星空撮影で愛用しているソニー FEレンズ|北山輝泰
はじめに
2024/11/23(土)に開催されるソニープロカメラマンセミナーでは、北山 輝泰さんがSONYフルサイズミラーレスカメラ”α”の魅力を紹介する予定です。αシリーズを使用した風景写真の撮影ポイントや、おすすめレンズの紹介、各レンズの特徴やそのシーン別使用例などをお話しいただきます。本レビューをご覧頂き、更に深い理解を求められている方は奮ってご参加ください。セミナーの詳細は文末に記載しています。
星景写真家・写真講師の北山輝泰です。今回は私が星景写真で使用しているレンズの中から特におすすめしたい2本のズームレンズについてご紹介します。新しく星用のレンズを購入しようと思っている方や、レンズの使い分けについて知りたいという方はぜひ最後までお読みいただければと思います。
レンズ選びのポイントは?
私が星景写真用のレンズを選ぶ上で最も大事にしていることは「被写体に合わせてレンズを選ぶ」ということです。被写体とは「星」と「風景」の両方を指します。どのような風景を前景に置き、どのような星空を背景に置くか=『写真のテーマ』を事前に練りに練り、その上でレンズを選びます。
分かりやすい被写体として「天の川」を例にしてみましょう。みなさんがイメージする天の川の多くは、さそり座やいて座周辺の銀河系中心方向から夏の大三角形あたりまでの領域でしょう。これらの星を漏れなく収めようとすると12mm~14mm程度をカバーできるレンズが必要になります。一方、この天の川の中でも銀河系中心部分にのみフォーカスをした写真にしたい場合は、30mm~50mm程度の焦点距離が必要になります。あとは前景をどう撮るか検討して一枚の写真を完成させます。また別の例として「月」を題材とした場合、印象的な風景がメインで月が副題とした写真は、24mm~50mm程度のレンズが必要になりますが、月が昇る、または沈む瞬間などを拡大して捉える場合には200~600mm程度のレンズが必要になります。
このように、星景写真で大事なことは写真のテーマを事前にしっかり考え、それに見合ったレンズを準備することですが、机上である程度シミュレーションしたとしても現場に行って初めて「こうした方がいいのでは」というアイデアが降ってくることが常です。そのような時はズームレンズのほうが構図の検討がしやすく、特に初めて星景写真を撮影するような方にはおすすめです。
FE 12-24mm F2.8 GMで撮る星景写真
星景写真向けのGMレンズとして一番おすすめしたいのが「FE 12-24mm F2.8 GM」です。超広角から広角までカバーしながらもF2.8と明るいレンズで、まさに星景写真用のレンズと言えます。重さは約847gと重いですが、三脚に固定して撮影する星景写真ではあまり気になりません。このレンズの最大の特徴とも言えるのが122°の広範囲をカバーできる12mmという画角にあります。実際にカメラ越しに見る感覚では、想像の1.5倍くらいの風景が収まっているように感じます。先ほど例としてあげた天の川撮影はもちろん、春の大三角形や、春の大曲線、冬のダイヤモンドといった星景写真の定番の被写体たちも、風景と一緒に撮影しても余白が残るくらい余裕がある状態で撮影することができます。
このレンズを推したいもう一つの理由は、24mmというテレ端側の焦点距離です。これは私の主観ですが、一般的な星景写真を撮影していて「使いやすい」と感じる焦点距離は24mmまでだと思っています。これ以上の焦点距離は「星を撮ろうとすると風景が写らず、風景を写そうとすると自分が撮りたい星が外れてしまう」といった狭さを感じることでしょう。12mmから24mmまでの画角は「とりあえず撮りたいものを写す」ということでいえば、最も使いやすい焦点域だと思います。あとはこの広い画角を活かしてどのような被写体をどれくらいの割合で写すかという構図のセンスが必要になりますが、まずは12mmで被写体を撮影してみてから、撮影した写真を再生し、写す必要のないものを引き算していくのがいいでしょう。
このレンズは前玉が繰り出しているいわゆる出目金レンズです。そのためねじ込み式型のフィルターは取り付けることができません。その代わりに、レンズの後玉にシート型のフィルターを取り付けられるホルダーが標準搭載されていますので、自分でカットしたシート型のソフトフィルターなどを取り付けて撮影しましょう。私はKenkoさんの「リアプロソフトンフィルター」をカットして使用しています。
FE 24-70mm F2.8 GM II
もう一つおすすめしたいレンズが「FE 24-70mm F2.8 GM II」です。I型からより軽量・コンパクトになり、解像力も格段に良くなったため、大人気のズームレンズです。私も星景写真撮影だけでなく普段使いでとりあえずということであれば、このレンズをつけていることが多いです。
先ほど申し上げたように一般的な星景写真で24mm以上の画角は狭さを感じます。一方、ある特定の星座、月や惑星、彗星といった被写体を題材に星景写真を撮影する時には、この24mm以上の画角が必要になります。分かりやすい例として、おおぐま座の北斗七星をテーマに星景写真を撮影するとしましょう。広角で撮影した場合には北斗七星だけでなく他の星座や星々が一緒に写ってくるため、一見すると「どれが主題なのか」というところがボケてしまいます。一方、50mmで北斗七星だけを画角目一杯に配置し風景とともに写すことができれば、誰が見ても北斗七星がテーマの星景写真だということが分かります。さらにソフトフィルターなども併用すれば、よりそれが明確になるでしょう。
