【オールドコンデジ】小さなボディに驚異の望遠720mmが凄い、ソニー サイバーショット DSC-HX60V
はじめに
今回は、10年ぐらい前に発売されていたコンパクトデジカメ「SONY サイバーショット DSC-HX60V」をご紹介します。最近「オールドコンデジ」というジャンルで少し古いコンパクトカメラがブームになっています。今回紹介する「SONY サイバーショット DSC-HX60V」は、オールドコンデジというジャンルというには少し新しい感じもしますが、10年前のコンデジはどのような実力と魅力があったのか撮影をして振り返ってみました。
サイバーショット DSC-HX60Vの基本スペック
「SONY サイバーショット DSC-HX60V」が発売されたのは2014年3月。その前年の2013年11月に「世界初の35mmフルサイズイメージセンサー搭載ミラーレス一眼カメラ、「α7」と「α7R」が発売になった頃になります。初代αが発売になった後のコンデジモデルになるので、αと同様の画像処理エンジン「BIONZ X」が搭載され、操作メニュー画面も同様のGUIが与えられており、現在ソニーの「α」を使っているユーザーが手にしても違和感なくスムーズに操作できるコンデジです。
「SONY サイバーショット DSC-HX60V」は10年前の機種ではありますが、現時点でも十分なスペックを有しています。下に主なスペックを記載しましたが、Gレンズが採用されており有効画素数も約2040万画素、画像処理エンジン「BIONZ X」、光学式の手ブレ補正搭載と魅力ある機能を備えています。
スペック表には記載していませんがRAWデータ保存が無かったり、動画撮影に関してはやはり10年前の機種だけあって「4K」撮影モードが無かったりするので物足りなさを感じるかもしれません。
SONY サイバーショット DSC-HX60Vの基本スペック
発売日 | 2014年3月7日 |
センサーサイズ | 1/2.3型 |
センサー | 裏面照射型「Exmor R」 CMOSセンサー |
有効画素数 | 約2040万画素 |
画像処理エンジン | BIONZ X |
レンズタイプ | ソニーGレンズ(レンズ構成:10群11枚(非球面レンズ5枚) |
F値(開放) | F3.5(ワイド端時) -6.3(テレ端時) |
焦点距離 | f=4.3-129mm(35mm判換算 24-720mm) |
手ブレ補正 | 光学式 |
フォーカスモード | オートフォーカス(AF-S)、セミマニュアルフォーカス、マニュアルフォーカス、オートフォーカス(AF-C)(アドバンストスポーツと動画モード時のみ) |
フォーカスエリア | ワイド(9点自動測距)、中央、フレキシブルスポット(S/M/L) |
ISO感度 | 80/100/200/400/800/1600/3200、Auto(ISO80-3200、上限/下限 設定可能) |
撮影モード | プログラムオート、絞り優先、シャッタースピード優先、マニュアル露出、MR(メモリーリコール)、動画(おまかせオート/シーンセレクション)、パノラマ撮影、シーンセレクション、おまかせオート、プレミアムおまかせオート |
シーンセレクション | 高感度、夜景、手持ち夜景、夜景ポートレート、風景、ポートレート、美肌、人物ブレ軽減、ビーチ、スノー、打ち上げ花火、アドバンストスポーツ、料理、ペット |
ピクチャーエフェクト(静止画) | トイカメラ、ポップカラー、ポスタリゼーション、レトロフォト、ソフトハイキー、パートカラー、ハイコントラストモノクロ、ソフトフォーカス、絵画調HDR、リッチトーンモノクロ、ミニチュア、水彩画調、イラスト調 |
GPS/方位 | GPSのみ |
モニター | 3.0型(4:3) / 約92.1万ドット / エクストラファイン液晶 / TFT LCD |
出力形式 | JPEG(DCF Ver.2.0,Exif Ver.2.3,MPF Baseline準拠) |
記録メディア | SD、SDXC、SDHCカード、メモリースティック系各種 |
連続撮影 | 約10枚/秒(最大10枚まで) |
