知性を手にしたソニー α7R V|AIによるオートフォーカスの進化を実感!
はじめに
今回、新たに発売されたソニーのα7R Vを早速使ってみました。現時点での筆者の所有カメラでメインに使っているαシリーズはα1、α7R IV、α7R III、α7 IV。主にスポーツや鳥・動物などはα1をメインに撮影。風景の場合はα7R IVをメインに撮影をしています。
今までの撮影パターンであれば、スポーツや動体撮影にR系の高画素機を使用する事はほとんどありませんでしたが、AF性能が大きく進化したα7R Vがどこまで動体撮影に使えるか非常に気になるところです。α7R Vはα7R IVからどう進化したのか、撮影してみた写真や感じた事を紹介します。
α7R Vはα7R IVから何が変わったのか
まずはα7R Vとα7R IVの気になる項目、そして変わった項目などを一覧にしてみました。ボディの外観は従来のαシリーズと同様で見た目の大きな変化はありません。
α7R IVに比べて若干サイズが大きくなっていますが、実際に持ってみてもその差を感じる事がない程度の範囲です。ただ、α7R Vの4軸チルトモニターの搭載により厚みが増しているのは比較するとハッキリと分かります。あわせてモニターの機構やサイズアップなどの要因等もあって、ボディ重量が少しアップしています。
α7R V | α7R IV | |
発売日 | 2022年 11月25日 | ※初期型 2019年9月6日 ※マイナーチェンジモデル2021年6月4日 |
センサー | Exmor R CMOSセンサー | Exmor R CMOSセンサー |
有効画素数 | 約6100万画素 | 約6100万画素 |
記録画素 | 9504 x 6336ピクセル | 9504 x 6336ピクセル |
画像処理エンジン | BIONZ XR | BIONZ X |
ボディサイズ | 131.3(W)x96.9(H)x82.4(D) | 128.9(W)x96.4(H)x77.5(D) |
有効画素数約6100万画素の「Exmor R CMOSセンサー」は、α7R Vとα7R IVは同じものになりますが、画像処理エンジンが「BIONZ X」からα1やα7S IIIに搭載されている最新型の「BIONZ XR」に変わっています。これにより大幅な画像処理能力が向上し、高解像度イメージセンサーの解像性能を最大限に引き出し、被写体の質感やディテールを忠実に再現できるようになっています。
α7R V | α7R IV | |
ファインダー方式 | 1.6cm (0.64型)電子式ビューファインダー | 1.3cm (0.5型) 電子式ビューファインダー |
ファインダー解像度 | 9,437,184ドット | 5,760,000ドット |
最大ファインダー倍率 | 約0.90倍 | 約0.78倍 |
モニター解像度 | 2,095,104 ドット | ※初期型 1,440,000ドット ※マイナーチェンジモデル 2,359,296ドット |
モニターサイズ | 8.0 cm (3.2型) TFT駆動 | 7.5cm (3.0型) TFT駆動 |
ファインダーは、α1と同じ1.6cm (0.64型)電子式ビューファインダーで、ファインダー解像度も9,437,184ドットとなり、非常に高精細にバージョンアップしています。
新開発4軸マルチアングル液晶モニターについては、あとの項目で紹介します。
α7R V | α7R IV | |
RAW出力形式 | 非圧縮・ロスレス圧縮(L/M/S)・圧縮 | 非圧縮・圧縮 |
記録メディア | SDXC UHS-II・CFexpress A | SD UHS-II・MS PRO DUO |
連続撮影(AF/AE追従) | 最高約10コマ/秒 | 最高約10コマ/秒 |
連続撮影枚数 | 圧縮RAW:583枚 ロスレス圧縮RAW:547枚 非圧縮RAW:135枚 |
RAW:約68枚 非圧縮RAW:約30枚 |
バッテリー | NP-FZ100 | NP-FZ100 |
静止画撮影可能枚数 (CIPA規格準拠) |
ファインダー使用時: 約440枚 液晶モニター使用時: 約530枚 |
ファインダー使用時:約530枚 液晶モニター使用時:約670枚 |
記録方式においては、RAWデータ撮影のロスレス圧縮(L/M/S)が加わりました。ロスレス圧縮RAWデータは「可逆圧縮」と呼ばれていて、元の状態(圧縮前の状態)に戻すことのできる圧縮方法で、撮影RAWデータを小さくする事ができ、なおかつ非圧縮RAWデータと同じ状態に展開できるRAWデータになります。撮影データ容量を抑える事でたくさんの撮影が可能になり、撮影時のメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
