ソニー α7C II レビュー|「AI」によるオートフォーカスが進化!コンパクトなフルサイズ機

坂井田富三
ソニー α7C II レビュー|「AI」によるオートフォーカスが進化!コンパクトなフルサイズ機

はじめに

“Compact”をコンセプトに2020年に誕生した「α7C」が、第2世代になる「α7C II」に進化。その「α7C II」を先行してお借りできたので、その進化をいろいろと体験してみました。特に注目すべき点は、フルサイズ機「α7R V」やAPS-C機「α6700」にも搭載されている被写体認識が強化された次世代のAFシステムが、「α7C II」にも搭載されたことです。オートフォーカスの進化と「α7C」からの画素数アップがどの程度魅力アップにつながっているか、今回、実際に様々なシーンで撮影し「α7C II」の魅力をその写りを紹介したいと思います。

ソニー α7C IIの特徴と魅力

「α7C II」は「α7C」の後継機にあたりますが、「α7C」も継続して販売されていくようです。そこで「α7C」との仕様の違いと、画素数が同じフルサイズ機の「α7 IV」との仕様を比較してみました。

α7C II α7C α7 IV
発売日 2023年10月13日 2020年10月23日 2021年12月17日
センサーサイズ フルサイズ フルサイズ フルサイズ
センサー Exmor R CMOSセンサー Exmor R CMOSセンサー Exmor R CMOSセンサー
有効画素数 約3300万画素 約2420万画素 約3300万画素
画像処理エンジン BIONZ XR BIONZ X BIONZ XR
手ブレ補正 光学式5軸ボディ内手ブレ補正
7.0段
光学式5軸ボディ内手ブレ補正
5.0段
光学式5軸ボディ内手ブレ補正
5.5段
瞳AF / 被写体認識AF [静止画] 人物/ 動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機
[動画] 人物/ 動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機
[静止画] 人物/ 動物
[動画] 人物/ 動物
[静止画] 人物/ 動物/鳥
[動画] 人物/ 動物/鳥
フォーカス犬種出方式 ファストハイブリッドAF
(位相差検出方式 / コントラスト
検出方式)
ファストハイブリッドAF
(位相差検出方式 / コントラスト
検出方式)
ファストハイブリッドAF
(位相差検出方式 / コントラスト
検出方式)
測距点数 最大759点 (位相差検出方式) 最大693点 (位相差検出方式) 最大759点 (位相差検出方式)
検出輝度範囲 EV-3-20 (ISO100相当、F2.0
レンズ使用)
EV-3-20 (ISO100相当、F2.0
レンズ使用)
EV-3-20 (ISO100相当、F2.0
レンズ使用)
ファインダー 1.0cm(0.39型)電子式ビューファインダー (XGA OLED) 1.0cm(0.39型) 電子式ビューファインダー(XGA OLED) 1.3cm(0.5型) 電子式ビューファインダー(Quad-VGA OLED)
ファインダー総ドット数 2,359,296 ドット 2,359,296 ドット 3,686,400 ドット
最大ファインダー倍率 約0.70倍 約0.59倍 約0.78倍
モニターサイズ 7.5 cm (3.0型) TFT駆動 7.5 cm (3.0型) TFT駆動 7.5 cm (3.0型) TFT駆動
モニタードット数 1,036,800 ドット 921,600ドット 1,03,800ドット
RAW出力形式 ロスレス圧縮・圧縮 圧縮・非圧縮 ロスレス圧縮・圧縮
記録メディア SLOT1:SD (UHS-I/II対応)
カード
SLOT1:SD (UHS-I/II対応)
カード
SLOT1:SD (UHS-I/II対応)
カード
CFexpress Type Aカード用マルチスロット
SLOT2:SD (UHS-I/II対応)
カード用スロット
連続撮影 Hi+: 最高約10コマ/秒 Hi+: 最高約10コマ/秒 Hi+: 最高約10コマ/秒
バッテリー NP-FZ100 NP-FZ100 NP-FZ100
静止画撮影可能枚数
(CIPA規格準拠)
ファインダー使用時:約530枚
液晶モニター使用時:約560枚
ファインダー使用時:約680枚
液晶モニター使用時:約740枚
ファインダー使用時:約520枚
液晶モニター使用時:約580枚
質量(バッテリーとメモリカードを含む) 514g 509g 658g
ボディサイズ 124.0(W)x71.1(H)x58.6 (D)
(グリップからモニターまで)
124.0(W)x71.1(H)x53.5 (D)
(グリップからモニターまで)
131.3(W)x96.4(H)x69.7 (D)
(グリップからモニターまで)
USB端子 USB Type-C USB Type-C USB Type-C
画作りのプリセット クリエイティブルック クリエイティブスタイル クリエイティブルック