バッテリー | NP-BX1 |
静止画撮影可能枚数 | (CIPA規格準拠) 約380枚 / 約190分 |
質量(g)(本体のみ) | 272g |
ボディサイズ (幅×高さ×奥行) | 108.1 x 63.6 x 38.3 mm |
発売当時の価格は、市場価格で4万円を切る価格だったと思います。2018年後半には生産完了となり最終的には3万円を切るぐらいの価格で販売されていました。現在の中古市場価格は程度にもよりますが、2~3万円程度で入手する事が可能です。
使用しているバッテリーは現行品のRXシリーズでも使われているものと同じなので、バッテリーの交換もできて安心感があります。
またWi-Fi機能もあるので、撮影したデータをスマホアプリを介して転送することも可能です。
少し残念ポイントがあるとすれば、「SONY サイバーショット DSC-HX60V」には、カメラ内にアプリを導入して機能強化が行なえる「PlayMemories Camera Apps」という面白い機能があったのですが、このアプリのダウンロードサービスは、有償アプリの販売は2023年9月30日、有償・無償アプリのダウンロードは2025年8月31日にそれぞれ終了と発表されており、機能強化ができなくなってしまった点です。
カメラにインストール済みのアプリはダウンロードサービスが終了してもそのまま使用する事ができるので、もし中古市場で「SONY サイバーショット DSC-HX60V」を探すときには、有償のアプリがカメラに入っているものを探してみるのもいいでしょう。
コンパクトなボディで驚きの光学30倍ズームと超高解像度ズーム
コンパクトなボディにもかかわらず、光学30倍ズームのコンパクト高倍率ズームモデルで、旅行などに最適な高画質・高機能が魅力となっています。
下の写真は、羽田空港の展望デッキから管制塔を、ワイド側24mmと望遠側720mmで同じ場所からズームして撮影してみたものになります。小さなボディで驚くほどアップで撮影する事ができます。普段使いの便利なスマホでは、ここまでの望遠はできないので大きなアドバンテージになります。
さらに凄いのが「全画素超解像ズーム」という機能があります。この「全画素超解像ズーム」は解像感を保ったまま被写体を拡大する事が可能な機能で、この機能を使うことにより「全画素超解像60倍ズーム」が可能になります。
その凄さを実感するために、六本木ヒルズから東京タワー方面を撮影してみました。マップで確認すると、撮影場所から東京タワーまでは直線距離で「約1.4km」ほどの距離です。
超高解像度ズームを使用して記録される画素数は「5,184×3,888」ピクセルで、超高解像度ズームを使用しない場合と同じ画素数で記録されるので、デジタルズームのような記録画素数の低下はありません。
最大で「35mm換算 1,440mm相当」の撮影が可能になりますが、あまりにも望遠すぎて被写体を正確にフレーミングする事が少々難しくなります。また動いている被写体を追いかけても、すぐにフレームアウトしてしまいます。超高解像度ズームを使用しなくても、光学ズームの範囲内の望遠720mmでも十分に凄いと感じるコンパクトなデジカメです。
羽田空港の展望デッキで航空機を撮影してみましたが、コンパクトデジカメならではの便利なポイントを発見しました。駐機場や滑走路が見える展望デッキには、下の写真の様に安全の為のワイヤー柵が設置されています。一眼レフやミラーレス機などで大きな望遠レンズを使って撮影しようとすると、どうしてもワイヤー柵がレンズに干渉して、少なからず撮影に影響を及ぼします。
実際にワイヤー柵が影響してしまった写真が下の写真です。ワイヤーに当たった光が反射して画面内下部にリング状の反射が映り込んでしまっています。
しかし、非常にコンパクトで高倍率のズームレンズを持つ「SONY サイバーショット DSC-HX60V」は、ワイヤー柵の影響を受けずに撮影する事が可能でした。