ただ、パソコンでRAW現像する際には、圧縮されたデータを元に戻す行程が発生する為、パソコンのスペックによってはRAWデータを開くのに、非圧縮のRAWデータよりも時間がかかる場合があるので注意が必要です。
実際に同じ被写体の設定を変えて撮影したデータのサイズを比較してみました。被写体によって撮影データに変動はあると思いますが、テスト撮影では、ロスレス圧縮(L)は非圧縮の半分程度までのサイズに圧縮されていました。同じ容量のメディアで約2倍の枚数が撮影できる感じです。
α7R Vのロスレス圧縮では、3つのサイズが設定できるようになっています。
ロスレス圧縮(L) 9504 x 6336 ピクセル (60M)
ロスレス圧縮(M) 6240 x 4160 ピクセル (26M)
ロスレス圧縮(S) 4752 x 3168 ピクセル (15M)
α史上最高の解像性能
α7R Vのセンサーは、α7R IVからの変更は無いので画素数の変化はありません。しかし従来比最大約8倍の高速処理能力を持つ、最新の画像処理エンジンBIONZ XRを採用しているため、画像処理能力が大幅に向上し、今まで以上に高解像度イメージセンサーの解像性能を最大限に引き出す事ができようになり、被写体の質感やディテールの再現性などが向上しています。
またα7R Vでは、最新の画像処理エンジンの高速処理により、従来モデル(α7R IV)と比べて露出制御と色再現性能の精度も向上しているのが特長です。カメラ前面に搭載した「可視光+IRセンサー」に加え、新搭載のAIプロセッシングユニットの働きにより、特に日陰シーンでより正確なホワイトバランスが得られるようオートホワイトバランス性能が進化しています。普段からオートホワイトバランスを使っているユーザーには朗報ですね。
オウムの写真はAPS-Cクロップ撮影したものですが、フルサイズで約6100万画素があるα7R VはAPS-Cクロップ撮影をしても、6240 x 4160 ピクセル(約2600万画素)のデータがあるので、望遠を使う被写体狙いには非常に有効なカメラです。オートフォーカスが進化した事で、よりクロップ撮影を使うようなフィールドスポーツや鳥などの撮影にも使いやすいカメラになったと言えます。
進化したオートフォーカス性能
α7R Vの進化のポイントである「新開発AIプロセッシングユニット」を搭載したことで、被写体認識が豊富になり、画像処理エンジン「BIONZ XR」の高速処理とあわせてオートフォーカスの精度が飛躍的に向上しています。実際に使ってみると、従来からある人物・動物の瞳AFに関しても明らかにAFの食いつきが良くなっているのを実感する事ができました。
α7R V | α7R IV | |
測距点(位相差) | 693点 | 567点 |
瞳AF / 被写体認識AF | 人物 動物/鳥 動物 鳥 昆虫 車・列車 飛行機 |
人物 動物 |
従来の高画素機のRシリーズでは苦手とするようなモトクロスレースの撮影をα7R Vでしてみましたが、オートフォーカスの被写体認識には驚かされました。バイクレースのような被写体だと、被写体認識設定を「車・列車」か「人物」のどちらにするか悩みましたが、実際に撮影をしてみると「人物」の方がライダーのヘルメットをしっかりと認識して捉えていました。
今回の進化のポイントである「AIプロセッシングユニット」搭載で、被写体の骨格情報を使ってその動きを高精度に認識することができるようになっています。瞳だけではなく人間の胴体、頭部の位置をより高精度に認識するため、顔が見えないシーンでも人物の頭部を認識するという性能を実感する事ができました。
人物の認識の進化も凄いのですが、いろいろと撮影していて動物認識もかなり向上しているのが実感として感じ取ることができました。
被写体認識の「鳥」はα7R IVで無かったもので、α7R Vに追加されたものの認識対象の一つです。
認識対象の切り替えで「動物/鳥」「動物」「鳥」と動物と鳥がセットとなった項目があるので試してみましたが、単独とセットになった場合の違いを実感できませんでした。しいて言えば、鳥だけを撮るようなシーンでは単独の「鳥」を使い、動物園などで、鳥や動物をあわせてとるようなシチュエーションであれば「動物/鳥」を使えば楽なのかな~と感じました。
新規に追加された「昆虫」でしたが、昆虫の撮影自体が筆者は慣れていないのもあってか、あまり有効的に使いこなす事ができませんでした。そもそも昆虫と言っても、いろいろな種類があるのでAIによる認識がどうなっているのかは?な部分が多いような気がします。
