ソニー FE 12-24mm F2.8 GM レビュー|究極の超広角ズームレンズ
はじめに
広角レンズといえば21mm辺りから「超」がつき始める広角の焦点距離だが、気がつけば16mmや14mmの超広角レンズも当たり前になってきた。超広角レンズといえば、焦点距離はカバーできているが周辺の描写低下や極端な周辺光量落ちなどは「あって当たり前」に感じているのではないだろうか?
ソニーがラインナップしているFE 12-24mm F2.8 GMは、超広角ズームレンズとしてはまさにパーフェクトに近い一本に仕上がっているので作例と共に紹介していく。
大きく重たい、という安心感
決して手のひらには収まりきらない(収める気がない)このサイズ感は、いい写りをするだろうという期待と安心感を与えてくれる。ズッシリと感じる重みもサイズ感と相まって中身が詰まっている安心感がある。この重さが手ブレを防ぐ効果にも寄与していたりするので、重いことがメリットになることもある。
基本的に大きくて重たくて高いものは「ハズレが少ない」というのを身をもって実感しているので、FE 12-24mm F2.8 GMもまさに当たりのレンズだろうと使う前から思っていた。
拳サイズの大きさのレンズは描写にも貢献している。超広角レンズでよくある周辺光量落ちや周辺の流れなどもかなり抑えられていて、直線が直線に写る気持ちよさを体験できる。直線が多い人工物などを撮影すると特に気持ちがいいだろう。
超広角ズームの楽しさと難しさを味わう
超広角レンズは特殊レンズの類になるため、見慣れた景色やいつも撮影している場所に持ち出してみると特に効果が分かりやすい。
僕がよく訪れる橋の足元から広角側の12mmで撮影。12mmの超広角レンズということもあって極端なパース効果が発生する。初めて12mmを体験する人は思っていたよりもメインの被写体が遠くに見えるように感じるだろう。手前は極端に大きく、奥は極端に小さく、このレンズ効果を理解して使うことでFE 12-24mm F2.8 GMでの撮影が一気に楽しくなる。
橋の下から側面に回り込んで逆光で撮影。絞り込んで撮影することで光条撮影が可能だ。光条は絞り込むほど伸びるため自分のイメージに合わせてF値を決めればOKだ。
私の場合はF11〜16あたりが画質と光条のバランスがいいので多用している。絞り込み過ぎると小絞りボケが発生し解像感が少し落ちてしまうため、気になる人は解像感を優先してF8.0くらいで撮影するのもいいだろう。私の場合は解像感よりも全体の仕上がりを優先して撮影するため、表現優先でさらに絞り込むことも多い。
私の地元は黄ニラの栽培で有名であちこちに黄ニラ畑がある。12mmだと広すぎたため24mmまでズームして、程よい遠近感を生かして黄ニラ畑を逆光と順光の2パターンで撮影した。
FE 12-24mm F2.8 GMのいいところは何と言ってもズームができること。12mmだと流石に広過ぎる…なんてときは標準ズームの広角側として定着した24mmが使えるのはありがたい。高画素機を使っている人は、APS-Cクロップ機能を使うことで36mmとしても使うことができるのでより使い勝手が良くなる。ちなみにα7R IVの場合、APS-Cクロップ機能を使っても約2620万画素を保ったまま撮影ができるので、FE 12-24mm F2.8 GMとの組み合わせとしてはオススメの一台だ。
FE 12-24mm F2.8 GMはただ画角が広いだけではなく逆光に強い。さらに、光条の変化を楽しめるレンズでもあるので逆光での撮影が非常に楽しい。逆光撮影は立体感も出やすいので光で迷ったら逆光を狙ってみて欲しい。慣れるまでは露出に悩むかもしれないが最近のカメラはダイナミックレンジが広く、機種によってはHDRと呼ばれるハイライトからアンダーまで適正露出にして撮影してくれる機能が付いているものも多いので活用してみよう。
焦点距離24mm。本来はかなり広角の部類に入るのだが、慣れとは怖いもので24mmの画角は標準ズームでカバーする画角になってしまったこともあり標準の画角として考えることが増えてしまった。12mmとなると一体どれだけ広いのだろうか…超広角を体験していない人にとってはなかなか想像できない焦点距離だ。
同じ場所で12mmを採用し撮影するとこんな感じで、水平垂直をキープしたまま12mmと24mmを撮り比べたものだ。24mmで同じように撮影しようとするとかなり後ろに下がらなくてはならない。単焦点レンズで自分の足で稼いで撮影しなさい、と何度も言われた人もいるのではないだろうか?ズームレンズのいいところは単焦点ではできないその場で焦点距離を変化させることなので使い分けが重要ということ。
楽をするためにズームを…というのももちろんアリだが、焦点距離が持つレンズの効果を理解して撮影すると撮影はもっと楽しくなるし表現の幅が増えるのは間違いない。
これは橋の上から撮影したもので物理的に後ろに下がれない状況で撮影したもの。こういう場合はズームレンズの方が便利だ。
橋の作例のように被写体との距離感が近いものはレンズ効果が大きく反映されるが、このように遠景のみを撮影する場合はレンズのパース効果も目立たない。
超広角レンズはレンズ効果が大きいため立ち位置で写り方が大きく変化する。同じ12mmで撮影位置を少し変えるだけで結果が大きく違う。
