ソニー α7C レビュー|持ち歩きに最適なフルサイズミラーレスを持って小旅行!

坂井田富三

01_ソニー製カメラのα7Cを撮影した画像.jpg

はじめに

 ソニー「α7C」は、現時点での世界最小・最軽量(※)の約509g(バッテリー、メモリーカード含む)を実現したフルサイズミラーレス一眼です。そして、同時に発売された新しいキットレンズ「FE 28-60mm F4-5.6(SEL2860)」も約167gと超小型軽量化を実現しています。つまり、「いつでも、どこへでも気軽に持ち運べる」魅力的なフルサイズシステムとして新登場したのが、このα7Cなのです。
※世界最小・最軽量:光学式ボディ内手ブレ補正機構搭載のフルサイズセンサー搭載デジタル一眼カメラとして。2020年9月時点。ソニー調べ

 どのくらいコンパクトかというと、同じソニーフルサイズ機のα7IIIに比べ、質量で約78%、体積で約81%となっており、全体として8割程度の大きさになっています。また、デザイン的に似ている箱型のα6600(APS-C)と比べても、α7Cは質量で約101%、体積で約110%程度に抑えられており、バッテリーのことも考えると従来のAPS-C機のボディにフルサイズのセンサーを入れてしまったぐらいのイメージなのです。

 上記の比較の資料とは機種が若干違いますが、参考までに筆者が所有しているカメラを並べて比べてみました。比較したのはα9とα6400です。

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左からα9、α7C、α6400
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左からα6400、α7C、α9

ソニー α7Cの特徴

 α7Cの特徴は、なんといってもフルサイズミラーレスとは思えないサイズのコンパクトさが挙げられますが、ただ小さくしただけではなく、バッテリーがα7/9シリーズと共通の大容量バッテリー「NP-FZ100」を使用していることも注目したい点。ボディはコンパクトになっても、撮影可能なコマ数を落とさない快適に使えるスタミナ性能は、旅行などの撮影に持ち出してもバッテリーを気にすることなく使用できるというメリットがあります。

 また、モバイルバッテリーなどからもUSB Type-Cのケーブルで充電できるので、移動先での充電が手軽にできるのも魅力的です。

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 右がα6400に使われているバッテリー「NP-FW50」。真ん中はα7Cのバッテリー「NP-FZ100」で、NP-FW50の2倍の容量がある

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 ボディのサイドにUSB Type-Cがあり、ここからケーブル経由でバッテリーの充電が可能。なおα7Cには専用の充電器は付属していないため、家庭用コンセントから直接バッテリー単体で充電したい場合は、別途NP-FZ100専用の急速充電チャージャー「BC-QZ1」が必要になります。

 そして、α7Cは「タッチトラッキング」に対応したバリアングル液晶モニターを搭載しているので、ローアングル・ハイアングルでの撮影はもちろん、自撮り撮影なども快適に撮影できるのです。まさに旅行やふだん使いにピッタリのカメラではないでしょうか。

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 α7のシリーズの“末っ子”ではありますが、α7Cは基本性能もしっかりと充実しています。オートフォーカスは、撮像領域の約93%をカバーする693点の像面位相差検出AFセンサーとコントラストAF枠を425点持っており、ピント合わせが難しいシーンでも被写体をしっかり捉えることができます。また「リアルタイム瞳AF」を搭載しており、人物や動物での撮影において動く被写体でも瞳にピントを合わせて追随してくれます。これは子供やペットの写真を撮影する時に、とても便利な機能です。

 小型軽量でフルサイズと魅力十分なα7Cですが、EVFファインダーが非常に小さいという点が少々気になりました。ほかのαシリーズを使用しているユーザーが併用して使うと、このファインダーの小ささは少し気になるかもしれません。

α7Cのファインダー倍率:約0.59倍
α7Ⅲのファインダー倍率:約0.78倍
α6400のファインダー倍率:約0.70倍(※35mm判換算)

