はじめに
ソニーのカメラを愛用している者にとってGマスターは憧れのレンズだ。とにかく写り、作りにこだわったGマスターレンズには単焦点とズームがあり、特に大三元と呼ばれるF2.8通しの広角、標準、望遠のズームはαシステムを持っているのであればぜひ手に入れたいレンズだ。
GマスターもII型が登場し大三元も標準と望遠ズームはII型に置き換わり、そして今回新たにラインナップされたFE 16-35mm F2.8 GM IIの登場で大三元全てがII型に。今回はα1とα7R Vと組み合わせて撮影を行ったので、FE 16-35mm F2.8 GM IIの写りをぜひその目で確かめて欲しい。
小型軽量化されたデザイン
αボディはフルサイズのセンサーが搭載されている割に小型のものが多い。それに対してレンズはセンサーサイズに対して物理的に大きく重くなってしまうことが多い。大きく重たいレンズは写りが良い、というのが通説だがGマスターのII型はそれをひっくり返すような小型軽量な仕上がりだ。
I型と比較して20%の軽量化、全長も10.1mm短くなっており手に持った感じはかなりコンパクトだ。小さく軽いシステムは撮影が楽しくなる。小型軽量化されたからと言って作りが悪くなったわけでもない。Gマスターが持つ高級感やしっかりした作りは健在だ。
フィルター径は82mmとなっており、超広角ズームながらもNDやPLフィルターを装着することができる。各フィルター径毎に適切なサイズのフィルターを揃えている人もいるかもしれないが、私の場合は82mmのフィルターを一通り揃えておき、その他の径のレンズで使用する場合はステップアップリングを使用して装着するようにしている。ステップアップリングを使用するとフードが装着できないなど不都合もあるが、フィルターワークの際はフードは外して使うことが多いので割り切って使用している。
レンズの上部と左側にフォーカスホールドボタンが合計2つ配置されている。私の場合はここに「ピント拡大」機能を割り当てている。ファインダーを覗いたまま、指の移動量も最小限に確実なピント合わせができることを重視しているためだ。ピント拡大の状態でAFも使えるので、確実にAFが合っているかも確認したのちにシャッターを切ることができるのでおすすめだ。
開放だけじゃない、絞ってヨシの優等生
FE 16-35mm F2.8 GM IIは開放F値2.8の明るさが特徴だが、必ずしも開放で撮影をしなければいけないというわけではなく、私の考えでは「いざとなったらF2.8まで開けられる」というのが大三元の魅力だと思っている。
特に私の場合は開放で撮影するよりも絞ってパンフォーカスでの撮影が多いため、F5.6~11が常用のF値となっている。解像のピークは開放から2段絞ったあたりとよく言われるが、FE 16-35mm F2.8 GM IIの場合開放から2段絞るとF5.6となり、実際各F値を撮り比べてみるとF5.6~8.0が解像のピークなのは間違いない。
ただ等倍で見比べたらの話で、開放から既に解像はピークに達していると言っても良いくらいだ。中央から周辺まで均一な描写を求める場合はF5.6で、パンフォーカスを狙う場合はF8.0~11を使うという感覚だ。
私のような風景をメインに撮影している作家の場合、解像感は高い方が撮影していて気持ちが良い。αシステムには高画素モデルがラインナップされているので、基本的にはα1やα7R Vを使うことが多い。画素数が多いとレンズに要求される性能もかなりシビアとなるが、GマスターII型は画素数がさらに倍になっても十分活躍してくれる、そう思わせてくれる写りだ。
風景ではあまり使わない機能だが、今回は「ピクセルシフトマルチ撮影」も使って撮影してみたので見ていただきたい。この機能はセンサーを半画素分ずらして合計16枚撮影して得たデータを合成して、通常よりも画素数の高い一枚を生成する機能だ。ただ、16枚を撮影して合成するため動いている被写体には使うことができないが、今回はほとんど動きがない状態であったためピクセルシフトマルチ撮影を狙ってみた。
高画素機+FE 16-35mm F2.8 GM IIの組み合わせであれば、ピクセルマルチ撮影をしなくても十分…ということにはなるが、個人的に気になったので試してみた。
さまざまなロケーションで活躍するレンズ
FE 16-35mm F2.8 GM IIは超広角の16mmから標準の35mmまでカバーしており、ズームすることで起きる焦点距離の変化による画の変化も大きい。さらにFE 16-35mm F2.8 GM IIは近接撮影も得意で最短撮影距離(ズーム全域)0.22m、最大撮影倍率0.32倍と広角レンズとしてはかなりアップで写せる。APS-Cモードで撮影することでさらに倍率も稼ぐことができる。
超広角レンズで近接撮影ができるのは表現の幅が広がるので非常にありがたい。ネイチャーでは寄りと引きと撮ることが多いのでレンズ交換なしで撮影できるのは時間短縮にもなり、ネイチャーシーンでのレンズ交換時はリスクもあるため、なるべくレンズ交換せずに撮影を続けられることが望ましい。
近接撮影でも描写性能はほどんど落ちることなくシャープな写りだ。広角レンズとはいえ開放で撮影するとかなりピントは浅く、最短撮影距離ではほんの少し被写体が動いただけでもピンボケになる。私の場合は近接撮影時はF8.0〜11まで絞ってしっかりピントを合わせることが多いが、広角のパース感を活かしたまま被写体を浮き立たせたりする場合は、開放F2.8〜F4.0あたりでの撮影がベストだと感じた。
自由作例
主にネイチャーシーンで撮影を行ったがそれ以外でもいくつか撮影をしている。それらを自由作例ということでこちらで紹介させていただければと思う。
まとめ
Gマスターレンズの大三元が全てII型になったことで、これを機にαシステムを検討してみようという人も多いのではないだろうか。I型と比較するとトータルでボディ一台分くらいの軽量化に成功しており、ますますフルサイズを気軽に扱えるようになった。
GマスターII型の登場で「良いレンズ=重い、でかい」というのは過去のものになり、悩みとしては…良いレンズが揃うと次はそのレンズを活かせるボディが欲しくなることだろうか。今回使用したα1とα7R Vは画質、AF性能など全ての面においてFE 16-35mm F2.8 GM IIの性能を引き出せるボディであり、せっかく大三元を使うのであればいずれかのボディは揃えておきたい。今後もボディはさらに進化しレンズの性能も今まで以上に引き出せるようになるはずだ。レンズはまさに資産であり、ボディの進化とともにレンズの真価も発揮されることになる。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。