ソニー E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS レビュー|望遠Gズームで動物園のサルを撮影する。
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はじめに
ソニー E 70-350mm F4.5-6.3 G OSSは、APS-Cセンサー搭載αミラーレス一眼用の倍率5倍の望遠ズームレンズです。35mm判換算では105-525mm相当の焦点距離をカバーし、野鳥をはじめとする動物撮影、航空機や鉄道、モータースポーツなど撮影時に近寄ることが難しい動きモノの撮影や、家族写真なら運動会などで「もっと大きく撮りたい!」を可能にしてくれます。
機種名と鏡筒側面にあるエンブレム「G」からも判る通り、特にシャープな描写力と美しいボケ味が得られるようこだわった開発コンセプトのもと、2019年10月に発売された「Gレンズ」の1本をご紹介します。
外観と操作性
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APS-Cセンサーα用レンズの中では大柄ですが、テレ端で35mm判換算525ミリ相当という超望遠域の焦点距離を稼げることを考えれば、驚くほどコンパクト。テレ端時に鏡筒は約47ミリ伸びるものの大きな重心移動は感じられず、コンパクトなαボディとバランスは良好。防塵・防滴に配慮した鏡筒の優れた堅牢性と操作性は、プロユーザーからも信頼されています。
また、光学式手ブレ補正を内蔵。ボディ内手ブレ補正と合わせてダブルで手ブレ補正が働き、鏡筒に設けられたスイッチでは機能ON/OFFも可能。カメラ機能をアサインできるファンクションボタンを搭載し、ユーザーの撮影スタイルに合わせたカスタマイズが行えます。レンズ側で瞬時に切り替えできるAF/MFスイッチも搭載され、上位機種同等の操作性を実現しています。
仕様
型名 | SEL70350G |
レンズマウント | ソニー Eマウント |
対応撮像画面サイズ | APS-Cフォーマット専用 |
焦点距離 | 70-350mm(35mm判換算105-525mm) |
レンズ構成 | 13群19枚 |
画角(APS-C) | 22°-4°40′ |
開放絞り(F値) | 4.5-6.3 |
最小絞り(F値) | 22-32 |
絞り羽根 | 7枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 1.1m-1.5m |
最大撮影倍率 | 0.23倍 |
フィルター径 | 67mm |
手ブレ補正 | レンズ内手ブレ補正方式 |
最大径x長さ | 77 x 142mm |
質量 | 約625g |
アクティブな動体シーンを狙いたい
このレンズは先にも述べた通り、動きモノの撮影に向く望遠ズーム。被写体によって動きの質は異なりますが、手持ちでの動体撮影となればEVFでの撮影が基本です。シーンによっては素早くカメラを動かして被写体を追従するわけですが、そのことを考えるとレンズ単体で625グラム、α6600ボディと組み合わせても1100グラム強に収まる重量は、腕力自慢でなくとも扱える許容範囲と言えるでしょう。
その適応力を確かめるべく、動物園でサル達のアクティブなシーンを狙い撮影をしてきました。というのは半分は口実で、年末年始で鈍った自分の動体対応スキルのリハビリ目的のほうが大きかったかもしれません。
少し深めに掘られた展示エリアの中央にあるサル山ではニホンザルの木登りや、ロープや梯子などに飛び移る動作など活発な動きを観察できる園がほとんど。サルと同じ目線の高さや、見上げたり、見下ろしたり様々なアングルで撮影できる点でも恰好の被写体といえるのです。
1月中旬の気温と開園から間もない時間帯とあってサルたちはまだほとんどがじっと座って動きません。今回の狙いはこういういつでも撮れる毛繕いのシーンではありません。しかし動き出すのはサルの気分次第なので、活発になるのを待ちながらテスト的に撮った1枚です。拡大してみると赤い顔にはえた産毛までしっかり解像できていて、Gレンズの描写力の高さが伺えます。
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■撮影環境:332mm(498mm相当)・1/500秒・f6.3・ISO12501250・AWB・JPEG
暫く動きがなさそうなので、一旦サル山から離れフクロテナガザルのエリアへ。大きな体格と長い両腕、喉元を風船のように膨らませて吠えるように鳴くのが特長的なサルです。一枚目はまずズームのワイド端70ミリで雲梯にぶら下がる様子を撮影したもの。
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■撮影環境:70mm(105mm相当)・1/640秒・f4.5・ISO1000・AWB・JPEG
連続して鳴きはじめたので縦位置に構えズームアップしたのがこの2枚目の作例。軽くて取り回しも良く、スムーズな動きの操作感で一気にテレ端までズームアップできます。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/640秒・f6.3・ISO5000・AWB・JPEG
ときおり吠えながら雲梯でグルグルと派手に回転する姿を見せてくれます。ダイナミックなアクションはフォトジェニックですが、動きにフェイントが入るためなかなか納得いくタイミングを撮らせてくれません。それでもAFはしっかり追従できています。
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■撮影環境:70mm(105mm相当)・1/640秒・f4.5・ISO500・AWB・JPEG
一休み中に見せるどこか憂いを帯びたような表情もなかなか魅力的です。再びテレ端でポートレート的に撮影。こういう場面でGレンズの柔らかく美しいボケ味が本領を発揮します。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/640秒・f6.3・ISO6400・AWB・JPEG