「車/列車」の被写体認識ですが、船でも有効でした。おそらく乗り物全体に有効的なモードではないか思いますが、列車に関しては、列車の手前に何か重なる状態(遮断器など)が発生すると認識が外れる場合がありました。認識した被写体の前を隠すような状態が発生するようなシーンでは、AI認識は少し苦手のようです。
「飛行機」の被写体認識ですが、障害物が少ないようなシーンでしか撮影ができなかったので認識率は非常に高い状態でした。
様々な被写体をAIによって認識し、オートフォーカスの精度が上がっているのは紛れのない事実です。実際にα7R Vを使えばすぐに実感できると思います。非常に便利な進化ポイントですが、AIによる被写体認識を過信しすぎるのも少し怖いような気もします。場合によっては今までに無い被写体認識の切り替え作業が発生することも出てきます。少し使いこなすまで戸惑うこともあるかもしれません。
α史上最高 8.0段高性能光学式5軸ボディ内手ブレ補正
α史上最高の8.0段高性能光学式5軸ボディ内手ブレ補正をボディ単体で実現したα7R V。そして、対応する手ブレ補正機構内蔵レンズとの組み合わせで、より効果的にボディと協調補正を実現しています。望遠域で発生しがちな大きなブレを効果的に抑制し、従来よりも安定したフレーミングで撮影をサポートしてくれる手ブレ補正は強力な味方になってくれます。
※ボディとの協調は動画撮影用のアクティブモード時にも対応
α7R V | α7R IV | |
手ブレ補正 | 8段+レンズ協調補正 | 5.5段 |
現時点(2022年11月時点)で、手ブレ補正の協調に対応するレンズは
・FE 24-105mm F4 G OSS
・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
・FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
の4本になります。いずれのレンズもレンズ本体のソフトウェアVer.02以降で使用可能になります。α7R Vを入手したユーザーは、該当するレンズのアップデートをする必要があります。
実際に暗い場所での撮影を手持ち撮影で試してみましたが、8.0段のボディ内手ブレ補正効果は十分に手ごたえを感じました。本来であれば三脚を使用したり、ISO感度を大幅に上げて撮影したりする必要があるシーンでも、いざとなれば手持ち撮影でも対応できるシーンが増えてきそうですね。今回はレンズとの協調補正の体験はできていませんが、期待は高まります。
自在な調整ができる新開発4軸マルチアングル液晶モニター
α7R Vでもっとも注目されるポイントは、やはり自在な調整ができる新開発4軸マルチアングル液晶モニターです。チルトとバリアングルの両方の特長を合わせ持つ4軸マルチアングル機構は、多くのユーザーが待っていた機構です。
α7R V | α7R IV | |
モニター可動方式 | 4軸マルチアングル | チルト |
角度調整機能 | 上約98 ° 下約40 ° 横約180 ° 横開き位置での回転約270 ° |
上約107° 下約41° |
α7R IVではタテ位置でローアングル撮影は苦手な撮影でしたが、α7R Vでは4軸マルチアングルモニターのおかげでローアングル撮影も非常に楽な姿勢で撮影をする事ができるようになりました。また4軸マルチアングルモニターは液晶面を反転することができるので、カメラを使用しないときや移動時には液晶面を隠し、液晶を保護する事もできるので安心度が高まります。
まとめ
今回は静止画撮影をメインにレポートしましたが、動画機能も大幅に進化しています。8K動画記録や4Kではフルサイズ選択時で60p/30p/24pの動画、Super 35mmでは画素加算なし6.2Kオーバーサンプリングによる4K記録も可能になっています。また、手持ち撮影を強力にサポートする高性能手ブレ補正「アクティブモード」が搭載され、先に紹介した対応する手ブレ補正機構内蔵レンズと組み合わせれば、協調して制御することで大きなブレを抑制する事が可能になっています。値段的になかなかのプライスのα7R Vですが、その価格に見合った機能と性能を持っており、あらゆる被写体に対応できる力を得ました。
ちなみに下のドルフィンショーの写真では、被写体認識の「動物」は反応しませんでしたが、ピントはしっかりと被写体を捉えています。新たに搭載された「AIプロセッシングユニット」のAIは単体で学習する機能はありませんが、今後のファームウェアアップによりさらなる進化の可能性も秘めている気がします。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。