ソニー E16mm F2.8レビュー|まだまだ現役!コンパクトな広角レンズ
はじめに
2010年に発売されたソニー「E16mm F2.8」は、ソニーのAPS-CサイズEマウント専用の、コンパクトな単焦点レンズです。今回は、このレンズとZV-E10を持って、沖縄の街を歩いてみました。
気軽に持ち歩けるコンパクトサイズ
発売年を見ると、オールドレンズとまでは行かなくても、そこそこ年代を感じさせるレンズですが、ZV-E10に装着するとボディバランスも良く、まだまだ現役で、元気な画を産み出してくれました。
焦点距離は35mm判換算で24mm、ボディーカラーはシルバーのみ、重さ約67g、長さは22.5mmとかなり薄いので、パンケーキレンズのように使用できます。荷物を多くしたくない旅行や、ボディバッグひとつで身軽に撮影に出掛けたいときなど、気軽に付けて持ち出せるレンズです。
別売りのウルトラワイドコンバーター「VCL-ECU1」や、フィッシュアイコンバーター「VCL-ECF1」をレンズの前側に装着すれば、超広角レンズや魚眼レンズとして撮影できます。どちらも生産は完了している製品ですので、興味がある方は中古品で探されると、結構見つかりますよ。
市場の鮮やかな魚たちは、沖縄にいることを実感させてくれます。昔は不思議な色だなと思っていたイラブチャーは、淡白でどんな料理とも合わせやすいので、マグロと並んで沖縄でよく買う魚のひとつです。
ショート・ムービー
35mm判換算で24mmの焦点距離は、ムービー撮影にちょうど良く、長時間撮影しても疲れを感じない軽さも、ジンバルなどを使用しない、ライトなムービー撮影にピッタリでした。
広角レンズならではの歪曲収差は見られるのですが、逆に24mmの視点であれば、まったく歪曲していないのも、ムービーとして不自然な画になってしまうので、がちがちに収差補正しているレンズよりも好感が持てます。フォーカスブリージングがほんとど見られなかったのも、ムービー撮影用のレンズとして高得点の要素です。
逆光時の描写は驚くほど良い!
逆光時の描写は、本当に2010年のレンズ?と思ってしまうほど綺麗。意地悪な撮影シーンなのに、木の節や、木の実の質感を丁寧に描き出しています。
撮影は1月の沖縄ですが、この時期の沖縄は曇ったり晴れたりと、かなり気分屋な天気の日が多いです。この撮影も、ほんの少しの雲の切れ間を狙って行いました。色味の少ない冬の風景のなか、小さな赤い実の存在は、とても可愛らしかったです。
アルミニウム合金製で質感GOOD
レンズ構成は5群5枚、絞り羽根枚数は7枚、開放絞りはF2.8で最小絞りはF22と、コスパの良い仕様の本レンズですが、外装はアルミニウム合金製なので、安っぽさを感じさせない質感です。撮影するときに絶対に手が触れるのがレンズの鏡筒部なので、この手に当たる部分の質感が良ければ、単純なようではありますが、撮影のテンションが上がります。
薄暗いシーンでもピントの迷いは少なく、しかも静かにAFが動いてくれるのは、特筆すべき点だと思いました。しっとりとした夕暮れ時に、ジーコジーコとAFが動く音が、自分の周りに鳴り響くのはちょっと恥ずかしいんですよね。
主張しすぎないデザインは接写もしやすい
最短撮影距離は0.24mと、特に目立った数字ではないのですが、レンズ自体が小さいので、撮影していると意外とどこまでも寄れるなと感じました。主張しすぎないレンズデザインなので、小動物やお子さんを撮影するのにも向いていますね。
沖縄県本島南部の南城市にある奥武島は、天ぷらとネコで有名な車で行ける離島。島内の天ぷら屋さんは、どこも行列ができるほど人気で、しっかりとした衣の天ぷらは、東京の天ぷらとはまったく違う味と食感なので、あまり天ぷらが好きではない筆者も、沖縄に行くと魚ともずく、アーサの天ぷらをよく買います。
奥武島には鮮魚店が集まるいまいゆ市場もあり、さまざまなおこぼれを期待して集まるネコたちも沢山います。奥武島に行ったらネコを撮って、天ぷらを買って(宿に)帰るのが、最近の定番コースです。
シャッターチャンスに強いレンズ
とにかく歩きながら、気になったらさっと取り出して、ぱっと撮れるのが大きなメリットの本レンズ。小さいことももちろん、AFの素早さがシャッターチャンスを逃さないために、大きく役立ってくれます。
周辺部の描写は若干甘い気がしますが、こんな街歩きスナップでは逆に味にもなり得ます。完璧を求める方にはお勧めしにくいですが、レンズの個性を楽しみたい方には、ボディキャップ代わりに付けておくと、不意のシャッターシャンスに強い、ワクワクできるレンズとしてお勧めしたいです。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。