また、月の「地球照」と呼ばれる現象を撮影する場合も、広角では白飛びの中に埋もれてしまい分かりにくくなってしまいますが、35mm以上の画角で撮影することで地球照の存在もより分かりやすくなります。このように標準域を使って撮影するべき被写体というのも多数存在しているため、FE 24-70mm F2.8 GM IIの出番もかなり多いです。
さらにこのレンズの使いやすさは、F2.8という開放値にあります。焦点距離が長くなればなるほど、短いシャッタースピードでも星が線像になってしまいます。これは地球が自転しているためで、基本的には感度をできるだけ高くしシャッタースピードを短くするしか打開する方法がありません。この時F値が暗いレンズだと、必要以上にISO感度を上げなければならず、画質が低下していきます。F2.8であれば常用感度内でも十分明るく、かつ星を点像で撮影することができますので、F2.8という明るさは重要です。
FEレンズの魅力
今回ご紹介したレンズ以外にも、星景写真ではさまざまな焦点距離のレンズが必要になります。例えば、山に登り星景写真を撮影したいと思った時、あまり重いレンズは持っていけないけど妥協したくないというシチュエーションには「FE 14mm F1.8 GM」や「FE 20mm F1.8 G」などの小型軽量でも写りが良いレンズを選ぶことができます。また、動きもの(人物や動物など)と星を撮影したいと思った時には、「FE 24mm F1.4 GM」や「FE 35mm F1.4 GM」などのF値が明るいレンズで、できるだけシャッタースピードを早くしてブレの少ない写真を撮ることもできます。
自分が撮影したいテーマに合わせて自由にレンズを選べることができること、このラインナップの広さこそFEレンズの大きな魅力だと実感しています。
まとめ
今回は私が愛用している2本のレンズを中心にご紹介しました。星景写真ではテーマを決めて、機材を選ぶことがとても重要だということがお伝えできれば本望です。11月23日のセミナーではさまざまな作例をお見せしながら星景写真の魅力についてより深くお話ししたいと思いますので、ぜひそちらもよろしくお願いいたします!星景写真家の北山輝泰でした。
【2024/11/23】北山輝泰さん登壇のソニープロカメラマンセミナーを開催
2024年11月23日(土)講師に北山輝泰さんをお招きして、SONYフルサイズミラーレスカメラ”α”の魅力を紹介するセミナーを開催します。α7 IV、α7CR、ZV-E1 を使用した風景写真の撮影ポイントや、おすすめのレンズ(FE 14mm F1.8 GM、FE 20mm F1.8 G、FE 12-24mm F2.8 GM、FE 24-70mm F2.8 GM II、FE 24-70mm F2.8 GM、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSなど)の紹介、各レンズの特徴やそのシーン別使用例などをお話しいただきます。星空を普段から撮影されている方や、星空撮影に挑戦したいと考えている方、またSONYのカメラやレンズに興味をお持ちの方にオススメのセミナーです。
全国のカメラのキタムラ38店舗でもライブ中継にて開催いたしますので、最寄りの店舗でご参加ください。
【概要とお申込み】
■開催日時:2024年11月23日(土)【第一部】11:00~12:00【第二部】14:00~15:00
■費用:無料
■場所:カメラのキタムラ ライブ中継先店舗(下記店舗一覧よりご確認ください)
■定員、申込み:希望店舗へお問い合わせ、ご連絡ください
■申込み期限:2024年11月22日(金)各店舗営業時間内
【店舗一覧】
募集状況や申込み、ご質問などは申込み希望店舗へお電話ください。
★の表記がある店舗では当日限定のラインナップでカメラやレンズの体験ができます。
■北海道:札幌/羊ケ丘通り店★
■北海道:札幌/さっぽろ東急店
■青森県:弘前/高田店★
■秋田県:横手/横手店★
■山形県:山形/馬見ヶ崎店★
■山形県:米沢/金池店
■群馬県:太田/太田店
■東京都:新宿/北村写真機店
■神奈川県:平塚/平塚店★
■静岡県:磐田/今之浦店
■静岡県:藤枝/田沼店
■静岡県:掛川/中央店
■新潟県:三条/ピア店
■長野県:松本/渚店★
■富山県:富山/掛尾店★
■石川県:金沢/浅野本町店
■石川県:小松/小松店
■福井県:福井/バイパス南店
■愛知県:名古屋/サカエチカ店
■三重県:四日市/西浦店★
■滋賀県:草津/野村店
■京都府:京都/四条西院店★
■大阪府:岸和田/岸和田店
■兵庫県:姫路/英賀保店★
■岡山県:岡山/下中野店
■鳥取県:鳥取/鳥取店
■香川県:高松/高松南店★
■徳島県:徳島/沖浜バイパス店
■愛媛県:松山/久万ノ台店
■福岡県:福岡/ミーナ天神店★
■福岡県:久留米/上津店★
■福岡県:太宰府/太宰府店★
■大分県:大分/萩原店
■熊本県:熊本/東バイパス中央店★
■宮崎県:宮崎/中央店
■佐賀県:佐賀/南部バイパス店★
■長崎県:佐世保/東店
■沖縄県:沖縄/北谷店
※2024/11/1:ライブ中継先店舗追加の為タイトル及び本文の一部を修正
北山輝泰氏プロフィール
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。