ソニー α7R IV レビュー|野鳥撮影における高解像度モデルの優位性

山田芳文

α7R IV作例 (3).jpg

はじめに

 今現在、私は2種類のカメラをメイン機として使って野鳥を撮影しています。ひとつはソニーのα1で、もうひとつはα7R IVです。今回は後者のα7R IVでの野鳥撮影の優位性についてご紹介させていただきます。

撮る道具として使いやすい

 写真を撮る道具としての使いやすさは、数値化されたスペックとして表に出てくることがないため、あまり知られていないかもしれませんが、第4世代になったα7R IVは非常に使いやすいカメラです。第3世代と比べて使いやすくなったところはたくさんありますが、特筆すべきところは、

①グリップが深くなった
②ボタン類が押しやすくなった
③ファインダーが見やすくなった
④露出補正ダイヤルにロックがついた

の4点です。

 深くなったグリップは握りやすく、長時間手持ちで撮影する時に疲労の低減にもつながります。

α7RIV(グリップ)01.jpg

 そして、背面のボタン類は少し大きくなり、中のパッキンも一新されたそうです。これによって、非常に押しやすくなりました。

α7RIV(ボタン)02.jpg

 EVFはα7R IIIのファインダーから約1.6倍の576万ドットに高解像化されました。ファインダーをのぞいた瞬間にキレイになったことが実感できますので、ぜひ1度体感してみてください。

α7RIV(ファインダー)03.jpg

 最後は露出補正ダイヤルです。露出補正ダイヤルにロックがついていないカメラだと、撮影に行く移動中にカメラバッグの中でダイヤルが勝手に動いて、撮影現場に着いたら+2になっていてビックリ、というような経験がある人もいらっしゃるのではないでしょうか。α7R IVは露出補正ダイヤルにロックがついたことで、このような事態になることはありません。こういう気の効いた改良点は個人的にも非常に有り難く思っています。

α7RIV(露出補正ダイヤル)04.jpg

AFの精度と追従性能

 AFの精度と追従性能については、第3世代のα7R IIIでも十分に良好でしたが、さらに進化しました。いわゆる空抜けのようなシンプルな背景の時に、問題なくピントを鳥の目に合わせてくれるのはもちろんのこと、かつてAFが外しやすかった複雑な背景の時でも、ピントがバックに引っ張られてしまうということはありません。

 その昔、背景が複雑なシーンで飛んでいる鳥を撮る時は、AFが後ろに外すことが当たり前だったので、仕方なくマニュアルフォーカスに切り替えて撮影していましたが、2021年の今、α7R IVをもってすれば、このようなシーンでもAFで撮影することができるようになりました。背景が複雑なシーンでα7R IVを使って飛んでいる野鳥を撮る時、私は、フォーカスモードはAF-C(コンティニュアスAF)にして、フォーカスエリアはトラッキング:ゾーンに設定することが多いです。そして、AF被写体追従感度ですが、ハクチョウのように直線的に飛ぶ鳥の場合は、4もしくは3に、コミミズクのようにひらひらと飛ぶ鳥の場合は2もしくは3にすることが多いです。

 撮影前に野鳥の観察を丁寧に繰り返すと、行動パターンが読めるようになります。それができれば、もう撮れたも同然で、あとは最適な設定にしたα7R IVに委ねるだけ、そんな時代になりました。

α7R IV作例.jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離400mm F5.6 1/2500秒 ISO1250
α7R IV作例 (2).jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:焦点距離600mm F4 1/1600秒 ISO400

α史上最高の解像性能で撮る野鳥風景

 近年のカメラは、どのようなものを使っても、それなりによく写るので、鳥を大きく写す場合に画質的に残念な結果になることはあまりありません。しかし、鳥を小さく写す場合はちょっと話が変わってきます。鳥がいる風景写真をライフワークにしている私は、鳥の周囲に大きく風景を取り入れて主役の鳥を小さく写すことが多々あるのですが、このような条件で撮ると、カメラの本当のポテンシャルがよくわかります。

