ズーム機能を使えば、さらに2倍で撮影することもできる。
桜を撮り分けてみた。
リアルタイムトラッキング機能で撮影した桜。びゅうびゅうと風に揺れる桜のお花のほとんどにしっかりとピントが合って撮れていた。一度捉えた被写体は逃さないわよ、カメラがそんなことを言っているような、カメラから意思を感じてしまうくらいしっかりとピントを追ってくれる。一昔前、全然ピントが合わない桜を長時間撮り続けて腰が痛くなったのが随分懐かしく思える。なんて撮りやすくなったのだろう。
それにしても、カメラボディ内で、APS-Cサイズで1.5倍、超解像ズームで2倍、掛け合わせると3倍の画角で撮ることができるのは本当に便利だ。単焦点レンズを使っている時は、なおさらその便利さにありがたさを感じる。そしてやはり、α7Cはフルサイズミラーレス一眼カメラだから拡大しても美しいという事が言えるだろう。
晴天。明るいレンズでボケを表現したい
晴天の下、ユキヤナギのお花が咲いていたのでレンズを向ける。太陽は私の後ろから照っている。順光。
解放値f1.4の明るいレンズで大きなボケを表現したい時、晴天時だとNDフィルターを使わなければならないことが多い。ISO感度を最低、シャッタースピードを最大に速く設定しても、画面全体が白トビしてしまい明るく写り過ぎてしまうことが多いからだ。白いお花ならなおさら白トビしやすい。その場合、f値を絞るか、もしくはNDフィルターを利用して撮るかになるが、α7Cは、電子シャッターを利用時にシャッタースピードを1/8000まで設定することが出来る。
白いお花を撮影、晴天、f1.4開放でこの明るさと写りなら、ほとんどのレンズでNDフィルターを使わないで撮影出来そうだ。晴天時、大きなボケを表現した柔らかい写真を撮りたい人はぜひ電子シャッターを利用して欲しい。設定は、サイレント撮影をオンにして、シャッタースピードを1/8000などに設定すればOK。
FE 35mm F1.8レンズでフットワーク軽く
「α7Cで撮る時、おススメレンズを教えてください。」
という質問が、とても多い。
ソニーαアカデミーの講師をしている時や、自身で主宰している写真教室Room5656の生徒さんたちに聞かれることが本当に多い。
約60本もあるEマウントレンズ。正直、あれもこれもおススメしたい。
でも、あえて1本選ぶなら、自分だったらどれを選ぶだろう、とじっくり考えて1本を選んだ。
FE 35mm F1.8レンズだ。
このレンズ、長さ73mmと小さく、280gと軽量。
α7Cに装着しても、フットワーク軽く撮れる。
さらにおススメなのは、最短撮影距離が22cmということ。被写体にグッと寄れる。
そして、そのボケは、とても滑らかで美しい。焦点距離35mmという標準レンズより少し広い画角で、ぐっと寄れる。
だから滑らかにボケる背景の割合が大きく撮れる。とても柔らかいテイストの写真になる。
ひゅうひゅう
風が吹くような写真を撮ることが出来る。
おわりに
筆者は歴代のSONYカメラを今までに10台以上使用してきている。現在は、仕事や作品の撮影ではα7R IVとα7Cを使用している。昨年の秋、α7Cが発売され、初めて使った時には驚いた。だって、あまりにも小さくて軽いから。このカメラで一体どのくらいのことが出来るのだろうと最初は戸惑った。バリアングル液晶も慣れないかも知れないし、妥協することがたくさんあるのかもしれないとも思った。実際、カスタムボタンなどがなく割り当てられる機能が限られることなどもある。
でも、使い始めてみるとすんなり手に馴染んだ。
そして、小さくて軽くて、使いやすい。動画は特に撮りやすい。
そして、撮れる作品たちが驚くほど美しい。ゾクゾクするくらい美しい。
むむむ。こんなに小さくて軽くて使いやすくて、美しいなんて最高じゃないかと日々思っている。
今では、どこかに出かけるときに一番出動率が高いカメラがα7Cだ。
すっかり手に馴染んでしまったα7Cから他のカメラを使うときに、割り当てたカスタム機能などが違ったりするとあれあれっと思ってしまうくらいになってしまった。
改めて、α7C、素晴らしいカメラだと思う。
一度慣れてしまったら、その秀逸さに引き込まれてなんだか離れられない魅力がある。
迷っている人には、ぜひ一度、実際に試してみて欲しいと思う。
春、真っ盛り。
写真を撮りに行こう。α7Cと一緒に。
■写真家:山本まりこ
理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。