「α7C」から「α7C II」への外観の変更ポイントは、グリップ部分です。グリップ部分の材質が変更になり、他のα7シリーズと同様の材質に変わっています。グリップ部分に前ダイヤルが搭載された事もあって少し形状が変化し、「α7C」よりも少し大きくなっています。また、シャッターボタンも大型化されています。

左:α7C II 右:α7C

カメラ上部では、「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」が独立したスイッチになりました。「α7 IV」や「α7R V」と同様の操作方法になっているのですが、なぜか切り替えパターンがα7 IVやα7R Vとは逆になっているので、残念ながら同時に使用するユーザーは少し戸惑ってしまうポイントです。

また、露出補正ダイヤル部分の数字の表記は無くなりました。デフォルト設定では露出補正コントロールに割り当てられていますが、カスタム設定で他の機能を割り当てる事が可能になっています。

「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」が独立。新たに「C1」カスタムボタンが「メニュー」ボタン横に追加
左:α7C II 右:α7C
ファインダー総ドット数やサイズなどの変更はないが、ファインダー倍率が少しアップした

「α7C II」は新たにイメージセンサーのアンチダスト対応。カメラの電源OFF時にシャッターを閉じることもでき([電源OFF時のシャッター][入]設定)、レンズ交換の際にゴミやほこりがイメージセンサーに付着しにくくなりました。レンズ交換を頻繁にするユーザーにはありがたい機能です。

アンチダスト機能。カメラの電源OFF時にシャッターを閉じる設定が可能

「α7C」から大きく変わった点は、画像処理エンジン「BIONZ XR」が搭載された事。「α7C」の「BIONZ X」画像処理エンジンの最大約8倍の高速処理能力を持つ、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を採用した事により、静止画・動画撮影における処理能力が大幅に向上しています。

進化したオートフォーカス性能

「α7C II」の進化のポイントである「新開発AIプロセッシングユニット」を搭載したことで、被写体認識が豊富になり、画像処理エンジン「BIONZ XR」の高速処理とあわせてオートフォーカスの精度が「α7C」よりも飛躍的に向上しています。

認識対象項目が増えたので、スクロールしないと全部が見ることができません。「車/列車」の次に「飛行機」の項目があります。

これだけ認識対象が増えると切り替えるのも面倒ですが、使わない対象は選択切替表示から非表示にする事も可能なので、普段撮影しない撮影対象を非表示にしておくと撮影の際にスムーズに切り替える事ができます。

被写体認識「鳥」で撮影している状態のファインダー情報
被写体認識「動物」で撮影している状態のファインダー情報
被写体認識「昆虫」で撮影している状態のファインダー情報
被写体認識「車/列車」で撮影している状態のファインダー情報

「α7C」の測距点数が最大693点 (位相差検出方式)に対して、「α7C II」は測距点数が最大759点 (位相差検出方式)に増えていることに合わせて、様々な被写体をAIによって認識することで、オートフォーカスの精度が大幅に向上しています。