ワイヤー柵やネット越しでの撮影する様なシーンでは、小さいカメラ・小さなレンズの高倍率ズームのメリットを発揮する場合があります。もちろん危険な場所だからそういったネットや柵などの対策がされているので、十分に注意してルールを守って撮影する必要があります。
ピクチャーエフェクト機能で楽しむ街中スナップ撮影
「SONY サイバーショット DSC-HX60V」には超望遠ズームの機能の他、撮影が楽しくなる「ピクチャーエフェクト」機能が充実しています。レトロな雰囲気で撮れる「レトロフォト」をはじめ、「リッチトーンモノクロ」「ソフトフォーカス」「水彩画調」など、全13種類のエフェクトを内蔵しています。パソコンで画像処理しなくても、カメラだけで印象的な作品をつくれます。また、「トイカメラ」「ポップカラー」「ポスタリゼーション」「レトロフォト」「ソフトハイキー」「パートカラー」「ハイコントラストモノクロ」は、動画撮影時にも使用できます。「ピクチャーエフェクト」の効果は、下記の一覧を参照してみてください。
ピクチャーエフェクト メニュー項目の詳細
切(初期値) | [ピクチャーエフェクト]を使わない |
トイカメラ | 周辺が暗く、シャープ感を抑えた柔らかな仕上がり |
ポップカラー | 色合いを強調してポップで生き生きとした仕上がり |
ポスタリゼーション | 原色のみまたは白黒で再現されるメリハリのきいた抽象的な仕上がり |
レトロフォト | 古びた写真のようにセピア色でコントラストが落ちた仕上がり |
ソフトハイキー | 明るく、透明感や軽さ、優しさ、柔らかさを持ったような仕上がり |
パートカラー | 1色のみをカラーで残し、他の部分はモノクロに仕上がる |
ハイコントラストモノクロ | 明暗を強調することで緊張感のあるモノクロに仕上がる |
ソフトフォーカス | 柔らかな光につつまれたような雰囲気の仕上がり |
絵画調HDR | 絵画のように色彩やディテールが強調された仕上がり |
リッチトーンモノクロ | 階調が豊かでディテールも再現されたモノクロに仕上がる |
ミニチュア | ミニチュア模型を撮影したように鮮やかでボケの大きな仕上がり |
水彩画調 | にじみやぼかしを加えて水彩画のような効果をつける |
イラスト調 | 輪郭を強調するなどしてイラストのような効果をつける |
ピクチャーエフェクトを使用すると、大きく撮影画像が変化します。正直使いにくいエフェクトも多くあり、使う人の好みも大きく分かれると思います。
ちなみに筆者の一番のお気に入りは「パートカラー」です。1色のみをカラーで残す画像は、とても印象深くなり、撮影の際にも対象の色を探して撮影したりすることで、普段とは違った方法で被写体を観察するようになり、スナップ撮影が楽しくなります。「パートカラー」では、残す色(赤・青・緑・黄の設定)も変更できるようになっています。
パートカラーとは、正反対的なイメージの「絵画調HDR」も、様々な色があふれる街中で撮影すると面白い仕上がりになります。
またパートカラーよりもシックに仕上げるのであれば、「リッチトーンモノクロ」もおすすめできます。
ピクチャーエフェクトでいろいろ楽しめる「SONY サイバーショット DSC-HX60V」ですが、もちろんエフェクト無しでも焦点距離の自由度が高い高倍率ズームにより様々なシーンで撮影を楽しめるカメラです。
「SONY サイバーショット DSC-HX60V」はそのコンパクトさを武器に、いつも持ち歩くことができ、時には超望遠も使えたりと、ユーティリティーの高いアイテムだと思います。筆者の場合、常にカバンの中に携帯しているアイテムで、気軽にスナップ撮影をするカメラの一つになっています。
まとめ
最初はこんな小さなボディで焦点距離720mmなんて、無理してるのかなと思っていましたが、その写りは10年たった今でも十分のクオリティーを確保しています。センサーが小さいので、普段フルサイズミラーレス機のαユーザーからすれば、ノイズ感などが少し気になるかもしれませんが、ボディのサイズ感やユーティリティー性能を考えれば、現在でも十分に現役で使用できるカメラです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師