キットレンズ・FE 28-60mm F4-5.6の特徴とは

 フルサイズセンサー搭載のデジタル一眼カメラ用ズーム交換レンズとしては世界最小・最軽量と謳われたと新しいレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」。小型軽量さと高画質を両立したフルサイズEマウント用標準ズームレンズとして、α7Cと同時に発表されました。現時点では単体での購入はできず、ボディとのキットでしか購入できないレンズとなっています(単体での発売は2021年春予定)。α7Cとの組み合わせで、どこでも気軽に持ち運べて撮影できる魅力的なレンズとなっています。また、防塵・防滴に配慮しているのもありがたい設計です。

 最短撮影距離はワイド端で0.3m、テレ端で0.45mとなっており、最大撮影倍率は0.16倍。テーブルフォトや自撮りなどにも使いやすいのが特徴です。ただ、レンズをコンパクトにするために、沈胴機構を採用したズームレンズになっているので、慣れないと撮影の際に少し注意が必要になります。カメラの電源をONにした状態でも、レンズを撮影できる状態まで繰り出さないと撮影ができない構造になっているので、最初は少し戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れれば気にならなくなると思います。

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α7Cレンズキットを持って撮影小旅行!

 ちょうど紅葉のシーズンになってきたので、さっそくα7Cレンズキットを持って撮影小旅行に。長野県・群馬県をドライブしながら、α7Cレンズキットの実力と魅力を感じてきました。やはり、なによりもその小ささは旅行にはとても魅力的な要素です。フルサイズのレンズ付きのカメラがジャンパーのポケットに入ってしまったのは衝撃です。今回は、その身軽さを活かすためにすべて手持ちで撮影してみました。

 最初に訪れた場所は、東山魁夷が描いた「緑響く」のモチーフであり、テレビCMなどで話題なった絶景ポイントの「御射鹿池」。朝早くから多くの写真愛好家が撮影に来ていました。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/30秒 f/5.6 ISO800 焦点距離60mm

 池の写り込みが出やすい、太陽が上ってくる前に撮影をしていたのでシャッター速度を上げるのが難しかったのですが、ボディに手ブレ補正機構があるので1/30秒でも安心してシャッターを切ることができました。

 少し移動して、赤く色づいた紅葉がとてもキレイな蓼科高原へ。

 鮮やかな紅葉をワイド端の28mmで撮影しました。鮮やかな風景を強調するために、クリエイティブスタイルを「風景」に設定しています。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/100秒 f/16 ISO320 焦点距離28mm

 積もった落ち葉の上を歩いて、滝のほうまで散策。バリアングルモニターのおかげで、縦位置のローアングル撮影も苦にならずにできます。この場合、ピント合わせは液晶のタッチモニターを使って撮影すると、無理な体勢にならなくても簡単に撮影することができます。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/160秒 f/5.6 ISO320 焦点距離28mm

ちなみに撮影している姿はこんな感じです。

13_撮影している様子.jpg

 遊歩道を登って滝が見えるポジションに。滝の流れる水をスローシャッターで表現したいので、頑張って手持ち撮影でチャレンジ。なんとかギリギリ表現できたでしょうか……。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/6秒 f/20 ISO100 焦点距離44mm

 小さいカメラなので気楽に片手で持って撮影できるのですが、さすがに手ブレも起きやすいので、スローシャッター時は特にしっかりと両手で持って撮影しないとブレてしまいます。

 ちょっと遅めのランチはお蕎麦です。旅の思い出として食事の写真は必須ですよね。ある程度寄れるレンズなので、“映える”テーブルフォトの撮影も簡単!