 α7R IVは鳥を小さく写す場合でも、約6100万画素の高解像なフルサイズのセンサーとローパスフィルターレス仕様によるクリアな解像感、G Masterレンズの解像力が互いにリンクして、考えられないような高画質で鳥がいる風景写真を撮影することができます。野鳥は600mmクラスの超望遠レンズがなければ撮影できないと思っている人はぜひ、このカメラに焦点距離が短めのレンズをつけて鳥を風景的に小さく写してみてください。本当によく写ることが実感でき、もう元には戻れなくなることでしょう。

α7RⅣ作例.jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離400mm F8 1/800秒 ISO160
α7RⅣ作例 (2).jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 135mm F1.8 GM
■撮影環境:焦点距離135mm F2.8 1/3200秒 ISO160
α7RⅣ作例 (3).jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 85mm F1.4 GM
■撮影環境:焦点距離85mm F2.8 1/250秒 ISO400

ダイナミックレンジが広い

 かつての高画素機はダイナミックレンジ的にちょっと問題がありましたが、前モデルのα7R IIIがそれを克服し、ダイナミックレンジが広い高画素機として登場しました。α7R IVは6100万画素とα7R IIIの4240万画素から1.5倍近く高画素になったので、使う前はダイナミックレンジが狭くなっているのではないかとちょっと心配しましたが、全く問題はなく、広いダイナミックレンジをキープしてくれています。なので、明暗差が激しい条件でも躊躇なく撮影することができます。

 シジュウカラのような白黒模様の鳥を晴天の硬い光で撮影する時、ダイナミックレンジが狭いカメラだと、ハイライトかシャドウのどちらか一方を犠牲にしなければなりませんが、α7R IVで撮影すれば、暗いところから明るいところまで全ての階調を再現することができます。

α7R IV作例 (3).jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 600mm F4 GM OSS
■撮影環境:焦点距離600mm F4 1/250秒 ISO160

ローパスフィルターレス仕様でもモアレが出ない

 デジタルカメラが普及し始めた頃、カメラには通常、モアレが出にくくなるようにローパスフィルターがついていましたが、普通にモアレが出ました。α7R IVは高画素化することで、ローパスフィルターレスにしてもモアレがほとんど出ないと聞いたので、テストするためにマガンを撮影しました。モアレが出やすい条件(羽根が規則正しく並ぶところに対して、センサー面ができるだけ垂直水平になるようにカメラ位置を決め、シャープに像を結びやすい絞り値でクローズアップ)で撮影しましたが、ご覧の通り、モアレは出ていません。

α7R IV.jpg
■使用機材:ソニー α7R IV+FE 135mm F1.8 GM
■撮影環境:焦点距離135mm F5.6 1/250秒 ISO500

まとめ

 撮る道具として使いやすいα7R IVは、確かなAFと広いダイナミックレンジが特徴です。そして、考えられないような高画質で野鳥を撮影することができるので、寄りで切りとる時はもちろんのこと、引きで風景的に野鳥をとらえる場合にもおすすめです。鳥がいる風景写真を撮っている人や撮ってみたい人は、ぜひこのカメラを使ってみてください。

■写真家:山田芳文
「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。主な著書は『写真は「構図」でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)、『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)など。 最新刊は『SONY α7 IV 完全活用マニュアル』(技術評論社)。

[終了しました] 山田 芳文 写真展 『ともに生きる〜野鳥と人〜』

写真展告知用ジョウビタキ.jpg
■会期:2021年10月23日(土)~2021年11月5日(金)
■時間:11:00~20:00 ※最終日は17:00まで
 ※営業時間に準じて変更になる可能性があります。
■会場:αプラザ(大阪)※ ソニーストア 大阪内
■住所:〒530-0001 大阪市北区梅田2-2-22 ハービスエント 4F  
■入場料:無料

写真展『ともに生きる〜野鳥と人〜』のイベントページ

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