「α7C II」には「マルチセレクター」のボタンが無いので、フォーカスフレームを動かす際に「コントロールホイール」を使うことになります。「コントロールホイール」ではフォーカスフレームを斜めに動かしたりする事ができないので、やや動作に手間を感じます。そういった手間を省く上でも、Aiによる被写体認識オートフォーカスは非常に撮影を快適にサポートしてくれています。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/160秒 絞りF5.6 ISO4000 焦点距離60mm
※被写体認識「動物」

ズームレンズキットで浅草スナップ撮影

「α7C II」は、ボディ単体とズームレンズがセットになっている2パターンで販売されます。今回はキットレンズになっているフルサイズEマウント用標準ズームレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」を使用して、いろいろ撮影をしてみました。

この「FE 28-60mm F4-5.6」レンズは、非常に小型軽量なので小さなボディの「α7C II」にマッチするサイズのレンズです。「α7C II」に「FE 28-60mm F4-5.6」をセットした際の重量は、約681g(バッテリー・メモリーカード込み)と非常に軽く、常に持ち運びたいユーザーには魅力的なポイントです。

FE 28-60mm F4-5.6

レンズ構成:7群8枚
最短撮影距離:0.3m(ワイド端)/0.45m(テレ端)
最大撮影倍率:0.16倍
フィルター径:40.5mm
大きさ:最大径66.6mmx全長45mm
質量:約167g

浅草を散策しながらスナップ撮影をしてみましたが、カメラバッグを持たずにお気に入りのカバンに忍ばせることのできるサイズは、気負わず気楽に撮影できる楽しみがありました。また、下の写真はバリアングルモニターを使って、両手を伸ばしたハイアングルで撮影していますが、やはりカメラ・レンズが軽いというのはこういったシーンの撮影では非常にありがたいです。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/4000秒 絞りF5.6 ISO800 焦点距離47mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/1250秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離40mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/80秒 絞りF13 ISO400 焦点距離60mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/1000秒 絞りF16 ISO4000 焦点距離28mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/1000秒 絞りF13 ISO4000 焦点距離28mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/4000秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離28mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/500秒 絞りF11 ISO400 焦点距離28mm

ちょうどお祭りのパレードが開催されていたので撮影をしてみましたが、思っていた以上に近い距離での撮影になってしまったので、焦点距離28mmの画角では少々厳しかったシーンが少しありました。それでも「α7C II」のバリアングルモニターを活用して、地面すれすれからのローアングルで撮影する事で、迫力ある写真にする事ができました。特にバリアングルモニターは縦位置でのローアングル撮影には威力を発揮しますね。

ズームレンズキットで横浜中華街スナップ撮影

街歩きスナップ撮影や旅行などでは、やはり小型軽量のカメラが楽しい。食べ歩きをしながら気楽に撮影も楽しめるので、大きなカメラや大口径のレンズは無粋と感じてしまいます。もちろん撮影がメインであれば、そういった機材で撮るのが良いとは思いますが、単純に旅行を楽しみながら、気軽に撮影するなら「α7C II」とズームレンズキット「FE 28-60mm F4-5.6」は十分なスペックを持っています。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/1600秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離60mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/200秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離46mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/640秒 絞りF9 ISO400 焦点距離28mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/800秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離60mm
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm F4-5.6
■撮影環境:シャッター速度 1/200秒 絞りF9 ISO400 焦点距離60mm

撮影していて一つ気になった点を言えば、「FE 28-60mm F4-5.6」の使用時のレンズの繰り出しとレンズキャップ。「FE 28-60mm F4-5.6」は小型化されているために、使用時には一定位置までレンズを繰り出さないと撮影する事ができません。カメラの電源を入れたらすぐに撮影できるのでは無く、もうワンアクションしてレンズを繰り出さないと撮影ができない。慣れないととっさに撮影したい時に遅れてしまう事があります。