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/50秒 f/5 ISO800 焦点距離35mm

 嬬恋で見つけた大きなキャベツ。このレンズは少し絞ると、より描写が鮮明になります。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/160秒 f/9 ISO800 焦点距離29mm

 翌朝のペンションでの朝食。α7Cとキットレンズであれば、常に持ち運べるので気負いなく気楽に撮影ができます。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/80秒 f/5.6 ISO400 焦点距離60mm
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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:1/100秒 f/8 ISO800 焦点距離56mm

 キレイに黄色くなっている唐松を背景にススキを撮ってみました。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境: 1/800秒 f/9 ISO800 焦点距離60mm

 ちょうど木々の色が変わり始めた山々。唐松が黄色く変化していて、とても美しく風景を見ることができました。

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■撮影機材:ソニー α7C + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境: 1/160秒 f/16 ISO400 焦点距離36mm

 旅行に出かける前は、正直キットレンズだけでは撮影が難しいかなと思っていましたが、いい意味で裏切られた感じです。レンズの画角が28~60mmという「中途半端な画角だな~」と思っていたのですが、今回の旅行では建物などを写すことがなく風景を中心に撮影していたので、その中途半端な感じはまったくなく、スムーズに撮影できました。

動画の試撮り

 実際に動画撮影してみてバリアングルモニターの使いやすさ、フルサイズセンサーのおかげで、キットレンズのF値でも大きなボケを演出する撮影ができるなど、とても魅力的に感じたカメラです。簡単に気軽に動画撮影できるだけでなく、遅回し・早回し撮影ができる「スロー&クイックモーション」などの機能などもあり、クリエイティブな動画撮影ができるカメラになっています。

キットレンズのFE 28-60mm F4-5.6を使って動画を少し撮ってみました。

■記録方式:XAVC S 4K
■記録設定は24p 60M(手持ちで撮影)

あると便利なアクセサリー

 今回、2日間の旅行のおともにα7Cレンズキットを持ち出したわけですが、できればこのアクセサリーは持っておいたほうがいいかなと感じたものをご紹介したいと思います。

 ひとつ目は「レンズ保護フィルター」です。FE 28-60mm F4-5.6のレンズキャップは、フィルター径40.5mmのとても小さなレンズキャップです。あまりに小さいので、何回もなくしそうになりました。沈胴式のレンズということもあって、撮影の際にキャップを外し、レンズを繰り出して、ようやく撮影に入るというのが、すごく手間に感じました。

 そこで旅行中は、レンズキャップを外したまま、保護フィルターを付けた状態で移動と撮影を繰り返すことでスムーズに撮影できました。

 今回使用した保護フィルターは、マルミ光機「EXUS Lens Protect Mark II」をチョイスしました。撥水・帯電防止・防汚コーティングされており、超低反射率(0.2%)の可視光に影響を与えない無色透明な高性能レンズ保護フィルターです。レンズのフィルター径も40.5mmと小さいので、大きなフィルター径の製品より値段もお手頃です。

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 ふたつ目は「シューティンググリップ」です。Vlog(ブイログ)カメラのソニー「ZV-1」と同時に発売されたシューティンググリップ三脚「GP-VPT2BT」があると、小型三脚にもなりますし、自撮りなどもやりやすくなります。旅行に持っていくと、より撮影が楽しくなるアイテムではないでしょうか?

 GP-VPT2BTが少し大きいと感じるなら、ワイヤレス機能はありませんが、少し小型のシューティンググリップ「GP-VPT1」という選択肢もあります。しかし、それほど価格差がないため、ケーブル不要で自由度の高い撮影を実現した、Bluetooth対応の「GP-VPT2BT」がおすすめです。

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まとめ

 ソニー α7Cは高画質でAFも優秀な、とてもコンパクトなフルサイズミラーレスです。ボディやレンズを小さくすることによって、操作性の一部やファインダーの見やすさなどがトレードオフされてはいますが、旅行などはもちろん、ふだんの撮影もオールマイティーにこなせる魅力的なカメラであることは間違いありません。

 気軽に持ち運べるフルサイズ機として、撮影する機会が増え、シャッターチャンスをたくさん得ることができそうな予感がします。今後、α7Cのコンセプトに合った、小さくて軽いレンズの発表を期待したいところです。

α7Cと他のカメラを比較

 「α7C」と「α7III」、「α6600」、「ニコン Z5」の価格や主要なスペックの比較表をこちらのページで紹介していますので是非ご覧ください。

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