ニホンザルたちの動きがまだ小康状態気味なので子ども向けの展示エリアに移動してきました。ここもサル山と同様にフェンスや窓越しではなく被写体を直接撮影できるのです。その目的はヒワコンゴウインコの羽根。Gレンズは繊細な造作だけでなく、緑や青のグラデーション、そして嘴の上のひときわ鮮やかな赤色の羽根もリアルに描写できています。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/800秒・f6.3・ISO3200・AWB・JPEG
絞り開放の撮影でも単焦点レンズかと思わせるほどシャープに解像。アウトフォーカスしていく様も自然です。PC画面では肉眼では見えなかった細部までハッキリ確認でき描写力の高さを実感できます。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/800秒・f6.3・ISO4000・AWB・JPEG
再びサル山の前へ。曇天で気温が上がらないためか、アクティブというにはほど遠いのですが一匹が私を注視しています。サルは近距離で目が合うとほぼ威嚇してくるため注意が必要ですが、隔離されている動物園では心配は要りません。10メートル程度の距離ですがテレ端で目線をゲット。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/400秒・f6.3・ISO3200・AWB・JPEG
暫くすると若いサル達の動きが活発になってきました。吊り橋を行ったり来たりし始めるとそれに触発されたサルがチョッカイを出したり、チェイスが始まるなど他のサルたちにも徐々に波及していく、ここからが面白い時間の始まりなのです。
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■撮影環境:251mm(376mm相当)・1/800秒・f6.3・ISO10000・AWB・JPEG
何がきっかけなのか分りませんが、一度スイッチが入ると同時多発的に小競り合いが起きたりします。子ザル達はじゃれ合うような可愛さもありますが、そこそこの年齢の個体になると威嚇の表情もなかなかの迫力。その一瞬を狙います。
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■撮影環境:160mm(240mm相当)・1/800秒・f5.6・ISO6400・AWB・JPEG
一触即発といった雰囲気。人間同士同志の喧嘩なら撮っている場合ではないですが、ここ(サル山)ではどんどん撮る場面。何故ならシャッターチャンスの時間はそれほど長くは続かないからです。2匹の攻防も気にしながら周りに目をやると、さらに活発に跳びまわる若い個体もいてどちらにレンズを向けるべきか迷います。
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■撮影環境:167mm(250mm相当)・1/800秒・f5.6・ISO6400・AWB・JPEG
自分の直感を信じて次から次へと繰り広げられる瞬間を捉えるべくシャッターチャンスに集中してひたすら撮る。それが楽しいのです。この若い個体はこのあときっと跳ぶはず!
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/800秒・f6.3・ISO10000・AWB・JPEG
ほら、跳んだ!(でも、そっちか!?)とまぁ、読みが外れたり失敗したりするのは普通です。そんなに簡単ではないから面白いわけで・・・。
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■撮影環境:350mm(525mm相当)・1/800秒・f6.3・ISO10000・AWB・JPEG
ここからの作例は、急に慌ただしくなったサル山の数分間で撮影した中からの抜粋。牙を剝きだして威嚇する表情やジャンプを決める様子など迫力ある動体シーンを狙って撮影したものです。AFモードはもちろんAF-C。エリア選択はゾーンを選択しシーンに応じてゾーンを移動させています。
一番最後の写真を撮影した時には一瞬だったので気が付きませんでしたが、よく見ると吊り橋の上から逃げようとしているサルの後ろ足の指を下にいるサルが掴んでいます。このようなことが後から分るのもアクティブなサルたちを撮影する面白さのひとつといえます。
E 70-350mm F4.5-6.3 G OSSを手に入れたなら、ぜひこのような動物園の撮影も試してみてください。望遠ズームで動体を追う練習にもなるので他の被写体を狙う際にもきっと経験値として役に立つことは間違いありません。
最後に
動物園行くために利用したモノレールのカーブするレールの造形が面白く、望遠レンズの圧縮効果を利用して切り取ったものです。1枚目は単純にレールの曲線の美しさと連なる支柱を都市風景としてワイド端350ミリで圧縮した作例。
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2枚目~4枚目は1枚目と同じ撮影場所で頭上を画面奥に進んでいくモノレールを連続的(連写という意味ではありません)に撮影しました。頭上を越えて遠ざかり変化する車輛のサイズやレールの入りかたをその場で見ながら、ズーム位置とフレーミングを修正して構図を整え撮影しました。
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かなり慌ただしい撮影方法ですが、臨機応変な構図変更を伴う撮影が手持ちで行えるのは、ハンドリング良く軽快な撮影が可能なAPS-C専用のE 70-350mm F4.5-6.3 G OSSだからこそだと思います。
もしもAPS-C機で使用する望遠レンズを購入するのに、フルサイズ対応の上位機種レンズと選択を迷っているのなら、筆者としては高解像、ボケ味、機動力の三拍子が揃い、扱いやすさとトータルバランスの良さからも躊躇なくE 70-350mm F4.5-6.3 G OSSをお薦めします。
■写真家:宇佐見健
1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。専門誌出版社、広告代理店を経て独立。撮影ジャンルは360度全天球、水中、旅、風景、オーロラ、ポートレート、モータースポーツ、航空機、野鳥etcと多岐に渡る。カメラ誌等では新製品機材の実写インプレッションやHOW to関連、カメラメーカー工場取材取材など多方面の記事を執筆中。