さらにフィルター径も40.5mmと小さいので、レンズキャップも凄く小さくて少し扱いづらい。そこで筆者は撮り歩きしている間は、レンズに保護フィルターを装着してレンズキャップは装着しないスタイルで撮影をしていました。レンズフードを装着してレンズを保護する手もあるのですが、純正アクセサリーではレンズフードが発売されていないので、おそらくこのスタイルが一番シンプルに撮影がしやすいのではないかと思います。

動画機能

ここまでは静止画をメインに紹介してきましたが、「α7C II」は動画機能も「α7C」より進化しています。最新の画像処理エンジンBIONZ XRと広いダイナミックレンジを生かし、Super 35mmにおいて4K 60pの動画記録が可能になりました。これにより、動きの速い被写体でも自然でなめらかな映像を記録できます。また、フルサイズ時の4K 30pの動画撮影時には、画素加算のない全画素読み出しによる7Kオーバーサンプリングが可能になり、モアレやジャギーが少なく、ディテール再現や解像感に優れた4K動画画質を実現しています。

また「α7C II」はmCinema Lineカメラで好評な肌の色を美しく見せるスキントーンを中心としたルック「S-Cinetone」をピクチャープロファイルのプリセットとして搭載しました。人の肌の色再現性がアップし、色あいはよりソフトに、ハイライトの描写は被写体を美しく際立たせる自然なトーンです。グレーディングすることなくシネマのようなルックを手軽に再現でき、ユーザーのクリエイティブな表現要求に応えてくれます。

▼「α7C II」と「α7C」の動画機能の違い

α7C II α7C
動画記録 撮影モード(約) XAVC HS 4K 3840 x 2160 (4:2:0, 10bit)
XAVC HS 4K 3840 x 2160 (4:2:2, 10bit)
XAVC S 4K 3840 x 2160 (4:2:0, 8bit)
XAVC S 4K 3840 x 2160 (4:2:2, 10bit)
XAVC S HD 1920 x 1080 (4:2:0, 8bit)
XAVC S HD 1920 x 1080 (4:2:2,10bit)
XAVC S-I 4K 3840 x 2160 (4:2:2, 10bit)
XAVC S-I HD 1920 x 1080 (4:2:2, 10bit)
XAVC S 4K 3840 x 2160 (4:2:0, 8bit)
XAVC S HD 1920 x 1080 (4:2:0, 8bit)
撮像フレームレート(約) 【4K】60P,30P,24P
【HD】120P,60P,30P,24P
【4K】30P,24P
【HD】120P,60P,30P,24P
スロー & クイックモーション撮影
プリセット クリエイティブルック クリエイティブスタイル
ピクチャープロファイル S-Log3
HLG
S-Cinetone
LUT
S-Log2
S-Log3
HLG
画像処理エンジン BIONZ XR BIONZ X
手ブレ補正モード アクティブモード / スタンダード / 切 スタンダード / 切
瞳AF / 被写体認識AF 人物/ 動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機 人物/ 動物

手ブレ補正に関しては、撮影画角が少し狭くなりますが「アクティブモード」が搭載され、手持ちの動画撮影を強力にサポートする機能が追加。気楽に動画撮影を楽しむ事ができるようになっています。

手ブレ補正効果の切り替え(手ブレ補正:OFF・スタンダード・アクティブ)
手ブレ補正効果の違い(手ブレ補正:OFF・スタンダード・アクティブ)

まとめ

今回「α7C II」を使ってみて感じたのは、正常な進化と使いやすさの向上。フルサイズ機でありながら機能を凝縮した小さなボディは、大きな魅力ポイントです。欲を言えばファインダー倍率が「α7C」よりも大きくはなりましたが、もう少し大きかったらと思うのは老眼がすすんだ筆者ならではの感想です。旅行撮影やスナップメインで小型のカメラが欲しいユーザー、静止画も動画もどちらも楽しみたいユーザーには、「α7C II」は魅力的な一台ではないでしょうか。

 

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

 

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