奥の橋のアーチは変化がほとんどないが手前側のアーチは極単位変化する。このレンズ効果を生かして動画撮影にチャレンジするのも良いかもしれない。
肉眼では決してこのようには見えないが、12mmの焦点距離のフィルターを通して見るとまるで別世界に入り込んでしまったような景色を体験できる。
超広角ズームのいろいろ
超広角のメリットは広く写るだけではなく手ブレをしにくい(目立ちにくい)のもポイントだ。本来であれば三脚を使用して撮影するようなシーンでも、超広角であれば少し練習すれば簡単に撮影することができるようになる。私の感覚では12mmの場合はシャッタースピード1秒を境に手持ちか三脚か切り替えることが多い。
αシリーズはコンパクトなボディであるため、FE 12-24mm F2.8 GMを組み合わせるとフロントヘビーになるため三脚もしっかりとしたものを使うようにしたい。そうなると三脚が荷物に感じてしまうことも多いので手持ちでの撮影をメインに考えている。
αシリーズにはボディ内手ブレ補正も搭載されているため、しっかりと構えて撮影すればほとんどブレることはないので、実際に自分の手持ち撮影の限界値を事前に計測しておくと現場で判断しやすくなる。
12mmは縦と横の構図でかなり表現が変わってくるので、同じシーンで縦横2パターン撮影しておくのがオススメだ。
12mmとなると少しでもカメラが傾くと大きく歪みが発生するので、奥行き感を出したり大きさを誇張したりすることができる。建物などをまっすぐ撮影したい場合は水平垂直を意識して撮影しよう。12mmの焦点距離であれば大体の建物が画角内に収まるので建築撮影などでも重宝する。
超広角の特性上、画面の端にいくほど像が歪み、中心に近づくほど歪みは減少する。超広角レンズで日の丸構図の撮影も被写体が引き立って面白いのでオススメだ。超広角レンズに限らず、構図で迷った場合はシンプルに日の丸構図を狙うのもいいだろう。
12mmから24mmにズームすると「24mmってこんなに狭かった…?」と思ってしまうほど12mmは広い。標準ズームではワイド端の24mmもFE 12-24mm F2.8 GMではテレ端になるので、同じ24mmでも目線が変わって面白い。
標準ズームの次に何を買うか悩んでいる人は、まずは超広角の世界を体験して欲しい。ソニーのαシステムは最高峰のGM(G MASTER)シリーズで超広角〜超望遠まで揃えることができ、レンズは資産になるので長く使うのであればGMシリーズを検討してみて欲しい。
FE 12-24mm F2.8 GMは単焦点レンズも顔負けの描写なのでディティールの細かい被写体の撮影も楽しい。風景写真との相性はもちろんバッチリで、いざという時に12mmが使える安心感はすごい(12mmで入りきらなかったら諦めよう)。
高所から見下ろす体勢で撮影。超広角は奥行き(距離感)を誇張してくれるので、ハイアングルやローアンングルとの相性が良い。目で見た以上に高さが誇張されて迫力のある一枚に仕上がった。
同じポジションから縦構図で撮影。横構図とはまた違った奥行き感が演出され空をより広く写し込むことができるので、朝焼けや夕焼けなど空のグラデーションをより多く取り込みたい時には縦構図がオススメだ。
展望台併設のカフェから撮影。水平垂直を意識して撮影することで柱の歪みを抑えることができた。輝度差のあるシーンだがα7R IVの広いダイナミックレンジのおかげで、暗部が黒潰れすることなく写しとることができた。
12mmの焦点距離のメリットは星景写真でも発揮される。星を点状に写すのであれば本来は赤道儀を使用して撮影するが、12mmの超広角であれば十数秒のシャッタースピードであればほとんど星の流れが気にならない写りだ。FE 12-24mm F2.8 GMは周辺まで描写が安定しているため画面端に写った星もちゃんと点に写るので、夏の天の川など写すと楽しそうだと思った。
まとめ
これまでに超広角レンズは何種類か使用してきたが、FE 12-24mm F2.8 GMを使ってみてその安定感に驚かされた。これまで使用してきた超広角レンズは「超広角だから」と正直どこか諦めていたところもあったが、FE 12-24mm F2.8 GMに関してはほとんど不満に感じるポイントがないのだ。人によっては大きくて重たいのはちょっと…という人もいると思うが、その大きさと重さがこの写りを実現しているのだと考えると納得しかない。
αシリーズは小型軽量ボディなのでFE 12-24mm F2.8 GMと組み合わせるとフロントヘビーになってしまうが、それが返って手ブレの抑制につながっていたりもするので、特に気になることもなく楽しく撮影ができた。
FE 12-24mm F2.8 GMは、α7R IVやα1など上位モデルを使用している人にこそ使ってもらいたいレンズだ。特にα7Rシリーズは高画素モデルであり、今後出てくる後継機がさらに高画素化したとしてもFE 12-24mm F2.8 GMは十分対応できる描写だと実感した。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。
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